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バナッシユ国へ着いた。
お父様と屋敷の中に入ると頭の中の前世のアイシャの記憶がフラッシュバックされる。
悲しい記憶が蘇る。なのに不思議に心の中の悲しみや苦しみは消化されていった。
ルビラ王国を出る時も感じた。
わたしの中の家族へのわだかまりが消えていった。
そしてここでも。
魔力が体の中を巡り、それがとても心地良い。
ルビラ王国を出る時にわたしが出来ることをしてきた。
わたしやキリアン様がいなくなればこの国に災いや争いが起きた時に助ける人が減ってしまう。
だから、教会へ行きひと月毎日祈りを捧げてきた。
たくさんの魔法石に癒しの魔力を込めてきた、大好きな人たちを何かあった時守れるように。
わたしの力など微力なものだけど、大好きな人達が増えたルビラ王国に何かあったらわたしは全力で守りたい。でも遠い祖国に戻るまでには時間がかかるのでわたしは魔法石に力を貯めることにした。
お祖父様がわたしのこの遣り方を見て、災いに備えるには大事なことだと言って国全体で魔法の使える者達に魔法石に力を貯める活動を始めた。
キリアン様はそれを見てにっこりと笑った。
「アイシャは前もって準備してたんだね」
「わたしはこの国で多分一番魔力量があるから、少しでも役に立ちたいと思って。だからキリアン様がご心配してくださったことは起こってもなんとか対処できると思います」
「俺が心配?」
「はい『ビラ王国は君を大事にしなかった罰をこれから受けるかもね』と言われてたでしょう?罰など受けませんよ?だってわたしの愛する国だもの、キリアン様も何かあったら守ってくださるでしょう?」
「アイシャが守って欲しいと言うのならもちろん喜んで!」
「はい、ルビラ王国もバナッシユ国も守りたい。もちろんわたし一人では大したことはできないけどそれでもせっかくの魔法なんだもの。出来ることはしたいです」
「わかった、じゃあ、俺もバナッシユ国へ行くまでに少しでも協力するよ」
キリアン様はわたしを思ってルビラ王国での日々を怒ってくれている。
でも本当はこうして協力してくれる優しい人。
わたしはいざという時の準備をしてルビラ王国を去った。
そして今はお父様と屋敷の離れで暮らしている。
ケビン君とアリーちゃんは大きくなっていた。
アリーちゃんは12歳、ケビン君も9歳になっていた。
わたしのことは覚えていてくれた。わたしもこの屋敷に来て記憶が鮮明になったのでみんなと過ごす時に戸惑いはなかった。
バナッシユ国の高等部に入学してあと三年間は学生として過ごすことにした。
キリアン様との結婚は卒業と同時にすることになった。
「俺はアイシャと今日にでも籍を入れたい!」
とキリアン様が言ってくれたけど、心の準備も出来ていないので婚約者として過ごさせてもらうことにした。
キリアン様とは週末に、ゴードン様の屋敷へ行ってサラ様やエマ様にお会いする。
そして魔法の訓練をすることにした。
「ねえ、アイシャは陛下に会いたい?嫌なら断っておくよ」
キリアン様がなんでもないかのようにわたしにそんな爆弾発言をした。
ーー嫌なら断る?国王様にそんなこと出来るわけがないじゃない!
「い、いえ、お断りしないでください。ぜひお会いしたいです」
「アイシャは陛下のことを覚えているの?」
「ジャン様ですよね?亡くなる前はよくキリアン様のお家に来ていてわたしの看病をしてくださりました。医者を目指しておられましたよね?」
「そうだね、だからアイシャに会いたいんだって、断ってもしつこいんだよね」
「わたしもお会いしてみたいです」
「アイシャは俺のものだからね?愛してるんだから!陛下をあまり見ないように。わかった?」
「はい」
キリアン様は時々人前でも恥ずかしくてでも嬉しいことを言ってくれる。
キリアン様がわたしをいつも大好きだと言ってくれるたびにわたしの辛い過去は思い出へと変わっていく。
だからバナッシユ国に来てからのわたしは毎日が楽しい。
学校から屋敷に帰るとお父様がお茶の準備をして待っていてくださる。
アリーちゃんやケビン君、時には二人のお母様であるマーシャリ様もご一緒して楽しい時間を過ごした。
お兄様はやはり忙しい日々を送っていてあまり顔を合わせることはない。
ルビラ王国のお父様もいつも忙しそうだった。
でも違いは、お兄様はどんなに忙しくても子供達との時間を無理やり作っていた。
数分でも必ず会って二人を抱きしめた。
だから二人は父親をとても慕っていて大好きなのがわかる。
わたしの二人のお父様にはそれがなかった。
だから行き違い、相手の気持ちが見えなくなっていた。
離れた今ならルビラ王国のお父様のこともわかる。
器用にこなしているのに、肝心なところでハッキリと出来ないあやふやな態度、それが愛情だと感じたターナ、捨てられたと思ったわたし。
お父様の優しさはターナの心は満たされたけど、わたしにとっては偽物で残酷に感じた。
そしてバナッシユ国のお父様は、愛情すら表せない不器用な人なのだとわかった。それが今はとても愛おしく感じる。
今は二人に対してわだかまりはない。
ルビラ王国のお父様には伝えていないけど……
もうわたしのことは忘れて三人で幸せな家族でいて欲しいから。
