School-Defense

ばっちゃん〈O.B.A おーば〉

文字の大きさ
4 / 7
1年生4月

第四話 桜葉遊園地攻防戦[後編]

しおりを挟む
 会議が終わり、校長が乗ったチヌークは途中N隊を回収し、第二駐車場に向かって行った。
「警報がうるさいのじゃが、なんとかできんのかのぉ?」
校長はチヌークの川本に言った。どうやら、電探でオスプレイを探知しているため、警報がずっとなっているようだ。
「今はそのようなことを言っている場合ではないです!」
川本はとても慌てていた。もう間じかにオスプレイが迫っているからである。チヌークのスピードも最高速度に達していた。
チヌークはなんとか無事に第二駐車場に着陸することができた。その横にはコブラと大型トラックが待っていた。N隊は待っていた残りの補給部隊と合流し、生徒が乗る大型バスのもとへ急いで急行した。校長は手配していたタクシーの乗り込もうとした。
「おぉ!そうじゃった。留田二曹、ちょっと頼みがあるんじゃが、よいか?」
操縦席から降りた川本は大型トラックから降ろされた物資をチヌークに運んでいた。
「なんでしょう?」
「先程から気になっておったじゃろう、そこの箱。」
校長が指さした箱はなにやらとても長く、表面には円の中に「秘」と書かれていた丸印があり、その下には「校長の許可なく使用・開封は禁ず」と書かれてあった箱である。
「確かに気にはなっていました。一体あれはなにが入っているのですか?」
川本はつい3時間前に「開封は禁ず」と書かれていたのにも関わらず開けようとしていたら、盛田に見つかり、こっぴどく叱られたのであった。人間誰しも、「開封は禁ず」と書かれていたら開けてみたくなるものである。 
「そうじゃろ。気になっていたのじゃろ。開けても構わんよ。」
校長はそう言った。
「え?ほんとにいいんですか?」
川本は今まさに、子供がお菓子をもらった感じで、「いいの?本当にいいの?あとで返してと言っても返さないよ。」みたいな感じであった。
「ああ。いいとも。盛田隊長から君がこの箱をとても気になっていたと聞いて、開ける許可をくれと言われたからのぉ。」
校長はニヤニヤしながら言った。川本は顔を少し赤くしながら、箱を開けた。
「こ、これは…!?」
「91式携帯地対空誘導弾。世間では携SAMやハンドアローと呼ばれている誘導弾じゃ。」
91式携帯地対空誘導弾。その名の通りヘリや戦闘機を攻撃する誘導弾である。
「これをどこで…?」
川本が驚きを隠せず、校長に聞いた。それもそのはずである。91式携帯地対空誘導弾は桜葉高校防衛部にまだ配備されていないからである。
「いやー、実はわしの部屋で隠しておったのじゃ。」
わしの部屋というのは無論校長室のことである。
「え!?それはちょっとまずいと思いますけど…!」
日本の法律に銃砲刀剣類所持等取締法がある。簡単に言うとこの法律は「危ない武器を持つと逮捕しますよー」というものである。川本はこの法律に反すると思ったのだ。防衛部及び戦闘部はこの法律が適用されていない。なので、武器をもってもなにも罰せられることはないのだ。(この適用は戦闘服を着ている時のみ)だが、校長は紛れもなく一般人である。そんな校長が91式携帯地対空誘導弾持っているとなると法律上、警察は見逃せないため、校長が逮捕される可能性があるのだ。
「実はここだけの話。この91式携帯地対空誘導弾は一様、防衛部の重火器として取り扱うということを教育委員会に言ったのじゃ。」
校長は小声で川本に言った。
「つまり、問題になると後々面倒なことになるから、防衛部の所属品としておけば、後で銃砲刀剣類所持等取締法違反と指摘されても問題ないから、これを利用して自分の部屋に飾りたかったのでは。」
川本は反論した。
「話は最後まで聞きたまえ。確かに川本二等陸曹が言ったように最初はそれをしようと思った。」
川本は心の中で「やっぱし。」と言おうとしていたが、それを押しつぶした。
「ところで防衛部にはある種類の兵器がないが、一体それはなにかわかるかな?」
いきなりの校長の質問に戸惑ったが、川本はよく考え、答えた。
「それはきっと、自走砲ですか?」
「たしかに自走砲はないが、我々の活動拠点は小さいため配備することは想定していない。それに隊員数も少ないからな。」
自走砲があれば敵の本拠地を一気に叩くことができるのだが、そのようなことは法律によって規制されている為、自走砲をもっても使うときがないということなのでどこの高校でも基本持っていない。校長は話を続けた。
「答えは対空火器だ。」
「対空火器…!」
