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番外編 辺境伯は妻を愛す。③
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「あんた達、危ないからこっちへ来なさい!」
「わかったよ母ちゃん」「ったくうるさいな」
大きなお腹を抱えた妻が男の子四人を引き連れて湖の浅瀬で遊んでいる。
靴を脱いで水を掛け合い、大きな声で笑う。
俺のところへ嫁いできた時は、少し陰があっていつも遠くを見ていた。
たぶん故郷への想いが募っていたのだろう。王女の身分を剥奪されて俺のところに嫁いできたジャスティアには帰る場所はなかった。
なのにジャスティアは強がって泣き言一つ言わなかった。
辺境伯なんてかっこいい名前だけど、土地は痩せ農地として耕せる場所は少ない。
見渡す限り草と木、山の中だ。
「あら?肉は取り放題じゃない。山の中にはたくさんの栗や柿、山葡萄に山菜やキノコ、取り放題よ」
強がりばかり言うジャスティアを甘やかし毎日愛を囁いた。もちろんそばにいる間は抱き潰して逃げることなど出来ないようにした。
今腹の中には5人目がいる。
今度は双子らしい。
俺は今度こそジャスティアそっくりの女の子が欲しい。
「ジャスティアそっくりの女の子が生まれるまで子作りはやめないからな」
俺の宣言に顔を引き攣らせ、「ふざけないで!わたしの体を壊す気なの?」と怒鳴られたが医者曰くあの頑丈な身体ならまだまだ大丈夫だとお墨付きをもらっている。
「母ちゃん、俺も妹が欲しい」
「俺も、母ちゃんに似た可愛い赤ちゃんがいい」
なんて息子達に言われると
「あら?お母様に似た可愛らしくて聡明で知的溢れる娘?それは必要ね」なんてすぐその気になる。
そんなある日、辺境伯の俺のところに視察団が来た。
うちの国の王弟である公爵家がたくさんの騎士を連れて来た。
準備に接客に妊娠中のジャスティアはよく動いてくれた。
晩餐会の準備が終わり、来賓達に挨拶だけしてジャスティアは「申し訳ございません。今夜はこれで失礼致します」と言って下がった。
流石に無理をさせていたので顔色が悪かった。
「子供達と先に寝ているわ、ごめんなさい」
我が家は家族みんなで広い寝室を使って寝ている。
特に今は身重なので抱き潰すこともできないから6人仲良く並んで眠る。
いい感じで酔い潰れ、俺は気がつけば何故か公爵の娘と眠っていた。
「計られた」
俺は思わず自分の服を見た。
事後ではない。
何故かって、俺はジャスティア以外勃たない。
それは呪術師に頼みそうしてもらったから。
俺の愛妾や一晩のお情けを狙って女はやってくる。
特に辺境地を自分の国の土地にしようとする国は多い。俺を懐柔してしまえば落とすのも早い。
女を送り込んでくるのはこの土地では当たり前のこと。だから昔っからこの土地の領主は本当に愛する女が出来たらそれ以外の女には勃たないように呪いをかける。
かと言って女と一晩過ごしたことは紛れもない真実。
「はあー、ジャスティアの怒った顔を見ないといけなくなるな」
俺は隣に寝ている女を叩き起こした。
「おい起きろ!小娘!」
「あら、ウィリーさまぁ、昨日の夜は素敵な時間でしたわぁ」
「どこがだ?」
「もちろん何度も貴方にイカされて身体中が今日はだらしくてぇ」
「へえ、そうか?おい、「影」出て来い」
「はいはい、旦那様」
「この女、どうやって俺のベッドの中にやって来たんだ?」
「旦那様が酔い潰れて眠っているのを見てニヤッと笑い自分から裸になってベッドに入ってきました」
「ほお、俺はこの女を抱いたか?」
「旦那様は朝までぐっすりでしたよ」
「な、何言っているの?朝まで見ていたとでも言うの?」
「俺は「影」なんで奥様との情事以外はずっと見守るのが仕事なんですよ」
