リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第12章〜獣人編〜

閑話:ルルーシェルの戦い

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ルルーシェルside



ディア様のご命令通りに魔族の男と対峙する私。
コクヨウ様とディオン様の2人が私に助力してくれているので、今の所はこちらに何の被害も出ていないのが救いだろう。
今はただ、ディア様のお帰りを待つだけ。


「はっ、!」


魔族の男へ、攻撃を向ける。


「うぜーんだよ!!」 


軽々と魔族の男に躱されてしまう私の攻撃。
わざと相手を倒せさない様にすると言うのは、何とももどかしい。
が、ディア様のご命令。


「ご命令とあれば、何としても魔族の注意を私達に引きつけて、ディア様のなさる事の邪魔が出来ぬよう足止めとして頑張らねば!」


そして、その褒美としてディア様からお褒めいただくのだ。


『ルルーシェル、良くやったわ。』


嬉しそうに微笑むディア。
そのお姿を想像するだけで、自分の身体中に気力が漲っていく。


「・・あの獣人の娘、何という強さだ。」
「あぁ、2人の男の強さもそうだが、あの獣人の娘も魔族と互角に戦っているじゃないか。」


だから聞こえていなかった。
周りの声を。


「ーーーほう、あの獣人の娘、なかなかやるではないか。」



ガルムンド王国の獣王と呼ばれる、ジョシュア王が私の戦いを見ながら呟いていた事も。


「っっ、あの小娘、我が息子、ロドリゲスの邪魔になりそうだわ。」


忌々しそうな声さえも。
様々な視線の意味さえ、全く気付く事はなかった。


「排除しなくては、私の息子の王位を奪わんとする様な、卑小な存在は。」


新たな火種が燃え上がる。
私の知らぬ所で。


「良いな?王にも、誰にも知られずに、早急に、あの小娘の事を詳しく調べて、この私に報告せよ。」


悪意が私へと向く。
その事を私が実感するのは、この大会が終わった少し後の事だった。


「・・チッ、鬱陶しい女、今すぐに殺してやる!」


魔族が吠えからの突進。
拳を振り上げる。
私は慌てる事なく、回避行動へと動く。


「うらぁっ!」


勢い良く振り上げられた、魔族の男の魔法で強化された拳は地面を貫いた。
捲き上る爆風。


「くっ、砂埃で視界が!」
「急げ、風魔法で視界を晴らすんだ!」


たくさんの指示が飛ぶ。
晴れた視界。
魔族の男の拳の一撃によって、地面は大きく陥没していた。


「チッ仕留め損ねたか。運が良いな女だな。」


吐き捨てる魔族の男。
どうやらこの魔族の男は力が自慢らしい。
拳に魔力を乗せてからの攻撃が多く、他に魔法を使っては来ないのは有難いと言える。


「次でお前をーーー」


言葉を詰まらせる魔族の男。
見る見るうちに、その身体から魔力が減っていく。


「っっ、まさか!?」


はっと、魔族の男の視線が向かう先は、ディア様が行かれた方角。
急激に魔力が増えた理由がある場所。


「ふふ、魔力量が元に戻り、貴方のご自慢の力も落ちた様ですね?」


くすくすと嘲る。


「ーーーっっ、くそっ、」


悪態つき、身を翻そうとする魔族の男。
その身体が向かうのは、ディア様がいる方向だった。
今更、遅い。


「あちらへは、行かせません!」


すぐさま私は魔族の男の前に回り込んで立ち塞がり、進行を妨げる。


「この私が簡単に行かせるとお思いですか?」
「くっ、女、邪魔をするな!」


憎々しげに私を睨み付けてくる魔族の男。
さすがは、魔族。
魔力を他から得ていたとは言え、まだ魔力は膨大な量が残っている。


「うおらぁぁっ!」


この場から逃げる為か、それとも、また何かしらの魔法で他者から魔力を得ようと考えているのか。
私の方へ突っ込んで来る。


「ーー愚かな。」


目の前の魔族の男は頭は良くないようだ。
安易に突撃してくるとは。


「がぁ、」


迫り来る魔族の男の攻撃をあっさりと躱し、魔族の男の右の腕を切り落とす。
飛び散る、大量の血。


「すぐさま再生されては困りますね。ふふ、この要らなくなった腕は、燃やしてしまいましょう。」


冷ややかに呟いたコクヨウ様は、笑顔で私が切り落とした魔族の男の腕を、自分の魔法の炎で燃やしてしまう。


「っっ、貴様!」


自分の腕を切り落とされ、そのまま燃やされた事に激昂する魔族の男。
らんらんと、黒い瞳が増悪に輝く。


「教えてあげます。」
「あ?」
「私達が今まで全力を出せなかったのは、お前が捕らえていた者がいたからに他ならない。」


ディア様は、今は魔族の男を倒すなと命令された。
人質の安否を考えての事。


「お前が向かおうとした方に、魔力量を補給する贄がいたのだろう?」
「っっ、なぜ、それを知っている?」
「その答えを、お前が知る必要はない。人質が解放された今、私達がお前を倒す事に何の遠慮もなくなったと言う事実だけを知れ!」


目の前の男に慈悲を与える?
馬鹿を言え。


「お前のディア様への暴言、許しはしないと言っただろう?」


ディア様へだけ向けた言葉ではなかったとは言え、私達が目の前の男が吐いた暴言を許すはずがなかった。


「あの方への不敬の罪深さを、その身で償え。」


私はスキル、『獣人化』を発動させる。
目の前の男を倒す為に。

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