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ダイアナとジャスティア⑤
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久しぶりに王宮に呼ばれた。
王妃様が笑顔で迎えてくれた。
「もうすぐキースとの結婚式ね?」
「はい」
「わたしも楽しみにしているわ」
「お忙しいのに出席していただけて嬉しく思っています」
「二人は上手くいっているみたいね、安心したわ。ヴァレンとセリーヌもたまには会いたいと言っていたわ」
「わたしもお会いしたいです。いつも二人にお会い出来ていたのに最近はなかなか王宮に顔を出せなくて、今度会いにきても宜しいですか?」
「もちろんよ、二人とも喜ぶわ。ところで今回あなたを呼んだのはジャスティアのことなの」
「少し前、お会いしました」
「聞いたわ、実家の屋敷から無理矢理抜け出して街に出て色々としたらしいわね」
王妃様はため息を漏らした。
「でも、ジャスティア様のお顔はとても素敵でした。あんなお顔もされるんだと思いました」
「貴女も男の子を助けた話は知っているのよね?偶然とはいえ二人のデート中に遭遇したと報告を受けているわ」
「あっ、でしたらあの男の子は大丈夫でしたか?心配だったのですがキース様がジャスティア様なら任せて安心だと言ってそれ以上は教えてもらえないのです」
「そうね、ジャスティアは王女としての地位を奪われてわたしの実家預かりの令嬢でしかないのに陛下の前にやって来て……」
「やって来て?」
「孤児院にもっと予算をくださいと言って、たくさんの陳情書と運営費の帳簿や現状における困ったことなどを纏めた書類を持ってきたの」
苦笑しながら王妃様が楽しそうに話した。
「いつも自分のことしか興味がなくて愛されたくて泣いて我儘を言うしか知らなかったあの子が、初めて人のために動いたのよ?」
「陛下は……」
「ふふふ、かなり驚いていたわ、そして自分のことしか興味がないあの人が本気でジャスティアを怒って怒鳴りつけていたわ」
「やはり……」
「でも親子ね。ジャスティアも負けていなかったわ。言い返して周りの騎士達もあの子を取り押さえるべきか悩んでいたわ」
なんだか物騒で聞いていて恐ろしかった。あの国王陛下に喰ってかかるなんてさすがジャスティア様。
だけど彼女は今はもう王女ではない。意見など聞いてもらえないだろうし不敬になり捕まるのでは?
キース様もその場面にいたのだろうけどわたしにはもちろん話すべきではないから聞かされていない。
今も聞いていていいのか思わず悩んで黙ってしまった。
「陛下は嬉しかったみたい。いつも我儘しか言わないあの子が迷惑をかけられた時簡単に切ってしまったこと本当は後悔していたのよ。
でもジャスティアを王女の地位から外さなければ国王として周りから問いただされることもわかっていたの。あの子は我儘が過ぎたのよ、周りがもう許すことができないところまで行っていたの。わたしもあの子を止めることはできなかった……大人があの子をあんな性格にしたの、わたし達の所為よ」
「では今回不敬になったりはしていないのですね?」
「もちろんよ。今回はきちんと謁見の申し込みを受けて会ったの。
最初はきちんと二人とも冷静に話していたのだけど最後はただの親子喧嘩になっていたわ」
「親子喧嘩?」
『お前はなんでそんなに我儘ばかり言うんだ!』
『お父様がわたしを見てくれないから我儘言うしかなかったのよ!我儘言った時はわたしの顔を見てくれたじゃない!』
『それはあまりにも我儘過ぎるから呆れていたんだ!』
『わたしはお父様に見て欲しかったの!』
『だったら素直に言えばいいだろう?』
『言えたらこんなことになっていないわ!』
「可笑しいでしょう?もうわたし隣にいて呆れて何にも言えなかったわ。似たもの親子なのよね?」
「羨ましいですね、わたしにはそんな関係すらなかった。王妃様があんなに愛情をかけていたのにジャスティア様には伝わっていなくて、いつも勿体無いと思っていました」
「勿体無い?」
「はい、そんなに愛情が要らないならわたしがもらってあげるのにと……」
「あら?わたしの愛情は貴女にもいつもあげていたつもりよ?だからジャスティアは貴女に突っかかって意地悪なことばかり言っていたでしょう?