そう、これが桜葉高校防衛部の唯一の欠点である。5.56mmの89式小銃や機関銃MINIMIを飛んでいる飛行機やヘリに撃っても届くはずがない。もし敵が対空火器がないことを知っていれば簡単にその地点を爆撃、空挺降下、ヘリボーンがたやすいだろう。なぜこうなったのか?それは予算不足であった。桜葉高校防衛部が創設した理由は読者もご存知の通り、周りの高校からの侵略・脅威の抑止力の足しに少しでもなるようにと思い創設した。だが、それは逆効果で、逆に周りから恐れられるようになり、帝国第二高校との戦争状態になった。まさか、戦争状態になるとは思わなかったので、急遽、戦車やヘリなどの高い車両を購入したため、対空兵器を買う予算がなかった。
「つまり、校長はご自分のポケットマネーでご購入したと?」
「そういうことだ。そうしなければ無理だからなぁ…」
「では早速、それをお預かりします。盛田隊長の元へ無事にお渡しします。」
川本は校長から91式携帯地対空誘導弾を受けっとった。とても重い。
「頼んだぞ。これがないと我が生徒は奪われてしまう。」
「了解!」
川本は敬礼をし、校長が見送る中、チヌークで戦闘地域に向かった。

「隊長、もしオスプレイが来たらどう対処するんですか?」
大声で軽装甲機動車の銃座についている盛田に運転中の橋本が言った。
「そいつは考えていなかったなー。MINIMIでオスプレイのプロペラでも撃って、エンジンを停止させてみるか?」
盛田も橋本に負けないくらいの声で答えた。
「それはどう考えても無理でしょう。なにしろ、射程も届かない上、89じゃ、火力が足りないでしょ。」
そういいながら、橋本はLAVを停車させた。
「うーむ。そうだな…」
盛田は考えていると、車内から「ゴトッ」という音がした。何の音か気になって車内を見ると、後部座席の足元に110mm個人携帯対戦車弾(LAM)がおいてあった。盛田はそれを拾って銃座に再びついた。
「LAMで当てれるんですか?ただでさえLAMはスピードが遅いので無理ですよ。」
と、橋本が言った。LAMは通常、その名の通り、戦車に当てるものなので威力はあるが、スピードがない為に当てることが不可能といっても過言ではないのだ。
「たとえそれが絶対に不可能と言われても俺はやるぞ。防衛部隊長として最後まで諦めない!」
そう言って、盛田は安全装置をSからFに変えて、プローブを伸ばし、発射の姿勢をとった。すると、上空にオスプレイではないプロペラの音がした。
「隊長!これを受け取ってください!」
そう言ったのは川本であった。後ろのカーゴドアからパラシュートがくくりつけられていた箱が落とされた。チヌークはオスプレイの銃撃から退避をする為にE隊のいる中央の広場の方に向かい着陸した。盛田は軽装甲機動車から出て、チヌークから落とされた箱を開けた。
「こ、これは…」
箱を開けると先程、川本が校長から受けとった91式携帯地対空誘導弾が入っていた。盛田はLAMを後部座席に置いた。
「これならいける。」
そう盛田は言うと、91式携帯地対空誘導弾を構えた。オスプレイはもうすぐそこに迫ってきている。
「隊長、一機でもいいので撃ち落としてください。生徒を守ってください。」
橋本はそう言うと、盛田の右手にそっとかぶせた。盛田は少し赤くなったが、再度集中し直した。91式携帯地対空誘導弾の射程圏内に入った。盛田は少しためらった。向こうにも家族がいることを思い出しながら、これは戦争であるということも再度認識し、目をつむって引き金を引いた。

 14時27分、発射された91式携帯地対空誘導弾は前方にいる1機を撃墜させた。翼の破片などがパラパラと落ちてくる。胴体が地面に落ちると、爆発を起こした。少しの時間、盛田と橋本、そして残り2機のオスプレイに乗っている帝国第二高校戦闘部員も唖然としていた。盛田はハッと我に返ると、軽装甲機動車の銃座に飛び乗り、5.56mm機関銃MINIMIを構えて、残りのオスプレイに向けて撃った。
「真里亜、生徒会と連絡をとるから代わってくれ。」
届くはずのないオスプレイを撃ちながら盛田は言った。
「りょ、了解。」
盛田は橋本と代わると、無線機を軽装甲機動車から取り出した。
頼む、つながってくれ…盛田は敵からの妨害電波を懸念しながら、マイクをとった。
「こちら、防衛部隊長盛田。現在の生徒の集合率はどうか?」
『…』
だめか…と思っていると、
『こちら、生徒会会長清水、現在の集合率は95%。残り20名が来ておりません。どうぞ。』
「現在、我々防衛部は帝国第二高校戦闘部の輸送機と交戦中。これ以上は危険なので直ちに退避してください。」
『しかし、まだ残り20名がこの園内にいます。』
「あとは、我々が救出します。護衛を付けますので生徒会は全員退避してください。お願いします。」
現在、正門にはN隊と大型トラックと74式戦車と特大型運搬車と大型バス1台が待機している。残り5台のバスと補給部隊は先に桜葉高校に向かっていた。
『…了解しました。後はお任せします。』
盛田は通信を終えると、もう一度無線機をとった。気が付けば、橋本のおかげで、二機のオスプレイはMINIMIの弾丸の雨から退避する為に高度あげ、北の方に逃れていった。
「こちら盛田。N隊応答せよ。」
『こちらN隊。感度は良好。送れ。』
