【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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嫌です。別れません

22話  リオ編

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 かあちゃんの時が止まって何年が経つだろう。

 魔女さんは「金ならあるから心配するな」そう言って僕を学校へ通わせてくれた。

 この国は、平民とか貴族とか関係なく成績さえ良ければ学校へ通わせてくれる。だから僕は必死で勉強をした。

 成績さえ良ければ授業料もタダになるし、魔女さんの負担も減る。

 今住んでいる家は街の外れで、少し歩けば森がある。

 森があれば、薬草も沢山取れるし、魔獣から貴重な素材も得ることができる。

 かあちゃんが眠り続ける部屋に入ると、もう何年も変わらない美しい姿がそのまま横たわっていた。

「かあちゃん、行ってくる」
「帰ってきたよ、ただいま」
「おやすみなさい」
 毎日かあちゃんに話しかけた。


「今日はテストで満点だった。このまま頑張れば飛び級で学校卒業して10歳で中等部に入学できそうなんだ」

 一年間で三年分の授業とテストを終わらせた。

「リオ、そんなに先急がなくてもいいよ」
 魔女さんはそう言うけど、僕は、早く大人になりたい。

 歳は早く取れないけど、15歳で高等部を卒業してさっさと働きたい。

 かあちゃんが目覚めた時、お金の心配はかけたくない。安心して暮らして欲しいんだ。

 絶対とうちゃんにも王様にも世話をされたくない。

 僕にだって男の意地はある。

「リオ、あんたはまだまだ子供だ。魔道具を城に取りに行かせたし、あんたの本当の父親に会わせたりしたけど、それでも、あたしにとっては子供なんだ」

 魔女さんはまだ8歳の僕に一人で王城に行かせた。着いた途端、騎士達に剣を向けられ、首のところに剣の先が当たりそうになった時は、本当はおしっこちびるかと思った。

 指輪が守ってくれる。魔女さんがそう言ったから信じていたけど、でも、やっぱり怖かった。

 魔女さんはあの時のことを思い出してすまなそうに言ってるのかと思って顔を見れば、ニヤニヤ笑ってる。

 やっぱり魔女さんは魔女さんなんだ。

 あの時多分僕に手を出したら、騎士たちは本当に触れたところから腐っていったかもしれない。………想像しただけで吐きそう。

「魔女さんって、無茶なこと言うけど、現実が分かったから、よかったと思ってる」

「現実?」

「うん、王様は僕の父親じゃない。僕を産んだ人をただ愛しているだけで僕のことなんてなんとも思ってないよ」

「へぇ、そうかい?じゃあ、ダンは?」

 僕は窓から外を見た。

 そうそこには小さな掘立て小屋を建てて暮らすとうちゃんがいた。

 僕はとうちゃんに『帰ってこないで』と伝言したのに、浮気者でかあちゃんを悲しませた巨悪の根源があそこに居る。

 魔女さんに何度も追い払って欲しいと頼んだのに、魔女さんはいつものようにニヤニヤ笑い、『男ならお前がしな』と言う。

 魔女さんだってずっととうちゃんに冷たく当たっていたくせに、僕が冷たい態度を取ると途端にやめた。

 だからと言って、この家にはとうちゃんは入れないし、近づけない。

 あの掘建て小屋で暮らしてるだけ。まあ、暮らし始めてまだ一月だけど。

 この二年間、とうちゃんは、僕たちの居場所を探し続けていたらしい。

 だからってなに?同情なんてしない。

 かあちゃんはとうちゃんの浮気に苦しんだし、ほったらかされてずっと苦労したんだ。

 それが僕たちを守るためだった?浮気はとうちゃんの勝手だろう?

 顔を見るのも嫌だ!

 なのに魔女さんは『あたしには関係ない。あたしの今の仕事はマナの病を治すこととマナの寿命を延ばすことさ』と請け合ってくれない。
 ううん、愉しそうにしている。

 勉強だって、剣術だって、体術だって、いっぱい頑張ってる。

 かあちゃんのためならなんでもする。

 なぁ、かあちゃん、とうちゃんをこの世から消してやりたい。でもかあちゃんが悲しむかな?

 僕は、愛する人が悲しむことなんて絶対しない。あんなクソ男には絶対なりたくない!

 かあちゃん、早く目覚めて欲しい。

 かあちゃんだけが、時が止まってる。

 髪の毛が伸びることも、爪が伸びることもない。顔だって、ずっと綺麗なまま。かあちゃんは、聖女様と言われていたらしい。

 神殿に閉じ込められてたくさんの人を助けるだけの日々を過ごしたと聞いた。

 だけど、そのおかげで助かった人は沢山いてかあちゃんは本当にみんなに感謝され、みんなに愛されていたんだ。

 僕を育てている時は、聖力は使わなかったらしい。だけど薬師として薬を作っていた。かあちゃんの作る薬はとても効力が強いと言われていた。

 だって、風の噂で聞いたと言って、かあちゃんのお見舞いに訪れる人が今もいるんだ。

 神殿の人たちはかあちゃんが病に倒れているのを知ってもうかあちゃんになにもしてこない。



 かあちゃん、僕は……かあちゃんに
『リオ』とまた呼んでほしいんだ。

 もうかあちゃんの声を忘れてしまいそうだ。
 かあちゃん、僕のせいでずっとずっと辛い日々を送らせてごめんね。

 僕のせいで死にかかっててごめんね。

 かあちゃん、次は僕が、かあちゃんを幸せにしてあげるから。

「リオ、あんたまた、マナのところに張り付いて!そこに居たってマナは治りゃしないよ!」

「うん、でも、かあちゃん、一人で寂しいと思うんだ」

「あんたとマナは血が繋がってないだけで、本当の親子だよ」と言って、「ハァー」と大きな溜息をついた。
 魔女さんは呆れながら部屋を出ていった。

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