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報告書 1
日報 8
しおりを挟む冒険者ギルドのアイドルである受付嬢の1人である、ライラの爆弾発言にまたまた騒がしくなる冒険者ギルド。
「テメェ、キュート! 俺たちのアイドル、ライラちゃんに手ぇ出すたあ、いい度胸してんじゃねーか!」
「五体満足で帰れると思うなよ!」
「ちょっと可愛いからっていい気になるなよ!」
「ハアハア……いいっ!」
「ちょっと待てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!! 」
ライラのちょっとしたおちゃめで、殺されては堪らない。思わず叫ぶ救人。おまけに何だか別方向で興奮しているヤツまでいる始末。
「ちょっと、ライラさん!シャレになりませんって!? 早く冗談だって説明して下さいよ!」
「えーーー? お姉さん、結構本気よ?」
『『『『『ブッ殺スッ!! 』』』』』
「だから待てえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
唇に人差し指を当て、コテンと小首を傾げながらはにかむ仕草をするライラ。これはアレだ、どうすれば自分が可愛く見えるのかが分かっている女性の仕草だ。
可愛いには可愛いが、実にあざとい。
二人きりの時ならばいくらでも構わないかもしれないが、今やってもらっても、暑苦しい野郎共の”火に油”を注ぐだけ。
取り敢えず自分の身の振り方すら定まっていない今の救人では、いくら貯まろうと恋愛方面などに振り分けられるポイントなど有りはしない。
口にこそ出さないが、割と本気でやめて欲しい救人だった。
と、そこで、ライラの爆弾発言の所為でフリーズしていたシスティーナが、やっと現状復帰を果たす。
「はっ!? ななななな、何いきなり”お姉さん”とか、トンデモない事言ってるのよライラ!?キュウトさんに失礼でしょ!」
”失礼”、とは思わないが、”トンデモない”のは全くその通り。もっと言ってやって下さい!とばかりにウンウンと頷く救人。
「キュウトさんは私達より年上よ!」
「そっちかいっ!? 」
「え?え!え!? 何か違いましたか!? 」
「いや、システィーナさん、そこじゃなくて!」
予想の斜め上を行くシスティーナの言葉に、つい素に戻ってツッコミを入れてしまう救人。
「えっ!? そうなの! ふぅん……、ゴメンね?私、キュートきゅんが成人前の14歳くらいだと思ってたわ。でも……、だったら結婚だって出来るね!」
「アンタももう喋んなぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
そう、地域により多少の前後はあるが、この『ユラシアル大陸』では、だいたい15~16歳で成人とみなされ独り立ちを始める。
と言っても地球に比べ文明水準も低く危険の多いこの世界では、日々の生活の保証など有りはしない。貧しい家庭では、家計の為にほんの7~8歳で親を手伝ったり、商家に丁稚奉公に出されたりすることも珍しくない。
また、戦争や事故、流行病で親を亡くし、孤児院で暮らす子供達も数多い。
その為、そういった子供達が草むしりなどの雑用や、薬草の採取など、街の中だけでこなせたり比較的安全な依頼なら受けれるように、冒険者ギルドへの登録も10歳から出来るようになっているのだ。
15~16歳といえばまだ中学生程度、現代日本で考えるとまだまだ未成年の子供に感じるかもしれないが、医療技術や食料生産技術が低く、平均寿命が50歳程度であった嘗ての日本でも、”元服”と呼ばれる成人の儀が14歳であった事は誰しも歴史の授業の中で習った憶えがあるだろう。
その頃の日本では女性の結婚適齢期は15~17歳で、20歳を超えたら”行き遅れ”と言われたそうであるから、15歳前後が成人とみなされるこの世界なら、ライラの”結婚”発言も別段おかしな発言ではない…、ないのだが、今この状態で言う事では無いだろう。
つい先日は”お堅い”幼馴染みに漸く春が来た、と冷やかし混じりに喜んでいたはずのライラの見事な手の平返しに、思わずジト目になるシスティーナ。
