【完結】貴方の瞳に映るのは

たろ

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3話

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 ダニエルとの結婚は幸せだった。

 卒業して婚約。一年後には結婚をした。

 ただなかなか子供ができなかった。

 同じ頃結婚したアシュアとデヴィッドには子供が産まれていた。
 ブロンドの髪、落ち着いた雰囲気のキースはアシュアに似ていた。

「デヴィッドに似ていなくてよかったな」ダニエルは笑いながら言った。

 アシュアもダニエルの言葉に頷きながら「わたしもそう思うわ」とキースを優しく抱っこして頬に口付けた。

「わたしも早く赤ちゃんが欲しいわ」

 思わず愚痴ってしまうとアシュアが言った。

「エレファ、焦らないの。うちは早く子供が産まれたけど、貴方達はその分まだまだ新婚気分でいられるのよ?」

「ふふ、そうね。もうしばらくはダニエルと仲良く過ごすわ」

 ダニエルとはたまには喧嘩もするけど仲良く暮らしていた。

 「エレファ、愛してるよ」いつも優しくわたしを大切にしてくれるダニエル。

 わたし達は公爵家の別邸で二人で暮らしている。

 お義父様は、公爵として手腕を発揮されてやり手だと言われている。そんなお父様の仕事を手伝いながら王太子の側近としても仕えているダニエルはいつも忙しく働いてくれている。

 結婚して数年、時折りお義父様が昼間にわたし達が暮らす屋敷へとフラッとやってくる。

「エレファは何か欲しいものはあるかい?」

 突然何か買ってやろうと言い出した。

「いえ、特に欲しいものはありません」

「お前がこの国に嫁いできてくれたから、ブラン王国と商売が出来るようになったんだ。少しはお礼をしなければな」
 いやらしく笑うお義父様に少し引き気味で
「ダニエル様がいつも買ってくださるから大丈夫ですわ」と遠回しにいらないと伝えた。

「お前は本当に可愛らしさもないな、だからダニエルの妻になるのは反対したんだ」
 突然顔色が変わり怒り出す。

 そして私の身体を舐め回すように見た。

「子供が出来ないのはダニエルが忙し過ぎるせいなのか?お前が孕むことも出来ないからなのか?」
 いやらしく話すその態度が悍ましくて、

「わたし達はとても仲が良いのでまだ二人で過ごしたいと話しておりますので」

「ふうんそうか……子も作れぬ女は要らないからな。わかっているな?」
 吐き捨てるように言って帰っていく。

 こんなことが何度となくあった。

 ダニエルにはそれとなく伝えても、お父様には頭が上がらないのか「すまない」としか言わない。

 どんなに学校で優秀で生徒会長をしていたダニエルでも父親にだけは勝てないようだ。

 リヴェールに聞いたら、お義父様はこの国では国王陛下しか意見を言えないくらいの怖い存在らしい。

 財力はこの国では王族よりも豊かで、発言力も持っていて、誰も逆らえないらしい。

 そんなお義父様にダニエルは頭が上がらない。だけど、少しくらいは父親と話せないものかしら?と言ったら「君を娶る時に言うことを聞くと約束してしまったんだ」と言われたら何も言い返せなくなった。

 この国は黒髪を嫌う。そんな中、わたしを娶るために父親に何度も頭を下げて許しをもらったらしい。

 あまり話したがらなかったけど、なんとか聞き出したらボソッと教えてくれた。

 わたしの周りはすぐに黒髪のわたしを認めて仲良くしてくれたけど、やはりこの国では忌み嫌われているのだとその時感じてしまった。


 それでも平穏に時は過ぎて行った。

 そしてやっと五年目に子宝に恵まれた。

 名前は「ダイアナ」と名付けた。
 わたしに似た黒髪に翠色の瞳の女の子。

 可愛くてたまらない。ダニエルもなんとか仕事を早く終わらせて帰ってくる。

「ただいま、俺の愛しいエレファとダイアナ」そう言ってわたしの頬にキスをしてダイアナの頬にもキスをする。

 優しい夫と可愛い娘、やっと幸せな家庭が出来た。


 そしてダイアナが6ヶ月を過ぎた頃からアシュアの屋敷に遊びにいくようになった。

 それは、お義父様の突撃を避けるためでもあった。
 この頃になると露骨にわたしに会いにきた。

 だからアシュアに暇な時は顔を出してもいいかと頼んだ。もちろん詳しい訳は話していなかった。

 キースは赤ちゃんが珍しいのか、ベビーキャリーに入ったダイアナの小さな手にそっと触れるとダイアナがその指をぎゅっと握った。キースは慌てて手を離そうとしたら小さいのに力強い手で握りしめてキースを見て笑ったダイアナ。二人の初めての出会いはとても可愛らしいものだった。

 キースはダイアナを見てにこりと笑い「可愛い」思わず呟いていた。

 わたしはダイアナとキースの姿を見ながら

「この子の名前はダイアナ。キース、ダイアナは貴方が大好きみたい、もしよかったら仲良くしてね」

「はい」

 それからはよくダイアナと遊びに行った。
 ダイアナはよく笑いよく泣いた。

 泣く度にキースの膝の上に座るとすぐに機嫌が良くなった。

 わたしはいつの間にかダイアナとアシュアのところに行くことで精神的にホッとすることができていたのかもしれない。

 そうしてダイアナが4歳までよく一緒に過ごした。4歳のダイアナはオシャマで
「にいに、ダイアナのことすき?」
「ダイアナはにいにがだいすきなの」
「にいに、だっこ!」

 キースは嫌がりもせずダイアナといつも遊んでくれた。

「キース、いつもありがとう。ダイアナは貴方が大好きなの、いつかお嫁さんにしてくれると嬉しいわ」
 わたしとアシュアが笑いながらキースに言うと

「うん、僕がダイアナを守るよ。僕のお嫁さんになる?」キースが聞くとダイアナは嬉しそうに答えた。

「にいにのおよめさんになる!」



 そんな幸せはわたしの病のせいで終わりを告げた、

「エレファ、あまり無理はしないで」
 ダニエルは忙しくても暇を見つけては会いにきてくれた。

 ダイアナはほとんど乳母に預けたり、使用人達が交代で面倒を見てくれた。

「お母様?」心配しているわたしのそばから離れようとしない。

「大丈夫よ。ダイアナ心配なんてしないでね」

 ベッドの上で体調がいい時はダイアナに絵本を読んだり、一緒に散歩をしたりした。歩くのが辛い時は車椅子に乗ってダイアナと外に出たりもした。

 ーー自分のことはわかる。もうわたしは長くない……

 ダイアナを置いて死んでいくことが辛い。愛するダニエルとの別れも辛い。

 まだまだ生きたい。

 だけど身体はだんだん弱っていくばかりだった。











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