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BT.H
#11
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「あのアキさんが全く口答えできないんだぜ? あり得る? あり得ないよな?
あれって、絶対に『そう』だって」
アキのことはセイジよりよく知っているつもりだ。出会ったのはセイジと一緒の頃だと思うけれど、高校の先輩? で、命を助けられたこともある。
その頃から一つも変わらない印象は『冷徹な暴君』だ。
命を助けられた一件でも、助けてはくれたが、罵詈雑言の嵐を浴びせられたし、その後散々使いっパシリにされた。
「はあ? んなわけねえじゃん。大体、アキさんストレートだろ? 女の子連れてるの見たことあるよ? しかも、結構最近」
女の子なんて選り取り見取りだし、野郎には氷のように冷たいアキが男に走るとはどうしても思えない。女の子を連れていたのは間違いないのだ。しかも、かなりお美しいお姉さまだったし、アキが女の人を連れて歩いているのを見たことがあるのは一度や二度じゃなかった。多分、セイジだって何度も見ているはずだ。
「いや。それは、俺もわかってるよ? あの人、しゃべらなければ、ちょっと引くくらいモテるし。でもさ、見たことない顔みたし。すげーやべーの。あの顔……もしその辺で振りまいたら、災害級だよ」
それどんなんだよ?
と、ツッコミを入れたかった。入れたかったけど、セイジがまくしたててくるから、それもできなかった。
「なんていうか……あのアキさんが、めっちゃ優しい顔してんだよ。こえーよ。まじ、こえーよ。ソファでその人、隣に座らせて、こう。腰抱いて、耳元になんか囁いてるし、俺の話なんて全然聞いてねーし、ま、それはいつものことだけど……。そうじゃなくて、髪の毛いじったり、ほっぺに触ったり、絶対恋人だって」
セイジは、力説するのだが、どうにも疑わしい。
あの家はあの兄弟で完結していると思う。そこに誰かが入り込む余地なんてないんじゃないだろうか。しかも、男の恋人って。今までに見てきたアキの姿からは想像することができない。
「俺も信じられないなあ」
片手を上げてシキもナオに同意した。二人より4歳ほど年上の警視庁公安課のエリートだが、とある事件で知り合ってからは、何故か二人とうまが合って、よくこうして一緒に飲む仲だ。
「アキ君、絶対に頭下げたりしないじゃん。超モテるから、一人に固執したりしないし」
一人鼻息荒いセイジに疑わしげな視線を送っている。きっちりとスーツを着て、黒ぶちの眼鏡をかけている姿は警察官というよりは、ビジネスマン風だ。
やっぱり、シキも、ナオと同意見だった。
アキとの付き合いはナオの方が長いけれど、シキはユキの救出にも係わっているから、アキも一目を置いている。そのシキが言うんだから、自分たちの意見の方が正しい気がする。
「お前らは、あの人見てないからそんなふうに言うんだって」
そう言って、セイジはまた、昼間のことを思い出しているみたいだった。確か、こないだ総務課の女の子にアプローチしているとか言っていたくせに、想像するその顔はなにやらにやけていて、不気味だった。さっきからその人への形容がいちいちキモオヤジ目線な気がしていたのは勘違いではなかったようだ。
「なんていうか……」
「ああ、っと。『色っぽい』感じ? ……いや『エロい』感じの人」
さんざ想像しておいて、その言葉かよ!
と、心の中でツッコむ。
「はあ?? おま。よくよく考えて、それ?
