【完結】わたしはお飾りの妻らしい。  〜16歳で継母になりました〜

たろ

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継母は嫌われる

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セルマ君が来てひと月が過ぎた。

なのに父親である旦那様は一度もこの家に姿を現さない。

解せぬ。

我が子を可愛いと思わない、わたしのお父様と同じ。

セルマ君は3歳なのに聞き分けがいい。

お母様に置いていかれても我慢してわたしと一緒に居てくれる。

「まま、きょうもくさとあそぶの?」

「セルマ君、一緒に遊ぼう」

「しかたないなぁ、あそんであげぇりゅよ」

「ありがとう、今日は沢山の葉を採って、お薬を作りたいの、お手伝いよろしくね」

「いっぱいとりゅね」

「うん、頑張ろう」

今日は薬を卸しているお店の人に頼まれて、最近田舎の領地で流行り出した伝染病に効く薬を作っている。

もし王都で流行れば大変なことになる。
田舎と王都では人口が10倍以上だ。

薬が不足するのは目に見えている。

だからわたしは薬師として少しでも多くの薬を作っている。

この世界にはわずかな人だけど、精霊からの加護を貰っている人がいる。

わたしも生まれた時から、精霊に緑の加護を受けている。

緑の加護、言葉の通り植物に関する加護だ。

育ちにくいと言われる土地でもどんな植物を育てても、とても元気に育つ。

半年かけて育てる薬草をわたしが育てればひと月もあればある程度まで成長させる事ができる。

薬草によっては数日で成長できる。

でも……植物の成長以外には使えない加護。

なので知っているのはお母様だけだった。

特に自慢が出来るほどのことのない加護。

でも今はそんなこと言っていられない。

沢山の命を救う。

お母様が居なくなった今、わたしが代わりにするしかない。

なのに、わたしが作った薬が一つ残らずなくなっていた。

「ねえ?ここにあったはずの薬はどこに行ったの?リイナ知らない?」
リイナはわたしの顔を見ると目を逸らした。

「知っているの?ここにあった薬は誰かが持って行ったのね?」

わたしがリイナに聞いていると

「まま、おこっては、らめ!」

「セルマ君、違うの、リイナに聞いていただけなの」

「りい、ないたらろうするの?めっ!」

わたしはセルマ君に怒られてしょんぼりしていた。

「アイリス様、すみません。先程旦那様が来てお薬を全て持って行かれました」

「え?旦那様が?何故?」

「ある領地で今流行病が蔓延していて薬が足りないそうです。それで、助ける為に……申し訳ありません」

「ある領地?今流行っているのはライナル領とマーシャル領の二つよね?薬は足りているはずよ?」

「それが……その隣にあるワルシャ領が流行り出したんです」

「そうなの……だったら言ってくれればいいのに。勝手に黙って持っていくなんて……」

わたしは旦那様の勝手さにショックを受けていた。

「…………あ…ワルシャ領は……旦那様の恋人のルイーズ様の領なのね?」

「ち、違います。恋人ではございません、でもルイーズ様の領なのは確かです」

「いいのよ、愛する人を助けるためならわたしの薬を黙って持っていくのも仕方がないことなのね」

元々裏切られて捨て置かれているわたし。

今更傷つくこともない。

「セルマ君、ごめんなさい。
リイナと一緒にいてくれるかしら?
わたし急ぎで薬を作らないと間に合わないの」

セルマ君は少し寂しそうにした。

「ままいいこでまってりゅ」

「ごめんなさい、待っていてね。リイナ、セルマ君をお願いね」

わたしは気を取り直して薬を作ることにした。

材料はまだある。

でもその前にもう一度薬草を育てるところから始めなければ量が足りない。

流行病はすごい速さで国中を襲うかもしれない。

わたしは精霊に祈った。

「お願い、わたしに力を与えてください。みんなを助けたいの」

そして種を蒔き、水をやり、伸びてきた芽に触れる。

触れた芽は驚くぼどの成長をしていく。

このままいけば数日で薬草を刈ることができる。

それを乾燥させて……それでもわたし一人の力で助かる命はどれくらいだろう。

わたしはそれから寝る間も惜しんで薬を作った。

リイナは黙って旦那様に薬を渡してしまった罪悪感でわたしを見ると目を逸らしてしまう。

あんなに仲良くしてくれたのに、わたしは責めてしまったのだろうか?

セルマ君ともここ数日ゆっくり会うことはない。

わたしの顔を見てもセルマ君は来ようともしない。

継母はやはり嫌われるものなのか。

ちょっと悲しい……





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