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新たな契約。
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「恨み、悲しみ、諦め、ほんの少しの希望……ふふ、よく熟成されてる。魂としては上出来だな」
それは、まるで極上のワインでも味わうような、酔いしれた声だった。
これが――悪魔。
わたしはただ、呆然とその存在を見上げていた。
レネリアとレオンは、礼拝堂の床に跪き、静かに頭を垂れていた。
そして、悪魔のそんな言葉を聞いてレネリアが話し始める。
「悪魔様、願いは一つ。王家との繋がりを。娘を王子に嫁がせ、息子は王家直属の騎士団長に」
「……相変わらずくだらねぇ願いだな。」
悪魔様と呼ばれる男は小さくため息をついたあと、視線をわたしに移した。
ゆっくりと歩み寄りながら、片手を差し出す。
「さて――お前の魂は、今日から俺のものだ」
その言葉が落ちた瞬間、全身から力が抜けた。
心の奥から「わたし」が、何かに吸い上げられていく。
寒い。怖い。苦しい。
「……助けて……お願い……っ」
気づけば、声が漏れていた。
でも、誰も見ていない。誰も止めてくれない。
それでも、喉が裂けるほど叫んだ。
「お願い、助けてよ……! こんなのいやだよ……っ!」
悪魔の瞳が、興味深そうに揺れた。
「……ハハッ、いいな、ここにきてまだ魂の色が変わってやがる。どんどん美味そうになってるな」
わたしは震える声で、叫ぶように言った。
「復讐したい……この家の人間、みんな……壊してやりたいの! わたしにできることなら、なんでもするから……っ!」
私のそんな言葉に空気が凍りつく。
レネリアもレオンも、顔を上げる。
そしてその瞬間、レネリアが「黙りなさい」と叫び、わたしに手を振り上げた
けれど、パチン、と音がして。
――世界が止まった。
悪魔が指を鳴らしたのだ。
「うるせぇ声。黙らせてやったから、ほら、続き、言ってみろよ」
凍った時間の中で、わたしと彼だけが動いていた。
「……わたしの復讐を手伝って。この家の人間、全部、あなたに喰わせてあげる……!」
「ははっ、無理無理」
悪魔は笑いながら首を横に振る。
「喰えるもんならとっくに喰ってるさ。スザンヌ家との契約は、100年に1度。“純潔の乙女”を一人だけ差し出すってのは決まりなんだ」
そのとき、悪魔の目から笑みが消えた。
ぞくりとするほど冷たい、怒りの気配。
「……そう…だが、契約は“100年に一度”だけ」
彼の声が、低く低く沈んでいく。
「まだ100年経ってねぇのに、勝手に“今年に前倒し”しやがったんだよなぁ」
わたしは息を呑んだ。
止まった世界の中、悪魔の指先から黒い炎が立ち上がる。
「本来なら、こんなもん――契約破棄で、スザンヌ家ごと全部、丸焼きにしてやってもいいんだけど、お前の魂は久々に美味そうだったから免じてやろうとも思ったが、お前の魂はまだ美味くなりそうだしなぁ」
笑っているのに、笑っていない。
「こいつらにはちょっと、仕置も必要だよなぁ“悪魔との契約を破る”ってのがどういうことかをよ」
その声に、わたしは必死に言葉を繋ぐ。
「だったら……! わたしが証明してみせる。この家の連中を、契約破った愚か者たちを地獄へ突き落としてやる!」
悪魔の紅い瞳が、細く笑った。
「ククッ、いいな……お前」
「いま喰うより、復讐と怨念で熟成させてから喰うとするか」
「……!」
「俺も少し飽きてたんだよ、この家。願い事も似たり寄ったりで、魂の味もマンネリ気味だったしな」
悪魔は、不敵に微笑む。
「いいだろう。お前の復讐、付き合ってやる。“記憶の保持”と“巻き戻し”か。
お前の魂をもっともっと熟れさせろよ。それじゃなきゃ、割に合わないからな」
「……ええ、わかったわ」
悪魔は、わたしの額に手をかざす。
「“生まれたて”だと記憶が馴染まねぇからな。ある程度物心がついてたほうが都合がいい。そうだな――“5歳”にしてやるよ。
俺の名は【ディアブロ】。契約するなら、名を呼んでみな」
わたしは、ひとつ深く息を吸った。
「ディアブロ……あなたと契約するわ!」
その瞬間、礼拝堂の空間が崩れはじめる。
レネリアもレオンも、景色の中で溶け、歪んで、遠ざかっていった。
足元が消え、天井が落ち、世界が反転する。
最後に聞こえたのは――
「思う存分、もがいて、憎んで、壊してみせろよ。
