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報告書 1
日報 10
しおりを挟む何はともあれ、何とかかんとか、邪魔ばかり入ってなかなか出来なかった冒険者登録だったが、オーク出現の騒ぎで救人達から注目が逸れた隙に、無事?登録を済ませることが出来た。
振り返り、ふと冒険者ギルド内を見渡せば、ちらほらと残っているのは女性冒険者ばかり。男達は喜び勇んでオーク討伐に飛び出して行ったらしい。
(世界は違っても男はバカばっかりだってことかぁ…… )
「キュウトさん、一応登録は出来ましたけど、これからどうしますか?」
「そうだなぁ……? システィーナさん、オークの討伐って、報酬出るんですかね?」
「当然出ると思いますよ?倒したオークの”討伐証明部位”を持って行けば換金してもらえるはずです 」
「そっかぁ…… 」
ふむ……?と腕を組んで思案する救人。その姿を見ていたシスティーナが何かに気付いたように 「あっ!」っと大きな声を上げる。
「わっ!? どうしたのシスティーナさん?」
「キュ、キュウトさん……?」
突然の大声に吃驚した救人がシスティーナの方を見ると、システィーナは真っ赤になってプルプルと震えていた。
「見損ないました!キュウトさんまで女の子の裸が見たいなんて…っ!? 」
「違うよっ!? 」
「え~~っ!キュウトきゅんもそういうのが見たいの~? もうっ!言ってくれれば私が見せてあげるのにぃ~♪」
システィーナの言葉を聞きつけたライラが、すぐ様ニヨニヨと笑みを浮かべて尻馬に乗っかって来る。
「誤解だ! 濡れ衣だ~~~~~~っ!?
」
涙目のシスティーナにニマニマと明らかに分かっていて揶揄っているのが丸分かりのライラ。
とにかく変態の濡れ衣を晴らす為に、必死で言い訳を始める救人だった。
「システィーナさん違うって! ほら俺、いきなりこの国に飛ばされて来たから一文無しだろ?だから、少しでもこの国のお金を稼ぎたいなぁ~って、それだけだよ!ライラも分かっていて揶揄わないでくれよ、ややこしくなるからっ!」
捲し立てるようにオーク討伐に赴く理由を二人に話す救人。本当の事を言っている筈なのに、何故か言い訳がましく聞こえてしまうのはこの際仕方無いだろう。
「そ、そうだったんですか…、あっ!いえ、さ、最初っから信じていましたよ私は!? 」
「んふふ~~!そういうことにしといてあげるわ!でも、見たくなったら私に言ってね?キュウトきゅんならいつでも見せてあ・げ・る!ウフフ~♪ 」
それを聞いたシスティーナとライラの反応は二者二様、取り繕うシスティーナに全く信じていないライラ。そんな二人の反応に、それ以上の弁解を諦めて、ガックリと肩を落とす救人だった。
「はぁ…、もういいです、じゃあ行って来ます 」
「あっ!? ま、待って下さいキュウトさん、私も行きますっ!」
冒険者ギルドを出て行こうとする救人を、システィーナが慌てて追いかけて来る。
「え?システィーナさんは女の子なんだから行かない方がいいんじゃないのか?」
「大丈夫です!オーク程度なら全然平気です。オークは男の人には問答無用で襲って来ますから、キュウトさん一人では集団だと怪我をするかもしれません!」
両手を胸の前に持って来て、フンスッっと力説するシスティーナ。その拍子に”むにゅり”と形を変えた胸を凝視しそうになって、慌てて視線を引き剥がす救人。
「そ、そっか!あ、ありがとうシスティーナさん! じゃ、じゃあ行こうか!」
若干”挙動不審”になりながらも、どうにか冒険者ギルドを出発した救人達だった。
ーー「ブキャキャキャキャキャッ! 」
ーー「ブキャーーッ!」
「いやぁーーっ!やめて、この変態豚猿っ!! 」
「ダメぇぇっ!? 引っ張らないでぇっ!」
街の中へと行ってみると、かなり数のオークが”涌き”で発生したようだ。あちこちに被害者である服を食べられてしまった素っ裸の女の子達がその身をかばうように蹲り、周りには既に冒険者達に倒されたのか、それ以上に倒されたオークが転がっている。
「うわぁ……、これは酷い…… 」
「ダメっ! 見ちゃダメですよキュウトさん!」
顔を真っ赤にさせたまま、近くの商店や民家の人に頼んで上衣やシーツ等を借り、裸に剥かれた女の子達に大急ぎで掛けて行くシスティーナ。
(側に寄る訳にはいかないし、取り敢えず今のところは新手が来ても大丈夫なように周りを警戒していればいいかな?)
