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報告書 1
日報 16
しおりを挟む遂に【キルマオー】として完全なる変身を果たし、システィーナの危機に駆け付けた救人!
【魔王】の力を纏い、牙無き人々を救う正義の【勇者】!
絶対無敵の僕らの味方!頑張れ!闘え、【キルマオー】ーー‼︎(笑)
「喧しい!最後に落とすんじゃねぇよっ‼︎ 」
『喧しいのはお前の方である!いったい誰に向かって文句を言っているのであるか?』
「あ、あれ?爺ちゃん⁉︎ 何で?何処に…⁉︎ 」
『じ、爺ちゃん…⁉︎(ジィ~~~~ン)』
いきなり話しかけて来たかと思えば、救人の思わぬ「爺ちゃん」の一言に、感激の涙を流しながら黙り込んでしまうキルバイン。
「ちょっと、おい!感激に浸ってないで、いったい何処から話しかけてるんだよ⁉︎」
『無論、【魔装鎧】の中からである!此方の世界に来て魔力が上がったのでな、こうして話しかけることが出来るようになったのだ。これで、いつでも我が孫と話せるようになったのであるな!感動である!』
「うわ…、ウゼぇ………!」
『聞こえているのである!もっと年寄りを敬わんかバカ者!せっかく魔法とか、戦闘のサポートをしてやろうと思っておったのに………。あ~あ~~、お爺ちゃんヤル気無くなっちゃったなぁ~~ 』
「えっ!何っ?俺も使えるの、魔法⁉︎」
突然聞かされた素敵ワード、「魔法」という単語に食いつく救人。しかし………?
『え~、爺ちゃん「ウザい」とか言われちゃたしなぁ~~、もう帰って寝ちゃおっかなぁ~~ 』
こういう部分が"ウザい"のであるが、拗ねたお爺ちゃんは気付かない。だが、この一言は孫に対して「お小遣い」並みに効果テキメンであった。
「ま、待て、爺ちゃん⁉︎ わ、わ~嬉しいな~!爺ちゃんの声がこれからいつでも聞けるなんて~!しかも【魔王】だったんだから、その戦闘力もお高いんでしょう~~?そんなお爺ちゃんに、サポートしてもらえるなんて最高だなぁ~!魔法も使ってみたいなぁ~!きっとお爺ちゃんの魔法はすごいんだろうなぁ~~!」
まるで熟練の寿司職人のように、あっさりと見事なまでの手の平返しを披露する救人。更には間髪入れずに何処ぞのテレビショッピングのMCのおば様のような口振りで、キルバインのご機嫌を取り始めた。
正義の味方とはいえ救人もまだ十代、しかも自身が"変身ヒーロー"でもあるせいか、特撮やアニメ、漫画にラノベとヲタなサブカルチャーは大好きなのだ。
そんな中でも地球人ではなかなか使い手のいない魔法には、存在自体が漫画のような、本来ならあり得ない自分の身の上は棚の上に放り投げ、かなり憧れていたのだった。
『む?ま、まあ、それなり…いや、かなり強かったのであるな!(照れ照れ)そ、そこまで言うのなら仕方ない、我がしっかりとサポートして教えてやるのである‼︎ 』
いきなりの手の平返し、しかも明らかに感情もこもっていない言葉であるにもかかわらず、コロッと機嫌を直してノリノリになるチョロい爺さん。
あっさり孫のおべっかに騙される姿は、まるで「チビま○子ちゃん家のと○蔵さん」のようである…。
『だが、それはまた今度であるな 』
「な、何でだよ爺ちゃん⁉︎ 」
『アレはよいのであるか?』
「…アレ?」
ーーー ブギュゥオオォォォォォオッ‼︎ ーーー
すっかり魔法に意識を持っていかれていた救人の耳に、バーサーク・ボアの、痛みと怒りに染まった咆哮が轟く。
「あっ!やっべ、忘れてたっ⁉︎ 」
己の身を厭わず、互いに守り合おうとした少女達と、救人自身が腕を吹き飛ばし、激痛に叫びを上げて転げ回っていたモンスター。
完全に放置状態である。それでいいのかヒーロー⁉︎と、小一時間ほど問い詰められても文句は言えないだろう。
バーサーク・ボアは口からダラダラと涎を垂らしながら立ち上がり、ギョロリと辺りを見回すと、そばで飛び跳ねていた二匹のオークをひっ掴み………、
