【完結】わたしが嫌いな幼馴染の執着から逃げたい。

たろ

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大切なもの。

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 みんなが必死で救助活動をしてくれている。

 わたしができることは【譲渡】と【魔力量】をみることだけ。
 ミルヒーナは邪魔にならないように少し離れて、他に閉じ込められている人がいないか魔力検知をしていた。

 グレーの瞳が黒に変わる。魔法使いでたまに集中して魔力が溢れ出すと瞳の色が変わる者がいるのは知られているが滅多にいない。

 これだけの魔力を持っている人は少ない。この騒動の中、底なしのミルヒーナの魔力に、誰もが感謝しつつも恐ろしく感じた。

(ミルヒーナ様は大丈夫なのだろうか?)
(倒れてしまわないのか?)
(なんなんだ、凄過ぎる……)
(この力を知られれば……大変なことになる)

 ミルヒーナは隠してきた自分の力を、生まれて初めてこんなに使った。

 多分体は悲鳴をあげている。本人は全くそれに気がついていなかった。
 周囲は感謝しているが、圧倒的な魔力量と見たこともない魔法に畏怖を感じていることに気がついていない。


「見つかったぞ!」
「早く運び出せ!」
「生きてるぞ!」

 救助している男たちの叫び声に、外にいた大勢の人たちが喜びの声を上げた。

「こっちに怪我人を連れて来い!」

 ぐったりとした人たちが運び出されて来た。
 すぐに【癒し】の魔法がかけられていく。

 ーーお父様……

 ミルヒーナは運び出された人たちを一人一人確認していく。

 ーーお父様がいない。

 崩落現場に目をやる。
 魔力量を視るとまだ奥にいるのがわかった。

 自分が行けば邪魔になる。今はただ待つしかない。

 その間に、【癒し】の魔法使いに魔力を【譲渡】していく。

 救助された人たちの怪我はかなり酷い。生きているのが信じられないと思えるほどの人も助け出された。

 治療をする度にどんどん魔力が減っていく。
 ミルヒーナも自分の魔力を必死で注ぐ。

 ーーお父様……

 何度も何度も救助中の様子を窺う。

 ロザリナもミルヒーナのそばにやって来た。

「ミル、大丈夫なの?流石に魔力を使いすぎているわ」
 ロザリナはミルヒーナの【譲渡】の魔法を知って驚きはしたものの受け入れていたが、あまりにも使いすぎているので心配でたまらなかった。

「お母様……大丈夫です、それよりもお父様が、まだ助け出されていないんです」

「そうね……」
 ロザリナも心配そうに視線を向けた。

 寒さと怖さから唇が青くなってガタガタ震えるミルヒーナの肩に後ろから上着を誰かがかけた。

 ミルヒーナが驚いて振り返るとそこには……

「リ……ヴィ……?」
 リヴィと父親のアルゼン伯爵がいた。

「ミル、マックは?」
 アルゼン伯爵の言葉にハッとなったミルヒーナは、少し気持ちを持ち直した。
 ーーしっかりしなきゃ。

「まだ見つかっていません」

「そうか……」

「ミルヒーナ様!お願いします!」

 【癒し】の魔法使いに呼ばれてミルヒーナは急いで【譲渡】をしていると、リヴィ達がミルヒーナの様子を見て目を見開いていた。

「あれは……?」
 アルゼン伯爵は初めてみる【譲渡】の魔法に理解できないでいた。

「ミルは魔法が使えるの?」
 リヴィも魔法が使えないはずのミルヒーナをただ見ていることしかできなかった。

 リヴィの上着を肩にかけているミルヒーナの周りに何人もの男達が頼っていく。

 魔力をもらうと救助活動を再開する男達。【癒し】の魔法使いは大怪我の治療にたくさんの魔力を使うため、何度もミルヒーナに魔力を【譲渡】してもらっていた。

「父上、俺も救助手伝って来ます」
 ミルヒーナの姿を見て、リヴィも男達と救助活動を始めた。
 リヴィは【強化】魔法が得意だった。

 疲れが出て来て魔法が弱まり脆くなった場所の強化をリヴィが受け持った。

 アルゼン伯爵は女性ではできない現場を仕切ることにした。

 亡くなった遺体を大切に保管してあげられるようにテントの場所を決めたり、完全に治しきれない怪我人を運ぶ準備を始めたり、騒然として無駄な動きが多い現場をより効率よく人員を動かし始めた。

 ーー二人が来てくれてから動きが良くなったわ。

 あとはお父様が……

「カイヤ様が見つかったぞ!」

 その言葉にミルヒーナは駆け出した。

「お父様!」

 救助現場から出て来たマックは、担架に乗せられてぐったりとしていた。意識がない。

 ミルヒーナは救助の邪魔になることも忘れてマックに駆け寄った。

「お父様……」

 泥で汚れ、服も破れてあちらこちらから出血していた。

 ーー魔力も減って枯渇寸前だわ

 ミルヒーナはマックの手を握ると【譲渡】を始めた。
 担架を持っていた男二人はそれに気がついてすぐに立ち止まったが、ミルヒーナは大きな声を張り上げた。

「止まらないで!すぐに治療をしないと死んでしまうわ!」

「わかりました。では転ばないようについて来て下さい」

「わかった!急いで!」

 ミルヒーナも担架から離れないように必死で【譲渡】をしながら歩いた。
 ーー絶対お父様を助けるわ。

 すぐに【癒し】の治療が始まった。

 かなりの出血があったのが窺える。服の背中側は赤黒い血で染まっていた。

「いくらでも魔力はあげるから、お願い!お父様を助けて」

「ミルヒーナ様、絶対助けますから」

「お願いします」

 ミルヒーナは涙をこぼさずに気丈に振る舞っていた。

 リヴィは【強化】魔法を使い続けているため、ミルヒーナのそばに行くことはできなかった。

(ミル……真っ青だけど、倒れないかな)

 本当はそばにいてあげたい。だけど自分に出来ることを今はやるしかない。

 リヴィは魔法が得意だと言われてきた。だけど実戦でこんなに魔法が役立ったのは生まれて初めてだった。
 だけど……
(もっともっと努力しないと、俺の魔法なんてたいして役に立たない)

 魔法も使えないと馬鹿にされていたミルヒーナは、たくさんの人のためにこんなに役立っていた。なのに自分は……

 自分に対して腹が立っていた。己の過信が今になって恥ずかしい。






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