お父様と屋敷の中に入ると頭の中の前世のアイシャの記憶がフラッシュバックされる。
悲しい記憶が蘇る。なのに不思議に心の中の悲しみや苦しみは消化されていった。
ルビラ王国を出る時も感じた。
わたしの中の家族へのわだかまりが消えていった。
そしてここでも。
魔力が体の中を巡り、それがとても心地良い。
ルビラ王国を出る時にわたしが出来ることをしてきた。
わたしやキリアン様がいなくなればこの国に災いや争いが起きた時に助ける人が減ってしまう。
だから、教会へ行きひと月毎日祈りを捧げてきた。
たくさんの魔法石に癒しの魔力を込めてきた、大好きな人たちを何かあった時守れるように。
わたしの力など微力なものだけど、大好きな人達が増えたルビラ王国に何かあったらわたしは全力で守りたい。でも遠い祖国に戻るまでには時間がかかるのでわたしは魔法石に力を貯めることにした。
お祖父様がわたしのこの遣り方を見て、災いに備えるには大事なことだと言って国全体で魔法の使える者達に魔法石に力を貯める活動を始めた。
キリアン様はそれを見てにっこりと笑った。
「アイシャは前もって準備してたんだね」
「わたしはこの国で多分一番魔力量があるから、少しでも役に立ちたいと思って。だからキリアン様がご心配してくださったことは起こってもなんとか対処できると思います」
「俺が心配?」
「はい『ビラ王国は君を大事にしなかった罰をこれから受けるかもね』と言われてたでしょう?罰など受けませんよ?だってわたしの愛する国だもの、キリアン様も何かあったら守ってくださるでしょう?」
「アイシャが守って欲しいと言うのならもちろん喜んで!」
「はい、ルビラ王国もバナッシユ国も守りたい。もちろんわたし一人では大したことはできないけどそれでもせっかくの魔法なんだもの。出来ることはしたいです」
「わかった、じゃあ、俺もバナッシユ国へ行くまでに少しでも協力するよ」
キリアン様はわたしを思ってルビラ王国での日々を怒ってくれている。
でも本当はこうして協力してくれる優しい人。
わたしはいざという時の準備をしてルビラ王国を去った。
そして今はお父様と屋敷の離れで暮らしている。
ケビン君とアリーちゃんは大きくなっていた。
アリーちゃんは12歳、ケビン君も9歳になっていた。
わたしのことは覚えていてくれた。わたしもこの屋敷に来て記憶が鮮明になったのでみんなと過ごす時に戸惑いはなかった。
バナッシユ国の高等部に入学してあと三年間は学生として過ごすことにした。
キリアン様との結婚は卒業と同時にすることになった。
「俺はアイシャと今日にでも籍を入れたい!」
とキリアン様が言ってくれたけど、心の準備も出来ていないので婚約者として過ごさせてもらうことにした。
キリアン様とは週末に、ゴードン様の屋敷へ行ってサラ様やエマ様にお会いする。
そして魔法の訓練をすることにした。
「ねえ、アイシャは陛下に会いたい?嫌なら断っておくよ」
キリアン様がなんでもないかのようにわたしにそんな爆弾発言をした。
ーー嫌なら断る?国王様にそんなこと出来るわけがないじゃない!
「い、いえ、お断りしないでください。ぜひお会いしたいです」
「アイシャは陛下のことを覚えているの?」
「ジャン様ですよね?亡くなる前はよくキリアン様のお家に来ていてわたしの看病をしてくださりました。医者を目指しておられましたよね?」
「そうだね、だからアイシャに会いたいんだって、断ってもしつこいんだよね」
「わたしもお会いしてみたいです」
「アイシャは俺のものだからね?愛してるんだから!陛下をあまり見ないように。わかった?」
「はい」
キリアン様は時々人前でも恥ずかしくてでも嬉しいことを言ってくれる。
キリアン様がわたしをいつも大好きだと言ってくれるたびにわたしの辛い過去は思い出へと変わっていく。
だからバナッシユ国に来てからのわたしは毎日が楽しい。
学校から屋敷に帰るとお父様がお茶の準備をして待っていてくださる。
アリーちゃんやケビン君、時には二人のお母様であるマーシャリ様もご一緒して楽しい時間を過ごした。
お兄様はやはり忙しい日々を送っていてあまり顔を合わせることはない。
ルビラ王国のお父様もいつも忙しそうだった。
でも違いは、お兄様はどんなに忙しくても子供達との時間を無理やり作っていた。
数分でも必ず会って二人を抱きしめた。
だから二人は父親をとても慕っていて大好きなのがわかる。
わたしの二人のお父様にはそれがなかった。
だから行き違い、相手の気持ちが見えなくなっていた。
離れた今ならルビラ王国のお父様のこともわかる。
器用にこなしているのに、肝心なところでハッキリと出来ないあやふやな態度、それが愛情だと感じたターナ、捨てられたと思ったわたし。
お父様の優しさはターナの心は満たされたけど、わたしにとっては偽物で残酷に感じた。
そしてバナッシユ国のお父様は、愛情すら表せない不器用な人なのだとわかった。それが今はとても愛おしく感じる。
今は二人に対してわだかまりはない。
ルビラ王国のお父様には伝えていないけど……
もうわたしのことは忘れて三人で幸せな家族でいて欲しいから。
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