「ちょっとライラ、あなたこの前と随分言ってることが違うじゃない、いったいどういう事なのかしら?」
「あら、そう言うシスこそ、この前は
『そんなんじゃない』って言ってなかったっけ?」
「……………………………… 」
「……………………………… 」
対するライラも、心変わりに一切言い訳をするつもりも無いのか、システィーナの”照れ隠し”で言った一言を持ち出して上げ足を取る。
「どうやら私達、一度ジックリと”OHANASHI”しなきゃいけないみたいね?」
「あら? 奥手のシスがホントに本気? いいわよ、久し振りに”OHANASHI”しましょうか?」
救人を置き去りにして、「うふふふふ……っ!」 と、誰が見ても笑顔に見えない笑顔で笑い合うシスティーナとライラ。
「なんっ……だ…と!? 」
「まさか、俺たちの天使、システィーナちゃんまで…………っ!? 」
「そんなっ!? くぅ…っ! 憎しみの視線でヤツを殺せたら…………っ!? 」
「ハアハア………………、うっ!?(びくんっびくんっ!)」
野郎共、血涙。ぐぎぎぎぎぎっ!と歯を軋らせながら、一斉に呪詛にも似た視線でキュートを睨みつける男たち。そんな姿も実に暑苦しい。
ちなみに約一名は……、もう放っておこう…………。
「「うふふふふふふふふふ……!」」
『『『『『 ぐぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎっ!! 』』』』』
前方ではカウンターを挟んで声だけは笑い合うシスティーナとライラ。
後方では血涙を流しながら歯軋りをするバカ一同。先日のドンゴの時とはまた違った一触即発的な雰囲気に包まれる冒険者ギルド内だった。
(知らんがなっ!? 何かビクンビクンしてるヤツまで居るし!?いったい何でこうなった……っ!? )
助けを求めて、カウンターにいる他の受付嬢さん達の方を見れば、
ジッ!(『助けて下さいっ!?』(救人の視線))
サッ!(『見ちゃダメ!巻き込まれるわ!?』(慌てて視線を外らす受付嬢さん達))
冒険者ギルドの受付嬢さん達の”危険察知スキル”はバッチリだった。
(ダメじゃん!? 皆んな、どんだけ関わり合いになりたく無いんだよっ!)
助けを求めようにも明から様に目を背けられ、孤立無援の救人。だが、コレは仕方ないだろう。誰しも進んで自分と関係無い厄介事に巻き込まれたくはないのだ。
自分から進んでわざわざ厄介事に首を突っ込むのは、何も考えていないバカかよっぽどの”お人好し”、もしくは何かを企んでいるヤツぐらいだろう。
(そうだ! 高ランク冒険者のザンダさん達なら……っ!! )
一縷の望みを賭けて、フードコートに居るはずのザンダ達の方を見る救人だったが………………、がっくりと肩を落とす。
ザンダ達は……、腹を抱えて爆笑していた。しかも、酒やツマミまでテーブルの上に並べ、すっかり人ごとで観戦モードに入っている。
(何だ!何なんだいったい!? 俺は冒険者登録がしたいだけなのに……っ!)
げんなりとした救人が、内心で愚痴をこぼし始めたその時だった。
ーーー ズクンッ!! ー
救人の身体の奥深くに感じた、突き上げる様な感覚。
(この感じは、まさかっ!? )
救人にしては感じ慣れた、しかし絶対に歓迎したくない感覚。
地球に居た頃に、悪の組織『イーヴィル』の魔人や怪人が異次元より現出した際に感じたのと同じ”次元振動”。
微弱ではあるが、確かに似た感覚を救人は感じた。
地球に居た頃は、どんなに離れていても、その感覚だけはいつでも感知出来たのだ。
(でも何で?ここは地球じゃないはずだ。まさか、『イーヴィル』の怪人達まで一緒に転移して来たってのか!? )
ーーー ウゥゥゥゥゥゥゥゥーーーーッ!! ーー
冒険者の街、メイズロンドに、突然サイレンの様な音が鳴り響く。すると、さっきまでの”馬鹿騒ぎ”が嘘のように雰囲気を変え、表情を引き締める冒険者達。
「緊急依頼です! 只今”次空震”が発生しました! 震度はレベル3です! 皆さんお願いします!! 」
緊迫した表情と声をした、ライラとは別の受付嬢の声が冒険者ギルドに響き渡った。 ーーーー
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