【完結】戦争から帰ってきた夫が連れてきたのは彼が愛する人の子供だった。

たろ

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39話  目覚めて。

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 ✴︎✴︎ ルシナ視線に戻ります✴︎ ✴︎



『かあさま』

 遠くで声が聞こえてくるのは誰なのだろう。その声を聞くだけで胸がギュッと締め付けられる。

 苦しくて……早く助け出さなければ……そう思うのに体が思うように動けない。

 あの子が泣いている。早く、早く、あの子のもとへ………




『かあさん、おい、いい加減起きて!飯は?』
『もう少し待ってよ!急いで朝食作るから!』
『ったく、もういいよ。パンでも食べるから』
『だったらお母さんの手を煩わせなくてもいいじゃない』
 姉が弟を嗜めた。
『だったら姉ちゃんが作ってよ』
『やだよ。あんた文句多いじゃん』
『嘘ばっかり!作れないんだろう?』
『うるさい!』
 
『二人ともごめんなさい。急いで作るから!お弁当もいるでしょう?』

 小さなアパートで母子三人肩寄せ合って暮らした日々はとても幸せだった。



 ああ、懐かしい子供達とのやり取り。あの子達は私の大切な宝だった。二人はどうしているかしら?

 可愛い孫たちはそろそろ結婚する年頃だったわ……

『ねぇ、二人とも………』

 私がそう二人に声をかけようとしたら……



 

 ここは?

 周囲を見渡すが知らない場所だった。

 真っ白な天井に簡素なベッド。

 いまどきこんなベッドがあるのね。木製で装飾されてるけどマットレスもなんだか硬くてゴワゴワしてる。

 病院のベッドでももう少しマシじゃないかしら?

 ああ、そうだった。私は病に侵され余命幾許もなく長寿を全うしたんだった。

 いい人生だったとは言えないけど可愛い子供を育て孫の世話をして自分なりに満足して……みんなに見守られながら病室で安らかに眠りについて……

 うん?

 ふと鏡に映る自分の顔?えっ?

 だ、誰?

 この若くて綺麗な女性?

 驚くと声が出ないって本当ね。見たこともない綺麗な顔が鏡に……え?私のしわしわの顔は?

 キョロキョロしながら恐る恐る手を見るととても綺麗な艶々の手が。

 驚いてベッドから起きあがろうとしたらフラフラしてまともに立つどころか起き上がれない。

「…………っあ………」

 なんとか声が出た。

 でも理解不能。思考停止。

 齢78で死んだはずの私。

 自分なりに納得の死。


「かあさまっ」

「………えっ?」チラッとその声に視線を向けて振り返る。

「えっ?ええっ?な、なに?」

「かあさま?」

「かあさま?誰が?」

「……か、かあさま?りゅしあんが、わるいこだから?きらいになったの?」

 えっ?私がお母さん?
 何この男の子、可愛らしい!

 こんな可愛い男の子に悲しい顔をさせるなんて出来ないわ!だけど、この状況は一体なに?
 何が何だかわからない。まるでよく読んでいた転生モノの小説の中みたい……

 死んで生き返ったら美しい女性に?
 いやいやそんな……

 私はパニックの中、この可愛い男の子が「ごめんなさい、ごめんなさい」と泣く姿に胸が痛んだ。

「泣かないでちょうだい。か、かあさま?はあなたのことが大好きなのよ?」

「ほんと?」

 目に涙をたくさんためてポロポロと泣き続ける男の子に優しく「抱っこするからいらっしゃい」と言ったら男の子は椅子を使ってベッドに這い上がってきた。

 まだ思うように体が動かないけど男の子をなんとか抱きしめた。

 不思議なくらい心が落ち着いた。

 この子は多分この体の持ち主が産んだ子供でとても愛していたのだと思う。愛おしさが込み上げてきて「かあさま」と言われるたびに愛情が溢れてきた。

 そう、この子は………『私の大切な息子』

「リュシアン……助かったのね?」

 何も覚えていない、何も知らないのに、口からそんな言葉が出た。

 愛おしい……私の命より大切な『リュシアン』……


 そんな時、知らない男の人が「ルシナ!」と声をかけてきた。


「誰?」









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