ヒーローは異世界でお巡りさんに就職したようです。

五輪茂

文字の大きさ
17 / 22
報告書 1

日報 16

しおりを挟む

 遂に【キルマオー】として完全なる変身を果たし、システィーナの危機に駆け付けた救人!
 【魔王】の力を纏い、牙無き人々を救う正義の【勇者】!
 絶対無敵の僕らの味方!頑張れ!闘え、【キルマオー着る魔王】ーー‼︎(笑)

「喧しい!最後に落とすんじゃねぇよっ‼︎ 」
『喧しいのはお前の方である!いったい誰に向かって文句を言っているのであるか?』
「あ、あれ?爺ちゃん⁉︎ 何で?何処に…⁉︎ 」
『じ、爺ちゃん…⁉︎(ジィ~~~~ン)』

 いきなり話しかけて来たかと思えば、救人の思わぬ「爺ちゃん」の一言に、感激の涙を流しながら黙り込んでしまうキルバイン。

「ちょっと、おい!感激に浸ってないで、いったい何処から話しかけてるんだよ⁉︎」
『無論、【魔装鎧】の中からである!此方の世界に来て魔力が上がったのでな、こうして話しかけることが出来るようになったのだ。これで、いつでも我が孫と話せるようになったのであるな!感動である!』
「うわ…、ウゼぇ………!」
『聞こえているのである!もっと年寄りを敬わんかバカ者!せっかく魔法とか、戦闘のサポートをしてやろうと思っておったのに………。あ~あ~~、お爺ちゃんヤル気無くなっちゃったなぁ~~ 』
「えっ!何っ?俺も使えるの、魔法⁉︎」

 突然聞かされた素敵ワード、「魔法」という単語に食いつく救人。しかし………?

『え~、爺ちゃん「ウザい」とか言われちゃたしなぁ~~、もう帰って寝ちゃおっかなぁ~~ 』

 こういう部分が"ウザい"のであるが、拗ねたお爺ちゃんは気付かない。だが、この一言は孫に対して「お小遣い」並みに効果テキメンであった。

「ま、待て、爺ちゃん⁉︎ わ、わ~嬉しいな~!爺ちゃんの声がこれからいつでも聞けるなんて~!しかも【魔王】だったんだから、その戦闘力もお高いんでしょう~~?そんなに、サポートしてもらえるなんて最高だなぁ~!魔法も使ってみたいなぁ~!きっとの魔法はすごいんだろうなぁ~~!」

 まるで熟練の寿司職人のように、あっさりと見事なまでの手の平返しを披露する救人。更には間髪入れずに何処ぞのテレビショッピングのMCのおば様のような口振りで、キルバインのご機嫌を取り始めた。
 
 正義の味方とはいえ救人もまだ十代、しかも自身が"変身ヒーロー"でもあるせいか、特撮やアニメ、漫画にラノベとヲタなサブカルチャーは大好きなのだ。
 そんな中でも地球人ではなかなか使い手のいない魔法には、存在自体が漫画のような、本来ならあり得ない自分の身の上は棚の上に放り投げ、かなり憧れていたのだった。

