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わたしは誰かと婚約します
仕事もなんとか頑張っていつも通りに作業できるようになった。
食欲も以前に比べて増えた。
体重もそれに伴い少しだけど増えた。
貧血も少しだけ良くなった。
そしてわたしはもうすぐ婚約をする。
相手は……知らない。
興味がない。
カムリがわたしが倒れてから心配して寮を引き払い戻ってきた。
「姉上、僕ももうすぐ学園を卒業します、もう姉上だけに苦労はさせません。だから一番支度金が多い人のところにお嫁に行くなんて馬鹿なことはやめてください!」
「あら?だっていつかは誰かと結婚するのよ?だったらお金を持っている人のところにお嫁に行きたいわ。愛なんてなくてもお金さえあればいいの。
お金があればみんなに美味しいものを食べさせてあげられるし、グレイやアイシンにもお下がりではなくて新しい服を買ってあげられるわ」
「姉上、もうお金の心配は無用です、借金も返したし、父上もきちんと働いています。家賃収入もあるし、少しですが領地収入も黒字になっています」
「そうね、でもね、結婚しないといけないのならもう誰でもいいの。愛なんて必要ないのよ」
そして今日、めでたく知らない人と婚約することになった。
わたしはお父様と馬車に乗り、その知らない人のところに向かった。
場所は……
何故?
ここは王宮だよ?
「お、お父様……わたしは何処へ向かっているのですか?確か今日は婚約式ですよね?」
「そうだ、セスティの婚約者がここで待っているんだ……はああ」
(その大きなため息は何?)
わたしはお父様の横顔をジロッと見た。
お父様はわたしから目を逸らした。
(わ、わたし、もしかして間違えた?絶対選んではいけない人の婚約者になろうとしているの?)
そして、わたしが連れてこられたのは……
「え?お、王……こ、国王陛下?」
わたしは慌てて頭を下げた。
「国王陛下にご、ご挨拶申し上げます」
(か、かんだ!)
(うっ……ここは笑顔、笑わなきゃ)
わたしは張り付いた引き攣った笑顔で陛下の顔を見た。
「セスティ・アイバーン、君が噂の男爵令嬢だね」
「へ?」
(うっ…また変な声がででしまった)
「は、はい⁈」
「息子の婚約解消の時には辛い思いをさせてすまなかった。
君とランドル・グリーンティア伯爵令息の婚約解消はうちの息子が無理矢理させたんだ」
「え?」
「自分の婚約解消の邪魔になるからと言って、ランドル・グリーンティア伯爵令息を婚約解消させて留学させてしまったんだ。噂が間違いだったと否定されると困るからという理由でな」
「わ、わたし……」
あんなに辛い思いをしたのは全てこの殿下達の婚約解消の所為?
わたしの婚約解消も殿下が無理矢理?
わたしは陛下の斜め後ろに立っている殿下をアホのように見ていた。
頭が回らない。
あの苦しい辛い日々をわたしに与えたのは……全てこの人?
わたしは公爵令嬢のミリア・ジェファード様の所為だと思っていた。
それも彼女が学園から姿を見なくなってから知った話だった。
今更恨むこともできず諦めていた。
でももう一人わたしを苦しめた元凶がここに居る。
わたしは気付けば叫んでいた。
「あ、貴方の所為でわたしはずっと何にもしていないのに悪口を言われ陰口を言われ、無視されてずっとずっと一人だったんです!
貴方の所為で!」
わたしは涙が溢れてきた。
「わたしが何をしたというのですか?何もしていません。なのに、なのに……小説に出てくるみたいに王子を婚約者から奪った男爵令嬢にわたしが似ているから?
そんなくだらない理由でわたしはずっと苦しめられました。
殿下の顔を見るだけで、い、今も吐き気がして体が震えます……
あ、貴方なんか大っ嫌いです!」
「やめなさい、セスティ!」
お父様がわたしの発言を止めようとした。
「嫌です!ずっと苦しめられてきたんですから!
お父様だってそうでしょう?
お母様が亡くなってずっと落ち込んで引き篭もって!領地のことも我が家のことも全部13歳からわたしに任せて!
外に出れば犬や猫を拾ってきて!
最後は子供まで拾ってきて!
家賃の集金に行かせれば家賃をもらうどころかお金を貸して逃げられるし!
わたしが栄養失調と過労で入院したのもお父様の所為です!
まともにお金がないのにお父様が拾ってきた子達にご飯食べさせたら自分が食べるものがなかったんです!お母様の絵を思い出だからと売りたがらない!
お母様の絵は大事です、でもお父様はわたし達の命はどうでも良かったんですよね?
みんなみんな嫌いです!
わたしのこの見た目はわたしの所為ではありません!
でもお母様から受け継いだ大切な体です!
それなのに……みんな、大っ嫌い!」
興奮して陛下の前だと忘れて大きな声で叫んでいた。
「セスティ・アイバーン、よく言ったわ!」
振り返るとイリーンさんが居た。
え?何故ここに?