ーーー バギッ!グチャリ、ボリッゴギンッ! ーーーー喰らった。
直後にまた叫び声を上げると ーーー ズルんっ!ーーー と、生々しい音を引き摺りながら千切れた腕が再生を果たす。
「うげっ⁉︎ ああいうのは何度見ても気色悪いな~~っ!」
『フン!下等生物の雑魚ではあるが、再生力だけは大したものだ 』
「えっ!アレで雑魚なのか⁉︎」
『うむ。見掛けは強そうだが、その実取り柄は力だけの、当に"見掛け倒し"の雑魚も雑魚。〈雑魚オブ・ザ・イヤー〉を与えてもよいのである!』
「〈雑魚オブ・ザ・イヤー〉ってなんだよ… 」
変なところで地球に染まっているキルバイン。それくらい雑魚だ、と言いたいのだろうが、〈雑魚オブ・ザ・イヤー〉では意味が真逆な上に、例えの使い方が完全に間違っていて訳が分からないことになってしまっている。
チョロくて残念。ますます○も蔵さんである。
「けど爺ちゃん、それってあくまで"爺ちゃん基準"じゃないのか?」
『その通りである!』
「んじゃ、アテになんねぇだろうが!」
『そんなことはないのである。今や、お前の体に流れる我が血脈にも、この世界の魔力は反映し始めているはずであるからして、ヘタをすれば既に変身を解いた生身でも、楽勝で勝てるかもしれないのである 』
「えっ!マジか⁉︎ 」
ーーー ブゴオォォォォォォォォォォオオッ‼︎ ーーー
「おっと⁉︎ また忘れるところだった!とうっ!」
御馴染みの掛け声とともに屋根を蹴り、システィーナ達を守るためにバーサーク・ボアとシスティーナの間に降り立つ救人、いや、キルマオー。
「よく頑張った。もう大丈夫だ 」
「あ、あなたは……?」
「そんなことより…、その娘は無事か?」
背中を向けたまま、油断無くバーサーク・ボアの動きに注視しつつ、システィーナを庇い、傷つき倒れたミーナの具合を尋ねるキルマオー。
「あ、はい!骨折をして今は意識は失っていますけど、命に別状はありませ…!あ、危ない…っ⁉︎ 」
「……問題無い 」
ーーー ブゴオォォォォォオッ‼︎ ーーー
「きゃああああああああああっ⁉︎ 」
ーーー ズッドオォォォォォォォォンッ‼︎ ーーー
システィーナと話しをしていたのを隙と見たか、バーサーク・ボアが巨大な拳を振りかぶり、キルマオーへと襲い掛かって来たのだ。
大人の頭よりも遥かに巨大な拳が、キルマオーへと叩きつけられる様を見て、システィーナは悲鳴を上げた。
彼?は、いかにも防御力の高そうな黒い全身鎧ではあったが、あの凶暴な拳の一撃をまともに受けては無事で済むはずがない。
その姿が先程自分を庇って傷付いたミーナと重なってしまい、凄惨な光景を幻視してしまったシスティーナは、ついその顔を背けてきつく目を閉じた。
「なんだ、こんなモンか?こりゃ確かに〈雑魚オブ・ザ・イヤー〉取れそうだわ」
だが、その耳に聞こえて来たのは、予想とは正反対の呑気とも取れる呟き。
ハッとして顔を上げたシスティーナが見たものは、目を閉じる前と変わらずまったく力みもなく自然体で立ちながら、左手一本でバーサーク・ボアの拳を受け止めた漆黒の鎧の背中だった。
ブゴッ⁉︎ブゴォッ!っと、全力の突進と攻撃を受け止められてしまったことに驚愕、混乱、怒りと様々な感情の唸り声を上げるバーサーク・ボアだったが、それでも拳を押し込もう力任せに筋肉を膨張させるのだが、自分よりもずっと小さな相手であるにもかかわらず、全くビクともしない。
『この雑魚めが…、本来なら野生の勘で我の方が遥かに強いと分かりそうなモノであるが、狂乱しておってはそんな判断すらも出来んか?つくづく愚かなのである!』
救人の身の内で、吐き捨てるようにキルバインが呟く。
「まったくだな爺ちゃん。まったく負ける気がしねえよ。………んじゃまあ、そろそろ………反撃だぁっ‼︎ 」
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