ヴァレンとセリーヌとダイアナの事いつも目の敵にしていたもの、あの子って幼児性が強いのよね」
「はあ?」
なんだか思ったより王妃様はあっけらかんとしているのでわたしも返事に困った。
「あ、因みに貴女の父親のダニエルは、貴女のこと愛しているけど最低な奴だから簡単には許してはダメよ。貴女が苦しんだ分苦しませてやりなさい。
結婚式だってもちろん呼ばなくていいし子供ができても見せなくていいわ。一生苦しませておやりなさい」
「……は、はい」
「うちの親子喧嘩もかなり揉めて、でも、今度孤児院に調査に入ることになったの。もちろん全ての孤児院の調査にはかなりの時間がかかるけど少しずつ改善されていくと思うわ。
その代わりジャスティアは隣の国の辺境伯のところへ嫁ぐことになったの」
「え?」
「本人の希望よ。元々実家の侯爵家で教育が終了したらどこかに嫁に行くことは決まっていたの」
「そうなんですね」
「初恋のキースのこともやっと踏ん切りがついたみたい、あの子も少しは成長したみたいなの、今まで二人には嫌な思いをさせてごめんなさい」
「やめてください、わたしはジャスティア様が真っ向からわたしに声をかけてくださるのが嫌ではなかったんです。陰で色々言われたり無視されたり、そんな中わたしの目を見て話してくださる人はあまりいませんでした」
「ダイアナ、貴女も変わってる子だものね。二人とも親からの愛情を欲して拗らせてしまったのよね」
「……わたしは欲してなどおりません」
ちょっとムッとしていると王妃様はクスッと笑い
「貴女もまだまだお子ちゃまね」
と言われた。
◆ ◆ ◆
【子供ができたので離縁致しましょう】
ショートショート、サクッと読めるお話ですがR18の作品です。
もしよければ読んでみてください。
王妃様が笑顔で迎えてくれた。
「もうすぐキースとの結婚式ね?」
「はい」
「わたしも楽しみにしているわ」
「お忙しいのに出席していただけて嬉しく思っています」
「二人は上手くいっているみたいね、安心したわ。ヴァレンとセリーヌもたまには会いたいと言っていたわ」
「わたしもお会いしたいです。いつも二人にお会い出来ていたのに最近はなかなか王宮に顔を出せなくて、今度会いにきても宜しいですか?」
「もちろんよ、二人とも喜ぶわ。ところで今回あなたを呼んだのはジャスティアのことなの」
「少し前、お会いしました」
「聞いたわ、実家の屋敷から無理矢理抜け出して街に出て色々としたらしいわね」
王妃様はため息を漏らした。
「でも、ジャスティア様のお顔はとても素敵でした。あんなお顔もされるんだと思いました」
「貴女も男の子を助けた話は知っているのよね?偶然とはいえ二人のデート中に遭遇したと報告を受けているわ」
「あっ、でしたらあの男の子は大丈夫でしたか?心配だったのですがキース様がジャスティア様なら任せて安心だと言ってそれ以上は教えてもらえないのです」
「そうね、ジャスティアは王女としての地位を奪われてわたしの実家預かりの令嬢でしかないのに陛下の前にやって来て……」
「やって来て?」
「孤児院にもっと予算をくださいと言って、たくさんの陳情書と運営費の帳簿や現状における困ったことなどを纏めた書類を持ってきたの」
苦笑しながら王妃様が楽しそうに話した。
「いつも自分のことしか興味がなくて愛されたくて泣いて我儘を言うしか知らなかったあの子が、初めて人のために動いたのよ?」
「陛下は……」
「ふふふ、かなり驚いていたわ、そして自分のことしか興味がないあの人が本気でジャスティアを怒って怒鳴りつけていたわ」
「やはり……」
「でも親子ね。ジャスティアも負けていなかったわ。言い返して周りの騎士達もあの子を取り押さえるべきか悩んでいたわ」
なんだか物騒で聞いていて恐ろしかった。あの国王陛下に喰ってかかるなんてさすがジャスティア様。
だけど彼女は今はもう王女ではない。意見など聞いてもらえないだろうし不敬になり捕まるのでは?