「当たり前だろう?ジャスティアとの時間は二人っきりだ、あいつの身体は俺だけのものだからな。それ以外の時は「影」が常にいるんだ。俺が必要じゃないと言う時以外はな。特に客がきた時は何が起こるかわからないからな」
「「影」が嘘を言っているかもしれないわ」
「「影」は嘘はつかない。お前の父ちゃんに聞け。王弟だろう?」
俺は服を着るように言ってから「影」に女の襟首を掴ませてぶら下げて歩くように言った。
みんなの前で懲らしめるために。
「やめて、おろして!」「苦しいわ、なんてことをするの!」
「お前、うるさいガキだな。18歳の小娘を相手にするほど飢えてはいない」
父親の公爵のところへ行き「この娘、俺の部屋に来やがった」と説明をすると
「うちの娘と一晩寝たのか?」ニヤッとほくそ笑む公爵。
「勝手に入ってきて勝手に裸になって隣で寝ていただけだ」
「そんな言い訳が通用すると思っているのか?」
やはり公爵も知っていたことか。心の中でため息を吐いた。
「「影」が保証する。国王の所へ行っても教会で真実の判定をしてもらっても構わない」
「お父様、わたし本当にウィリー様に抱かれたんです。だからもう処女ではなくなっているんです」
すると嬉しそうな声で話に入ってきたのは
「あら?旦那様、美味しく処女をいただいたのですか?」俺の愛する妻。
「ジャスティア、喋るな!お前が入ってきたらややこしくなる」
俺は頭を抱えそうになった。彼女にだけは知られたくなかった。絶対俺のこと信用していない。そんな目をしていた。
「どうして?夫の不貞はしっかりわたしも立ち会った方がよろしいのでは?ねえ公爵様?」
「ふん!奥様が妊娠中だしそんなおばさんだから夫は相手にしないのよ。わたしみたいなぴちぴちで可愛い方が男も好きに決まっているわ」
「やめろ、それ以上話すな」公爵は娘の口を綴じさせようと焦っていた。
「影」がいた。それだけでもう公爵は顔が引き攣っていた。
「お父様、どうしたのよ?わたしはウィリー様と愛し合ったのよ?」
「もう余計なことは話すな!」
「な、何よ!お父様がウィリー様の寝室へいけと言ったんじゃない!薬で眠らせたから何もわからないはずだと言って!」
「ふうん、薬を盛ったの?」ジャスティアの顔が怖い。何をしでかすかわからない。
ーー暴れるか?こいつ。それとも怒鳴る?
俺はジャスティアの顔を見ていた。
半分は妊婦なので心配しつつ半分は期待して。
「公爵様もわたしが出産したら、こんな辺境地から解放してやる、わたしの愛人になれと言ってくださったし似たもの親子ね」
「はあああああ!!ふざけんな!!」
俺は公爵の胸ぐらを掴み殴りつけた。
「ぐっほぉ」公爵はお腹を押さえ痛かった。
「お前、わたしに暴力を振るったな!」
「だからなんだ?陛下には「影」に全て報告させる。それで辺境伯を首にするんなら喜んで首になってやるよ」
「貴方馬鹿なんですか?浮気してさらにこの馬鹿な男を殴って!」
「浮気はしてない」
「女性と朝まで同じベッドで寝ていただけで浮気です!」
「そ、それはそうだけど……」
「大体薬を盛られるなんて脇が甘い!「影」がいてくれなかったらこ小娘は貴方の愛人になるところだったのよ?」
「愛人?違うわ正妻になるつもりよ」
「おだまり!馬鹿な小娘ね、「影」が夫があなたを抱いていないと証言すればそれは真実なの。公爵はそんなことも教えていないのですか?」
娘は馬鹿とか小娘と言われ、唇をかみしめて悔しさで泣きそうになっていた。
「……もういい。わかった。「影」の証言は絶対なんだ。「影」は嘘はつかない。絶対的な証拠になる、だからお前がやったことは全てバレている」
「そんな……わたし処女じゃないのよ?誰もお嫁にもらってくれないわ」
泣き出した理由を聞いて「貴方馬鹿なの?この辺境地なら処女じゃなくても嫁に行けるわ!夫の従兄弟ならいくらでも喜んで嫁に娶るから誰がいいか言いなさい!」
そして俺の方を見て言った。
「貴方、さっさと従兄弟を呼んできてちょうだい。そしてそこに並べて!誰がいいかしら?顔はいいけど女好きより少し顔の質は落ちても性格のいい方がいいわよね。
