69 / 89
アイリスのお父様
アイリスが捕まったのは2か月前。
殺人未遂と拉致監禁の罪だった。
さらに違法薬物所持と販売。
さらにベルアート公爵家へのストーカー行為。
息子二人は文官を辞めざるを得なかった。
アイリスは人として、やってはいけない事まで行っている。
薬物中毒の副作用で人格も破壊されている。
自分に全てを都合よく受け取ってしまう。
他人の話はまともに入ってこないみたいだ。
宰相に呼ばれたわたし達親子は、アイリスの処遇について説明された。
アイリスは精神異常をきたし、罪に問われることなく無罪になると言われた。
まさかと思ったが、続きがあった。
精神科の病院に生涯入院することになる。
しかも国立病院の病棟に入ることになった。
というのは建前で、隣にある国立医療研究所に入り、違法薬物や新薬などの人体実験として死ぬまで薬を与え続けられることになった。
アイリスは、何故こんな事になったのだろうか。
可愛がりすぎて甘やかしたことは否めないが、そこまで酷いことをする娘ではなかったと思う。
幼い頃から近くに住んでいたシャノン様と交流があったアイリス。
我が家より格も金銭的にもかなり上の人である。
着る物も全て高級品。
シャノン様は誰もが振り返る気品と美しさを子どもの頃から持っていた。
さらに大人しく儚さが庇護欲を唆る。
アイリスの後ろに隠れ、いつもアイリスに守られて過ごした。
アイリスは劣等感と優越感が混ざり合っていたのではないかと今更ながら振り返ったら思う。
子どもの頃からシャノン様の物をよく欲しがった。
そしてシャノン様もすぐにアイリスに譲ってくれた。
『シャノンはどんな高価な物でも簡単に手放して譲ってくれるの』
と、アイリスが嬉しそうに言っていた。
ただ、亡くなったお母様の形見だけは何度頼んでも譲ってくれないと、怒っていた。
それは欲しがってはいけない物だと教えたのだが、アイリスからすれば何でもくれるシャノン様がくれない方がおかしいと怒る。
アイリスには、善悪がわからないところがあったようだ。
何度教えても納得しない。
アイリスの考えは
『他人のモノは自分のモノ
自分のモノは自分のモノ』
他人に注目されてちやほやされて優越感に浸って、みんなに可愛い笑顔で癒しを与える。
本当は、癒しなど与えていなかった。笑顔はあざとく自分のためになるから笑っていただけだった。
自分の娘の真の姿に気づきもせず、娘を放置してしまったわたし達夫婦の罪は重い。
息子達の将来も潰してしまった。
わが伯爵家は降爵され男爵となった。
領地も半分になり、これからは金銭的にも大変な状況になる事がわかっている。
長男夫婦に、爵位を譲ったわたし達夫婦は領地の僻地の小さな誰もいない家に住んだ。
次男夫婦は、平民となり長男の男爵の仕事の補助をしながら生きている。
わたし達夫婦は、自分たちで家事などしたことがなかった。
「貴方、お腹が空いたわ」
と言って、座って待っている妻に
「コップに水くらい注いでくれ」
と言うと、
「そんな事できませんわ」
と、返事が返ってくる。
わたしはまともに料理をしたことなどなかったが、今は焼くだけ、炒めるだけ、買ってくるだけ、切るだけの料理ならなんとか出来るようになった。
「掃除くらいしたらどうだ」
「洗濯くらい少し手伝ってくれ」
「食器くらい洗ってはくれぬか?」
全て妻は言う。
「わたしそんな事出来ませんわ」
妻がおかしいと気がついたのは、この家に来てしばらく経ってからだった。
妻はこの家に来る時泣きもせず黙ってついてきた。
ただ、ついてきただけだったのだ。
妻はとても愛らしい女性だった。
いつもニコニコしていてわたしを癒してくれる存在だった。
わたしに文句も言わず何があっても笑顔が可愛らしい女性であった。
アイリスの事は、全てを話してはいない。
アイリスは、人に巻き込まれて罪を犯した。その犯罪の所為で我が家は降爵されたと話した。
妻は茶会や夜会に呼ばれなくなった頃から人と接することが減っていた。今はもうわたしと二人っきり。
何かを問いかけても目は虚で今の現状に文句も言わず動きもせずじっと座って微笑んでいるだけ。
わたしが食事を与えなかったらこのまま死んでしまうだろう。
わたしが風呂に入れなければ汚いままだろう。
