【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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(まだ)離縁しません

後編 (前)

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「フラン!そろそろ先生がいらっしゃる時間よ!」

「わかってる!アンナは本当にうるさいな」

 フランが外で騎士達と剣術の稽古をして屋敷に戻ろうとしない。

 もう!剣術も大事だけど算術や語学の勉強もしないと!

 7歳になったフランは今もまだ天使。

 いや、ますます旦那様とシェリーゼ様の良いところだけをもらってますます綺麗なお顔がさらに整って、もう今ではいろんなところから婚約して欲しいと釣書が届き始めてるいるわ!

 わたしの天使はさらに輝きを増してる。

 顔よし!頭を良し!剣術も良し!

 ただ……性格は……以前にもまして人前ではとても良し!

 なのにわたしにだけは以前よりも態度が酷くなった。

「フラン!残さず食べなさい」
「宿題はしたの?」
「早く寝ないと大きくならないわよ」

 わたしの言葉は一切聞かなくなった。

 無視するか「うるさいな」と言って去っていく。

 天使に嫌われた。

 理由は旦那様との離縁。

 結婚してもうすぐ3年になる。わたしと旦那様の契約が切れてしまう。

 旦那様はわたしが旦那様を『愛していない』と発言してから『君との結婚の契約は守るから安心してくれ』と言われた。

 その前に『フランの母親にならないか』と言われた話はわたしのその発言で消えてしまったみたい。

 だからと言って居心地の悪い暮らしだったわけでもなく、二人とは良い関係を築いてきたつもりなのに。

 わたしなりに旦那様にも心を寄せてきた。旦那様には気づいてもらえなかったけど。

 少し前のこと。
 フランが寝ついたと思い、旦那様と二人でそろそろ離縁をする時期になったと隣の部屋で話をしているところを目覚めてしまったフランに聞かれてしまった。

 もうそれからのフランはわたしを嫌い、冷たい目で見るようになった。

 悲しい。せっかく良い関係を築いて笑ってさよならするつもりだったのに。

 フランはわたしと話すらしようとしない。

 声をかけても無視か、言い返されてしまう。

 でも気持ちはわかる。だって、わたしとフランと旦那様はもう家族なんだもの。

 旦那様と夫婦としての関係はなくても家族として互いに尊重し合い、伯爵家のために二人で話し合い領地の運営にも力を入れてきた。

 フランに関しては一度も『お母様』とは呼ばれたことはないけど、わたしなりにフランに寄り添い、いっぱいの愛情を注いだつもりだった。

 でもやっぱり離縁することがわかってからはわたしのことを嫌っている。

 ううん、傷ついているんだと思う。

 わたしだって契約じゃなかったらこのままフランのそばにずっといたい。

 でも旦那様から言われた。

『縛りつけてすまなかった。本当はもっと早く解放してあげようと思っていたんだが、フランの顔を見るとつい契約終了するまでと思ってしまったんだ』

 ずっと伯爵家で暮らしたい。

 そうは思っていても、旦那様もそろそろ本気で妻を娶った方がいいと思う。

 わたしももう22歳。
 旦那様も28歳。

 お互い新しい相手を探すならそろそろギリギリのお年頃だもの。

 わたしだって白い結婚が正式に認められればこの結婚は戸籍上なかったことになる。

 フランのことは大好きだけど、わたしのこれからのことを考えると仕方がない。

 でもなんだか食欲がなくて「リナ、今日はわたし、夕食はいらないわ。一人でゆっくり過ごしたいの」とお願いした。

 今日のわたしの仕事は終わらせたし、フランはわたしの顔を見るのも嫌みたいですぐに逃げていなくなるし、旦那様は今日もお忙しそうで王城へ出勤したまま帰ってこないし。

 部屋で一人ウジウジとしながら過ごした。

 最近、マーシャが結婚したのでマーシャとも会えないでいるし、アルバードも卒業に向けて勉強が大変みたいで会いにきてくれない。

「わたし、これからどうしよう」

 ため息を吐いているとリナがお茶を淹れながら声をかけてきた。

「アンナ様は好きな人がいらっしゃるんですか?」

「好きな人?うーん、わたしの実家はいつも生活が大変だったの。なのに両親は何も考えず自分よりも大変な人のために尽くす人だったから自分がしっかりしなきゃって思ってて、人を好きになる暇もなかったわ」

 敢えて言うなら旦那様が初恋だったのよね。
 絶対内緒だけど。

 でも旦那様から契約結婚を申し込まれて、『好き』にはならないと決めていたから、彼に恋心は抱くことはなかったわ。

 でもフランにだけは物凄く愛情を注いだの。

 なのに……嫌われてしまった。もう死にたくなる。

 あの冷たい目でフランに見られるだけで食欲も無くなるし、元気も出ない。

 うっ、考えただけで涙が溢れて……

「リナ~、わたし、フランに嫌われたの……フランに会えなくなるの……うっ……どうしよう……」

 リズがわたしの体話を抱きしめてくれた。いつもお世話をしてくれるリズはわたしよりお姉さんで頼りになって優しくて大好きで……


「リ、リナ…とも会えなくなるんだ………」

 リナに抱きしめられて胸の中で泣いた。

 こんなに泣いたのはお父様とお母様が死んだと聞かされた時だけだった。
 葬儀の時も屋敷を売り払ってアルバードと二人っきりでこれからどうしようと頭を抱えていた時も泣くことはなかった。
 泣く暇なんてなかったもの。

 わたしがしっかりしなきゃ。アルバードのために働かなきゃって思ったから。叔父さん達はずっと家にいてくれていいと言ってくれたけど甘えるなんて出来なかった。

 両親の借金は叔父様にも迷惑をかけてしまっていた。保証人になってもらっていたし、不足分は叔父様がわたしに内緒で支払ってくれていた。

 アルバードは『どうして身内なんだから甘えないのか』って言ってたけど、十分すぎるくらい守ってもらったからもうこれ以上甘えられなかった。

 わたしはお姉ちゃんだからしっかりしないといけなかった。だけど学校を卒業して叔父様のところでお手伝いをしてお駄賃を貰っているくらいしか働いたことがないわたしにはどうすればいいのか分からなかった。

 マーシャが「兄様」のところで働きなさい。と言ってくれたから、兄様のところならと不思議に働けるかもしれないと思った。

 契約結婚は、とっても悩んだけど、フランが可愛すぎて、わたしの天使で、辛いことがあった日々を忘れさせてくれたフランのおかげで泣くこともなかった。

 なのに……

「わたし、フランとさよなら出来ない!わたし、旦那様に……離縁したらここの使用人になってもいいか頼んでみるわ!」

「へっ?そこですか?」

「だって……」






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