6 / 156
離縁してください
【6】
しおりを挟む
団長とアレックのいる執務室へ入りお茶とお菓子を出す。
団長はわたしの顔をチラッと見た毛玉アレックは全くこちらを見ようとしない。
うん、いつものこと。
「どうぞ」と一言だけ。
「失礼致します」そう言って執務室を後にした。
ーーうわぁ、緊張した。
昨日の夜会での二人の抱き合った姿を見ての今日は、心臓に悪い。
だけど今日もアレックは綺麗な顔をしていた。
なんて馬鹿なことを考えながら仕事に戻る。
昼食は仲の良い騎士達と仕事の話をしながら食べた。
そろそろ鍛錬用の制服が古くなってきたので新しい服が欲しいだの、包帯が足りないので買い足しておいて欲しいなど要望を聞きつつ、頭の中で予算を弾き出す。
その後仕事をあらかた終わらせると第二騎士隊用の厨房へ行きお菓子作りを始める。
毎日飽きないようにクッキーやカップケーキ、ブラウニー、シュークリームと色々作って楽しんでいる。
余ったら屋敷に持ち帰って、使用人のみんなと夜のお茶を楽しんで過ごす。
そこにアレックはいないのだけど。
屋敷のみんなはいつも「旦那様が申し訳ありません」と謝ってくれる。
「みんなが悪いわけではないもの、どちらかと言うと魅力のないわたしがいけないの」と自分で言って自分で苦笑いするしかない。
ーーうん、ソニア殿下のように愛らしさもお胸もないもの……もう少し魅力があれば……
今日はフィナンシェを作っていつものように団長の執務室に置いておく。
だいたい疲れ果てた団員達は、帰りに甘いお菓子を食べて疲れを癒してから帰る。
わたしも屋敷のみんなの分だけ頂いて仕事から帰宅する。一応団長からは許可をもらってるので大丈夫。
定時になるとお迎えの馬車に乗り屋敷へ帰る。
屋敷に帰るとすぐにアレックの代わりに侯爵家から譲り受けた領地やいくつかの事業の書類に目を通し、執事と二人で打ち合わせをして過ごす。
休みの時は領地に向かい直接問題のあるところを訪問したり、領民達と話し合ったりしている。これは実家の伯爵家の時にもしていたことなので、特に問題なくこなしていた。
「シルビア様、いつもお手を煩わせて申し訳ありません」
執事のビルは申し訳なさそうにしているけど、わたしは好きで仕事をしているの。
「明日はお義母様が来られるのよね?夕方は団長のところへ行きたいのだけど大丈夫かしら?」
「はい、プリシラ様のところへ行かれることは侯爵夫人もご存知ですので、午前中のうちにこちらに伺うと言っておりました」
「そう……わかったわ」
お義母様はアレックにお顔がとても似ていて歳を取られてもまだなお美しい人。
いまだに夢見る少女のような可愛らしい方でわたしに対しても意地悪はしない。ただ……素直な方なので思ったことをそのまま口にする。
だから……少しだけ苦手でもある。
貧しい我が家のこと……
「まぁ、使用人が4人?お食事はどうしているの?入浴は?着替えは?」
「うっそぉ、お菓子を自分で作るの?凄いわね?あっ、わたくし、料理人が作ったお菓子しか食べられないのごめんなさい」
なんてことを毎回言われる。
なのに最近はわたしが作るお菓子にハマって
「わたくし苺とベリーのタルトが食べたいわ」とか「チーズケーキはお持ち帰りあるかしら?」と毎回しっかり食べて残りは持って帰る。
ーーああ、明日は何を作ろう。
お義母様、嫌いなものが出たら
「これ嫌いなの、何か別のものを作ってちょうだい」と言い出すのよね。
今回はリクエストがないと言うことはわたしの新しいお菓子を楽しみに待っていると言うこと……
朝早くに起きて朝市に料理人のダンと出かけた。新鮮な卵と苺やベリー、チェリーにオレンジなどの果物、搾りたてのミルクを手に入れてプリンを作ることにした。
大きめのガラスの器にプリンを入れてたくさんのフルーツを盛り、生クリームを絞って可愛く盛り付けた。
今回は新鮮さで勝負!
