【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

文字の大きさ
156 / 156
出て行け!

最終話。

しおりを挟む
「すまなかった………あの後も彼女からはしつこく言い寄られてしまった。俺は間違えてしまっていた、俺はただの人助けのつもりだった。だが相手に期待を抱かせてしまっていた。俺は間違えていたんだ」

 元夫からの謝罪が言い訳じみていた。


「君を傷つけてしまった………君の優しさに甘えていたんだ。いや、俺は平民なのに王宮騎士になれて殿下達に顔を覚えてもらい声をかけられるようになって有頂天になっていた。
 人のために手助けしてやることも人のためと言いながら自分の自尊心を満たすためだったような気がする」


「そう……もういいわ。この証書を返してあなたとはもう終わりにしたいの」

 なんだか疲れた。忘れたはずの過去にまた心乱される日々は要らない。

「受け取ってはもらえないだろうか?リアンのために」

「ごめんなさい、さっきも言ったけど多すぎるわ」

「ならば君が納得する金額なら受け取ってもらえるかい?」

「………そうね十分の一なら……」

「わかった、その代わり何かお金が必要な時はすぐ声をかけて欲しい」


「ありがとう………」

 ふと元夫に聞いてみたくなった。

「リアンが生まれたこと、あなたはどう思った?嬉しかった?それとも困惑しただけだった?」

「驚いたよ、俺に息子がいたなんて。でもとても嬉しかったし自分のやってしまったことを後悔ばかりした」

「リアン……とってもいい子なの。優しくって可愛くって。ごめんなさい、あの子はあなたの子供でもあるのに、なにも知らせず黙って産んで」

「俺が全て悪いんだ」




 わたしと元夫はこれが最後だとさよならした。




 それから一年後。



「おかあちゃん、ジャックは?」

「リアン、ジャックじゃないわ。お父ちゃんと呼びなさい」

「だって、ジャックはジャックだもん」

 ジャックはわたしの実家での仕事を辞めて今は友人の伯爵家で執事見習いとして働き始めた。

 彼は少しでもわたし達親子のそばにいたいと言って一年前から働き始めたのだった。

 でもまさかわたしを愛してくれていたなんて思ってもみなかった。

 ジャックはわたしにとって幼い頃からの幼馴染で3歳年下の男の子だった。

 そんな彼がいつの間にかわたしにとってかけがえのない大切な男性になっていた。

 両親とは別で休暇を取っては会いにきてくれた。
 ジャックが来てくれるのをいつからか心待ちにしていたのは、リアンよりわたしの方かもしれない。


 一年前、ジャックがこちらの領地に来る途中、馬車の事故にあった。

 なのに彼は怪我を隠して会いに来てくれた。

 なんだか様子がおかしいと思って問いただすと馬車の事故で足を捻っていたらしい。

 だけど気づかれないように平気な顔でいた。その話を聞いた時「ジャック!どうして黙ってたの!」と怒った。

「だってお嬢様が心配されると思ったんです」

「心配するに決まってるでしょう?ジャックはわたしにとって大切な人なんだから!怪我は大丈夫なの?お医者様には診てもらった?歩ける?もう、どうしてここにきたの?」

「それは……あなたとリアン様に会いたかったからです」
 ジャックが真剣な顔でこたえた。

「え、そ、そう」
 戸惑いながら返事をした。
「お嬢様、俺のことが大切ですか?」

 わたしは、ジャックに自分から大切だと言っておきながら、そう言われると自分でも固まってしまった。

 だってあまりにもずっとそばにいてくれて、それが当たり前すぎて……でもジャックにもし何かあったら……そう思うと胸が苦しい。

「俺……お嬢様が……いや、クレア様あなたのことを愛しています」


 ジャックの突然の告白。

 驚きよりも嬉しさの方が先にたつ。

「ジャック……わたしはこの前話したと思うけどまだ離縁したばかりなの。それにあなたのことは幼馴染で可愛い弟のように思っているわ」

 自覚しても彼の気持ちに応える訳にはいかない。

 わたしはリアンの母で恋愛なんてしてる暇はない。

「クレア様、俺にとってはずっとあなただけなんです。少しでも俺のことを気にしてくれるならおれは待ちます」



 そう言ってからのジャックの行動は早かった。

 いつの間にか友人の屋敷で働き始めた。

 そして一年後、ジャックに猛アタックされ、彼の妻になった。

 リアンはジャックが大好きだけどまだお父さんと呼ぶのになれず、ジャックのままだ。

 だけどジャックがずっと一緒に暮らすことになって一番喜んだのはわたしではなくリアンだった。




 来年にはリアンもお兄ちゃんになる。

 リアンは一緒に遊べるから男の子がいいと言っている。だけどジャックはわたしに似た女の子が欲しいらしい。


 わたしはジャックに似た子供ならどちらでもいい。

 ジャックはわたしだけをずっと愛してくれる。浮気はしないと宣言された。

 もちろん仕事上メイドや女性の使用人と関わることも多い執事の仕事。

 でも彼は仕事以外ではわたしに勘違いはされたくないと、しっかり相手と距離を置いている。

 そんなジャックが大好き。

 今、幸せな結婚生活を送っています。






        終


             

 







しおりを挟む
感想 155

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(155件)

tente
2025.03.28 tente

マナとダンには2人で幸せになって欲しかった。

2025.03.30 たろ

感想ありがとうございます。

解除
ユエ
2024.12.10 ユエ

楽しみに読ませていただいています。
自分が母子家庭で苦労したのに、自分の妻子を母子家庭にしてしまった。
どう展開していくのか、今後楽しみです。いっぱい反省させてください。

2024.12.10 たろ

感想ありがとうございます😊

解除
P子
2024.12.03 P子

新連載の早さにビックリです!
誰にでも優しい=誰にも優しくない
とは、よく言ったものだなと思いました。
この最低亭主にこそ、◯ラえもんの迷言「やろうぶっころしてやる」がふさわしいですね(笑)

2024.12.05 たろ

感想ありがとうございます

解除

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

なぜ、私に関係あるのかしら?

シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」 彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。 そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。 「…レオンハルト・トレヴァントだ」 非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。 そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。 「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」 この判断によって、どうなるかなども考えずに… ※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。 ※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、 ※ 画像はAIにて作成しております

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。