「先程の連絡のやり取りを聞いていたと思われるが、N隊は生徒会及び一般生徒が乗っているバスを護衛しつつ、帰投せよ。送れ。」
『了解。護衛しつつ、帰投する。終わり。』
「全部隊に告ぐ。これより、作戦の変更をする。S隊はオスプレイからの攻撃の危険性があるため、チヌークにより回収は出来ない。したがって、園外に出るまでだが、E隊の護衛の下、帰投して頂きたい。E隊はS隊の護衛の為に、急ぎS隊を園外まで護衛されたし。途中要救助者がいた場合はS隊の護衛後、救助し、チヌークに乗せよ。74と特大型運搬車は中央広場に集合せよ。残りは撤収されたし。終わり。」
ついに桜葉高校防衛部は残りの生徒20名の救出と撤収を決定したのだった。

一方、その頃、帝国第二高校戦闘部第二空挺団はオスプレイ二機が余裕で停めれる近くの公園に退避していた。
「隊長、これからどうしますか?オスプレイ1機が撃墜されましたが…」
一人の隊員が悲しい感じで言った。それもそのはずである。この第二空挺団は初の戦死者を出したからである。親しい友人が目の前で落ちているのを見ると、なおさらのことである。
「うん。そうだな。さて、どうするか…」
隊長の堂本は平常心を装いながら、実は大いに焦っていた。初の実戦である桜葉高校防衛部が撃てるはずがないと予測していたからである。今は条約を結び、友好関係を築いているが、約5年前、帝国第二高校も近隣の学校と戦っていたのである。初の実戦では誰もが引き金を引くことができずにいて、多数の死傷者が出て何もしないまま撤収という最悪の事態が起きたことがある。それと同様で桜葉高校防衛部も撃ってこないだろうと推測していたのだが、正反対であった。
堂本は戦争は教科書通りにいかないということを認識し、第二空挺団員が整列している中、前に立って話した。
「みなもご存知であるが、オスプレイ3番機が撃墜されてしまった。だが、俺たちはまだ全滅したわけではない。今から桜葉高校生徒を1人でも多く回収し、そして死んだ仲間を回収する為に空挺降下を開始する。全員搭乗開始!」
帝国第二高校戦闘部第二空挺団の隊員は怒りと悲しみを抱いて、オスプレイへ再度搭乗を開始した。堂本は携帯を取り出し、電話の向こうと話しをしていた。
「あ、もしもし。第二空挺団の堂本です。…はい、こちらはいつでも出撃可能です。…わかりました。…はい…。では後ほど。」

 場所を桜葉遊園地に戻す。桜葉遊園地ではE隊の護衛のもと、S隊が園外に脱出することに成功した。途中、74式戦車と特大型運搬車と合流したE隊はチヌークへ戻る途中、3名の救助者を発見、保護し、チヌークに乗せた。一方、盛田と橋本は、急いでチヌークへ戻っている頃であった。
「隊長、どうやら、E隊が一般生徒3名を保護したそうです。」
助手席に座って、無線機に応答している橋本が言った。
「そうだな。だが、あと17名だな…一体どこにいるんだろうか…?」
運転をしながら、盛田が言った。
「もしかすると、91式携帯地対空誘導弾やMINIMIを撃ったから隠れたのでしょうか?」
弾道ミサイルなどが付近に落下した際は身を低くして、首ごと頭が吹っ飛ぶの防ぐため頭を隠さないと、国民保護ポータルサイトには記載されている。それと同じく、桜葉高校の生徒には急な爆発音がした際は、身を低くしつつ、爆発音があった場所から1歩でも遠くに逃げるようにと、徹底している。だが、今回は極少数に、オスプレイが撃墜した時の光景と音を見たり、聞いたりしたのがトラウマとなり、近くの建物の机の下に隠れたりする人がいたらしい。つまり、引きこもり状態なったために、どこに隠れているのか不明なため、救出することが困難となってしまったのである。
盛田は右手でハンドルを握りながら、左手で無線機をとった。
「全部隊に告ぐ、これより、要救助者の捜索にあたる。各員、目を光らせて捜索にあたれ。なお、敵オスプレイが再度来る可能性があるため、時間との勝負である。全員見つけるぞ。」
チヌークで待機していたN隊の軽装甲機動車がこの無線を聞くなり、動き出した。コブラも危険を承知で動き出した。残りの隊員もチヌークでゆっくりしているわけにもいかず、遠いところはLAVとコブラに任せ、チヌークの付近を捜索した。盛田と橋本はチヌークに着くと、その軽装甲機動車をチヌークで待機させていた隊員に渡し、捜索を命じた。盛田はチヌーク内で疲れきって座っている男子生徒2名と女子生徒1名に敬礼をして、話し始めた。
「このような事態になってしまい申し訳ない。自分は桜葉高校防衛部隊長盛田十三です。」