お義母様はいつも侍女を二人連れてくる。あと護衛が二人、だから必ず五人分は最低作っておく。
今回は……お義母様……何故ここにお義父様まで?
お義父様とはあまり接点がない。アレックはあまり実家に顔を出さないのでお義母様がいつも遊びに来るだけで、お義父様とは数回お会いしたくらいで話したこともあまりない。
「あ、あの、本日はお日柄もよく……ようこそおいでくださいました」
ーーうわぁ、何言ってるのかしら?
お義父様はアレックと同じであまり話をしない人。
お義母様が一人楽しそうに話をして隣で黙ってお義父様は頷いている。
こんな夫婦になりたかった。
三人でお茶を飲みながらアレックの話題になった。
「シルビア、今日アレックは?」
「最近は仕事が忙しいみたいであまり帰って来れないんです」
「まぁ、ソニア殿下の護衛だから仕方がないわよね」
そう言いながら右手を頬に置く。
ーー何が仕方ないのだろう。
「幼い頃から幼馴染でずっとそばにいたから彼女の我儘もつい聞いてあげてしまうのよ、ねぇ貴方?」
「……そうかも知れないな」
「そうですね、お二人は幼い頃から共に過ごされたのですものね」
ーー殿下とアレックの噂は二人とも知っているはずなのに……全くそのことを気にしていないみたい。
わたしとアレックの仲があまり良くないことも知っているはずなのに……
お義母様はプリンをとても喜んで食べてくれた。
「このプリン甘くて蕩けてしまうわ!果物もとっても美味しい!この生クリームもシルビアが作ったの?お土産に持って帰りたいわ」
そしてアレックとソニア殿下の仲の良かった子供の時の話を沢山して帰って行った。
「ああ………疲れた」
わたしがぐったりしていると、ビルが「お疲れ様でございました。侯爵夫人は悪気はないのです……あれでもシルビア様を心配して顔をお出ししているのだと思います」と言うのだけど……あと一年もすれば白い結婚で離縁できる。
だからどうかもうわたしのことは嫁と思わず放っておいて欲しい。
お義父様は「何かあれば言ってきなさい」とわたしの肩を優しく叩いて帰って行った。
ーー何か……アレックとわたしの間には何もなさすぎて……話すことすらない。
団長はわたしの顔をチラッと見た毛玉アレックは全くこちらを見ようとしない。
うん、いつものこと。
「どうぞ」と一言だけ。
「失礼致します」そう言って執務室を後にした。
ーーうわぁ、緊張した。
昨日の夜会での二人の抱き合った姿を見ての今日は、心臓に悪い。
だけど今日もアレックは綺麗な顔をしていた。
なんて馬鹿なことを考えながら仕事に戻る。
昼食は仲の良い騎士達と仕事の話をしながら食べた。
そろそろ鍛錬用の制服が古くなってきたので新しい服が欲しいだの、包帯が足りないので買い足しておいて欲しいなど要望を聞きつつ、頭の中で予算を弾き出す。
その後仕事をあらかた終わらせると第二騎士隊用の厨房へ行きお菓子作りを始める。
毎日飽きないようにクッキーやカップケーキ、ブラウニー、シュークリームと色々作って楽しんでいる。
余ったら屋敷に持ち帰って、使用人のみんなと夜のお茶を楽しんで過ごす。
そこにアレックはいないのだけど。
屋敷のみんなはいつも「旦那様が申し訳ありません」と謝ってくれる。
「みんなが悪いわけではないもの、どちらかと言うと魅力のないわたしがいけないの」と自分で言って自分で苦笑いするしかない。
ーーうん、ソニア殿下のように愛らしさもお胸もないもの……もう少し魅力があれば……
今日はフィナンシェを作っていつものように団長の執務室に置いておく。
だいたい疲れ果てた団員達は、帰りに甘いお菓子を食べて疲れを癒してから帰る。
わたしも屋敷のみんなの分だけ頂いて仕事から帰宅する。一応団長からは許可をもらってるので大丈夫。
定時になるとお迎えの馬車に乗り屋敷へ帰る。
屋敷に帰るとすぐにアレックの代わりに侯爵家から譲り受けた領地やいくつかの事業の書類に目を通し、執事と二人で打ち合わせをして過ごす。
休みの時は領地に向かい直接問題のあるところを訪問したり、領民達と話し合ったりしている。これは実家の伯爵家の時にもしていたことなので、特に問題なくこなしていた。
