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二度目の人生にあなたは要らない。離縁しましょう。
【9】
死んだはずのわたしが一年前に時が戻りもう2週間。
この王城にセデンがいるはずなのに一度も会えない。
何か用事がある時はレンが顔を出す。今までなら週に何度かは食事も一緒にしていた。もちろん妻として彼の子供を産むために夜も共にしていた。
もちろんアイリーン妃が嫁いでくるまでの限定だけど。
セデンがわたしを愛していたとは思わない。だけどわたしを妻として大切にしてくれていた。どんなに癒しの力があまり使えなくても、マルワ国の王女の立場を重んじてくれた。
共に語らい二人でこのジョワンナ国を守り発展させて行こうと誓った。
殺される前に、アイリーン妃が嫁いでくる前にこの城から逃げ出す計画は今のところ難しい。
この国に連れてこられた時、わたしは馬車からほとんど出してもらえず道がわからない。この1年間もこの王城だけで過ごしてきたので街へ出たことがない。
よく考えたら幼い頃からずっと城の中だけだった。
唯一リンデの森へ遊びに行っていた。
もちろんわたしが歩いて行ったわけではなく、オーグがこっそり迎えにきて連れ出してくれた。
オーグはリンデの森に住む魔法使いで幼い頃から何故か会いにきてくれた。そして一人放置されて過ごすわたしをリンデの森へと連れ出してくれた。
そう、誰にも知られずに。
嫁いでからはどんなに試してもオーグと連絡が取れない。
この国での2年と言う月日がオーグに会うことすら諦めていた。
何故だろう?
あんなに大好きだったオーグのことを思い出さなかったのは?
嫁いで1年くらいはオーグに会いたいと思っていたのに……アイリーン妃が嫁いできた頃から全てが変わった……?
アイリーン妃が嫁いできてからの日々は辛かった。だけどぼんやりとして曖昧な記憶の部分も多い。
彼女が嫁いできた日がいつ頃だったか正確な日すら覚えていない。
気がつけば彼女はセデンの隣に寄り添うようにいてセデンはわたしのことを見なくなった。
そして二人は見せつけるように愛し合うようになった。元々この城でも、セデンしかわたしを大切にしてくれていなかった。セデンがわたしを見捨てればこの城での立ち位置はかなり悪化するしかなかった。
ミーナが突然倒れ亡くなってからはさらにわたしは劣悪な状況の中暮らした……
ーーミーナを助けなければ。
わたしは癒しの力が強くなった。死んでしまった人を生き返らせることはできないし、老いて寿命を迎えた人も助けられないけど、怪我や病気なら助けられる。
本当はミーナを連れてリンデの森へ行きたい。
だけど地図を見るとやはりジョワンナ国からリンデの森はかなり遠い。
何か理由をつけてマルワ国へ帰ることができればリンデの森へ行けるのに。
だけどそれは王妃は許さないだろう。
わたしの癒しの力が使える間は王妃自身のためにわたしを手放さない。
自分の若さと美貌を保つために。無理やり作られた美しさを保っても、いつか紛い物なんて壊れて失くなってしまうと思う。
一人部屋で王妃の分まで仕事をこなしながらそんなことをぼんやりと考えていた。
「イリアナ様、大変です」
「何かしら?」
ミーナが慌てていた。
そろそろアイリーン妃がやってきたのかしら?心構えは出来ている。
ーーただそれを受け入れられるかは別だけど。
「今度、この国で花火が上がるそうです」
「は…なび?」
「はい!今回魔獣を騎士達が仕留めることが出来て死人も出ませんでした。そのことを祝い騎士達に感謝して花火を打ち上げるそうなんです」
ーーああ、なるほど。騎士達への慰労のために。
「そう……それは良かったわね」