軽く自己紹介をすると、3人の生徒は疲れている目をこすって、盛田の話を聞くことにした。盛田はふとネクタイを見た。ネクタイには学年がすぐに分かるようにと各学年の色が決められいる。今年は1年生が青、2年生が赤、3年生が緑である。その色で学年を判別できるため、例え問題行動があっても、すぐにどの学年なのか簡単に分かるのである。ちなみに桜葉高校の制服は春夏秋冬男女共にブレザーである。防衛部の戦闘服にも腕章みたいなもので、わかりやすくしようという話がでたのだが、盛田曰く、「歳が上だろうが、下だろうが、この防衛部には関係がない。例え、1年生が3年生より階級が上でも、階級がものを言うため、指示には従って貰わないといけない。なので、そのようなものは必要ではない。」ということらしい。話を戻す。盛田は3人の生徒のネクタイを見ると、色が青であった。自分たちの制服と同じ色である。
「他の17名がどこにいるのか知らない?」
盛田は3人に聞いたが、どうも盛田が怖いと思われて答えずにそわそわしていた。このままではらちが明かないということで、無線で74式戦車の運転手である。星野を呼んだ。無線で呼ばれた星野はチヌーク内に入り、事情を盛田から聞いて、3人の元に寄った。
「どう?なにか些細な情報でもいいんだけど?」
部内一かわいいと言われている星野なら大丈夫だろうと盛田は思った。3人は顔を合わせ、頷き、星野に話し始めた。盛田はここは星野に任せて、悲しみを抱きながら、チヌークを出た。チヌークを出ると、橋本と谷村と川本の女子3人でなにか話していた。
「やっぱりぃ、軽装甲機動車は退却させたほうがいいのぉ?」
谷村が川本に言った。
「チヌークには2台はいるけど、後々のことを考えたら、2台ともなるべく撤収させるのがベストや。」
「それなら、軽装甲機動車が戻り次第、要救助者を乗せて、退却させましょ。」
橋本がそう言うと、話が終わったのを察して、盛田が入って来た。
「話中すまないが、みなに話したいことがある。実は先に撤収させた部隊の隊員にお願いして、FFOSを飛ばしてもらった。すると、この遊園地近くの大きな公園に待機しているという情報が入った。」
FFOSというのは遠隔操縦観測システムと言われ、いわゆる無人偵察機である。本当ならば地上で操作するための機械、車両6台ほど必要なのだが、そのような費用、人材が足りないため、家庭用の衛星放送受信用のパラボラアンテナと同じくらいの大きさをパソコンと接続して衛星を通して、つないでいる。今回は必要ないだろうということで、この桜葉遊園地警備任務には使用されなかった。
「ここから何キロですか?」
橋本が聞いた。
「ざっと、10キロぐらいだ。」
盛田が言った途端、無線機から声がした。
『こちら、LAV1。要救助者3名を新たに保護した。これより、チヌークへ一度帰投する。送れ。』
「了解。受け入れ準備をしておく。終わり。」
盛田は無線機をとり、話した。
「ほな、うちは受け入れの準備をするからチヌークに戻るわ。」
川本はそう言うと、チヌークの方に歩いていった。
(あと、14人か…一体どこにいるのだろうか…?)
そう思っていると、チヌークからドタバタと星野が降りてきた。盛田のほうに向かっている途中、からの燃料缶につまづき転んだ。星野とすれ違いになった川本に起き上がらせてもらい、砂ぼこりが付着した戦闘服を両手ではたいて、再び走って来た。どじっこである。
「隊長、チヌークに乗っている要救助者3名から情報を得ることができました。」
息を切らしながら星野が言った。
「それでどういう内容だった?」
盛田が質問した。
「残りの14人はどうやら救護室に隠れているそうです。14人の内、5人は転んでかすり傷による軽傷。1人は元々骨折していたらしく痛みがひどくなったということで、救護室にいるらしいです。」
「全員が隠れているということか…位置は?」
盛田はそう言いながら、右の脇に挟んでいた丸まった遊園地の地図を机に広げた。
「えーっと、ここです。」
星野は東側にある観覧車の近くの救護室を指した。
「あのー、さっきから思ったんだけどー。」
谷村が遠慮がちに言ってきた。
「ん?どうした?」
盛田が聞いた。谷村はこう言った。
「なんでその3人はさ、救護室に14人いることを知っていたのかな?」
「助けを求めるために私たちを探していたとか?」
「そうなのかな…?」
谷村はあの3人に関して、疑問があった。彼女の脳内はあの3人は本当に我が桜葉高校の生徒なのか?という問いであった。そして、この問いを解決する為の答えがこれだ。
「隊長、意見具申していい?」
「おう、いいぞ。3人寄れば饅頭・・の知恵というからな。」
「隊長、それをいうなら三人寄れば文殊・・の知恵です。」
橋本が盛田にツッコミをし、盛田の国語力が不足していることを暴露され、4人は谷村が改まった感じで、口を開いた。
「あの3人の身体検査の許可をお願いします。」
先程まで笑っていた盛田は真面目な顔になって言った。
「やはり、あの3人が気になるか?」
「やっぱ、隊長も気になっていた?」
「ああ、どうもさっきから気になっていた。」
「じゃあ、許可ってことでいい?」
「ああ、いいとも。でもちょっとまってくれ。」
盛田は谷村に3人の身体検査を許可した後、橋本に対して手招きをして呼び寄せた。
「お呼びですか隊長。」