「シルビア様、いつもお手を煩わせて申し訳ありません」
執事のビルは申し訳なさそうにしているけど、わたしは好きで仕事をしているの。
「明日はお義母様が来られるのよね?夕方は団長のところへ行きたいのだけど大丈夫かしら?」
「はい、プリシラ様のところへ行かれることは侯爵夫人もご存知ですので、午前中のうちにこちらに伺うと言っておりました」
「そう……わかったわ」
お義母様はアレックにお顔がとても似ていて歳を取られてもまだなお美しい人。
いまだに夢見る少女のような可愛らしい方でわたしに対しても意地悪はしない。ただ……素直な方なので思ったことをそのまま口にする。
だから……少しだけ苦手でもある。
貧しい我が家のこと……
「まぁ、使用人が4人?お食事はどうしているの?入浴は?着替えは?」
「うっそぉ、お菓子を自分で作るの?凄いわね?あっ、わたくし、料理人が作ったお菓子しか食べられないのごめんなさい」
なんてことを毎回言われる。
なのに最近はわたしが作るお菓子にハマって
「わたくし苺とベリーのタルトが食べたいわ」とか「チーズケーキはお持ち帰りあるかしら?」と毎回しっかり食べて残りは持って帰る。
ーーああ、明日は何を作ろう。
お義母様、嫌いなものが出たら
「これ嫌いなの、何か別のものを作ってちょうだい」と言い出すのよね。
今回はリクエストがないと言うことはわたしの新しいお菓子を楽しみに待っていると言うこと……
朝早くに起きて朝市に料理人のダンと出かけた。新鮮な卵と苺やベリー、チェリーにオレンジなどの果物、搾りたてのミルクを手に入れてプリンを作ることにした。
大きめのガラスの器にプリンを入れてたくさんのフルーツを盛り、生クリームを絞って可愛く盛り付けた。
今回は新鮮さで勝負!
お義母様はいつも侍女を二人連れてくる。あと護衛が二人、だから必ず五人分は最低作っておく。
今回は……お義母様……何故ここにお義父様まで?
お義父様とはあまり接点がない。アレックはあまり実家に顔を出さないのでお義母様がいつも遊びに来るだけで、お義父様とは数回お会いしたくらいで話したこともあまりない。
「あ、あの、本日はお日柄もよく……ようこそおいでくださいました」
ーーうわぁ、何言ってるのかしら?
お義父様はアレックと同じであまり話をしない人。
お義母様が一人楽しそうに話をして隣で黙ってお義父様は頷いている。
こんな夫婦になりたかった。
三人でお茶を飲みながらアレックの話題になった。
「シルビア、今日アレックは?」
「最近は仕事が忙しいみたいであまり帰って来れないんです」
「まぁ、ソニア殿下の護衛だから仕方がないわよね」
そう言いながら右手を頬に置く。
ーー何が仕方ないのだろう。
「幼い頃から幼馴染でずっとそばにいたから彼女の我儘もつい聞いてあげてしまうのよ、ねぇ貴方?」
「……そうかも知れないな」
「そうですね、お二人は幼い頃から共に過ごされたのですものね」
ーー殿下とアレックの噂は二人とも知っているはずなのに……全くそのことを気にしていないみたい。
わたしとアレックの仲があまり良くないことも知っているはずなのに……
お義母様はプリンをとても喜んで食べてくれた。
「このプリン甘くて蕩けてしまうわ!果物もとっても美味しい!この生クリームもシルビアが作ったの?お土産に持って帰りたいわ」
そしてアレックとソニア殿下の仲の良かった子供の時の話を沢山して帰って行った。
「ああ………疲れた」
わたしがぐったりしていると、ビルが「お疲れ様でございました。侯爵夫人は悪気はないのです……あれでもシルビア様を心配して顔をお出ししているのだと思います」と言うのだけど……あと一年もすれば白い結婚で離縁できる。
だからどうかもうわたしのことは嫁と思わず放っておいて欲しい。
お義父様は「何かあれば言ってきなさい」とわたしの肩を優しく叩いて帰って行った。
ーー何か……アレックとわたしの間には何もなさすぎて……話すことすらない。
1,641
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる