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姫。⑧
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わたしの頬は……真っ赤に腫れ上がった。
流石に口が悪すぎたかしら?
オリビア様に思いっきり頬をバチンっと叩かれた。
「いくらなんでも酷いわ!」
そう言って「わぁーー」っと顔を覆って泣き出した。
隣にいた青年はオリビア様の肩を優しく抱き「泣かないで」と慰めていた。
オリビア様にキッと睨まれて、彼女は青年に寄り添いながら去って行った。
もう少し手加減してもいいんじゃないかしら?かなり痛かったのだけど。
周囲にはたくさんの護衛が隠れて控えていたようだった。
興奮していたのか足早に去るオリビア様に、慌てて護衛達が後ろからついて行った。
護衛達がわたしの横を通り過ぎる時、冷たい視線と敵意を向けてきた。
この国の姫であるわたしは、やはり敬われていないようだ。
まあ、それはそうだよね。
以前の姫様は多分大人しくてあまり自己主張がなさそうだったもの。
ーー夢の中での記憶だけど。
今のわたしは記憶がない姫様で、国王達に見捨てられて誰からも振り向いてもらえないのだもの。
おかげで自由だけど。
ルドルフが心配そうにわたしの頬をベロンと舐めた。
「大丈夫だよ?記憶がないおかげで傷つくことすらないんだもの」
持っていたタオルを湿らせて赤くなった頬を冷やした。
つい『姫様』が可哀そうになりオリビア様にキツイことを言ってしまった。
向こうが絡んできたとはいえやり過ぎたかな?
国王陛下が何か言ってきてお咎めを受けるかもしれないな。
「ルドルフ、帰ろう」
厩舎に戻るとおじちゃん達が驚いた顔をしていた。
「どうしたんだ?ソフィちゃん」
「頬が腫れてるぞ?」
「……うん、転びました」
「転んで恥ずかしかったの」と笑って誤魔化した。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
久しぶりに隠し通路のある場所へと向かった。
最近は軟禁状態ではないので扉から好きに外を行き来できる。
でもこの場所は何かあったら逃げ道として確保しておきたい。
そう……逃げ道として。
ここに来てから、この城の中だけでしかまだ過ごしていない。
あの城門を出て町へ行ったことがないし、どんな家があるのか、この国はどんな国なのか、村や町がどれくらいあるのかもよくわからない。
『姫様』をやめて一人で生き抜くことができるのか不安だけど、この国では16歳になれば成人するらしい。
なのでわたしの場合はあと1年と数ヶ月すれば大人になれる。
元の世界では一人暮らしをしていたんだもの。
それまでに生きていくための知識をたくさん増やして、ついでに小銭を稼いで、この城から抜け出してなんとか生きていくつもり。
なんとなく散歩をしていると「君、大丈夫だった?」
知らない男の人の声が背中に話しかけてきた。
思わずビクッとして肩が震えた。
だれ?
この場所は人気があまりない場所なのに。
恐々と振り向くとあの青年が立っていた。
「貴方は………」
誰かしら?
「ああ、俺はネルヴァン・ルワナだ」
ルワナ…………ルワナ………
忘れたくても忘れられない。何度も夢で見た………あの城………
冷たい視線、冷たい態度………毎日が苦しかった………
「あ…………ああああっ………こ、こないで……向こうへ行って……」
首を横に何度も振った。
体が震えて動けない。
忘れていたはずなのに、夢のはずなのに……思い出した…………
ボロボロのドレスを着ていた……長く美しかっただろう髪はボサボサ、肌もガサついていた。
体は痩せこけて誰が見ても見るに忍びない姿だった。
そして城壁の上に立たされた。
それも体と手を縄で縛られ、いつ落ちてしまうかわからない状態で。
下を見るとたくさんの人々が石を投げてくる。
聞こえてくるのは怒声。
「死ね!」
「この悪女!」
「さっさと落ちてしまえ!」
悪意しか感じない、罵声の中、心の中が凍りつき、表情は暗く、体が震えていた。
石が当たる。痛みでうっと声が出た。
突然後ろから剣で刺された。
痛みが全身を貫いた。
血が滴る。
その後城壁の上から落とされた。
ドスンッ。
もう………痛みすら感じない。
やっと……やっと……解放された。この苦しみから、嘲りから、そして彼の裏切りから……
彼の手がわたしの方へと向かってくる。
「いやあああああ」
流石に口が悪すぎたかしら?
