リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第12章〜獣人編〜

可愛い番犬候補

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新しいスキル『魔法妨害』で、子供達を苦しめる目の前の魔法陣の機能を破壊する。
止まる魔法陣の光。
魔法陣が破壊された事で、子供達から魔族の男への魔力の供給も無事に止まった。


「ディア様、子供達も全員無事です。」
「そう、良かった。」


1人ずつ子供達の安否を確認したアディライトが、笑顔で報告してくれて安堵の息を吐く。
一安心。
誰も死なせずに救うと決めていたけれど、安否を確認できてようやく安心する事ができた。


「アディライト、しばらく子供達の事をお願いできるかしら?」
「はい、ディア様。お任せください。」


アディライトに子供達の事を任せ、私はロウエンの元へと向かう。


「ロウエン?子供達は無事よ。」
「グル。」
「もう大丈夫。安心して?」


その頬を撫でる。


「ロウエン、もう1人で頑張らなくて良いのよ?良く頑張ったわね?」
「グルル。」


その瞬間、ロウエンの瞳から涙が零れ落ちた。


「ロウエン?」


解けていく、ロウエンの獣化。
チョコレートブラウン色の髪の青年が姿を現わす。


「お疲れ様、ロウエン。子供達を守って、偉かったわね?」


人型となったロウエンの身体を抱き締める。


「っっ、お、れ、は、」
「うん?」
「何も、出来なかった!」


その口から零れ落ちるのは、悔しさ。
何も出来なかったと。
無力な自分が悔しいのだと、私の腕の中で身体を震わせて涙する。


「ロウエン。」


・・あぁ、なんて愛おしいのだろう。
純真で。
どこまでも汚れない真っ直ぐな心。


「力が欲しい?」


愛おしいロウエンの耳元に囁く。
悪魔の囁きを。


「私なら、ロウエン、貴方に力を与えてあげられる。誰からも虐げられず、大事なものを守り切れる力を。」
「何・・?」


私を見上げるロウエンに微笑む。


「欲しい?」
「・・欲しい。誰にも負けない力が、俺は欲しくて堪らないんだ。」
「ふふ、良いよ。」


与えてあげる。
自分で守れるだけの力を。


「ーーーただし、ロウエン、貴方が私のモノになってくれるならね。」


この世界で、私だけがロウエンに絶対的な力を与えてあげられるのだ。


「・・・あんたのモノに?」
「ふふ、そう、私だけを思い、私の家族達をも慈しむ。身も心も私だけに捧げてくれるかしら?」


他には何も望まない。
ただ、私を思ってくれる、それだけでいいの。


「忠誠を誓えって事か?」
「そう、ね、今はそれで良いわ。いずれ、私しか考えられない様にしてあげるから。」


じっくりと育てましょう。
私の手で。
先ずは疲弊したロウエン達を休ませて、子供達も含めて親元へ帰してあげなくては。


「ロウエン、貴方の家族は?」
「爺ちゃんが1人いる。両親は俺が小さい頃に死んだ。」
「なら、お爺様が心配しているわね。」


お爺様にとって、ロウエンは可愛い孫だろうもの。
今頃、すごく心配している事だろう。


「・・帰れるのか?」
「うん?」
「俺達全員、あの魔族の奴隷にされたんだ。ここから出るなって、全員が命令されてる。」
「あぁ、大丈夫。その魔族なら私の家族が倒したから、何の問題も無いから安心して?」


問題ない。
先ほど魔族の反応が消えたから。
私のルルーシェル達が、あの魔族に負けるはずがないのだ。


「っっ、魔族を倒したのか!?」
「もちろん倒したわよ。ふふ、貴方が私のモノになれば、ロウエンも魔族を倒せるようになれるわ。」
「っっ、俺が、魔族を・・。」


ロウエンが喉を鳴らす。


「でも、その分、ロウエンから対価は貰うけどね。」


その頬を撫で、立ち上がる。


「そろそろ人も来る頃だろうし、帰りましょうか、アディライト。」
「はい、ディア様。」


私に寄り添うアディライトが頷く。
こちらへ近付く複数の存在。
優秀な私の子達が兵の一部をこちらへ向かわせてくれているので、子供達を引き渡して任せましょう。
冒険者である私より、この国の兵の方が親御さんも安心だろうし。


「・・もう、会えないのか?」


立ち上がった私の洋服の裾をロウエンが引く。
・・ヤダ、可愛い。


「会えるよ。ロウエンが私に会いに来てくれるならね。」


私からは会いに行かない。
ロウエンの事を、私だけが欲しいと求めるなんて悔しいもの。


「もしも私の事を欲するなら、会いに来て。」


私の可愛い番犬さん。


「ーーーガルムンド王国の兵です!全員、動かぬように!」


駆けつける、兵達。


「私は冒険者のディアレンシア・ソウルです。」


兵達をこれ以上警戒させぬよう、冒険者のギルドカードを見せる。


「S級冒険者!?」
「はい、ここに魔族によって不法に奴隷にされて捕らわれている子供達がいると知り、救出に参りました。どうやら子供達のは魔族の魔力の供給源として捕らわれていたようです。」
「っっ、なんと下劣な!」
「子供達は全員無事ですが、ひどく消耗しているので休養が必要です。保護をお願いします。」
「了解しました!おい、丁寧に治療院へ搬送しろ!」


慌ただしく動き出し兵達。
さて、私もルルーシェル達の元へ帰りますか。

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