彼女の心は、壊れていたのだ。
わたしの心ももう壊れている。
息子たちからの援助はない。
今は妻に買い与えた宝石やドレスを売った金で生活しているがいつかはなくなる。
わたしは平民の仕事などした事もない。
壊れた妻に気づいたわたしは、アイリスが受けている新薬の実験体となった。
それを医療研究所の監察官が常に監視して報告書を作っていく。
いつまで続くかわからない地獄。
しかしアイリスも受けていることを考えればわたしもおかしくなった妻も受け入れることで、少しは贖罪になるのではと思ったのだった。
殺人未遂と拉致監禁の罪だった。
さらに違法薬物所持と販売。
さらにベルアート公爵家へのストーカー行為。
息子二人は文官を辞めざるを得なかった。
アイリスは人として、やってはいけない事まで行っている。
薬物中毒の副作用で人格も破壊されている。
自分に全てを都合よく受け取ってしまう。
他人の話はまともに入ってこないみたいだ。
宰相に呼ばれたわたし達親子は、アイリスの処遇について説明された。
アイリスは精神異常をきたし、罪に問われることなく無罪になると言われた。
まさかと思ったが、続きがあった。
精神科の病院に生涯入院することになる。
しかも国立病院の病棟に入ることになった。
というのは建前で、隣にある国立医療研究所に入り、違法薬物や新薬などの人体実験として死ぬまで薬を与え続けられることになった。
アイリスは、何故こんな事になったのだろうか。
可愛がりすぎて甘やかしたことは否めないが、そこまで酷いことをする娘ではなかったと思う。
幼い頃から近くに住んでいたシャノン様と交流があったアイリス。
我が家より格も金銭的にもかなり上の人である。
着る物も全て高級品。
シャノン様は誰もが振り返る気品と美しさを子どもの頃から持っていた。
さらに大人しく儚さが庇護欲を唆る。
アイリスの後ろに隠れ、いつもアイリスに守られて過ごした。
アイリスは劣等感と優越感が混ざり合っていたのではないかと今更ながら振り返ったら思う。
子どもの頃からシャノン様の物をよく欲しがった。
そしてシャノン様もすぐにアイリスに譲ってくれた。
『シャノンはどんな高価な物でも簡単に手放して譲ってくれるの』
と、アイリスが嬉しそうに言っていた。
ただ、亡くなったお母様の形見だけは何度頼んでも譲ってくれないと、怒っていた。
それは欲しがってはいけない物だと教えたのだが、アイリスからすれば何でもくれるシャノン様がくれない方がおかしいと怒る。
アイリスには、善悪がわからないところがあったようだ。
何度教えても納得しない。
アイリスの考えは
『他人のモノは自分のモノ
自分のモノは自分のモノ』
他人に注目されてちやほやされて優越感に浸って、みんなに可愛い笑顔で癒しを与える。
本当は、癒しなど与えていなかった。笑顔はあざとく自分のためになるから笑っていただけだった。
自分の娘の真の姿に気づきもせず、娘を放置してしまったわたし達夫婦の罪は重い。
息子達の将来も潰してしまった。
わが伯爵家は降爵され男爵となった。
領地も半分になり、これからは金銭的にも大変な状況になる事がわかっている。
長男夫婦に、爵位を譲ったわたし達夫婦は領地の僻地の小さな誰もいない家に住んだ。
次男夫婦は、平民となり長男の男爵の仕事の補助をしながら生きている。
わたし達夫婦は、自分たちで家事などしたことがなかった。
「貴方、お腹が空いたわ」
と言って、座って待っている妻に
「コップに水くらい注いでくれ」
と言うと、
「そんな事できませんわ」
と、返事が返ってくる。
わたしはまともに料理をしたことなどなかったが、今は焼くだけ、炒めるだけ、買ってくるだけ、切るだけの料理ならなんとか出来るようになった。
「掃除くらいしたらどうだ」
「洗濯くらい少し手伝ってくれ」
「食器くらい洗ってはくれぬか?」
全て妻は言う。
「わたしそんな事出来ませんわ」
妻がおかしいと気がついたのは、この家に来てしばらく経ってからだった。
妻はこの家に来る時泣きもせず黙ってついてきた。
ただ、ついてきただけだったのだ。
妻はとても愛らしい女性だった。
いつもニコニコしていてわたしを癒してくれる存在だった。
わたしに文句も言わず何があっても笑顔が可愛らしい女性であった。
