【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

文字の大きさ
10 / 97

10話  カイザ編②

しおりを挟む

「お前はでは病室で聞こえた話はなかったことにするんだな」

「お父様、そんなことは言っていません。でも実際何もないんです」

「じゃあ、どうして病室でアイシャとメリッサがそんな話をしていたんだ!」

わたしは二人の態度に腹が立った。
アイシャのことを心配しながらもターナのことは信じたいという気持ちはわかる。

しかし真実を見ようとせず目を逸らそうとしているのが手にとって分かる。

「ターナは少し甘えん坊なところがあります。だからアイシャに対しても我儘を言ってしまうのだと思います。それがアイシャには意地悪なのだと感じただけなんです」

「ほお、そうか……殿下のことはどうなんだ?」

「殿下はずっとアイシャを婚約者にしたいと打診してきております。でもわたし達はアイシャがまだ幼いしあの子に好きな人ができるのであれば、好きな人と結婚させてあげたいと思っています。
断っているので、やはりアイシャに対して少し意地になっているのだと思っています」

「で、怪我は?」

「それはまだ理由がわかりません。アイシャは怪我は転んだと言っていますし、ロウトは何も話しません。アイシャの言う通りだとしか言わないのです」

「お義父さん、アイシャが今何かを抱えていてそちらに行ったことは、わたし達夫婦があの子を分かってやれないことだと承知しています。
ターナのことはこれから様子を見ていきます。
アイシャを少しの間よろしくお願いします」

「そうか……アイシャに寄り添うことなくわたしに託すか。
わかったよ、君たちは親失格だ。アイシャをお前達に会わせることは二度とない」


「そんな……ただアイシャがそちらに行ったのなら少しだけ面倒をみて欲しかっただけなのに」
リサが青い顔をしてわたしをみた。

「リサ、以前のアイシャを思い出せ。あの子がなぜ死を選んだのか」

わたしはその一言だけ娘達に伝えて、アイシャの眠る屋敷に急ぎ戻った。



◇ ◇ ◇

『屋敷を出たかったならわたしに声をかけてください
一緒について行きますから!』
ロウトの言葉……

『だってロウトがついて来たら、ロウトがお父様達に叱られるでしょう?』

アイシャの言葉……

二人の信頼関係にわたしは感心していた。

『叱られるよりアイシャ様がいなくなってしまうほうがよっぽど辛いです。言いましたよね?わたしの前では素の自分でいてくださいと!
我慢しないで泣きたい時は泣いたらいいんです!』

ロウトはアイシャの気持ちをわかっている。



『そうです、わたしもアイシャ様がいないと知った時、どうしてクビになってもターナ様に逆らわなかったか後悔しました』
メリッサのこの言葉は……

ターナは何をアイシャに言っているんだ?

確かにターナは甘え上手でアイシャよりも周りがつい甘やかしてしまうところはある。

リサに似ているところが多く目がいってしまう。

でもアイシャの聡明さや美しさは、子供ながらに他の者を圧倒する。
誰もが惹かれてしまう。
だから殿下もアイシャを欲するのだ。

アイシャの魔法の才能も本当はかなりなものだ。

ただ他に比べて魔力量が多く、未だわからない属性のため、コントロールが難しいのだ。
アイシャの魔法は、多分無属性なんだと思う。

何にも属さない。
だからこそ自分のものにするには難しい。
だが、あの子自身が魔力をコントロールできれば私たちでは出来なかったいろんな魔法を使えるかもしれない。

百年に1人現れることがあるかもしれないと言われる希少な無属性。

王家がそれを知ればさらに殿下との婚約を勧めてくるだろう。
わたしはその時、甥っ子と戦わねばならない。

アイシャが望まなければ殿下に嫁にやるつもりなどない。

そしてわたしはアイシャが来た翌日の朝、リサの屋敷にいる、昔我が家で働いていた侍女長を呼び出した。

侍女長は、震えながらわたしに語り始めた。



『お姉様、鈍臭いですね、転んで怪我をして入院するなんて!公爵令嬢として如何なものかしら?』


『し、失礼ですわ!お姉様!さすがどこの子かわからないだけありますね、ああ、良かった、お姉様と同じ血が流れていなくて』

ターナの言葉に周りにいた使用人達はクスクス笑っていたらしい。
みんなの中でアイシャはもらい子だと噂されて、アイシャのことを小馬鹿にしているらしい。

『ターナ様!何を言っているのですか?アイシャ様は旦那様達の子供です!』
それを聞いていた侍女長が真っ青な顔をしてターナに反論したが、それは真実だから慌てて否定しているように取られてしまったと侍女長が半泣きしながら言った。

『侍女長、わたしは気にしていないわ、疲れたからメリッサ、部屋へ行きたいの』
アイシャは疲れ切った顔をして怒ることもなくみんなの前から黙って去っていった。

『お姉様ったら、本当のことを言われて逃げるのね』

ターナは意地悪そうに笑ったと聞いた。










★内緒で死ぬことにした の最終話

キリアン君15歳から14歳
アイシャ11歳から10歳
に変更しました。

申し訳ありません。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

処理中です...