わたくし、妹が欲しかったの。この土地では綺麗なドレスを買ってもお茶をしてくれる貴婦人なんていないのよ!ねぇ一緒にお茶しましょう」
ジャスティアはさっさと従兄弟を紹介し始めた。
男達は唖然としたままその風景を見ていた。
そしてさっさと結婚相手を見つけて
「公爵様、夫のしたことはどうぞお許しくださいませね」にっこりと笑い有無を言わせなかった。
そして「貴方、今夜はじっくりお話しましょうね?」
俺は怖くなって首を横に振った。
「今日は……た、確か、視察に行く予定があって……「そんなもの全て却下よ!今からでもよろしくてよ?」
部下に目をやるとみんな俺から目を逸らせた。
そして…………
次の日の朝、俺の両頬は真っ赤に腫れ上がっていたが誰も「大丈夫ですか?」とか「どうしたのですか?」なんて聞かなかった。
代わりにクソガキどもが
「領主様、その顔どうしたの?」
「ばあか、浮気してジャスティア様に殴られたんだよ」
「うわあ、最低!浮気だけは駄目だって母ちゃんが言ってたぞ」
「わたし、領主様、嫌い!」
「俺もジャスティア様を泣かせる領主様なんか尊敬できないや」
言いたい放題言われて落ち込んで部屋に戻ると
今度は息子達四人が一切話しかけても返事をしてくれなくなった。
何が一番怖いって?
ジャスティアを怒らせるのが一番怖いとわかった。
アイツを怒らせれば全てが俺の敵になる。
味方なんて誰もいない。
いつもならなんでも言うことを聞く部下ですら
「領主様の味方につくと家に入れてもらえないんで」 と誰も助けてもくれない。
そして、やっと五人目にして双子の女の子が生まれた。
「ジャスティア、もう何があっても浮気はしない。お前だけを愛している、だから、七人目を作ろう」
俺は次の日また両頬が腫れていた。
今回は部下達は同情してくれた。
俺はこれからも、ずっと妻だけを愛す。
◆ ◆ ◆
これで、番外編は終わりです。
エレファ編は新しいお話として書いています。
もしよければそちらをお読みください。
ありがとうございました。
「わかったよ母ちゃん」「ったくうるさいな」
大きなお腹を抱えた妻が男の子四人を引き連れて湖の浅瀬で遊んでいる。
靴を脱いで水を掛け合い、大きな声で笑う。
俺のところへ嫁いできた時は、少し陰があっていつも遠くを見ていた。
たぶん故郷への想いが募っていたのだろう。王女の身分を剥奪されて俺のところに嫁いできたジャスティアには帰る場所はなかった。
なのにジャスティアは強がって泣き言一つ言わなかった。
辺境伯なんてかっこいい名前だけど、土地は痩せ農地として耕せる場所は少ない。
見渡す限り草と木、山の中だ。
「あら?肉は取り放題じゃない。山の中にはたくさんの栗や柿、山葡萄に山菜やキノコ、取り放題よ」
強がりばかり言うジャスティアを甘やかし毎日愛を囁いた。もちろんそばにいる間は抱き潰して逃げることなど出来ないようにした。
今腹の中には5人目がいる。
今度は双子らしい。
俺は今度こそジャスティアそっくりの女の子が欲しい。
「ジャスティアそっくりの女の子が生まれるまで子作りはやめないからな」
俺の宣言に顔を引き攣らせ、「ふざけないで!わたしの体を壊す気なの?」と怒鳴られたが医者曰くあの頑丈な身体ならまだまだ大丈夫だとお墨付きをもらっている。
「母ちゃん、俺も妹が欲しい」
「俺も、母ちゃんに似た可愛い赤ちゃんがいい」
なんて息子達に言われると
「あら?お母様に似た可愛らしくて聡明で知的溢れる娘?それは必要ね」なんてすぐその気になる。
そんなある日、辺境伯の俺のところに視察団が来た。
うちの国の王弟である公爵家がたくさんの騎士を連れて来た。
準備に接客に妊娠中のジャスティアはよく動いてくれた。
晩餐会の準備が終わり、来賓達に挨拶だけしてジャスティアは「申し訳ございません。今夜はこれで失礼致します」と言って下がった。
流石に無理をさせていたので顔色が悪かった。