アイリスの事は、全てを話してはいない。
アイリスは、人に巻き込まれて罪を犯した。その犯罪の所為で我が家は降爵されたと話した。
妻は茶会や夜会に呼ばれなくなった頃から人と接することが減っていた。今はもうわたしと二人っきり。
何かを問いかけても目は虚で今の現状に文句も言わず動きもせずじっと座って微笑んでいるだけ。
わたしが食事を与えなかったらこのまま死んでしまうだろう。
わたしが風呂に入れなければ汚いままだろう。
彼女の心は、壊れていたのだ。
わたしの心ももう壊れている。
息子たちからの援助はない。
今は妻に買い与えた宝石やドレスを売った金で生活しているがいつかはなくなる。
わたしは平民の仕事などした事もない。
壊れた妻に気づいたわたしは、アイリスが受けている新薬の実験体となった。
それを医療研究所の監察官が常に監視して報告書を作っていく。
いつまで続くかわからない地獄。
しかしアイリスも受けていることを考えればわたしもおかしくなった妻も受け入れることで、少しは贖罪になるのではと思ったのだった。
あなたにおすすめの小説
恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ
棗
恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。
王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。
長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。
婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。
ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。
濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。
※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
【改稿版・完結】その瞳に魅入られて
おもち。
恋愛
「——君を愛してる」
そう悲鳴にも似た心からの叫びは、婚約者である私に向けたものではない。私の従姉妹へ向けられたものだった——
幼い頃に交わした婚約だったけれど私は彼を愛してたし、彼に愛されていると思っていた。
あの日、二人の胸を引き裂くような思いを聞くまでは……
『最初から愛されていなかった』
その事実に心が悲鳴を上げ、目の前が真っ白になった。
私は愛し合っている二人を引き裂く『邪魔者』でしかないのだと、その光景を見ながらひたすら現実を受け入れるしかなかった。
『このまま婚姻を結んでも、私は一生愛されない』
『私も一度でいいから、あんな風に愛されたい』
でも貴族令嬢である立場が、父が、それを許してはくれない。
必死で気持ちに蓋をして、淡々と日々を過ごしていたある日。偶然見つけた一冊の本によって、私の運命は大きく変わっていくのだった。
私も、貴方達のように自分の幸せを求めても許されますか……?
※後半、壊れてる人が登場します。苦手な方はご注意下さい。
※このお話は私独自の設定もあります、ご了承ください。ご都合主義な場面も多々あるかと思います。
※『幸せは人それぞれ』と、いうような作品になっています。苦手な方はご注意下さい。
※こちらの作品は小説家になろう様でも掲載しています。
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
【完結】365日後の花言葉
Ringo
恋愛
許せなかった。
幼い頃からの婚約者でもあり、誰よりも大好きで愛していたあなただからこそ。
あなたの裏切りを知った翌朝、私の元に届いたのはゼラニウムの花束。
“ごめんなさい”
言い訳もせず、拒絶し続ける私の元に通い続けるあなたの愛情を、私はもう一度信じてもいいの?
※勢いよく本編完結しまして、番外編ではイチャイチャするふたりのその後をお届けします。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。