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もしも………ランドルと話し合いをしていたならば……
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ランドルの部屋で待っていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「はい?」
わたしは一応確認のため誰なのか確かめた。
「セスティ、僕だよ」
ランドルの声が聞こえてきた。
彼は鍵をわたしに渡して持っていないので鍵を開けて中に入ってもらった。
「待たせてごめん」
ランドルは申し訳なさそうに謝った。
「気にしないで、お仕事なのだから」
「すまない」
それからお互い椅子に座ると黙ってしまった。
「ねえ」
「なあ」
二人は同時に話そうとした。
「ふふ、ランドル、こうやって二人っきりで話すのは何年振りかしら?」
「うん、ごめん」
「どうして謝るの?」
「僕がずっとセスティに素直になれなかったから君を傷つけて実家に帰してしまった」
「あら?傷つけたことは認めてくれるの?」
「もちろんだ、ずっと後悔しかなかった。なんで婚約解消したんだろう、なんで留学なんかしたんだろう。戻ってきてすぐにでも会いに行けばよかった。もう一度プロポーズして君に愛していると言いたかった。
なのに君はお金が一番で支度金をたくさん払う人と結婚するなんて言い出すから僕は腹が立ったんだ」
「もうどうでもよかったの、幸せになんかなれないならお金を一番払ってくれる人と結婚しようって思ったの」
「そう思わせたのは僕なんだ……ごめん。もう一度僕とやり直してはくれないか?君が出ていってからずっとどうやって君を取り戻せるのか考えた。
でも結局答えは出なかった。
ただ、戻ってきて欲しい。失いたくない、君を愛しているんだ。素直になれなくてごめん、意地を張ってごめん。好きなんだ、愛しているんだ、手放すことなんてできない」
「ランドル……遅すぎるとは思わないの?もうわたしの心は貴方にはないと思わないの?」
「何度も思ったよ、君が僕を愛していないと……本当のことを知るのが怖かった。でも違うんだ、愛して欲しい、でもそれよりも僕が君を愛しているんだ、諦められない。必ず幸せにするから戻ってきて欲しい」
「冷たい目で見ない?」
「あ……いや、あれは、冷たい目で見ていたわけではないんだ。ただどうしていいかわからずに固まっていたんだ」
「あれが?とても怖かったわ」
「すまない……目つきが悪くて」
ランドルはシュンとなってなんだか可愛らしく見えた。
「優しくしてくれる?」
「もちろんだ。何があってもずっと優しくするよ」
「本当かしら?」
「当たり前だ!セスティだけが好きなんだ。ずっと優しい夫でいると誓うよ」
「……わたしね、まだ学園の時のことを思い出すと震えが止まらないの……だから、ランドルの事怖いとか嫌だとかまだ感じることもあるの……今は平気だけど…絶対大丈夫だとは言えないの。
貴方を傷つけるかもしれないわ」
「僕がそれだけセスティを傷つけてきたと言うことだ。そんなことで怒らないよ、また君が家を出ていってしまうことの方が辛い。もう二度と戻ってこないかもしれないと何度思ったか……会いにいっても会わせてもらえないし、君の職場からは立ち入り禁止を言い渡されたし」
「ふふ、みんないい人達なの」
「うん、君は大事にされているんだね」
「わたし……まだ仕事を続けたいの。もちろん子供が生まれたらしばらくは子育てをするわ。でもね、また働きたい」
「無理しないと約束してくれるなら反対はしないよ」
「昔に戻ったみたい」
「前はいつもお互いの気持ちを話し合っていたよね」
「……うん」
話しているうちに涙が溢れてきた。
もう二度とランドルと気持ちが重なることはないと思っていた。
婚約解消を言い渡された時、わたしの心は壊れてもう戻ることはないと思っていた。
「セスティ、ごめんね、手放してあげられない。愛しているんだ」
「わたしもランドルの事ずっと忘れられなくて、でも何度も忘れようと思ったの」
ランドルはわたしの涙を手でそっと拭くと、わたしの目にキスを落とした。
◇ ◇ ◇
「貴方!リンバートを止めて!」
セスティが奥から大きな声を出した。
リンバートが僕に向かって裸で走ってきた。
「リンバートはどうしたんだ?」
「お風呂に入ってそのまま逃げ出してきたの」
「とうたま、だっこ」
2歳になったばかりのリンバートはわんぱくでとても元気だ。
今、イヤイヤ期に入って、セスティの言うことをなかなか聞かない。
「もうリンバート!床が濡れてしまったじゃない!」
「かあたま、いやぁ」
リンバートが僕に抱っこされてセスティに向かってプクッと頬を膨らませて怒っていた。
「母様もいや!」
セスティもリンバートにムキになっていた。
「二人とも同じ顔して……ぷっ!クスクス……」
僕が笑うとリンバートが
「かあたまもわらって、ねっ?」
と、セスティにおねだりしていた。
「もう!仕方ないわね」
セスティもリンバートの言い方が可愛くて笑い出した。
(ああ、なんて幸せなんだ。セスティ、僕は君を幸せにすると言ったけど二人に幸せをもらっているのは僕なんだ)
