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鬼男と少女魔術師のタッグ
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しおりを挟む「んー、いい武器がないね」
アルゴとヒスイはアルゴの武器を求めてミトレス町にある鍛冶屋を回っていた。なかなかアルゴが持ってしっくりくる感触の武器が見つからないでいた。今まで扱って来た武器が重いこともあり、普通の武器だとアルゴには軽すぎて使いにくいようなのだ。常人では持てないほどの重さと大きさの武器、そんなものがオーダーめどならまだしも既製品でそうそう売っていいるはずもなく武器探しは難航していた。
先ほど訪れた鍛冶屋では職人が頑丈で鋭さもあると言って、長槍を進めて来たがアルゴが振り回すとすぐに折れてしまいそうな印象を受けた。突くだけでなく、アルゴの怪力で魔物をぶっ飛ばしたりしようものならほんとうに折れるのではなかろうか。
「ないなら別に今使っている大剣でもいいんだがな」
「なに言ってるの。まだ二軒回っただけじゃない。武器はちゃんとしたものを使った方がいいに決まってるでしょ。あなたのその馬鹿力なら武器次第でオークぐらいなら楽に倒せるように思うわよ」
アルゴは数年使っている量産型の大きな大剣でも十分戦えていると思っていたが、ヒスイの目からはそうは見えないらしい。アルゴがきちんとした武器を持って戦えば自身にに匹敵する戦闘力を持つことも考えられるとヒスイは考えているようだった。狼を五匹を軽く吹き飛ばす蛮力ならば武器次第では一騎当千の力を持つこともありうるだろうと。
「私は魔力が武器みたいなものだから武器自体に全然詳しくないのだけど、ハンマーとかだとダメなの? あなたの怪力で振り回すとなんでも粉砕できそうだけど」
「ハンマーとか棍棒はリーチが短くないか? 敵に近づかないといけない分危険度が高くなるからある程度の長さはあるほうがいいと思うが」
「それもそうね。よく考えるとあなた以外のギルドとかで見かける冒険者もだいたい剣か槍か弓で、それに加えて盾を持っているぐらいだわ。弓は私の魔法があるからいらないし、やはり剣か槍がいいのかしらね」
「槍はどうも折れそうな気がして不安だな。それに今まで使って来て多少は心得のある大剣がやはり一番扱いやすい」
二人があーでもないこうでもないと議論を重ねながら別の鍛冶屋を見て回るがやはりそんな大きさの武器は見つからなかった。
「そういえば、あの大きな剣はどこで買ったのよ。あれが売ってるなら他の大きな武器も売っているんじゃないの?」
「あれか……。あんまり連れて行きたくないいんだがな。仕方ないか」
なぜかアルゴがものすごく嫌そうな顔をするが渋々向かおうとするアルゴの後をヒスイは不思議そうな顔をしながらもついて行く。
鍛冶屋は元々それほど大きな通りにあるものではないが、それにしたってこんなところにまともな店があるのかというほど薄汚れた、人とすれ違うこともできないほど狭くて暗い路地をアルゴは進んで行く。
ヒスイはこんなところに本当に鍛冶屋があるのだろうかと感じていたが、アルゴが嘘をつくような性格ではないことを知っているので信じてついて行く。
なぜかゴミが散乱している場所や、赤い塗料で不気味な落書きをされた場所、なにかの薬品でも扱っているのか思えるほど刺激の強い異臭漂う建物などを通り過ぎるとようやく目的の場所についたようだった。
「ここだ」
「本当に鍛冶屋ね……。こんなところで店を開いても赤字じゃないのかしらね」
二人の前にはたしかに鍛冶屋と書かれた建物が存在した。鍛冶屋ヴァイス、扉に掛けられているボロ板にはたしかにそう書かれている。アルゴがその扉をギィッと軋んだ木の音を鳴らしながら開けると中に入って行った。取り残されたヒスイも慌てて中に入る。
中に入ると、狭い路地の入り口からは想像できないほど広さのある空間にでた。ただしその店内はなにやら色々な金属製品が無造作に重ねるようにそこら中に置かれていてその広さが台無しの繁雑さであった。
「なんだかごちゃごちゃとしていて落ち着かないわね」
「ここに来るといつも無性に片付けたくなる」
潔癖とまではいかないものの、比較的綺麗好きであった二人にはそわそわとするものがあり落ちつかない空間であった。そんな様子の二人の元へドタドタと駆け寄ってくる足音が店の奥の方から響いた聞こえる。
「おぉ、アルゴの旦那じゃないですか! ほんの数日前に来たばかりなのにこれはまた珍しい」
なにやら騒がしそうな男が積まれたガラクタなのか売り物なのか判断がつかない物の隙間から顔をだした。怪しげな鍛冶屋の立地と物が溢れかえった店内の様子からは想像がつかないほど中々に整った顔立ちの男だった。
「あら、そちらの美しいお嬢さんは……お子さん? いや、旦那に子供がいるわけないな。まさか子攫い……?」
ヒスイの姿を見てブツブツと呟きながら店の者らしき色男はアルゴに懐疑的な目を向ける。
「なにを勘違いしてるか知らんがこいつは」
「恋人よ」
「「え?」」
「アルゴの恋人よ」
「「……」」
アルゴがヒスイを冒険者のパートナーとして紹介しようとしたところでヒスイがまさかの爆弾を落とした。思わぬ発言に色男とアルゴは聞き間違えたかと驚きの声をあげたが、ヒスイがアルゴの腕に抱きつくようにしながら再び同じ言葉を発した。なにが起こっているか分からずに混乱したアルゴと予想外の答えを聞いた色男は呆然としてしばし言葉を失った。
「こ、これは旦那のお連れ合いの方に失礼しました。私はこの鍛冶屋の鍛治職人兼店主のヴァイスと申します。どうぞ以後お見知り置きを」
「えぇ、よろしくね」
アルゴよりも早くフリーズから回復したヴァイスがヒスイに声をかけた。店の雰囲気とは裏腹に意外と丁寧な店主に驚きながらもヒスイも言葉を返す。
「いやいやまてまて。お前は確かにパートナーではあるがこ、恋仲になった覚えはないぞ」
「あら、なにをおっしゃるのかしら。先ほど春になれば共に暮らすと約束したばかりではありませんか」
「いや、それは確かにそうだが恋仲というわけではないだろう……」
やっと動き出したアルゴが遅すぎる静止の声をあげる。アルゴが必死に反論するが、なぜか凄く丁寧な口調のヒスイに偽りのない事実をつけた上で反論される。そんなヒスイにアルゴはしどろもどろになりながらも再び反論する。
二人のその様子を横でじっと眺めていたヴァイスが声を出す。
「まあまあ、仲がよろしい様子でいいではありませんか。まさか婚約の約束までされているとは。それで今日はどのようなご用件で?」
これ以上見せつけられてはたまらないとばかりに二人の間に割って入り、要件を聞き出す。いつのまにか同居が婚約に変わっていたがそれにアルゴが反論する間もなくヒスイが答える。
「アルゴの武器を探しに来たの。前ここで買ったって言う奴は切れ味が悪そうだからほかに良いのがないかと思って。他の店も回ったのだけどあんな大きな物はなかなか売っていなくてね」
「あぁ、旦那が買われる武器は昔作ったガラクタも同然のやつですからね。一応他の武器をすすめたことはあるんですが見向きもしなくて。ちょっと待っていてください」
そういうやヴァイスは店の奥へとすっ飛んでいった。
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