オリビア様に思いっきり頬をバチンっと叩かれた。
「いくらなんでも酷いわ!」
そう言って「わぁーー」っと顔を覆って泣き出した。
隣にいた青年はオリビア様の肩を優しく抱き「泣かないで」と慰めていた。
オリビア様にキッと睨まれて、彼女は青年に寄り添いながら去って行った。
もう少し手加減してもいいんじゃないかしら?かなり痛かったのだけど。
周囲にはたくさんの護衛が隠れて控えていたようだった。
興奮していたのか足早に去るオリビア様に、慌てて護衛達が後ろからついて行った。
護衛達がわたしの横を通り過ぎる時、冷たい視線と敵意を向けてきた。
この国の姫であるわたしは、やはり敬われていないようだ。
まあ、それはそうだよね。
以前の姫様は多分大人しくてあまり自己主張がなさそうだったもの。
ーー夢の中での記憶だけど。
今のわたしは記憶がない姫様で、国王達に見捨てられて誰からも振り向いてもらえないのだもの。
おかげで自由だけど。
ルドルフが心配そうにわたしの頬をベロンと舐めた。
「大丈夫だよ?記憶がないおかげで傷つくことすらないんだもの」
持っていたタオルを湿らせて赤くなった頬を冷やした。
つい『姫様』が可哀そうになりオリビア様にキツイことを言ってしまった。
向こうが絡んできたとはいえやり過ぎたかな?
国王陛下が何か言ってきてお咎めを受けるかもしれないな。
「ルドルフ、帰ろう」
厩舎に戻るとおじちゃん達が驚いた顔をしていた。
「どうしたんだ?ソフィちゃん」
「頬が腫れてるぞ?」
「……うん、転びました」
「転んで恥ずかしかったの」と笑って誤魔化した。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
久しぶりに隠し通路のある場所へと向かった。
最近は軟禁状態ではないので扉から好きに外を行き来できる。
でもこの場所は何かあったら逃げ道として確保しておきたい。
そう……逃げ道として。
ここに来てから、この城の中だけでしかまだ過ごしていない。
あの城門を出て町へ行ったことがないし、どんな家があるのか、この国はどんな国なのか、村や町がどれくらいあるのかもよくわからない。
『姫様』をやめて一人で生き抜くことができるのか不安だけど、この国では16歳になれば成人するらしい。
なのでわたしの場合はあと1年と数ヶ月すれば大人になれる。
元の世界では一人暮らしをしていたんだもの。
それまでに生きていくための知識をたくさん増やして、ついでに小銭を稼いで、この城から抜け出してなんとか生きていくつもり。
なんとなく散歩をしていると「君、大丈夫だった?」
知らない男の人の声が背中に話しかけてきた。
思わずビクッとして肩が震えた。
だれ?
この場所は人気があまりない場所なのに。
恐々と振り向くとあの青年が立っていた。
「貴方は………」
誰かしら?
「ああ、俺はネルヴァン・ルワナだ」
ルワナ…………ルワナ………
忘れたくても忘れられない。何度も夢で見た………あの城………
冷たい視線、冷たい態度………毎日が苦しかった………
「あ…………ああああっ………こ、こないで……向こうへ行って……」
首を横に何度も振った。
体が震えて動けない。
忘れていたはずなのに、夢のはずなのに……思い出した…………
ボロボロのドレスを着ていた……長く美しかっただろう髪はボサボサ、肌もガサついていた。
体は痩せこけて誰が見ても見るに忍びない姿だった。
そして城壁の上に立たされた。
それも体と手を縄で縛られ、いつ落ちてしまうかわからない状態で。
下を見るとたくさんの人々が石を投げてくる。
聞こえてくるのは怒声。
「死ね!」
「この悪女!」
「さっさと落ちてしまえ!」
悪意しか感じない、罵声の中、心の中が凍りつき、表情は暗く、体が震えていた。
石が当たる。痛みでうっと声が出た。
突然後ろから剣で刺された。
痛みが全身を貫いた。
血が滴る。
その後城壁の上から落とされた。
ドスンッ。
もう………痛みすら感じない。
やっと……やっと……解放された。この苦しみから、嘲りから、そして彼の裏切りから……
彼の手がわたしの方へと向かってくる。
「いやあああああ」
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