ーー「ブキャーッ!ブキョキョキョキョッ!! 」
救人が周囲を警戒していると、20匹ほどのオークの群れが近付いてくるのが見えた。
「うわぁ…、本当に豚顔の猿なんだ…… 」
ある程度は想像していたものの、思っていた以上にキモいその姿にドン引きする救人だったが、即座に頭を切り換える。
『『『『ブキャッハァーーーーッ!! 』』』』
(「ヒャッハァーーッ!」ってかよ!? お前ら何処の世紀末のチンピラだっての!)
何処かで聞いた様な奇声を上げ、一斉に飛び掛かってくるオーク達。よく見れば頭部にはタテ髮らしきものが生えていて、何となく”モヒカン”っぽく見えない事もない。
上下左右から救人に襲い掛かるオーク達。システィーナの心配していた事が正にコレだ。例えオークの身体が小さく、個々の戦闘力が低くても、一度に群がられては余程の実力が無い限り、無傷で対処するのは難しいだろう。
「キュウトさんっ!! 」
その様子を見て悲鳴を上げるシスティーナだったが、救人に焦りは無い。
何故なら救人は一対多数の戦いには慣れている。皆さんも御存知であろう、ヒーロー物にはお約束、怪人と戦う前には必ず多数の”ザコ戦闘員との戦闘は付き物”だからだ。
いくらザコ戦闘員とはいえ、機械的、生物的に改造され、そのパワーやスピードは常人を大きく上回る。
そんな戦闘員に対して、始めの内は変身せず、怪人が現れるまでは生身のまま倒して行くのが普通であった。
そんな救人であるから、いくら鋭い爪や牙を持ったモンスターであろうと、単体が普通の状態で常人の力を下回るようなオークでは話にならない。
拳で、手刀で、蹴りで。次々と群がるオーク達を叩きのめし、確実に倒して行く。そして ーーーー、
「ラストォォォッ!」
ーー「ブギョワッ!? 」
最後の一匹の頭部を、踵落としでそのまま地面へと叩き付ける救人。20匹いたオーク達は、素手の救人によって文字通り”瞬く間”に討伐されてしまった。
「すごい…、キュウトさん……っ!? 」
思わず感嘆の声を漏らすシスティーナ。普通の冒険者といえば剣で戦うことがスタンダードだ。その為振り始めから振り下ろし、その次の攻撃が斬り上げだろうが横薙ぎだろうが、攻撃から攻撃の間にどうしても隙が出来てしまい、ある程度の実力はあっても素早く、尚且つ数が多い場合は擦り傷ぐらいは負うのが当たり前なのだが、救人は擦り傷どころかその身に触れさせてすらいなかった。
だがまあこれは救人の戦闘スタイルが”徒手空拳”であった事も大きいだろう。素早い相手に対しては小刀やナイフ、小回りが利き、取り回しの良い武器がやはり有効だ。
だが、救人はその武器すら持ってはいない。それなのに、その一撃一撃は彼女の腰に下げたメイスの一撃よりも重く、破壊力があった。
しかも、20匹全てのオークを倒した今も、油断なく”残心”の構えを取る救人の周りの空気が揺らぎ、その身体からは何か、陽炎の様なモノが立ち昇っているのが見える。
(「あれは…っ! キュウトさんの身体から、目に見える程濃密な”魔力”が立ち昇っている!? あんな風に魔力が見えることなんて普通はあり得ない、何て魔力密度なの! キュウトさん、あなたはいったい……っ!? 」)
システィーナが驚くのも無理は無い。魔力とは本来空気と同じで無色透明、火にしろ水にしろ、”魔法”という方法で物理的な”現象”が生じる事で、初めて目にすることが出来る。感じる事は出来ても目視することは出来ないのが魔力なのだ。
ーーゥウゥンッ!ゥウゥゥンッ!ゥゥウゥンッ…ッ!!ーー
だが、そんなシスティーナの思考を無理矢理断ち切るように、突如としてまた、けたたましいサイレンの音がメイズロンドの街に響き渡る。
「そんな…っ!二回も連続して【次空震】が発生するなんて!? しかもこの鳴り方は出現ランク(不明)ですって!?キュウトさん……っ! 」
サイレンの音に動揺し、辺りを見回していたシスティーナがもう一度視線を救人の方に戻すと、救人の前方20メートル程の位置から、まるで地面を通り抜けるかの様に”涌き”出でた巨大な影があった。
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