ーーあれだけの騒動だったんだもの。怪我人は大勢出たけど死人はいなかった。
本当に良かったわ。
「ただ………イリアナ様がどれだけの人の命を救ったのか…この国の人は誰も触れようともしないし感謝すらしていません」
「ああ、それはいいのよ。別に感謝して欲しくて助けたわけではないわ。それに今までのわたしの力では助けることはできなかった……だから何人もの命が失われたわ。今回助けたからって今までのことが無かったことにはならないもの」
「でも!悔しいです!毎日こんなに仕事ばかりさせられて、部屋からまともに出してももらえないのに、その現実を知る者はあまりいない。
部屋で引きこもって何もしない王太子妃と思われているんですよ?セデン殿下は王妃様の言葉を鵜呑みにしているし……」
ミーナが涙を溜めて唇を噛んでいた。
「いいのよ、ミーナがわかってくれているから……」
ーーわたしは自分の今の思いをミーナに伝える。
「ミーナ、わたしね、リンデの森で暮らそうかと思っているの」
「えっ?この前話されていましたよね?」
「うん、ずっと考えていたの」
「どうやって行くんですか?この城を簡単に抜け出せるとは思えません……それにイリアナ様は…セデン殿下のことを愛されていますよね?」
「セデンのことは……もういいの。最近は会いにもきてくれないし、ね?
リンデの森へは……魔法を使って行くつもりなの。ただミーナあなたをここに置いて行くべきなのか迷っているの。
マルワ国からついてきてくれたあなたを置き去りにしてしまうのは嫌だし、だけどリンデの森は魔獣の森でもあるし、ミーナにとって幸せなのか、悩んでいたの」
「わたしは……」
やはりミーナはすぐに返事ができないみたい。
わたしもここからリンデの森までずっと飛んで行くことはできないことはわかっている。
この城ならなんとかミーナを抱えて飛んで城の外までいける。
だけどあとは馬車を乗り継ぐしかないだろう。二人で空を飛び続けることはわたしでは無理。
オーグのように転移魔法を使えればいいのだけど、この国に来てからオーグと連絡が取れない。
「イリアナ様のそばにいたいです」
「ミーナ、いいの?」
この王城にセデンがいるはずなのに一度も会えない。
何か用事がある時はレンが顔を出す。今までなら週に何度かは食事も一緒にしていた。もちろん妻として彼の子供を産むために夜も共にしていた。
もちろんアイリーン妃が嫁いでくるまでの限定だけど。
セデンがわたしを愛していたとは思わない。だけどわたしを妻として大切にしてくれていた。どんなに癒しの力があまり使えなくても、マルワ国の王女の立場を重んじてくれた。
共に語らい二人でこのジョワンナ国を守り発展させて行こうと誓った。
殺される前に、アイリーン妃が嫁いでくる前にこの城から逃げ出す計画は今のところ難しい。
この国に連れてこられた時、わたしは馬車からほとんど出してもらえず道がわからない。この1年間もこの王城だけで過ごしてきたので街へ出たことがない。
よく考えたら幼い頃からずっと城の中だけだった。
唯一リンデの森へ遊びに行っていた。
もちろんわたしが歩いて行ったわけではなく、オーグがこっそり迎えにきて連れ出してくれた。
オーグはリンデの森に住む魔法使いで幼い頃から何故か会いにきてくれた。そして一人放置されて過ごすわたしをリンデの森へと連れ出してくれた。
そう、誰にも知られずに。
嫁いでからはどんなに試してもオーグと連絡が取れない。
この国での2年と言う月日がオーグに会うことすら諦めていた。
何故だろう?
あんなに大好きだったオーグのことを思い出さなかったのは?
嫁いで1年くらいはオーグに会いたいと思っていたのに……アイリーン妃が嫁いできた頃から全てが変わった……?
