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L's rule. Side Hisui.
断ち切りたいのは過去という鎖です 1
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スイの部屋に入ると、アキはスイをそっとベッドの端に座らせてくれた。そして、向かい合って跪く。
心臓の音がうるさくて雨音すら聞こえない。
「スイさん」
優しい目が、少しだけ心配そうに見つめてくれる。それだけで、すごく大切にしてくれているのが分かって、嬉しいのに、胸が締め付けられるように苦しい。
「また、軽くなったんじゃない? 無理してないか?」
頬を撫でる手。大きくて、心地いい手。スイはその手が大好きだ。
一度恐怖を植え付けられてしまった身体はそれを簡単に忘れてはくれない。少しずつ慣らそうと思ってもうまくできなくて、正直な身体はその度に与えられた恐怖を思い出してしまった。アキと繋がりたいと心の底から思うから、耐えることは容易かったけれど、本当は“準備”のとき吐いたり、深夜に夢で目覚めて眠れなかったりで、体重はまた減っていた。
「無理なんてしてない。すごく幸せだよ」
それでも、スイは微笑んだ。無理をして作った笑顔ではない。
彼に出会えた自分を、心の底から幸せだと思う。その彼が自分に好意を寄せてくれるなんて、未だに信じられない。
「……あの……さ。アキ君」
頬を撫でるアキの手に自分の手を重ねて、スイが言う。
「……その。……うまく……できなかったら……ごめん」
思えば、本当に愛していると感じた人とセックスするのは相手が女性であれ男性であれ初めてだ。そもそも、本当に愛している人と出会えたことがスイにとっては初めてなのだ。
だから、少し。少しだけ。怖い。
「スイさんが、俺を許してくれるだけで。俺だって、幸せだ」
でも、アキが笑ってくれた。
だから、大丈夫。
スイは思う。
優しく、身体がベッドの上に押し倒される。スイの大好きな大きな手が額にかかった髪を梳いて、そこにキスをくれた。まるで、壊れ物でも扱うような丁寧な手つきにまた胸が苦しくなる。
幸せなはずなのにどうして。と、思う。
「アキ……くん」
瞼に、頬に、鼻先に、最後に、唇に。一度、二度。三度目からは深い口づけに変わっていく。そうしたら、もう、何も考えられなくなってしまった。
「……んん……っん」
舌先が絡み合って、水音が響く。次第に激しくなっていくキスに喉の奥から洩れた声は、まるで子猫の鳴くような声だった。自分の声とはとても思えない。
それが、また恥ずかしくなって、縋るようにアキの服を握る。
熱い舌の感触も、指先から伝わる早い鼓動も、荒い呼吸も、さっきから、服越しに伝わるアキの猛りも。感じるたびに身体が熱くなるのを止められない。
「……ん……ぁ」
ゆったりとしたTシャツの裾から、そっと脇腹に手を入れられた時だった。
心臓の音がうるさくて雨音すら聞こえない。
「スイさん」
優しい目が、少しだけ心配そうに見つめてくれる。それだけで、すごく大切にしてくれているのが分かって、嬉しいのに、胸が締め付けられるように苦しい。
「また、軽くなったんじゃない? 無理してないか?」
頬を撫でる手。大きくて、心地いい手。スイはその手が大好きだ。
一度恐怖を植え付けられてしまった身体はそれを簡単に忘れてはくれない。少しずつ慣らそうと思ってもうまくできなくて、正直な身体はその度に与えられた恐怖を思い出してしまった。アキと繋がりたいと心の底から思うから、耐えることは容易かったけれど、本当は“準備”のとき吐いたり、深夜に夢で目覚めて眠れなかったりで、体重はまた減っていた。
「無理なんてしてない。すごく幸せだよ」
それでも、スイは微笑んだ。無理をして作った笑顔ではない。
彼に出会えた自分を、心の底から幸せだと思う。その彼が自分に好意を寄せてくれるなんて、未だに信じられない。
「……あの……さ。アキ君」
頬を撫でるアキの手に自分の手を重ねて、スイが言う。
「……その。……うまく……できなかったら……ごめん」
思えば、本当に愛していると感じた人とセックスするのは相手が女性であれ男性であれ初めてだ。そもそも、本当に愛している人と出会えたことがスイにとっては初めてなのだ。
だから、少し。少しだけ。怖い。
「スイさんが、俺を許してくれるだけで。俺だって、幸せだ」
でも、アキが笑ってくれた。
だから、大丈夫。
スイは思う。
優しく、身体がベッドの上に押し倒される。スイの大好きな大きな手が額にかかった髪を梳いて、そこにキスをくれた。まるで、壊れ物でも扱うような丁寧な手つきにまた胸が苦しくなる。
幸せなはずなのにどうして。と、思う。
「アキ……くん」
瞼に、頬に、鼻先に、最後に、唇に。一度、二度。三度目からは深い口づけに変わっていく。そうしたら、もう、何も考えられなくなってしまった。
「……んん……っん」
舌先が絡み合って、水音が響く。次第に激しくなっていくキスに喉の奥から洩れた声は、まるで子猫の鳴くような声だった。自分の声とはとても思えない。
それが、また恥ずかしくなって、縋るようにアキの服を握る。
熱い舌の感触も、指先から伝わる早い鼓動も、荒い呼吸も、さっきから、服越しに伝わるアキの猛りも。感じるたびに身体が熱くなるのを止められない。
「……ん……ぁ」
ゆったりとしたTシャツの裾から、そっと脇腹に手を入れられた時だった。
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