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Internally Flawless
幕間 夜想曲『籠の中』 2
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◇翡翠◇
唐突に意識は覚醒した。
白い天井。カーテンレール。点滴を下げる金具。白いカーテン。医薬品の匂い。エアコンから噴き出す妙に生ぬるい空気。その部屋に翡翠はいた。
口の中を満たす鉄錆の味。噛みしめた唇が切れて、唾液と一緒に口の端から零れる。ずっと零れ続けている涙で、視界が滲む。点滴に入れられた薬のせいで、快楽以外の感覚が鈍って、ふわふわと宙に浮いたような感覚がする。
両手はベッドのパイプに手錠で繋がれていた。手首には幾重にも包帯が巻かれているけれど、激しく抵抗したせいで解れて、擦り切れて血が滲んでいる。けれど、それも、翡翠に痛みをあたえることはない。視界の端のそれは、まるで、自分のものではない誰かの手のようだった。
「……ふ……ぅ。あ……も……っや」
小さな機械音がいくつも部屋に響く。その音はもう、どれくらい続いているのだろうか。頭の中はただ一つの感覚に支配されて、よく思い出せない。ただ随分と長い間だということだけは、わかる。
「……っああっ。やめ……も。ゆるし……て……んあっ」
両腕を拘束されて、包帯以外の何も纏わない姿で、翡翠はその唇から喘ぎを漏らした。包帯が巻かれていない場所には無数の所有印が痛々しいほどに残されている。古く消えかけているものも、鮮血のような色をしたものも。ここに繋がれてから、癒える間もなく次の痕をのこされるから、翡翠の身体が元の白磁のような色に戻ることはなかった。
「……これっ……も。あぁん。……も……とってぇ……」
両脚はベッド脇の手すりに縛られて、大きく開けられていた。その脚の間の細身の男性器には医療用のテープでローターが巻きつけられている。1つではなく、3つ。もう、何度イったか分からない。翡翠の腹は自分自身の吐きだしたものでぬるぬると汚れて、薄暗い蛍光灯の光を反射して光っている。それでも、翡翠のソレはまだ立ち上がって、もう、粘度も色もなくなってきている液体を垂れ流していた。
「……や……だぁ……泰……とさ……も、やめ……ぁああっ」
彼の身体を犯し続けているのはそれだけではなかった、薄い胸の先の小さな突起にも、それは貼り付けられていて、ずっと、容赦ない振動を与え続けている。
びくり。びくり。と、身体が跳ねるのは、後孔に入れられたローターと、細いバイブレータが身を捩るたびに奥と、前立腺の両方に当たって、気が遠くなるような快楽を与えてくるからだった。
「……ぁあん。……こ……んな……も。むり……ぃおかし……あんっ」
当然、こんなことをされることを望んでいるわけではない。それが酷く不快だと、頭では嫌悪しているのだ。それでも、翡翠は声が甘くなるのを止めることができなかった。
最初はもちろん抵抗した。自分自身の身体が傷つくことも厭わずにめちゃくちゃに暴れたし、思いつく限りの言葉で相手を罵った。やめてほしいと、泣きながら懇願もした。
しかし、『エデン』と呼ばれる強力なセックスドラッグを点滴に入れられて、数分もすれば、僅かに首を撫でられただけで身体が反応するようになった。その上、淫具で、散々身体を嬲られ続け、1時間と経たないうちに殆ど理性も、意識も。矜持も、嫌悪も、苦痛も消え失せて、何も考えられなくて、ただ、与えられる快楽に身を震わせることしかできなくなっていた。
それを、男はソファに座ったままずっと見ていた。
唐突に意識は覚醒した。
白い天井。カーテンレール。点滴を下げる金具。白いカーテン。医薬品の匂い。エアコンから噴き出す妙に生ぬるい空気。その部屋に翡翠はいた。
口の中を満たす鉄錆の味。噛みしめた唇が切れて、唾液と一緒に口の端から零れる。ずっと零れ続けている涙で、視界が滲む。点滴に入れられた薬のせいで、快楽以外の感覚が鈍って、ふわふわと宙に浮いたような感覚がする。
両手はベッドのパイプに手錠で繋がれていた。手首には幾重にも包帯が巻かれているけれど、激しく抵抗したせいで解れて、擦り切れて血が滲んでいる。けれど、それも、翡翠に痛みをあたえることはない。視界の端のそれは、まるで、自分のものではない誰かの手のようだった。
「……ふ……ぅ。あ……も……っや」
小さな機械音がいくつも部屋に響く。その音はもう、どれくらい続いているのだろうか。頭の中はただ一つの感覚に支配されて、よく思い出せない。ただ随分と長い間だということだけは、わかる。
「……っああっ。やめ……も。ゆるし……て……んあっ」
両腕を拘束されて、包帯以外の何も纏わない姿で、翡翠はその唇から喘ぎを漏らした。包帯が巻かれていない場所には無数の所有印が痛々しいほどに残されている。古く消えかけているものも、鮮血のような色をしたものも。ここに繋がれてから、癒える間もなく次の痕をのこされるから、翡翠の身体が元の白磁のような色に戻ることはなかった。
「……これっ……も。あぁん。……も……とってぇ……」
両脚はベッド脇の手すりに縛られて、大きく開けられていた。その脚の間の細身の男性器には医療用のテープでローターが巻きつけられている。1つではなく、3つ。もう、何度イったか分からない。翡翠の腹は自分自身の吐きだしたものでぬるぬると汚れて、薄暗い蛍光灯の光を反射して光っている。それでも、翡翠のソレはまだ立ち上がって、もう、粘度も色もなくなってきている液体を垂れ流していた。
「……や……だぁ……泰……とさ……も、やめ……ぁああっ」
彼の身体を犯し続けているのはそれだけではなかった、薄い胸の先の小さな突起にも、それは貼り付けられていて、ずっと、容赦ない振動を与え続けている。
びくり。びくり。と、身体が跳ねるのは、後孔に入れられたローターと、細いバイブレータが身を捩るたびに奥と、前立腺の両方に当たって、気が遠くなるような快楽を与えてくるからだった。
「……ぁあん。……こ……んな……も。むり……ぃおかし……あんっ」
当然、こんなことをされることを望んでいるわけではない。それが酷く不快だと、頭では嫌悪しているのだ。それでも、翡翠は声が甘くなるのを止めることができなかった。
最初はもちろん抵抗した。自分自身の身体が傷つくことも厭わずにめちゃくちゃに暴れたし、思いつく限りの言葉で相手を罵った。やめてほしいと、泣きながら懇願もした。
しかし、『エデン』と呼ばれる強力なセックスドラッグを点滴に入れられて、数分もすれば、僅かに首を撫でられただけで身体が反応するようになった。その上、淫具で、散々身体を嬲られ続け、1時間と経たないうちに殆ど理性も、意識も。矜持も、嫌悪も、苦痛も消え失せて、何も考えられなくて、ただ、与えられる快楽に身を震わせることしかできなくなっていた。
それを、男はソファに座ったままずっと見ていた。
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