盛田は橋本にあの3人に関しての事情を伝えた。
「なるほど、それで私はなにをすればいいんですか?」
「谷村がチヌークの外で身体検査をするので、その護衛をしてほしい。」
「わかりました。」
橋本はそう言うと、89式の安全装置を“ア”から“レ”に変えた。
「隊長、もう一つお願いが…」
9mm拳銃のスライドを引きながら谷村が言った。
「なにかな?」
「女子のほうは出来ますけど、男子のほうはちょっと…」
異性同士が身体検査をするとなると、後々、問題になってしまう。男子が女子に対して身体検査をすると、セクハラ等で訴えられると面倒である。逆に女子が男子に対して身体検査を行うと、訴えられるということはないとは思うが、また違う問題がでてしまうため、よろしくないのである。盛田はそのことを考えてはいなかった。
「…うむ。確かにそうだな…。よし、そこにいる2人を使ってくれ。」
と、盛田は言うと、物資の片づけをしていた二人の男子の防衛部員を指した。2人は盛田から指を指されたことに気がつき、近づいてきた。盛田は状況を説明した。2人とも一等陸士である。
「了解いたしました。早速、準備をしてまいります。」
2人は敬礼をすると、銃をとりにその場を去った。
「そういえば、隊長はどうするの?」
橋本が尋ねてきた。
「俺はこいつでもしものことがあった時のために準備をするんだよ。」
盛田は一丁のスナイパーライフルを見せた。
「それは…」
「対人狙撃銃M24だ。これならなにかあっても大丈夫だろ?」
と盛田が言い、M24を見せつけた。部内で一番の射撃の名手は星野であるが、星野はスナイパーライフルを使いこなせない。しかし、星野には劣るが射撃の名手である盛田はスナイパーライフルをうまく使いこなし、命中率も非常に高い。つまり、89式小銃のようなアサルトライフルは星野が上でも、M24のようなスナイパーライフルは盛田の方が上出来なのだ。盛田曰く、「スコープがあれば大体は当たる」ということで、彼の89式小銃だけ特別に光学照準器、いわゆるスコープを取り付けてある。盛田がM24の話をしていると、二人の男子部員が装備を整えてきた。
「よし、身体検査を早速開始してくれ。くれぐれも気を付けろよ。俺も持ち場に行く。」
「了解。」
敬礼して谷村と橋本を含む四人はチヌークの外の簡易テントで座っている3人のほうに向かった。盛田はM24が入っているガンケースを持って狙撃ポイントに向かう途中、星野に会い、LAV1に乗っている要救助者3名がまもなく到着するということでその3人の身体検査を頼んだ。盛田は茂みの後ろに隠れ、M24の準備をし、スコープをのぞき、構えた。
『大変申し訳ありませんが、こちらにも安全上の理由でチヌークに乗り込んで、飛ぶ際は身体検査を受けていただく必要があるので、今から身体検査を行います。』
通信機の接続されてあったイヤホンから谷村の声が聞こえた。盛田の指示により、谷村の無線機をONにしたままにしてもらっている。
『はい、わかりました。』
1人の女子が言った。
“意外に素直だな…何かといちゃもんをつけて拒否をすると思ったのだがな…それより、あの顔、どっかで見たような…”
盛田は引き金を一度離したが、もう一度、引き金に手をかけた。“もし、あの3人が敵のスパイならどうする?”盛田にはそれしか頭になかった。引き金を引くだけで一人の命が消える。さっき撃った91式携帯地対空誘導弾は顔が見えなかった。だが、今回は見えている状態で撃つ。殺す瞬間が直に見えるということである。
“俺にはあいつらの人生を壊す権利があるのか?”
盛田はそう思いながらスコープを再度のぞいた。身体検査は順調に進んでいた。だが…
「これはなんですか?」
1人の男子部員が身体検査を受けていた男子に聞いた。
「これか?これはな、こうはめてこうするんだよ。」
そう言った途端、場が静まり、一人の男が倒れた。倒れたのは我が防衛部の男子部員であった。一気に緊迫した状態であった。殴った生徒はメリケンサックを装着していた。倒された男子部員はメリケンサックを知らなかったのであろう。知らないのも無理もない。
「下がれ下がれ!」
谷村と無事であった男子部員は倒れた男子部員を引きずって、衛生班に回した。橋本は89式小銃を構えた。盛田も同様、茂みの裏でM24を再度構え直した。
「あなたたちは一体何者?」
銃を構えつつ、橋本が言った。
「我々は帝国第二高校戦闘部員特殊任務隊だ。」
盛田と谷村の予感は的中した。やはり、この3人は“敵”であった。イヤホンから盛田の声がした。盛田はこうなるだろうと予測していたため、身体検査をする隊員全員に無線機とイヤホンを接続させるように命じていた。
『そいつらを無駄に挑発させるなよ…?そいつらの彼女がもっているマグナムで頭が吹っ飛ぶぞ。』