「子供達と先に寝ているわ、ごめんなさい」
我が家は家族みんなで広い寝室を使って寝ている。
特に今は身重なので抱き潰すこともできないから6人仲良く並んで眠る。
いい感じで酔い潰れ、俺は気がつけば何故か公爵の娘と眠っていた。
「計られた」
俺は思わず自分の服を見た。
事後ではない。
何故かって、俺はジャスティア以外勃たない。
それは呪術師に頼みそうしてもらったから。
俺の愛妾や一晩のお情けを狙って女はやってくる。
特に辺境地を自分の国の土地にしようとする国は多い。俺を懐柔してしまえば落とすのも早い。
女を送り込んでくるのはこの土地では当たり前のこと。だから昔っからこの土地の領主は本当に愛する女が出来たらそれ以外の女には勃たないように呪いをかける。
かと言って女と一晩過ごしたことは紛れもない真実。
「はあー、ジャスティアの怒った顔を見ないといけなくなるな」
俺は隣に寝ている女を叩き起こした。
「おい起きろ!小娘!」
「あら、ウィリーさまぁ、昨日の夜は素敵な時間でしたわぁ」
「どこがだ?」
「もちろん何度も貴方にイカされて身体中が今日はだらしくてぇ」
「へえ、そうか?おい、「影」出て来い」
「はいはい、旦那様」
「この女、どうやって俺のベッドの中にやって来たんだ?」
「旦那様が酔い潰れて眠っているのを見てニヤッと笑い自分から裸になってベッドに入ってきました」
「ほお、俺はこの女を抱いたか?」
「旦那様は朝までぐっすりでしたよ」
「な、何言っているの?朝まで見ていたとでも言うの?」
「俺は「影」なんで奥様との情事以外はずっと見守るのが仕事なんですよ」
「当たり前だろう?ジャスティアとの時間は二人っきりだ、あいつの身体は俺だけのものだからな。それ以外の時は「影」が常にいるんだ。俺が必要じゃないと言う時以外はな。特に客がきた時は何が起こるかわからないからな」
「「影」が嘘を言っているかもしれないわ」
「「影」は嘘はつかない。お前の父ちゃんに聞け。王弟だろう?」
俺は服を着るように言ってから「影」に女の襟首を掴ませてぶら下げて歩くように言った。
みんなの前で懲らしめるために。
「やめて、おろして!」「苦しいわ、なんてことをするの!」
「お前、うるさいガキだな。18歳の小娘を相手にするほど飢えてはいない」
父親の公爵のところへ行き「この娘、俺の部屋に来やがった」と説明をすると
「うちの娘と一晩寝たのか?」ニヤッとほくそ笑む公爵。
「勝手に入ってきて勝手に裸になって隣で寝ていただけだ」
「そんな言い訳が通用すると思っているのか?」
やはり公爵も知っていたことか。心の中でため息を吐いた。
「「影」が保証する。国王の所へ行っても教会で真実の判定をしてもらっても構わない」
「お父様、わたし本当にウィリー様に抱かれたんです。だからもう処女ではなくなっているんです」
すると嬉しそうな声で話に入ってきたのは
「あら?旦那様、美味しく処女をいただいたのですか?」俺の愛する妻。
「ジャスティア、喋るな!お前が入ってきたらややこしくなる」
俺は頭を抱えそうになった。彼女にだけは知られたくなかった。絶対俺のこと信用していない。そんな目をしていた。
「どうして?夫の不貞はしっかりわたしも立ち会った方がよろしいのでは?ねえ公爵様?」
「ふん!奥様が妊娠中だしそんなおばさんだから夫は相手にしないのよ。わたしみたいなぴちぴちで可愛い方が男も好きに決まっているわ」
「やめろ、それ以上話すな」公爵は娘の口を綴じさせようと焦っていた。
「影」がいた。それだけでもう公爵は顔が引き攣っていた。
「お父様、どうしたのよ?わたしはウィリー様と愛し合ったのよ?」
「もう余計なことは話すな!」
「な、何よ!お父様がウィリー様の寝室へいけと言ったんじゃない!薬で眠らせたから何もわからないはずだと言って!」
「ふうん、薬を盛ったの?」ジャスティアの顔が怖い。何をしでかすかわからない。
ーー暴れるか?こいつ。それとも怒鳴る?