アイリーン妃が嫁いできてからの日々は辛かった。だけどぼんやりとして曖昧な記憶の部分も多い。
彼女が嫁いできた日がいつ頃だったか正確な日すら覚えていない。
気がつけば彼女はセデンの隣に寄り添うようにいてセデンはわたしのことを見なくなった。
そして二人は見せつけるように愛し合うようになった。元々この城でも、セデンしかわたしを大切にしてくれていなかった。セデンがわたしを見捨てればこの城での立ち位置はかなり悪化するしかなかった。
ミーナが突然倒れ亡くなってからはさらにわたしは劣悪な状況の中暮らした……
ーーミーナを助けなければ。
わたしは癒しの力が強くなった。死んでしまった人を生き返らせることはできないし、老いて寿命を迎えた人も助けられないけど、怪我や病気なら助けられる。
本当はミーナを連れてリンデの森へ行きたい。
だけど地図を見るとやはりジョワンナ国からリンデの森はかなり遠い。
何か理由をつけてマルワ国へ帰ることができればリンデの森へ行けるのに。
だけどそれは王妃は許さないだろう。
わたしの癒しの力が使える間は王妃自身のためにわたしを手放さない。
自分の若さと美貌を保つために。無理やり作られた美しさを保っても、いつか紛い物なんて壊れて失くなってしまうと思う。
一人部屋で王妃の分まで仕事をこなしながらそんなことをぼんやりと考えていた。
「イリアナ様、大変です」
「何かしら?」
ミーナが慌てていた。
そろそろアイリーン妃がやってきたのかしら?心構えは出来ている。
ーーただそれを受け入れられるかは別だけど。
「今度、この国で花火が上がるそうです」
「は…なび?」
「はい!今回魔獣を騎士達が仕留めることが出来て死人も出ませんでした。そのことを祝い騎士達に感謝して花火を打ち上げるそうなんです」
ーーああ、なるほど。騎士達への慰労のために。
「そう……それは良かったわね」
ーーあれだけの騒動だったんだもの。怪我人は大勢出たけど死人はいなかった。
本当に良かったわ。
「ただ………イリアナ様がどれだけの人の命を救ったのか…この国の人は誰も触れようともしないし感謝すらしていません」
「ああ、それはいいのよ。別に感謝して欲しくて助けたわけではないわ。それに今までのわたしの力では助けることはできなかった……だから何人もの命が失われたわ。今回助けたからって今までのことが無かったことにはならないもの」
「でも!悔しいです!毎日こんなに仕事ばかりさせられて、部屋からまともに出してももらえないのに、その現実を知る者はあまりいない。
部屋で引きこもって何もしない王太子妃と思われているんですよ?セデン殿下は王妃様の言葉を鵜呑みにしているし……」
ミーナが涙を溜めて唇を噛んでいた。
「いいのよ、ミーナがわかってくれているから……」
ーーわたしは自分の今の思いをミーナに伝える。
「ミーナ、わたしね、リンデの森で暮らそうかと思っているの」
「えっ?この前話されていましたよね?」
「うん、ずっと考えていたの」
「どうやって行くんですか?この城を簡単に抜け出せるとは思えません……それにイリアナ様は…セデン殿下のことを愛されていますよね?」
「セデンのことは……もういいの。最近は会いにもきてくれないし、ね?
リンデの森へは……魔法を使って行くつもりなの。ただミーナあなたをここに置いて行くべきなのか迷っているの。
マルワ国からついてきてくれたあなたを置き去りにしてしまうのは嫌だし、だけどリンデの森は魔獣の森でもあるし、ミーナにとって幸せなのか、悩んでいたの」
「わたしは……」
やはりミーナはすぐに返事ができないみたい。
わたしもここからリンデの森までずっと飛んで行くことはできないことはわかっている。
この城ならなんとかミーナを抱えて飛んで城の外までいける。
だけどあとは馬車を乗り継ぐしかないだろう。二人で空を飛び続けることはわたしでは無理。
オーグのように転移魔法を使えればいいのだけど、この国に来てからオーグと連絡が取れない。
「イリアナ様のそばにいたいです」
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