【完結】愛してました、たぶん   

たろ

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愛が壊れた日

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王宮での夜会。

夫のラウルと共に参加した。

ダンスが終わり休憩の間、ラウルと離れた。
久しぶりに会う友人達とワインを飲みながら楽しく会話をしていた。

(あら?ラウルはどこに行ったのかしら?)

会場を見回したけどどこにもいなかった。

(友人達とシガールームに行ったのかしら?)

それなら、わたしは少し夜風にでも当たりたいわ。お酒があまり強くないので夜風にでも当たって少し火照った頬を落ち着かせよう。

バルコニーを出て、ランタンの光に照らされた庭園の美しさにうっとりとしていたら、酔いが少し回ってきたのかフラッと倒れそうになった。
運悪く右耳のダイヤのイヤリングを下に落としてしまった。
(どうしよう、ラウルからのプレゼントなのに)

慌ててバルコニーにある階段を降りて庭園に落ちたはずのイヤリングを探した。
(見つからないわ、どこに行ったのかしら?)

暗くて中々見つからず必死で探していると、奥から聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「愛してる」

「わたしも貴方を愛しているわ」

(え?ラウル?……アイリス……)

ベンチでふたりが抱き合いながら激しいキスをしていた。

・・・・・

「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」

「いつまで待っていればいいの?」

わたしは、呆然としてしまった。

しばらくして我に返ると、ここにはこれ以上いられなくて慌ててその場を離れた。

夜会が終わりラウルは、妻の体調を気にしてか馬車の中でも優しく声をかけてきた。
隣に座り抱き寄せて
「大丈夫かい?」
と言われたが、さっきのことを思い出すとラウルの手も身体も全てが汚くて気持ち悪い。わたしは気分が悪そうにしながら彼から離れ窓のほうに身体を移した。

邸に着くと馬車を降りる時には、手を差し伸べ抱き寄せてくれた。

(ああ、気持ちが悪いわ)

普段だったらラウルの優しさに、微笑み返して彼を愛おしく見てしまうのに、今夜はラウルの声を聞くのもその手に触られるのも、ましてや抱かれるのなんてとてもとても気持ちが悪かった。

「お酒に酔ったみたい、ラウル、ごめんなさい、今夜は自分の部屋で横になってもいいかしら?」

真っ青になって震えているシャノンを見て、ラウルは、
「シャノン、大丈夫かい?
ぼくが今夜はあまりそばにいてあげられなかったからすまなかった。ゆっくり休んでくれ」


部屋に戻り、疲れて少し体調が悪いと断りラウルと普段一緒に寝る主寝室ではなく隣のシャノンの部屋に入ると侍女のロニーが着替えを手伝ってくれた。

「ロニー、ありがとう、今夜は体調がよくないのでこちらの部屋で寝るわ」

「奥様、お顔が真っ青です。ごゆっくりされて下さい。何かありましたらすぐにベルを鳴らして下さい。飛んで参りますので」

「ええ、ゆっくり寝かせてもらうわね」

ベッドに一人で横になった。

目を瞑ると、夜会での二人の姿がありありと浮かんでくる。

二人のキスをする姿、二人の愛の言葉、二人の抱き合う姿。

庭園のランタンに映り出された姿はとても綺麗でお似合いだった。
わたし……一度もラウルに愛しているなんて言われたことなかったわ。

わたしも恥ずかしくて彼に素直に好きだと愛していると言ったことも態度で示したこともない。

アイリスのように可愛らしく素直な気持ちを伝えることなんて出来なかった。

わたしはラウルを愛していたのに、裏切られていたんだわ。

ラウルのことを相談していたのに、一番の友人だと思っていたのにアイリスは、わたしを裏切っていたのね。

わたしって、ほんとお間抜けね、二人は愛し合っていたのに、わたしは全く気づきもしないで過ごしていたのね。

「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
ラウルの言葉が、胸をずきずきと抉る。

いつ別れを切り出されるのかしら?
わたしは、これからどうすればいいの・・・

実家に帰る……お父様はお許しにはならないわ、政略結婚だもの、両家が今共同で行っている商会の運営にも影響が出るだろうし、ラウルは簡単に離縁できると思っているのかしら?

わたしは眠れない夜を過ごした。
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