……お前の魂が、いちばん美味しくなるようにな」
それが、悪魔とわたしの、“最初の契約”だった。
それは、まるで極上のワインでも味わうような、酔いしれた声だった。
これが――悪魔。
わたしはただ、呆然とその存在を見上げていた。
レネリアとレオンは、礼拝堂の床に跪き、静かに頭を垂れていた。
そして、悪魔のそんな言葉を聞いてレネリアが話し始める。
「悪魔様、願いは一つ。王家との繋がりを。娘を王子に嫁がせ、息子は王家直属の騎士団長に」
「……相変わらずくだらねぇ願いだな。」
悪魔様と呼ばれる男は小さくため息をついたあと、視線をわたしに移した。
ゆっくりと歩み寄りながら、片手を差し出す。
「さて――お前の魂は、今日から俺のものだ」
その言葉が落ちた瞬間、全身から力が抜けた。
心の奥から「わたし」が、何かに吸い上げられていく。
寒い。怖い。苦しい。
「……助けて……お願い……っ」
気づけば、声が漏れていた。
でも、誰も見ていない。誰も止めてくれない。
それでも、喉が裂けるほど叫んだ。
「お願い、助けてよ……! こんなのいやだよ……っ!」
悪魔の瞳が、興味深そうに揺れた。
「……ハハッ、いいな、ここにきてまだ魂の色が変わってやがる。どんどん美味そうになってるな」
わたしは震える声で、叫ぶように言った。
「復讐したい……この家の人間、みんな……壊してやりたいの! わたしにできることなら、なんでもするから……っ!」
私のそんな言葉に空気が凍りつく。
レネリアもレオンも、顔を上げる。
そしてその瞬間、レネリアが「黙りなさい」と叫び、わたしに手を振り上げた
けれど、パチン、と音がして。
――世界が止まった。
悪魔が指を鳴らしたのだ。
「うるせぇ声。黙らせてやったから、ほら、続き、言ってみろよ」
凍った時間の中で、わたしと彼だけが動いていた。
「……わたしの復讐を手伝って。この家の人間、全部、あなたに喰わせてあげる……!」
「ははっ、無理無理」
悪魔は笑いながら首を横に振る。
「喰えるもんならとっくに喰ってるさ。スザンヌ家との契約は、100年に1度。“純潔の乙女”を一人だけ差し出すってのは決まりなんだ」
そのとき、悪魔の目から笑みが消えた。
ぞくりとするほど冷たい、怒りの気配。
「……そう…だが、契約は“100年に一度”だけ」
彼の声が、低く低く沈んでいく。
「まだ100年経ってねぇのに、勝手に“今年に前倒し”しやがったんだよなぁ」
わたしは息を呑んだ。
止まった世界の中、悪魔の指先から黒い炎が立ち上がる。
「本来なら、こんなもん――契約破棄で、スザンヌ家ごと全部、丸焼きにしてやってもいいんだけど、お前の魂は久々に美味そうだったから免じてやろうとも思ったが、お前の魂はまだ美味くなりそうだしなぁ」
笑っているのに、笑っていない。
「こいつらにはちょっと、仕置も必要だよなぁ“悪魔との契約を破る”ってのがどういうことかをよ」
その声に、わたしは必死に言葉を繋ぐ。
「だったら……! わたしが証明してみせる。この家の連中を、契約破った愚か者たちを地獄へ突き落としてやる!」
悪魔の紅い瞳が、細く笑った。
「ククッ、いいな……お前」
「いま喰うより、復讐と怨念で熟成させてから喰うとするか」
「……!」
「俺も少し飽きてたんだよ、この家。願い事も似たり寄ったりで、魂の味もマンネリ気味だったしな」
悪魔は、不敵に微笑む。
「いいだろう。お前の復讐、付き合ってやる。“記憶の保持”と“巻き戻し”か。
お前の魂をもっともっと熟れさせろよ。それじゃなきゃ、割に合わないからな」
「……ええ、わかったわ」
悪魔は、わたしの額に手をかざす。
「“生まれたて”だと記憶が馴染まねぇからな。ある程度物心がついてたほうが都合がいい。そうだな――“5歳”にしてやるよ。
俺の名は【ディアブロ】。契約するなら、名を呼んでみな」
わたしは、ひとつ深く息を吸った。
「ディアブロ……あなたと契約するわ!」
その瞬間、礼拝堂の空間が崩れはじめる。
レネリアもレオンも、景色の中で溶け、歪んで、遠ざかっていった。
足元が消え、天井が落ち、世界が反転する。
最後に聞こえたのは――
「思う存分、もがいて、憎んで、壊してみせろよ。
……お前の魂が、いちばん美味しくなるようにな」
それが、悪魔とわたしの、“最初の契約”だった。
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