『む?ま、まあ、それなり…いや、かなり強かったのであるな!(照れ照れ)そ、そこまで言うのなら仕方ない、我がしっかりとサポートして教えてやるのである‼︎ 』

 いきなりの手の平返し、しかも明らかに感情もこもっていない言葉であるにもかかわらず、コロッと機嫌を直してノリノリになるチョロい爺さん。

 あっさり孫のおべっかに騙される姿は、まるで「チビま○子ちゃん家のと○蔵さん」のようである…。

『だが、それはまた今度であるな 』
「な、何でだよ爺ちゃん⁉︎ 」
はよいのであるか?』
「…アレ?」

 ーーー ブギュゥオオォォォォォオッ‼︎ ーーー

 すっかり魔法に意識を持っていかれていた救人の耳に、バーサーク・ボアの、痛みと怒りに染まった咆哮が轟く。

「あっ!やっべ、忘れてたっ⁉︎ 」

 己の身を厭わず、互いに守り合おうとした少女達と、救人自身が腕を吹き飛ばし、激痛に叫びを上げて転げ回っていたモンスター。

 完全に放置状態である。それでいいのかヒーロー⁉︎と、小一時間ほど問い詰められても文句は言えないだろう。

 バーサーク・ボアは口からダラダラと涎を垂らしながら立ち上がり、ギョロリと辺りを見回すと、そばで飛び跳ねていた二匹のオークをひっ掴み………、

 ーーー バギッ!グチャリ、ボリッゴギンッ! ーーーー喰らった。

 直後にまた叫び声を上げると ーーー ズルんっ!ーーー と、生々しい音を引き摺りながら千切れた腕が再生を果たす。

「うげっ⁉︎ ああいうのは何度見ても気色悪いな~~っ!」
『フン!下等生物の雑魚ではあるが、再生力だけは大したものだ 』
「えっ!アレで雑魚なのか⁉︎」
『うむ。見掛けは強そうだが、その実取り柄は力だけの、当に"見掛け倒し"の雑魚も雑魚。〈雑魚オブ・ザ・イヤー〉を与えてもよいのである!』
「〈雑魚オブ・ザ・イヤー〉ってなんだよ… 」

 変なところで地球に染まっているキルバイン。それくらい雑魚だ、と言いたいのだろうが、〈雑魚オブ・ザ・イヤー年間最優秀雑魚〉では意味が真逆な上に、例えの使い方が完全に間違っていて訳が分からないことになってしまっている。

 チョロくて残念。ますます○も蔵さんである。

「けど爺ちゃん、それってあくまで"爺ちゃん基準"じゃないのか?」
『その通りである!』
「んじゃ、アテになんねぇだろうが!」
『そんなことはないのである。今や、お前の体に流れる我が血脈にも、この世界の魔力は反映し始めているはずであるからして、ヘタをすれば既に変身を解いた生身でも、楽勝で勝てるかもしれないのである 』
「えっ!マジか⁉︎ 」

 ーーー ブゴオォォォォォォォォォォオオッ‼︎ ーーー

「おっと⁉︎ また忘れるところだった!とうっ!」

 の掛け声とともに屋根を蹴り、システィーナ達を守るためにバーサーク・ボアとシスティーナの間に降り立つ救人、いや、キルマオー。

「よく頑張った。もう大丈夫だ 」
「あ、あなたは……?」
「そんなことより…、その娘は無事か?」

 背中を向けたまま、油断無くバーサーク・ボアの動きに注視しつつ、システィーナを庇い、傷つき倒れたミーナの具合を尋ねるキルマオー救人

「あ、はい!骨折をして今は意識は失っていますけど、命に別状はありませ…!あ、危ない…っ⁉︎ 」
「……問題無い 」

 ーーー ブゴオォォォォォオッ‼︎ ーーー

「きゃああああああああああっ⁉︎ 」

 ーーー ズッドオォォォォォォォォンッ‼︎ ーーー

 システィーナと話しをしていたのを隙と見たか、バーサーク・ボアが巨大な拳を振りかぶり、キルマオー救人へと襲い掛かって来たのだ。
 
 大人の頭よりも遥かに巨大な拳が、キルマオーへと叩きつけられる様を見て、システィーナは悲鳴を上げた。
 彼?は、いかにも防御力の高そうな黒い全身鎧ではあったが、あの凶暴な拳の一撃をまともに受けては無事で済むはずがない。
 その姿が先程自分を庇って傷付いたミーナと重なってしまい、凄惨な光景を幻視してしまったシスティーナは、ついその顔を背けてきつく目を閉じた。

「なんだ、こんなモンか?こりゃ確かに〈雑魚オブ・ザ・イヤー〉取れそうだわ」

 だが、その耳に聞こえて来たのは、予想とは正反対の呑気とも取れる呟き。
 ハッとして顔を上げたシスティーナが見たものは、目を閉じる前と変わらずまったく力みもなく自然体で立ちながら、左手一本でバーサーク・ボアの拳を受け止めた漆黒の鎧の背中だった。

 ブゴッ⁉︎ブゴォッ!っと、全力の突進と攻撃を受け止められてしまったことに驚愕、混乱、怒りと様々な感情の唸り声を上げるバーサーク・ボアだったが、それでも拳を押し込もう力任せに筋肉を膨張させるのだが、自分よりもずっと小さな相手であるにもかかわらず、全くビクともしない。

『この雑魚めが…、本来なら野生の勘で我の方が遥かに強いと分かりそうなモノであるが、狂乱バーサークしておってはそんな判断すらも出来んか?つくづく愚かなのである!』

 救人の身の内で、吐き捨てるようにキルバインが呟く。

「まったくだな爺ちゃん。まったく負ける気がしねえよ。………んじゃまあ、そろそろ………反撃だぁっ‼︎ 」







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

処理中です...