盛田に言われ、全員、冷や汗をかいていた。特殊任務隊3人の内、男一人はメリケンサックを、もう一人はワルサーP99と呼ばれるハンドガンだ。そして問題の彼女はS&W M500と呼ばれる回転式拳銃、いわゆるリボルバー銃だ。その銃は世界最強の威力をもつ弾を撃つことができる銃であった。
『一様説明しておくが、彼らはただの三人組じゃないぞ。さっき彼女がご丁寧にあいさつしていたが、彼女らはどんな過酷な任務を遂行すると呼ばれる特殊任務隊だ。いわゆる特殊部隊みたいな組織だ。そいつらの説明はまた今度話すが、とにかくお前たちでは対処は不可能だ。橋本、目的はなにか?とかなんでもいいから話しかけて彼女らの警戒心を緩めるんだ。その後、俺が対処する。』
橋本は盛田の命令を聞き、女に話しかけた。
「あなたたちは何が目的でここに来たの?」
「私たちはあなたたちを潰すためにここに来たの。」
「私たちを潰しに…?」
「そうよ。あなたたち、桜葉高校防衛部はここの地域の軍事バランスを崩したのよ。その為、私たちは帝国第二高校校長からの命令により、あなたたちを潰し、桜葉高校を我が帝国第二高校のものにしようと考えたわけよ。」
「!」
その場にいた全員に緊張が走った。
「け、けど、あなたたちが私たちを潰すために来るのなら重火器を持って戦ったほうが簡単じゃないの?なぜ、わざわざこのような面倒なことにしたわけ?」
「…………」
彼女は黙り込んでしまった。このまま、黙り込んだ状態が続くわけにもいかないので、橋本は質問を変えた。
「では、質問を変えます。あなたがたの今回の任務は一体なに?」
「それは先程説明したばかりじゃ――」
橋本は左手を広げて、待ったという感じのポーズをとり、言った。
「確かにあなたたちの任務は私たちを潰すこと。けど、真の狙いは桜葉高校の生徒を保護する、悪く言えば拉致することじゃないの?」
一気に場が静かになり、風の強さが強くなった。
「…フッフッフ。ハーッハッハッハ!」
特殊任務隊の女が不気味と言わん限りの笑いが広がった。まるで、悪い魔女のようだ。
「あなた面白いわね。そうよ、私たちの真の狙いは桜葉高校の生徒の保護よ。けどね、今更、あなたたちが保護しようとしてももう遅いわ。」
「一体どういうこと?」
橋本は特殊任務隊の女に聞いたが、女はそれを無視した。
「もう任務達成したことだし、私たちはこれで失礼させていただくわ。けど、最後に一つ。私たち、帝国第二高校はいつでもあなたがたを潰そうと思えば潰すことができます。それだけを覚えておきなさい。」
女とその手下は煙玉を用いた。その場にいた防衛部員は煙玉の煙を吸ってしまい、咳をしていた。煙が晴れて、視界がよくなったが、そこには特殊任務隊3人の姿は当然の如くなかった。
「あいつらはやはり去っていったか…」
「隊長!」
全員が息ピッタリで言った。すると、橋本が言った。
「隊長、なぜあの3人を撃たなかったんですか?」
盛田が答えた。
「本当は俺も撃とうとは思ったんだが、あの女が知り合いだったから撃てなかった。」
「な、なんだって!?」
その場にいた全員が驚いた。
「詳しいことは無事に帰ってから説明する。それより、今の状況を軽く説明する。」
全員が驚いている中、説明が始まった。
「橋本、さっき、特殊任務隊の女がなにか重要なことを言っていただろう?」
「はい、隊長と特殊任務隊の女はお友達と。」
「…それじゃないだろう。」
橋本は未だに驚きの余韻が残っているようだ。
「い、いえ、確か、『今更、あなたたちが保護しようとしてももう遅いわ。』と、言っていたと思います。」
「その通り。俺たちが探している要救助者は救護室にいない可能性がある。」
「そんな…」
「だが、心配するな。それはたかが可能性の問題だ。あいつらが嘘を言っているかもしれない。そこで俺たちは要救助者が救護室にまだいるというところにかけてみたい。」
すると、やっと谷村が口を開いた。
「でも、隊長、あの女が嘘をついているとは思わないんですか?」
「確かに嘘はついている可能性はあるかもしれない。だが、俺は思うんだ。ここでじっとしていても何にも始まらないとな。」
盛田はそう言いながら、無線機をとった。
「全部隊に告ぐ、これより、要救助者及び桜葉高校一般生徒の救出にあたる。全部隊、桜葉遊園地救護室周辺に集合せよ。なお、LAV2と特大型運搬車はすべての物資を積み撤退せよ。以上だ。」

 その頃、桜葉遊園地の救護室では盛田の言う通り、要救助者14名がいたが、邪魔者もいたのであった。
「隊長、我々はいつ撤収できるのですか?そろそろ疲れてきましたよー。」
「もう少しがんばりなさい。あと少しで第二空挺団が来るのですから。」
さっき橋本たちの前に現れた特殊任務隊3人と第三偵察隊5人が救護室の防衛をしていた。室内に特殊任務隊3人と第三偵察隊3人。あと2人は外で見張りをしていた。突如、キャタピラの音がし、激しい轟音がした。「何事か!?」と女は外に向かって叫ぶが、外の見張りの返事がない。救護室の扉も壊されている。がれき化とした扉の隙間から女は見た。なんと、外の見張りは倒れていた。その奥に逆光で見えにくくなっているが、砲台らしいものが見えた。桜葉高校防衛部だ。
