リセット〜絶対寵愛者〜

まやまや

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第12章〜獣人編〜

活躍の余波

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今回の魔族襲撃の情報は、ガルムンド王国で大きな衝撃となって広がった。
活発になり始めた魔族の動き。
人々は恐怖した。
これは魔族との戦争の始まりなのではないか、と。


「・・まぁ、誰もが不安になるわよね。」


魔族が自分達の国で暴れたのだ。
自分達の変わらないはずだった平穏な日々が、失われるのではと不安にならないはずがない。


「ディア様、紅茶でございます。それと、ルルーシェルの活躍もガルムンド王国内で広がっているようですよ。」


言いながら、アディライトが私にお茶の入ったカップを手渡す。


「ありがとう、アディライト 。」


お礼を言って、アディライトから受け取ったカップに口を付ける。
中身の紅茶は、今日も私の好みドンピシャ。
とても美味である。


「・・それにしても、ルルーシェルの活躍、ね。」


私は窓の外へ視線を向けた。
魔族襲撃の翌日。
私達は宿泊している宿内でくつろぎながら、町中の動きや噂を集めていた。


「リリス、王宮の方は?」
「はい、ディア様。今回の魔族の襲撃の件もそうなのですが、ルルーシェルの獣化についても、王宮内は大騒ぎのようです。」
「ふふ、王宮でも感知していなかった存在、しかも女性のルルーシェルが獣化のスキルを持っていて、使いこなしている事に驚かないはず無いもの。しかも、魔族も倒しているとなると、余計にね。」


王宮内は揺れ動く事だろう。
ルルーシェルの活躍の余波は、広がっていく。


「ディア様、なぜ王宮にルルーシェルの獣化スキルを知らしめたのです?強欲な者は、ルルーシェルの確保に動くと思うのですが?」


不思議そうにコクヨウが首を傾げる。


「え?私はただ、皆んなにルルーシェルの凄さを知らしめたかったからだよ?」


深い意味はない。
私のルルーシェル自慢なだけである。


「しかし、それでディア様へ何かしらの矛先が向かうような事になったらどうなさるのですか?ディア様は、ルルーシェルの主人なのですし。」


懸念に顔を険しくさせるディオン。


「あら、皆んなが私の事を守ってくれるから、何の問題も無いわ。皆んなの側以上に、安全な場所などないもの。」


違う?と笑う。
今の私の周りは、鉄壁な守りとなっている。
誰が来たとしても、その守りを突破し私に傷1つ付ける事は叶わないだろう。
逆に、この子達の守りを突破する所を見てみたいぐらいだ。


「それに、ガルムンド王国内の価値観である、獣化スキルが珍しいものって言う認識を変えたいのよ。いつまでも、獣人化スキルの保有者が狙われる心配をしたくないしね。」
「「ロウエンの為~??」」


正解を言い当てるフィリアとフィリオの双子に微笑む。
もしもロウエンが私の手を取らなかった場合、今のガルムンド王国の価値観で暮らすのは命の危険がある。
王位継承権が関わるからだ。


「ガルムンド王国の王位を継ぐには、獣化スキルは必須い。その必須いの獣化スキルを一般に暮らすロウエンが発現させたと知られたら?」


ロウエンは必ず命を狙われるだろう。
自分の子供を、次の王位につけたいと考える母親。
又は自分の家の栄光と繁栄を望み、孫を次の王位につけたい外戚達から。


「今は、ルルーシェルの存在があるから、ロウエンの身の安全は守られているわ。」


でも、それはいつまで?
ロウオンの平穏は、いつ崩れても不思議はない。


「ーーーさて、誰が動くかしら?」


陰謀渦巻く王宮。
ロウエンへは護衛を付けているが心配は尽きない。


「・・はぁ、ロウエンが私のモノになってくれれば、堂々と守れるのに。」


かと言って無理矢理は嫌だ。


「ふふ、ロウエンもディア様のお側に来ますよ。」


当然の事とコクヨウが笑う。
事態が大きく動くのは、この数時間後の事だった。


「・・ロウエンが襲撃された、ね。」


リリスからのロウエン襲撃の報告に冷ややかな声で答える私。
予感が的中って所ね。


「で、ロウエンを襲撃した首謀者は?」
「王妃の手の者です。」
「王妃?」


確か、今の王妃は狐の獣人だったはず。


「王妃が生んだ王子は第2王子で、王位継承候補の1人です。」
「王妃の子と言えど、王位継承は確実じゃない事に焦ったって事が、ロウオン襲撃の犯行理由かしら?」
「その様です。今回の大会でも良い結果を出せなかった事も、ロウエンへの襲撃へと繋がった様ですね。」


聞けば、優勝候補のロドリゲスが王妃の生んだ第2王子らしい。
今回の大会に優勝して、自分の息子を王位継承候補の中で優位に立たせたかった模様。


「王妃が企てたルルーシェルへの襲撃も数度行われております。その度に、ルルーシェル本人が返り討ちにしておりますが。」
「ルルーシェル本人は、自分への襲撃に楽しそうに相手と遊んでたものね。」


襲撃者の方が泣いていたほどだ。


「ルルーシェルへの襲撃の証拠も揃った頃だし、この楽しいお遊びも終わりにしましょうか。」


ーーーもう、王妃はいらない。

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