てか、お前、男いけたっけ?」
いや、言葉に出てしまった。
別に、自分は同性愛に対して嫌悪感があるわけではない。そもそも、ナオの周りに否定派はあまりいない。ただ、自分が男性が好きかと聞かれると、そうではないと答えるだろう。多分、セイジとシキも同じだ。と、思っていた。が、男が好きでも別に好きにすればいいけれど、鼻の舌がのびたにやけ顔は、考えている相手が老若男女問わずキモい。
「いや。違うんだけどさ。ああ。なんて説明していいのか。うーん。とにかく、ホント、不思議な感じの人で。性別とかじゃなくてさ。目を引くっていうか……」
あれって、絶対に『そう』だって」
アキのことはセイジよりよく知っているつもりだ。出会ったのはセイジと一緒の頃だと思うけれど、高校の先輩? で、命を助けられたこともある。
その頃から一つも変わらない印象は『冷徹な暴君』だ。
命を助けられた一件でも、助けてはくれたが、罵詈雑言の嵐を浴びせられたし、その後散々使いっパシリにされた。
「はあ? んなわけねえじゃん。大体、アキさんストレートだろ? 女の子連れてるの見たことあるよ? しかも、結構最近」
女の子なんて選り取り見取りだし、野郎には氷のように冷たいアキが男に走るとはどうしても思えない。女の子を連れていたのは間違いないのだ。しかも、かなりお美しいお姉さまだったし、アキが女の人を連れて歩いているのを見たことがあるのは一度や二度じゃなかった。多分、セイジだって何度も見ているはずだ。
「いや。それは、俺もわかってるよ? あの人、しゃべらなければ、ちょっと引くくらいモテるし。でもさ、見たことない顔みたし。すげーやべーの。あの顔……もしその辺で振りまいたら、災害級だよ」
それどんなんだよ?
と、ツッコミを入れたかった。入れたかったけど、セイジがまくしたててくるから、それもできなかった。
「なんていうか……あのアキさんが、めっちゃ優しい顔してんだよ。こえーよ。まじ、こえーよ。ソファでその人、隣に座らせて、こう。腰抱いて、耳元になんか囁いてるし、俺の話なんて全然聞いてねーし、ま、それはいつものことだけど……。そうじゃなくて、髪の毛いじったり、ほっぺに触ったり、絶対恋人だって」
セイジは、力説するのだが、どうにも疑わしい。
あの家はあの兄弟で完結していると思う。そこに誰かが入り込む余地なんてないんじゃないだろうか。しかも、男の恋人って。今までに見てきたアキの姿からは想像することができない。
「俺も信じられないなあ」
片手を上げてシキもナオに同意した。二人より4歳ほど年上の警視庁公安課のエリートだが、とある事件で知り合ってからは、何故か二人とうまが合って、よくこうして一緒に飲む仲だ。
「アキ君、絶対に頭下げたりしないじゃん。超モテるから、一人に固執したりしないし」
一人鼻息荒いセイジに疑わしげな視線を送っている。きっちりとスーツを着て、黒ぶちの眼鏡をかけている姿は警察官というよりは、ビジネスマン風だ。
やっぱり、シキも、ナオと同意見だった。
アキとの付き合いはナオの方が長いけれど、シキはユキの救出にも係わっているから、アキも一目を置いている。そのシキが言うんだから、自分たちの意見の方が正しい気がする。
「お前らは、あの人見てないからそんなふうに言うんだって」
そう言って、セイジはまた、昼間のことを思い出しているみたいだった。確か、こないだ総務課の女の子にアプローチしているとか言っていたくせに、想像するその顔はなにやらにやけていて、不気味だった。さっきからその人への形容がいちいちキモオヤジ目線な気がしていたのは勘違いではなかったようだ。
「なんていうか……」
「ああ、っと。『色っぽい』感じ? ……いや『エロい』感じの人」
さんざ想像しておいて、その言葉かよ!
と、心の中でツッコむ。
「はあ?? おま。よくよく考えて、それ?
てか、お前、男いけたっけ?」
いや、言葉に出てしまった。
別に、自分は同性愛に対して嫌悪感があるわけではない。そもそも、ナオの周りに否定派はあまりいない。ただ、自分が男性が好きかと聞かれると、そうではないと答えるだろう。多分、セイジとシキも同じだ。と、思っていた。が、男が好きでも別に好きにすればいいけれど、鼻の舌がのびたにやけ顔は、考えている相手が老若男女問わずキモい。
「いや。違うんだけどさ。ああ。なんて説明していいのか。うーん。とにかく、ホント、不思議な感じの人で。性別とかじゃなくてさ。目を引くっていうか……」
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