キース様もその場面にいたのだろうけどわたしにはもちろん話すべきではないから聞かされていない。
今も聞いていていいのか思わず悩んで黙ってしまった。
「陛下は嬉しかったみたい。いつも我儘しか言わないあの子が迷惑をかけられた時簡単に切ってしまったこと本当は後悔していたのよ。
でもジャスティアを王女の地位から外さなければ国王として周りから問いただされることもわかっていたの。あの子は我儘が過ぎたのよ、周りがもう許すことができないところまで行っていたの。わたしもあの子を止めることはできなかった……大人があの子をあんな性格にしたの、わたし達の所為よ」
「では今回不敬になったりはしていないのですね?」
「もちろんよ。今回はきちんと謁見の申し込みを受けて会ったの。
最初はきちんと二人とも冷静に話していたのだけど最後はただの親子喧嘩になっていたわ」
「親子喧嘩?」
『お前はなんでそんなに我儘ばかり言うんだ!』
『お父様がわたしを見てくれないから我儘言うしかなかったのよ!我儘言った時はわたしの顔を見てくれたじゃない!』
『それはあまりにも我儘過ぎるから呆れていたんだ!』
『わたしはお父様に見て欲しかったの!』
『だったら素直に言えばいいだろう?』
『言えたらこんなことになっていないわ!』
「可笑しいでしょう?もうわたし隣にいて呆れて何にも言えなかったわ。似たもの親子なのよね?」
「羨ましいですね、わたしにはそんな関係すらなかった。王妃様があんなに愛情をかけていたのにジャスティア様には伝わっていなくて、いつも勿体無いと思っていました」
「勿体無い?」
「はい、そんなに愛情が要らないならわたしがもらってあげるのにと……」
「あら?わたしの愛情は貴女にもいつもあげていたつもりよ?だからジャスティアは貴女に突っかかって意地悪なことばかり言っていたでしょう?
ヴァレンとセリーヌとダイアナの事いつも目の敵にしていたもの、あの子って幼児性が強いのよね」
「はあ?」
なんだか思ったより王妃様はあっけらかんとしているのでわたしも返事に困った。
「あ、因みに貴女の父親のダニエルは、貴女のこと愛しているけど最低な奴だから簡単には許してはダメよ。貴女が苦しんだ分苦しませてやりなさい。
結婚式だってもちろん呼ばなくていいし子供ができても見せなくていいわ。一生苦しませておやりなさい」
「……は、はい」
「うちの親子喧嘩もかなり揉めて、でも、今度孤児院に調査に入ることになったの。もちろん全ての孤児院の調査にはかなりの時間がかかるけど少しずつ改善されていくと思うわ。
その代わりジャスティアは隣の国の辺境伯のところへ嫁ぐことになったの」
「え?」
「本人の希望よ。元々実家の侯爵家で教育が終了したらどこかに嫁に行くことは決まっていたの」
「そうなんですね」
「初恋のキースのこともやっと踏ん切りがついたみたい、あの子も少しは成長したみたいなの、今まで二人には嫌な思いをさせてごめんなさい」
「やめてください、わたしはジャスティア様が真っ向からわたしに声をかけてくださるのが嫌ではなかったんです。陰で色々言われたり無視されたり、そんな中わたしの目を見て話してくださる人はあまりいませんでした」
「ダイアナ、貴女も変わってる子だものね。二人とも親からの愛情を欲して拗らせてしまったのよね」
「……わたしは欲してなどおりません」
ちょっとムッとしていると王妃様はクスッと笑い
「貴女もまだまだお子ちゃまね」
と言われた。
◆ ◆ ◆
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