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鬼男と少女魔術師と不気味な魔物
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しおりを挟むアルゴが新しい武器を購入してから二ヶ月が経過した。冬も終盤。春の兆しが徐々に浮かび上がってくる頃であった。
アルゴは新しい二つの武器の扱いにだいぶ慣れ、太刀を扱う姿も段々と板に付いてきた。
「今年の冬は特に寒かったね」
「あぁ、そうだな。最近魔物が少なかったのはやっぱりこの寒さのせいだと思うか?」
「うーん、どうだろうね。魔物も寒いと外にいきたくないのかもね」
以前ハイルさんにも忠告されたように、一時期魔物が増えていると言われていたが厳冬の候になるとめっきりとその数を減らしていた。現に冬の間魔物の討伐依頼がやけに少なく、せっかく武器を新調したアルゴもその実入りは平年に比べ随分落ち込んでいた。
そんな中、今日もアルゴとヒスイの二人は冒険者ギルドに出かけ、めぼしい依頼がないか様子を伺う。
「なんだか慌ただしいね。やけに人も多いし」
「何かあったのかもしれないな」
冒険者ギルドの冬にもかかわらず開けっ放しにされた扉をくぐると、職員や冒険者らしき人がなにやら忙しそうに走り回ったり話し込んだりしていた。それにいつもは一般人と大差ない下級冒険者が集う広い一階部分にも武器を持つ物騒な格好をした人がたくさんいるのが見受けられた。明らかに中級以上の冒険者だった。
二人はとりあえずいつも通り二階にいって話が聞けそうな職員を探して話しかける。
「あの、何かあったんですか?」
「ああ、ヒスイさんそれにアルゴさん。ちょうど良いところに来てくださいました」
二人が話しかけたのは、いつの日かアルゴに対して子鹿のように震えながらも真摯に対応していた一見子供に見える職員である。近頃は基本的にヒスイが表立つためか、以前のようにアルゴに怯えることはなく、名前まで覚えてもらうことができた。そして最近わかったことだが、彼女は見た目こそ非常に幼いが年齢は二十を上回るようであった。どう見てもそうは見えないが、魔物のように見える人間がいることを考えればなんてことはない。
「実は急に村が魔物の群れに襲われて、以前二人が訪れたトチス村のように惨状になっていると報告が来たのです。それも確認できただけで三箇所同時に被害が上がっています」
「三箇所同時ですって!」
「えぇ、この件に関してギルドは先ほど緊急の依頼を発行いたしました。人数が集まりしだい三部隊に分け、それぞれの村へ調査隊として派遣するつもりです。お二人にも参加願えますか?」
「もちろんよ、なんだか人ごとじゃない気がするしね」
「もちろんだ」
二人は幼げな職員の差し迫った緊迫感の感じられる要請に威勢良く返事をし、ギルドカードを差し出した。
「ありがとうございます。手続きをいたしますね」
そういうや彼女は二人のカードを受け取ると今日も後ろで束ねたポニーテールの茶色い髪を揺らしながら、忙しそうに奥へ走って行った。
「それにしても三箇所同時とはかなり異常ね」
「そうだな。ゴブリンやオークは知能が高いと行っても人間にはかなり劣るはずだ。そこまで大規模な群の統率もできないだろうな」
「これは……いるかもね」
「あの鬼か……。鬼の頭が切れるとは聞いたことないがそもそも過去に確認できた数が少ないと聞くからな。それにあの強さならどんな魔物も付き従うだろうな」
「会わないことを祈るしかないわね」
「今回は二人ではないから会ってもなんとかなる可能性もあるが……正直あの鬼のプレッシャーを直に感じている身としては勝てる気がしないな」
二人は鬼になすすべなくやられた時のことを思い出しながら、意見を交わす。二人ともあの時はかなり疲弊していた。アルゴに至っては丸腰の状態だった。だが、本来は上級冒険者が幾人も力を合わせてやっと勝てるかどうかの相手。二人には万全の状態でも勝てる想像が全くつかなかった。
「お待たせしました。緊急依頼の受注手続きが完了しました。現在までの人の集まり具合を鑑みるにおよそ一時間後に出発いたしますので急ではありますが、それまでに取り急ぎ準備をお願いいたします。馬はある程度数を集めていますが、ご自分の馬がいる場合連れて来てもらえると助かります。集合は当ギルドおよびギルド前広場となります」
「了解したわ。じゃあ時間がないからまたね」
「忙しいのにどうもありがとう」
「はい! こちらこそありがとうございます」
少女もといギルド職員のおねえさんに軽く挨拶をし、彼女の元気な声を聞くと二人はきびすを返し、急いで準備に取り掛かった。
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