「隊長、救護室の中の方は大丈夫なんでしょうか?いくら、74の砲弾の火薬量を減らしたと言いましても死傷者がでてませんか?」
救護室付近に着陸チヌーク内で橋本が言った。
「わからない。だが、これで敵の方は空挺団がまだ降りていいないから、あわてているだろう。」
盛田はそう言うと、無線機をとった。
「コウノトリよりスパローへ。敵の様子はどうか?」
コウノトリとはチヌークのコードネームであり、スパローはコブラのことである。
『こちらスパロー。上空からは敵の様子が見えない。』
「了解。」
盛田は無線機をおくと、チヌークにいる橋本、谷村以下13名に下命した。
「只今より、要救助者14名の救出に向かう。我々14名の内、3名はチヌークへ待機。救助者3名の護衛を行え。残り俺を含む11名はコブラ、74の支援の下、要救助者及び人質14名の救出に向かう。戦闘用意!」
盛田、橋本、谷村を含む11名は89式小銃の安全装置が再度、“ア”から“レ”になっているのを確認し、救護室に向かった。救出部隊は74式戦車を盾にして、身を潜めた。盛田は拡声器を使って、救護室に向けて言った。
「帝国第二高校戦闘部員に告ぐ!君たちは完全に包囲されている!今、投降すれば命はとらないと保証する。さらに人質を返したのち、君たちの身柄を帝国第二高校に引き渡す。君たちの命をとるつもりはない。ただ、人質を返してもらえばいいのだ。いますぐに戦闘部員の武装解除を願う!」
「隊長、囲まれていますがどうします?」
「ふっ…命はとらないか…。」
特殊任務隊の女は独り言のようにつぶやいた。
「隊長、投降する気ですか!?」
「まさか。けど、彼らが言っている『命はとらない』は本当のはずよ。」
「なぜ、そう言いきれるのですか?」
「あの人…私の知り合いだからよ。」
「え…!?」
女は右手につけている腕時計を見た。
「そろそろ時間ね。…あなたと久しぶりに会えて楽しかったわ。」
女はそうつぶやくと救護室の奥へと身を消した。
「出てこないわね…」
谷村は双眼鏡で見ながらつぶやいた。すると、無線機から声がした。
『こちら、スパロー。対空レーダーに反応!敵オスプレイ2機再度接近中!対処不可能!』
「隊長、敵オスプレイが接近していますが91式携帯地対空誘導弾はないんですか?」
橋本が叫んだ。
「残念ながら、あの1発しかない。まあ、少しでも希望があるならば…」
盛田はそう言いながら、74式戦車の副武装として装備されてある12.7mm重機関銃M2を見上げた。この74式戦車に搭載されているM2はリモコン可動式である。専用の液晶端末にはM2の照準器の代わりに高性能の小型カメラを搭載し、まさにスコープをのぞいた映像が表示され、遠隔にて狙撃が可能である。盛田はこの装置をDisplay Control Weaponと呼び、頭文字をとって「DCW」と呼んでいる。
「DCWによるオスプレイ攻撃を行う。各員、空挺部隊が降下する可能性が高い為、大規模な地上戦が起こる可能性がある。再度戦闘準備を徹底せよ。」
盛田がそう言うと、M2が上空の方へ向けて銃身が動いた。他の隊員も深呼吸で呼吸を整いていた。
「隊長、オスプレイが桜葉遊園地領域に侵入してきました!」
一人の隊員が双眼鏡を見ながら叫ぶと、同じく双眼鏡で見ていた谷村も叫んだ。
「隊長!オスプレイが空挺降下を開始しました!」
「戦闘用意!74は敵が現れ次第、砲撃開始!小銃部隊は二脚を立て、同じく敵が現れ次第、発砲開始!M2はただちに撃ちかた始め!」
盛田が叫ぶと、M2の銃口から火が吹かれた。だが、オスプレイは高度上げ始めており、届かなかった。
「隊長!弾が届きません!」
DCWを操作していた隊員が叫んだ。
「構わん!とにかく視界から消えるまで撃ち続けろ!」
「隊長、敵空挺団は降りたきり、現れません。」
「なんだと。熱線暗視装置(サーモグラフィー)でもか?」
「確認してみます。…12時の方向にて待機をしています。一歩も動いておりません。」
なにかを待っているかのような感じだな…
盛田の勘は当たっていた。コブラからの一報が盛田の予想を確実づけた。
『こちら、スパロー。上空にて輸送機なるもの1機捕捉!』
盛田は双眼鏡をのぞいた。
「あれは…C‐130ハーキュリーズ…!」
「後部ハッチからなにか出てきたよ!」
谷村が叫んだ。飛び出してきたのはLAV‐25歩兵戦闘車2台だった。パラシュートがついてあるLAV‐25は第二空挺団の元に行き渡った。
「やつら、これを待っていたのか!」
盛田は叫んだ。盛田は考えた。こちらには戦車1両はあるが、我々小銃隊員は11名。コブラ、チヌークもいるが、スティンガー(携帯式防空ミサイルシステム)でやられてしまったら、我々の退路を断たれる。対する敵空挺団員の数は約30名。おまけにLAV‐25歩兵戦闘車2台付き。どうせ、あの中に重火器があるのだろう。
