【完結】母になります。

たろ

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ミルフォードの街へ行こう!②

 ミルフォードの街は思った以上に変わっていた。16歳の時の記憶よりも今はさらに発展して街並みはきれいに整備され、お洒落なカフェや高級なレストランも増えていた。
 少し離れたところには高級なホテルが立ち並び、そのホテル全てをグレイ様が所有しているのだと、アリアが教えてくれた。

「旦那様はとても優秀な方なんです。この街は服飾のおかげで有名になりました。
 たくさんの人が集まるようになりそれをさらに発展させるために、靴や帽子、宝石などを取り扱うお店をたくさん誘致いたしました。
 そして高位貴族の方々がお金を落としてもらえるようにさらにホテルを建てて集客力をあげたのです。
 ここの領民達は皆感謝しております。グレイ様のおかげで平民も学校へ通えますし、孤児院の子供達にもきちんと教育の機会を与えてあげることができています」

「グレイ様は……無愛想で無口だけど……とても領民達のことを考えて行動されているのね。騎士としてもお忙しいのに……カルロ達が支えてくれているのね?」

「カルロも含めわたし達は旦那様を支える身であります。誠心誠意尽くさせていただくことが幸せなのです」



 子供達は目をキラキラさせてキョロキョロとしていた。街並みはだけでも見ていて楽しそう。道の真ん中にある噴水を見つけ二人は手を繋いで走り出した。護衛の騎士達も慌てて追いかける。

「すっごぉい!」
 ノエル君はただ物珍しいみたい。

「ノエル、あっち、ほら、かわいいおようふく、あるの」
 アリスちゃんはさすが女の子。噴水よりお店屋さんに興味津々。

 さっきも歩いている間、子供ながらに可愛らしいドレスやきれいな宝石をショーウィンドウで見つけるたびに「あ、あれ!」「可愛い」と言っていた。

 だけど、なんでも欲しがる年頃なのに二人とも全く何も欲しがらない。

 そろそろ喉も渇くころだろう。
 それなのに一言も疲れたとかお腹が空いたとか言わない。
 大人の歩調に合わせて歩くと子供達はテクテクとついてきてくれる。その姿がまた可愛らしい。

 洋服屋さんにいって、子供達の寸法を大まかに測ってもらった。

 そこで子供達はジュースを出してもらい嬉しそうに飲んでいた。

 そして何も買わずにお店を出た。

 本人達は「もうかえるの?」と心配そうに聞いてきた。

 せっかくの楽しい時間がもう終わるのだろうと思ったみたい。

「このお店ではアリスちゃんの可愛いドレス姿を見たくて注文したのよ?もちろんノエル君にも!楽しみだわ」

「たのしみ?」

「ええ、アリスちゃんがお姫様みたいにきれいなドレスを着るのよ?」

「うっわあ!アリス、かわいいの?」

「ノエル君はね、カッコよくなるのよ」

「ぼく、おおじさま?」

「ノエル、『おおじ』じゃなくて『おうじ』だよ?」

 アリスちゃんの言葉に「うーん……おなじだよ」と何を言ってるのかわからないという顔をしているノエル君。

 アリスちゃんは二つの言葉の違いを何度も口に出して言っているのだけど、どちらも同じ言葉に聞こえるノエル君。

「もうどっちでもいい」
 アリスちゃんは仕方なく諦めた。

 わたしとアリアとタバサはお互いの顔を見てクスクス笑った。

「ねぇ、お腹が空かないかしら?」

「おなかぺこぺこぉ」
「アリスも……ちょっと…」

 アリスちゃんはいつも遠慮しがちに返事をする。こんな時大人のわたしはどう接するべきなのか思い悩む。

『遠慮しなくていいの』そう言いたいけど、立場的には言えない。貴族として振る舞うなら本当は街に連れて来ることも一緒に過ごすこともしてはいけない。

 グレイ様がお優しいから何も言わないけど、普通ならわたし、叱られて当たり前の行動ばかりしている自覚はある。


「よし!どこかで昼食にしましょう」

「わぁい!」
「ノエル、よかったね?」
「うん!えっとぉ、おにくにケーキ、アイスクリームも、それからぁ、ウインナーさんも。アリスは?」
「アリスは、わかんない。めのまえにだしてくれたら、どんなものでも、かみに、かんしゃしていただくわ」

「そうね、わたしもこの辺は全くわからないから、アリアがおすすめのお店にしましょうか?」

 アリアが子供達を見てにっこりと微笑むと

「わたしの友人がお店を出しているのですがそこなら子供の好きなものをとお願いすれば作ってくれます」

「すきなもの?」
「そこがいいな」

「じゃあ決まりね。食事をしてお腹いっぱいになったら公園で少し遊んでから帰りましょうね」

「こうえんってなに?」

「えー、知らないのか。子供達が走り回って遊べるところなのよ」

「いっくぅ!ぜったい、いく!」
「アリスもいきたい!」

「じゃあ、まずはお腹いっぱいにしましょう」

「「うん!」」



 アリアの友人のお店は、子供達に気が付きすぐにお子様用のランチを作ってくれた。

 可愛く飾られたお料理に、ニコニコの笑顔で二人は残さずに食べてくれた。

 そして公園へ連れて行くとそこには木でできた遊具がいくつかあって子供達は夢中で遊び始めた。

 シーソーや滑り台は最初怖がったけど慣れれば「もういっかい!」と言って、あまりの元気に護衛の騎士達に面倒をみてもらうことになった。
 さすがにわたし達女性の体力ではついていけないので、ベンチで三人でお話をして二人の姿をのんびりと眺めることにした。

 初めて二人を見た時にはあまりにもひどい状態で、この子達は生きられるのだろうかと思ってしまった。それが今ではわらって、走って、いっぱい楽しんで生きてくれている。

 この子達の笑顔を守りたい。その気持ちはわたしの隣にいるアリアからも伝わる。

 アリスちゃんを彼女になら安心して託すことができる。ノエル君は少し寂しがるかもしれないけど二人は侯爵家の使用人用の家に住んでいて同じ敷地。

 毎日会うこともできる。

 それに、アリスちゃんの将来を考えれば今の状態よりもきちんとアリスちゃんの家族を作ってあげることが一番いい。

「アリア、あなたはアリスちゃんの母親になりたい?」

「ティア様!」反対の隣からタバサがわたしの名前を呼ぶ。

 いきなりの発言に慌てたようだ。

「ティア様……わたしには子供ができませんでした。もうそれ自体は仕方がないと諦めております。夫のカルロも夫婦だけで幸せに暮らそうと言ってくれます。ノエル様の幸せを見守っていたつもりでした。
 なのにわたし達はノエル様が酷い目にあっていることにも気が付かず、アリスちゃんが虐待されていることにも気が付きませんでした。
 アンミリカさんがそれだけ上手く隠していたとは言え子供達には申し訳ないことをしたと思っております。そんなわたし達にアリスちゃんを可愛がる資格はあるのか悩みました。
 でもあの子がとても可愛くて仕方がありません。どうかわたしに母親になる資格を与えてもらえないでしょうか?」

「………わたしも同じだわ。資格なんてないもの」



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