「ランドル?どうしたの?ボーッとしているわ」
「うん、幸せだなって思ったんだ」
「え?突然?……そうね、わたしも幸せだわ」
「はい?」
わたしは一応確認のため誰なのか確かめた。
「セスティ、僕だよ」
ランドルの声が聞こえてきた。
彼は鍵をわたしに渡して持っていないので鍵を開けて中に入ってもらった。
「待たせてごめん」
ランドルは申し訳なさそうに謝った。
「気にしないで、お仕事なのだから」
「すまない」
それからお互い椅子に座ると黙ってしまった。
「ねえ」
「なあ」
二人は同時に話そうとした。
「ふふ、ランドル、こうやって二人っきりで話すのは何年振りかしら?」
「うん、ごめん」
「どうして謝るの?」
「僕がずっとセスティに素直になれなかったから君を傷つけて実家に帰してしまった」
「あら?傷つけたことは認めてくれるの?」
「もちろんだ、ずっと後悔しかなかった。なんで婚約解消したんだろう、なんで留学なんかしたんだろう。戻ってきてすぐにでも会いに行けばよかった。もう一度プロポーズして君に愛していると言いたかった。
なのに君はお金が一番で支度金をたくさん払う人と結婚するなんて言い出すから僕は腹が立ったんだ」
「もうどうでもよかったの、幸せになんかなれないならお金を一番払ってくれる人と結婚しようって思ったの」
「そう思わせたのは僕なんだ……ごめん。もう一度僕とやり直してはくれないか?君が出ていってからずっとどうやって君を取り戻せるのか考えた。
でも結局答えは出なかった。
ただ、戻ってきて欲しい。失いたくない、君を愛しているんだ。素直になれなくてごめん、意地を張ってごめん。好きなんだ、愛しているんだ、手放すことなんてできない」
「ランドル……遅すぎるとは思わないの?もうわたしの心は貴方にはないと思わないの?」
「何度も思ったよ、君が僕を愛していないと……本当のことを知るのが怖かった。でも違うんだ、愛して欲しい、でもそれよりも僕が君を愛しているんだ、諦められない。必ず幸せにするから戻ってきて欲しい」
「冷たい目で見ない?」
「あ……いや、あれは、冷たい目で見ていたわけではないんだ。ただどうしていいかわからずに固まっていたんだ」
「あれが?とても怖かったわ」
「すまない……目つきが悪くて」
ランドルはシュンとなってなんだか可愛らしく見えた。
「優しくしてくれる?」
「もちろんだ。何があってもずっと優しくするよ」
「本当かしら?」
「当たり前だ!セスティだけが好きなんだ。ずっと優しい夫でいると誓うよ」
「……わたしね、まだ学園の時のことを思い出すと震えが止まらないの……だから、ランドルの事怖いとか嫌だとかまだ感じることもあるの……今は平気だけど…絶対大丈夫だとは言えないの。
貴方を傷つけるかもしれないわ」
「僕がそれだけセスティを傷つけてきたと言うことだ。そんなことで怒らないよ、また君が家を出ていってしまうことの方が辛い。もう二度と戻ってこないかもしれないと何度思ったか……会いにいっても会わせてもらえないし、君の職場からは立ち入り禁止を言い渡されたし」
「ふふ、みんないい人達なの」
「うん、君は大事にされているんだね」
「わたし……まだ仕事を続けたいの。もちろん子供が生まれたらしばらくは子育てをするわ。でもね、また働きたい」
「無理しないと約束してくれるなら反対はしないよ」
「昔に戻ったみたい」
「前はいつもお互いの気持ちを話し合っていたよね」
「……うん」
話しているうちに涙が溢れてきた。
もう二度とランドルと気持ちが重なることはないと思っていた。
婚約解消を言い渡された時、わたしの心は壊れてもう戻ることはないと思っていた。
「セスティ、ごめんね、手放してあげられない。愛しているんだ」
「わたしもランドルの事ずっと忘れられなくて、でも何度も忘れようと思ったの」
ランドルはわたしの涙を手でそっと拭くと、わたしの目にキスを落とした。
◇ ◇ ◇
「貴方!リンバートを止めて!」
セスティが奥から大きな声を出した。
リンバートが僕に向かって裸で走ってきた。
「リンバートはどうしたんだ?」
「お風呂に入ってそのまま逃げ出してきたの」
「とうたま、だっこ」
2歳になったばかりのリンバートはわんぱくでとても元気だ。
今、イヤイヤ期に入って、セスティの言うことをなかなか聞かない。
「もうリンバート!床が濡れてしまったじゃない!」
「かあたま、いやぁ」
リンバートが僕に抱っこされてセスティに向かってプクッと頬を膨らませて怒っていた。
「母様もいや!」
セスティもリンバートにムキになっていた。
「二人とも同じ顔して……ぷっ!クスクス……」
僕が笑うとリンバートが
「かあたまもわらって、ねっ?」
と、セスティにおねだりしていた。
「もう!仕方ないわね」
セスティもリンバートの言い方が可愛くて笑い出した。
(ああ、なんて幸せなんだ。セスティ、僕は君を幸せにすると言ったけど二人に幸せをもらっているのは僕なんだ)
「ランドル?どうしたの?ボーッとしているわ」
「うん、幸せだなって思ったんだ」
「え?突然?……そうね、わたしも幸せだわ」
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