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(まだ)離縁しません
前編
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「いたっ!」
後ろから押されて転けた。
相手が誰かなんてすぐにわかる。
「フラン!おやめなさい」
「うるさい!クソババァ!」
「クソババァ?わたしはまだ19歳のうら若き乙女なのよ!」
「もう結婚してるババアだろ?」
「どこでそんな言葉覚えてきたの?」
「うるさい、うるさい!お前なんか母親じゃないんだ!ニセモノ!出て行け!父様と離縁しろ!」
ニセモノ……そう、わたしは確かにニセモノの母親。
夫であるジョンソンとは契約結婚をした。
ジョンソンは奥様と離縁されていた。
そしてわたしはお金が必要だった。
両親が借金を作ったまま事故で亡くなった。
屋敷を売り払いドレスや宝石、絵画や馬車、馬も売り払いなんとか借金は返済できた。
だけど弟とわたしが生きていくためのお金は残っていなかった。
男爵家という爵位だけが残った。
爵位を返上して平民になることももちろん考えたわ。わたしだけなら平民でもいい。
でも優秀な弟をこのまま平民にしてしまっていいのか。将来男爵という爵位でもあればそれなりのところの就職できるし文官になっても出世することだってできる。
もし貴族令嬢との婚約の話が出ても困らないし、男爵なら平民と結婚してもそこまで厳しく言われることがない。
「アルバード、学校だけは続けなさい」
貴族でいるためには王立学園を卒業しなければいけない。これは貴族の子供にとっては必ず必要な条件だった。
「僕、学校辞めて働くよ」
「ダメ!あなたは成績もいいし特待生なの。学費は要らないし寮費だってタダなの!足りない分くらいならわたしが働いて稼げるわ!」
「でも姉上だけに苦労させたくない」
「ううん、わたし一人ならどこかの屋敷で住み込みでメイドとして働けるわ。お互い別々に暮らすことになるけど休みの日には会える、ねっ?そうしましょう」
今はお母様の弟の家に転がり込んでいるけど、お母様の実家は商家で常に忙しく働いていてわたし達は邪魔になる。
ここで働くのもありかもしれないけど給金が平民だと安い。
弟に必要なお金ならなんとか賄えるけど、貴族として生きるなら付き合いにお金は必要。
いくら男の子でも貴族ならばパーティーの服代だって馬鹿にならないし文房具代に参考書、お小遣いだって多少はあげたい。
弟は14歳、それなりに社交も始めなければいけなくなる年齢だ。
そう思って幼馴染で親友でもあるマーシャにお願いして仕事を紹介してもらった。
伯爵家のメイドとして。
一応わたしは男爵家の令嬢なので仕事の条件もいい。
住み込みで給金もわりと良い。
そしてマーシャの母方の従兄弟で、わたしも幼い頃何度か遊んでもらったことがあった伯爵家を紹介してもらった。
覚えてはいなかったけどマーシャに、
『ほら、よく肩車してくれた兄様よ』と言われて思い出した。
わたしより6歳年上の兄様は優しくてわたしとマーシャとよく遊んでくれた。
わたしは兄様に肩車をしてもらうのが楽しくて何回もおねだりしたことを覚えている。
だから少しだけ、ほんの少しだけ安心して面接に臨んだ。
兄様なら大丈夫だと。
なのに………
屋敷で面接をしてもらうと、話は雲行きが怪しくなってきた。
初めはわたしの身の上のことを聞かれ、雇い主になるので全て素直に話した。
弟が学園に通っているから住み込み希望だと言うと、
『だったら俺と契約結婚して欲しい』と言い出した。
『だったら』とは何?
キョトンとしたわたしに旦那様は言った。
『俺は再婚など面倒くさくて、したくない。元々政略結婚で元妻とは結婚したんだ。離縁してスッキリしたのに周囲がうるさいんだ』
『はあ、そうですか』
わたしもつい面倒くさそうに返事をした。
旦那様はイラッとした顔をしたけど気にしないことにした。だってメイドの面接に来て契約結婚をしたいなんて意味のわからないことを言う旦那様の方が絶対おかしいもの。
『両親が息子のフランを領地に連れ帰って自分たちが育てると言い出した』
『ああ、確かにあなたよりいいかも』
思わず本音が出てボソッと呟いた。
だって、顔は良い。見た目だけならほんと、カッコいいし、思わず振り返りたくなるくらいカッコいい。
わたしも幼い頃は兄様のこと、王子様みたいだと思ったもの。
だけど目の前にいるこの人、顔だけはいいけど性格最悪だと思う。
いきなり『契約結婚』なんで言い出すし、無愛想だし、偉そうだし(伯爵だからわたしより上だけど)、顔がいいだけでなんだかいけ好かない。
『給金は3倍。三年したら白い結婚で離縁。その後の慰謝料ももちろん払う。どうだ?』
『やります!!!』
わたしは二つ返事で了承した。
白い結婚なら戸籍は綺麗なまま。
それに身の危険もない!
給金も3倍!慰謝料ももらえる、なんて条件がいいの!
もう小躍りしたくなるくらいの気分だった。
そう、息子のフラン様にお会いするまでは。
ほんとこのクソガキ!ひとのお尻を思いっきり押しやがって!!