「イ、イリーンさん⁈」
「陛下、お久しぶりでございます」
「イリーン、報告は全て受け取った」
食欲も以前に比べて増えた。
体重もそれに伴い少しだけど増えた。
貧血も少しだけ良くなった。
そしてわたしはもうすぐ婚約をする。
相手は……知らない。
興味がない。
カムリがわたしが倒れてから心配して寮を引き払い戻ってきた。
「姉上、僕ももうすぐ学園を卒業します、もう姉上だけに苦労はさせません。だから一番支度金が多い人のところにお嫁に行くなんて馬鹿なことはやめてください!」
「あら?だっていつかは誰かと結婚するのよ?だったらお金を持っている人のところにお嫁に行きたいわ。愛なんてなくてもお金さえあればいいの。
お金があればみんなに美味しいものを食べさせてあげられるし、グレイやアイシンにもお下がりではなくて新しい服を買ってあげられるわ」
「姉上、もうお金の心配は無用です、借金も返したし、父上もきちんと働いています。家賃収入もあるし、少しですが領地収入も黒字になっています」
「そうね、でもね、結婚しないといけないのならもう誰でもいいの。愛なんて必要ないのよ」
そして今日、めでたく知らない人と婚約することになった。
わたしはお父様と馬車に乗り、その知らない人のところに向かった。
場所は……
何故?
ここは王宮だよ?
「お、お父様……わたしは何処へ向かっているのですか?確か今日は婚約式ですよね?」
「そうだ、セスティの婚約者がここで待っているんだ……はああ」
(その大きなため息は何?)
わたしはお父様の横顔をジロッと見た。
お父様はわたしから目を逸らした。
(わ、わたし、もしかして間違えた?絶対選んではいけない人の婚約者になろうとしているの?)
そして、わたしが連れてこられたのは……
「え?お、王……こ、国王陛下?」
わたしは慌てて頭を下げた。
「国王陛下にご、ご挨拶申し上げます」
(か、かんだ!)
(うっ……ここは笑顔、笑わなきゃ)
わたしは張り付いた引き攣った笑顔で陛下の顔を見た。
「セスティ・アイバーン、君が噂の男爵令嬢だね」
「へ?」
(うっ…また変な声がででしまった)
「は、はい⁈」
「息子の婚約解消の時には辛い思いをさせてすまなかった。
君とランドル・グリーンティア伯爵令息の婚約解消はうちの息子が無理矢理させたんだ」
「え?」
「自分の婚約解消の邪魔になるからと言って、ランドル・グリーンティア伯爵令息を婚約解消させて留学させてしまったんだ。噂が間違いだったと否定されると困るからという理由でな」
「わ、わたし……」
あんなに辛い思いをしたのは全てこの殿下達の婚約解消の所為?
わたしの婚約解消も殿下が無理矢理?
わたしは陛下の斜め後ろに立っている殿下をアホのように見ていた。
頭が回らない。
あの苦しい辛い日々をわたしに与えたのは……全てこの人?
わたしは公爵令嬢のミリア・ジェファード様の所為だと思っていた。
それも彼女が学園から姿を見なくなってから知った話だった。
今更恨むこともできず諦めていた。
でももう一人わたしを苦しめた元凶がここに居る。
わたしは気付けば叫んでいた。
「あ、貴方の所為でわたしはずっと何にもしていないのに悪口を言われ陰口を言われ、無視されてずっとずっと一人だったんです!
貴方の所為で!」
わたしは涙が溢れてきた。
「わたしが何をしたというのですか?何もしていません。なのに、なのに……小説に出てくるみたいに王子を婚約者から奪った男爵令嬢にわたしが似ているから?
そんなくだらない理由でわたしはずっと苦しめられました。
殿下の顔を見るだけで、い、今も吐き気がして体が震えます……
あ、貴方なんか大っ嫌いです!」
「やめなさい、セスティ!」
お父様がわたしの発言を止めようとした。
「嫌です!ずっと苦しめられてきたんですから!
お父様だってそうでしょう?
お母様が亡くなってずっと落ち込んで引き篭もって!領地のことも我が家のことも全部13歳からわたしに任せて!
外に出れば犬や猫を拾ってきて!
最後は子供まで拾ってきて!
家賃の集金に行かせれば家賃をもらうどころかお金を貸して逃げられるし!
わたしが栄養失調と過労で入院したのもお父様の所為です!
まともにお金がないのにお父様が拾ってきた子達にご飯食べさせたら自分が食べるものがなかったんです!お母様の絵を思い出だからと売りたがらない!
お母様の絵は大事です、でもお父様はわたし達の命はどうでも良かったんですよね?
みんなみんな嫌いです!
わたしのこの見た目はわたしの所為ではありません!
でもお母様から受け継いだ大切な体です!
それなのに……みんな、大っ嫌い!」
興奮して陛下の前だと忘れて大きな声で叫んでいた。
「セスティ・アイバーン、よく言ったわ!」
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え?何故ここに?
「イ、イリーンさん⁈」
「陛下、お久しぶりでございます」
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