【完結】初夜をすっぽかされたので私の好きにさせていただきます

おのまとぺ

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第三章 エバートン家の令息(ルシウスside)

31.カプレット家への訪問

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 シーア・カプレットの家は静かな住宅街の一画にあった。

 そよそよと風に吹かれてしなる木々を横目に、車を降りて玄関の呼び鈴を鳴らす。すぐに返答があって、人の良さそうな使用人が出て来た。エバートンの名前を出すと一瞬ハッとしたような顔をした彼女は、慌てて中へ入るようにと促す。

 応接室に通されて、出された紅茶を見つめながら、これから打ち明ける内容を頭で整理した。

 わざとらしい演技はせずに、あくまでも事実を淡々と。
 語ることは少なくても良い。こちらには写真がある。



「……お待たせしました。ルシウス様」

 控えめなノックの後でシーアが顔を覗かせた。

 三年前よりも幾分か大人びた雰囲気の彼女に、動揺が表に出ないように気を引き締める。自分が仕組んだとはいえ、こんなに美しい婚約者が居るのに指一本触れないどころか、他の令嬢たちの尻を追い掛けるロカルドのことが理解出来ないと思った。

 席に着いて不思議そうにこちらを見るシーアの前に写真を差し出すと、その目が大きく見開かれた。

「これ、は……?」
「君の婚約者にはどうやら他に想い人が居るらしい」
「え?」
「彼女は同じクラスのマリアンヌだ。ロカルドと彼女は遅くまで二人で過ごしている」
「どうして…貴方がそんなことを…?」

 涙を溜めて驚愕した表情を浮かべるシーアは、写真から顔を上げずにそう尋ねた。

「個人的な理由で君に協力したいと思っている」
「協力……?」
「つまり、復讐するなら手を貸したいと」
「………っ!」

 復讐という強い言葉に驚いたのか、シーアはその瞳を揺らした。涙の粒が机の上に落下する。自分の行いへの後悔と、そこまでロカルドのことを想っていたのだという悲痛な感情が心の中で混ざった。

 ロカルドは知っていたのだろうか。
 彼自身が婚約者からどれほど愛されていたのかを。


「今すぐ返答する必要はない。決意が出来たら呼んでくれ」
「……ルシウス様、」
「ルシウスで良い。どうした?」
「私は彼の婚約者として、今日まで生きて来ました」
「………、」
「私の三年間は…無駄だったのでしょうか?」

 答えることなど出来るはずもなかった。

 ただ、静かに涙を流すシーアの前に、エバートンの住所が書かれた小さな紙切れを置いて部屋を後にした。泣き続ける小さな身体を抱き締める資格もなければ、励ましの言葉を掛けることも憚られた。

 罪悪感だけが、沈んだ心の中で黒く渦巻いていた。
 直接的ではないにせよ、その涙の原因を作ったのは自分。


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