【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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嫌です。別れません

21話  ダン編

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「リオがここに?」

 俺は王妃のご機嫌取りに疲れ、王宮にある専用の部屋で休んでいた。

 ほとんど証拠は揃った。あとは陛下が決断さえしてくれれば、こんな茶番劇は終わる。

 愛してもいない王妃に愛を囁き、口付けをする。
 抱いたフリをするためにお香を焚き夢虚ろにさせ俺と寝たと思わせる。

 俺は仕事とはいえもう適当に女は抱かない。最初はマナと結婚してからもしばらくは女遊びをした。

 だけどあんな虚しいものはない。
 好きでもない女を抱いても虚しいだけだ。もう今は、この仕事を終わらせて早くマナに会いに行きたい。

 何度も頭を下げてマナに謝り、マナに『愛している』と伝えたい。

 結婚して何年も経って、やっとまともにマナに向き合える。

 そう思っていたのに……

 侍従から伝えられた言葉に思わず俺は絶句した。

 リオが王城に……しかも陛下に会いに一人で乗り込んだ?

 リオは王妃に命を狙われている。だからリオは死んだことにした。王妃は満足していた。

『俺はリオを邪魔だから捨てた。そしてリオはのたれ死んだ』

 俺は王妃にそう伝え、陛下には病に倒れ死んだことにした。

 もうリオが二人に関わって生きることだけはさせたくなかった。
 リオはリオのままで、自由に伸び伸びと生きて欲しかった。

 王子として生きればいずれこの国を背負い、闇と憎悪の中、国王になり生きていかなければならなくなる。
 それだけは阻止したかった。



 二人の仲はかなり悪い。王妃はその地位に執着しているだけで、陛下と関わることはない。

 陛下も王妃を憎んでいた。

 だから、俺はリオが死んだと伝えた。

 なのに、なぜ?

 魔女だってわかっていたはずだ。
 この場所がリオにとってどれだけ危険か。

 そして俺がこれまであのクソ王妃とクソ陛下に我慢して耐えてきたのに。


「なぜリオが?」

 俺が呟いていると、侍従が説明を始めた。



 リオは突然陛下の前に姿を現し、魔女から頼まれて魔道具を借りにきたこと。

 陛下はリオが生きていることを知りとても喜んだ。

 俺は知らなかったが、あの魔女はその昔この国の王妃だったらしい。リオは、王妃の子孫?
 だからあんなに可愛がっていたのか?

 俺は簡単な説明を聞いた後、陛下に呼ばれていると言われ、急ぎ玉座の間へと向かった。




 陛下は静かに座って、俺を見下ろしていた。

 片足を床につけ頭を下げたまま俺は陛下の言葉を待った。





『とうちゃんは要らない。返さなくていいよ、だから帰ってこないで!と言っておいて!』


 ーーえっ?

 この子供の声は?
 静かな部屋に響き渡った声。

 ここには子供はいないはず。

 頭を上げ、探そうか迷ったが、陛下は何も言わない。許可も得ず頭を上げることは俺にはまだ許されていない。

「ダン、リオからの伝言だ」

「申し訳ございません」

「リオは、とても勇敢でしっかりとしていた。とてもリスティナに似ていた、すぐにわかった。魔女に守られて暮らしていたんだな」

「はい、わたしの妻と魔女がリオを育ててくれました」

「もう魔女はこの国を捨てた、リオたちはこの国にはいない」

「えっ?迷いの森で暮らしているはずです」

「魔女はこの国を去った、伝言がきていた。止めることは叶わなかった。
 理由はわからなかったが、今分かった。リオたちと共に去ったのだ」

「魔女が去った?なぜ?リオたちは幸せに暮らしていたのに……」

 俺が、浮気をしたからなのか?まさか…アイリスのこと誤解したまま?それとも王妃とのこと?

 あまりにも理由がありすぎて……でも、魔道具を借りにきた理由は?

「魔女が去る、この国の守りが消えた。今の繁栄は彼女の力だ。魔女の力がなくなれば衰退していくだろう」

 周りがザワザワとし始めた。

「衰退?なぜ……」

「魔女が全てを守ってきたわけではない。しかしあの迷いの森の結界がなくなれば魔物が増えてしまう、早めに手立てを打たねばならない。早急に会議を始める」

 陛下は俺にそう告げ、すぐに王宮にいる官僚や高位貴族を集めるように指示した。

 俺はもちろんその会議に出席しなければならなかった。

 リオたちを探すことよりもまずは国の対策を考えなければならない。

 魔女は気まぐれだ。彼女に無理矢理戻ってくることを望めば、へそを曲げてさらに姿を消してしまうだろう。

 リオは箒で飛んできたらしい。

 どこからきたのか?

 俺は会議の間もそのことしか考えられなかった。






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