「フラン、わたしは(まだ)離縁はしません!」
後ろから押されて転けた。
相手が誰かなんてすぐにわかる。
「フラン!おやめなさい」
「うるさい!クソババァ!」
「クソババァ?わたしはまだ19歳のうら若き乙女なのよ!」
「もう結婚してるババアだろ?」
「どこでそんな言葉覚えてきたの?」
「うるさい、うるさい!お前なんか母親じゃないんだ!ニセモノ!出て行け!父様と離縁しろ!」
ニセモノ……そう、わたしは確かにニセモノの母親。
夫であるジョンソンとは契約結婚をした。
ジョンソンは奥様と離縁されていた。
そしてわたしはお金が必要だった。
両親が借金を作ったまま事故で亡くなった。
屋敷を売り払いドレスや宝石、絵画や馬車、馬も売り払いなんとか借金は返済できた。
だけど弟とわたしが生きていくためのお金は残っていなかった。
男爵家という爵位だけが残った。
爵位を返上して平民になることももちろん考えたわ。わたしだけなら平民でもいい。
でも優秀な弟をこのまま平民にしてしまっていいのか。将来男爵という爵位でもあればそれなりのところの就職できるし文官になっても出世することだってできる。
もし貴族令嬢との婚約の話が出ても困らないし、男爵なら平民と結婚してもそこまで厳しく言われることがない。
「アルバード、学校だけは続けなさい」
貴族でいるためには王立学園を卒業しなければいけない。これは貴族の子供にとっては必ず必要な条件だった。
「僕、学校辞めて働くよ」
「ダメ!あなたは成績もいいし特待生なの。学費は要らないし寮費だってタダなの!足りない分くらいならわたしが働いて稼げるわ!」
「でも姉上だけに苦労させたくない」
「ううん、わたし一人ならどこかの屋敷で住み込みでメイドとして働けるわ。お互い別々に暮らすことになるけど休みの日には会える、ねっ?そうしましょう」
今はお母様の弟の家に転がり込んでいるけど、お母様の実家は商家で常に忙しく働いていてわたし達は邪魔になる。
ここで働くのもありかもしれないけど給金が平民だと安い。
弟に必要なお金ならなんとか賄えるけど、貴族として生きるなら付き合いにお金は必要。
いくら男の子でも貴族ならばパーティーの服代だって馬鹿にならないし文房具代に参考書、お小遣いだって多少はあげたい。
弟は14歳、それなりに社交も始めなければいけなくなる年齢だ。
そう思って幼馴染で親友でもあるマーシャにお願いして仕事を紹介してもらった。
伯爵家のメイドとして。
一応わたしは男爵家の令嬢なので仕事の条件もいい。
住み込みで給金もわりと良い。
そしてマーシャの母方の従兄弟で、わたしも幼い頃何度か遊んでもらったことがあった伯爵家を紹介してもらった。
覚えてはいなかったけどマーシャに、
『ほら、よく肩車してくれた兄様よ』と言われて思い出した。
わたしより6歳年上の兄様は優しくてわたしとマーシャとよく遊んでくれた。
わたしは兄様に肩車をしてもらうのが楽しくて何回もおねだりしたことを覚えている。
だから少しだけ、ほんの少しだけ安心して面接に臨んだ。
兄様なら大丈夫だと。
なのに………
屋敷で面接をしてもらうと、話は雲行きが怪しくなってきた。
初めはわたしの身の上のことを聞かれ、雇い主になるので全て素直に話した。
弟が学園に通っているから住み込み希望だと言うと、
『だったら俺と契約結婚して欲しい』と言い出した。
『だったら』とは何?
キョトンとしたわたしに旦那様は言った。
『俺は再婚など面倒くさくて、したくない。元々政略結婚で元妻とは結婚したんだ。離縁してスッキリしたのに周囲がうるさいんだ』
『はあ、そうですか』
わたしもつい面倒くさそうに返事をした。
旦那様はイラッとした顔をしたけど気にしないことにした。だってメイドの面接に来て契約結婚をしたいなんて意味のわからないことを言う旦那様の方が絶対おかしいもの。
『両親が息子のフランを領地に連れ帰って自分たちが育てると言い出した』
『ああ、確かにあなたよりいいかも』
思わず本音が出てボソッと呟いた。
だって、顔は良い。見た目だけならほんと、カッコいいし、思わず振り返りたくなるくらいカッコいい。
わたしも幼い頃は兄様のこと、王子様みたいだと思ったもの。
だけど目の前にいるこの人、顔だけはいいけど性格最悪だと思う。
いきなり『契約結婚』なんで言い出すし、無愛想だし、偉そうだし(伯爵だからわたしより上だけど)、顔がいいだけでなんだかいけ好かない。
『給金は3倍。三年したら白い結婚で離縁。その後の慰謝料ももちろん払う。どうだ?』
『やります!!!』
わたしは二つ返事で了承した。
白い結婚なら戸籍は綺麗なまま。
それに身の危険もない!
給金も3倍!慰謝料ももらえる、なんて条件がいいの!
もう小躍りしたくなるくらいの気分だった。
そう、息子のフラン様にお会いするまでは。
ほんとこのクソガキ!ひとのお尻を思いっきり押しやがって!!
「フラン、わたしは(まだ)離縁はしません!」
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