「…撤退しよう。」
盛田は思っていたことをもらした。
「隊長、今なんと?」
「撤退とか言ってませんでした?」
橋本と谷村が言った。
「隊長!撤退って、あそこにいる要救助者14名は一体どうなさるおつもりですか!」
橋本が救護室に向けて人差し指を指しながら言った。
「わかっている。だが、このままでは退路が断たれ、たとえ救出しても撤退ができず、ここで皆さよならになっちまう。」
「しかし…」
「頼む。わかってくれ。あの14人も大切だが、ここにいる総勢22名も大切なんだ!」
盛田はそう言うと、左手で帽子を深くかぶりながら続けた。
「…あの14人は後日、救出作戦を行う。総員…撤退…」
盛田は文の最後を濁してしまった。橋本は盛田の本当の気持ちを理解すると、盛田の代わりに言った。
「総員撤退!小銃部隊はチヌークへ!74とLAV1は陸路にて全速力で撤退!コブラは撤退するチヌークの護衛を行って!飛鳥ちゃんはLAMの用意をしておいて!」
「わかったわ。」
苦渋の決断だが、現在の戦力では歯が立たないということで撤退を決断した。
「隊長、やつら、撤退をし始めていますよ。」
第二空挺団の隊員が双眼鏡を片手に言った。
「わからんぞ。ただのカモフラージュかもしれん。引き続き警戒を行え。あと、こちらからは手をだすなよ?」
第二空挺団隊長堂本が言った。
「ですが隊長。我々の目標は桜葉高校防衛部の壊滅では?」
「うむ。確かに我々の目標は桜葉高校防衛部の壊滅だ。だが、先程、目標が変わった。我々の目標は桜葉高校の生徒保護となった。」
「そうだったんですか…」
桜葉高校防衛部小銃隊員はチヌークに乗り込んだ。落ち着いた盛田はLAMの用意をしていた谷村に言った。
「谷村、LAMをあの装甲車に向けて発射準備をしろ。合図で発射。」
「え?わ、わかった。」
谷村は戸惑いながら第二空挺団のLAV‐25に標準を合わせた。盛田は無線機をとり、言った。
「コウノトリより、スパローへ。谷村がLAMを発射する。それと同時にチヌークは撤収する。スパローはその護衛をされたし。もし敵が攻撃をする意図があれば、どんな武器を使っても構わん。」
『スパロー、了解。』
「川本、聞いた通りだ。」
川本は左手で拳を作り、親指を突き立てた。盛田は呼吸を整えて叫んだ。
「撃ちーかた始め!」
谷村が構えてあったLAMが発射された。発射されたLAMはLAV‐25に命中し、大破した。
「何事か!?」
堂本が叫んだ。
「敵の攻撃です!ただちに戦闘開始しますが、よろしいでしょうか?」
「あぁ、専守防衛だ!攻撃開始!」
堂本が言った途端、もう1台のLAV‐25が破壊された。上空を見上げると、AH‐1S、コブラがTOWミサイルを発射していた。
「次、スティンガーを所持している歩兵部隊!」
仮の射撃手である加藤が言った。「あぁ。」と操縦士の留田が言うと、コブラのM197ガトリング砲が火を吹いた。
『留田!撤退するぞ!』
ヘルメットから盛田の声がした。
「了解。」
コブラはチヌークと共に桜葉遊園地を脱出成功した。チヌーク内で橋本が聞いてきた。
「隊長、なぜ、あの地点で飛鳥ちゃんにLAMを撃たせたんですか?撃たなくても撤収できたと思うのですが…」
「やつらは俺たちが怖気づいて撤退していると思っていたはずだ。だが、俺たちは戦力不足を理由に撤退を余儀なかった。そこで俺は最後に置き土産をプレゼントしたかったんだ。俺たちは怖気づいて撤退したんじゃない。戦力強化のために撤退をしたんだとな。」
「つまり、怒りに任せていた。ということですね。」
「ま、まあ、そういうことになるな…」
盛田は顔を赤くした。だが、すぐに真面目な顔になって言った。
「次はもっと険しい作戦になるぞ。なにしろ桜葉高校一般生徒救出だからな…」
夕焼けを浴びながら、チヌークとコブラは桜葉高校へ向かって行った。

次回予告
一般生徒14名を救出できなかった桜葉高校防衛部。救出ができなかったことを職員や生徒会から追及され、廃部の危機に。果たして、防衛部は廃部になるのか?そして、一般生徒14名はどうなってしまうのか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

〈完結〉姉と母の本当の思いを知った時、私達は父を捨てて旅に出ることを決めました。

江戸川ばた散歩
恋愛
「私」男爵令嬢ベリンダには三人のきょうだいがいる。だが母は年の離れた一番上の姉ローズにだけ冷たい。 幼いながらもそれに気付いていた私は、誕生日の晩、両親の言い争いを聞く。 しばらくして、ローズは誕生日によばれた菓子職人と駆け落ちしてしまう。 それから全寮制の学校に通うこともあり、家族はあまり集わなくなる。 母は離れで暮らす様になり、気鬱にもなる。 そしてローズが出ていった歳にベリンダがなった頃、突然ローズから手紙が来る。 そこにはベリンダがずっと持っていた疑問の答えがあった。

処理中です...