俺はジャスティアの顔を見ていた。
半分は妊婦なので心配しつつ半分は期待して。
「公爵様もわたしが出産したら、こんな辺境地から解放してやる、わたしの愛人になれと言ってくださったし似たもの親子ね」
「はあああああ!!ふざけんな!!」
俺は公爵の胸ぐらを掴み殴りつけた。
「ぐっほぉ」公爵はお腹を押さえ痛かった。
「お前、わたしに暴力を振るったな!」
「だからなんだ?陛下には「影」に全て報告させる。それで辺境伯を首にするんなら喜んで首になってやるよ」
「貴方馬鹿なんですか?浮気してさらにこの馬鹿な男を殴って!」
「浮気はしてない」
「女性と朝まで同じベッドで寝ていただけで浮気です!」
「そ、それはそうだけど……」
「大体薬を盛られるなんて脇が甘い!「影」がいてくれなかったらこ小娘は貴方の愛人になるところだったのよ?」
「愛人?違うわ正妻になるつもりよ」
「おだまり!馬鹿な小娘ね、「影」が夫があなたを抱いていないと証言すればそれは真実なの。公爵はそんなことも教えていないのですか?」
娘は馬鹿とか小娘と言われ、唇をかみしめて悔しさで泣きそうになっていた。
「……もういい。わかった。「影」の証言は絶対なんだ。「影」は嘘はつかない。絶対的な証拠になる、だからお前がやったことは全てバレている」
「そんな……わたし処女じゃないのよ?誰もお嫁にもらってくれないわ」
泣き出した理由を聞いて「貴方馬鹿なの?この辺境地なら処女じゃなくても嫁に行けるわ!夫の従兄弟ならいくらでも喜んで嫁に娶るから誰がいいか言いなさい!」
そして俺の方を見て言った。
「貴方、さっさと従兄弟を呼んできてちょうだい。そしてそこに並べて!誰がいいかしら?顔はいいけど女好きより少し顔の質は落ちても性格のいい方がいいわよね。
わたくし、妹が欲しかったの。この土地では綺麗なドレスを買ってもお茶をしてくれる貴婦人なんていないのよ!ねぇ一緒にお茶しましょう」
ジャスティアはさっさと従兄弟を紹介し始めた。
男達は唖然としたままその風景を見ていた。
そしてさっさと結婚相手を見つけて
「公爵様、夫のしたことはどうぞお許しくださいませね」にっこりと笑い有無を言わせなかった。
そして「貴方、今夜はじっくりお話しましょうね?」
俺は怖くなって首を横に振った。
「今日は……た、確か、視察に行く予定があって……「そんなもの全て却下よ!今からでもよろしくてよ?」
部下に目をやるとみんな俺から目を逸らせた。
そして…………
次の日の朝、俺の両頬は真っ赤に腫れ上がっていたが誰も「大丈夫ですか?」とか「どうしたのですか?」なんて聞かなかった。
代わりにクソガキどもが
「領主様、その顔どうしたの?」
「ばあか、浮気してジャスティア様に殴られたんだよ」
「うわあ、最低!浮気だけは駄目だって母ちゃんが言ってたぞ」
「わたし、領主様、嫌い!」
「俺もジャスティア様を泣かせる領主様なんか尊敬できないや」
言いたい放題言われて落ち込んで部屋に戻ると
今度は息子達四人が一切話しかけても返事をしてくれなくなった。
何が一番怖いって?
ジャスティアを怒らせるのが一番怖いとわかった。
アイツを怒らせれば全てが俺の敵になる。
味方なんて誰もいない。
いつもならなんでも言うことを聞く部下ですら
「領主様の味方につくと家に入れてもらえないんで」 と誰も助けてもくれない。
そして、やっと五人目にして双子の女の子が生まれた。
「ジャスティア、もう何があっても浮気はしない。お前だけを愛している、だから、七人目を作ろう」
俺は次の日また両頬が腫れていた。
今回は部下達は同情してくれた。
俺はこれからも、ずっと妻だけを愛す。
◆ ◆ ◆
これで、番外編は終わりです。
エレファ編は新しいお話として書いています。
もしよければそちらをお読みください。
ありがとうございました。
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