【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ

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ダイアナ16歳   お茶会終了。

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 王妃様はジャスティア殿下に笑顔で

「キースはもちろん知っているわよね?最近わたしの護衛から貴女の護衛騎士になったのだから」
 少しの嫌味を混ぜながら紹介すると

「ええお義母様、大変優秀な護衛騎士をお父様がつけてくださったの。お父様ってとってもわたくしを大切にしてくださるから」

 ーー「お義母様と違ってね」と言っているのかしら?

 わたしとキース様は二人のやり取りを黙って聞いていた。

「そう、陛下は貴女にとても甘いものね。欲しいものはなんでも与えて……うちのセリーヌよりも甘えん坊なのね」

「なっ!………」
 セリーヌ様はまだ10歳。18歳のジャスティア殿下と比べるなんて。


 ジャスティア殿下は大きな声を出そうと思わず椅子から立った。

 でも突然ニヤッと笑うと静かに座りなおした。


「そうなの。お父様は後妻を娶ったけど、わたくしのことを冷遇することなんてない優しいお方なの、わたくしのことをとても愛してくださるのよ」

 わたしに和かに話しかけてきた。

 ーーここで辛い顔をしてショックを受けた顔をしないといけないのかしら?
 それとも羨ましそうにするべき?
 目にはいっぱいの涙?

 うーんどれもできない。だってどうでもいいから。

 仕方なくわたしはまた「はあ」と間の抜けた返事をした。
「あ、あの…」
なんとか続きの言葉を言おうとしたらジャスティア殿下がいきなりわたしに向かって紅茶をかけようとした。

「やめなさい!」
 王妃様の声。

 バシャッ!

 わたしの体をキース様が抱きしめて、紅茶はキース様の服に。

 それを見たジャスティア殿下は、わなわなと震えていた。
 まさかキース様にかかると思っていなかったようだった。

「ジャスティア!貴女どうしてそんなことをしたの」

「だ、だって……」

 キース様は幸いぬるめの紅茶だったので火傷はしなくて済んだ。
 それでもこのままではいられない。着替えの置いてある騎士団の宿舎に行くことに。

 キース様も騎士団の仕事で寝泊まりすることがある為そこに一部屋借りているらしい。

「気になさらないで下さい。着替えれば済むことですので」そう言うと席を離れた。

 わたしの耳元に口を近づけて

「君にかけられなくてよかった、俺がいなくなるから心配だがまた後で話そう」と言うと着替えるために席を後にした。

 その姿に周りにいた侍女達が「キャー」っと言っているのを聞いてまたわたしは溜息をついた。

 ーージャスティア殿下の視線が……怖すぎる。
 わたしを睨みつける視線がヒシヒシと感じ突き刺さった。殿下の方を見る勇気すらない。

「ダイアナごめんなさいね、ジャスティアはどうして自分の感情を抑えられないのかしら?」

 ーーいや、王妃様も結構ジャスティア殿下を煽ってたような……

 わたしは心の中で答えた。

「………わ、わたくし……ついカァッとなって……だって、このわたくしの話を真面目に聞こうともしないし、こ、こんながキースの婚約者なんて……」

「婚約者なんて、とは?」
 王妃様が不機嫌に聞き直した。

「キースはわたくしのお気に入りなの。それにこのキースが来ても嬉しそうな顔をするどころか面倒くさそうな顔をしていたわ」

 ーーうわっ、そこまで見ていたのね。面倒なのはキース様ではなくて殿下の態度なんだけどね。

「ダイアナは面倒な顔をしていたのではなくて、どういった態度を取ればいいのか困っていたのよ。あなたがお茶会に突然呼び出すから」

「わ、わたくしはお話をしてみたかったの」

「話とは相手に嫌味を言うことなのかしら?」

「そんな…わたくし言っておりませんわ」

「……そう、無自覚なのね?」

「お義母様?」

「ジャスティアはしばらくお茶会は禁止します」

「お、お義母様が決めることではないわ。お父様に言えばあなたの決めたことなどすぐに撤回出来るのよ?」

「ええ、そうかもしれないわね。でもね人にお茶を突然かけることは子供でも良くないことだと知っているわ。それを18歳のあなたはしたのよ?どう泣きつくのかしら?もしあのお茶が熱湯だったら今頃大変なことになっていたわ、キースは上着を着ていたから濡れただけで済んだけど、もしダイアナにかかっていたらぬるくても火傷していたかもしれない。自分のしたことの大変さに気がつきなさい」

 ジャスティア殿下は俯いて膝の上に置かれたハンカチをギュッと握りしめて小刻みに震えていた。

 反省しているのかしら?と思ったら顔を上げてものすごい形相でわたしを睨みつけて

「貴女がわたくしのキースを奪ったのよ!許さない!」
 そう言って席を立ちどこかへ行ってしまった。

 それをわたしは呆然と見送った。

 王妃様は「ダイアナごめんなさいね嫌な思いをさせてしまって」と謝りながらも深い溜息をついた。




 
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