15 / 24
姫。⑦
しおりを挟む
「もう!やめて」
髪の毛をルドルフが本気で食べようとする。
「わははは、ソフィ、早く逃げないと髪が短くなるぞ」
「ソフィちゃんが大好きなんだろうな」
みんな大笑いして助けてくれない。
ルドルフは日に日にわたしに懐き、甘えてくるし、最近はイタズラも増えた。
「ルドルフ!もう!嫌いになるからね」
流石に本気で怒っているのに気がついたのかルドルフも髪を食べるのをやめた。
でもわたしの髪の毛はルドルフの涎でぐっしょりと濡れて気持ちが悪い。
「お水で髪を洗ってきます」
「ルドルフはそこに居て!ついてきてはダメよ!」
ルドルフがついてこようとするので振り向き少し怒った口調で言うと諦めてルドルフはこちらをじっと見つめた。
あの黒い可愛らしい瞳で見られるとつい甘やかしてしまう。
「おいで」
わたしの言葉に反応して静かにわたしの横に来ると、わたしの歩調に合わせてルドルフも歩き出した。
外にある手押しポンプの井戸から水を汲み髪を洗い流した。
横でルドルフも静かに桶に入った水を飲んでいた。
持ってきたタオルで髪を拭いているとオリビア様の話し声が聞こえてきた。
近くにいるのかしら?
辺りを見回すと少し離れたところでわたしよりも少し年上の青年と話していた。
多分17~19歳くらいだろうか。
金髪に青い瞳、とても顔立ちが整っている。
これぞ美青年!少年にも見えるが纏う雰囲気は少しだけ大人に近く感じた。
今まで何度か見た彼女の姿とは打って変わって、少し頬を赤らめ穏やかな笑顔を絶やさないで彼の横顔をチラチラと窺っているのがわかった。
うん、聖女様は王子様みたいな人が好きなのね。
恋人かしら?婚約者?
でもそんな噂は聞いていない。
わたしはこんなところで会って何を言われるかわからないと思い目を逸らし隠れようとした。
でもわたしの横には……隠れようのないでっかいルドルフがフンフンと興奮しながらわたしの横にいた。
そう、さっきまで静かに水を飲んでいたはずのルドルフがなぜか気が立って興奮していたのだ。
「どうしたの?ドルルフ?落ち着いてちょうだい」
ルドルフの体を優しく撫でながら耳元でゆっくり話しかけた。
「ルドルフ、いい子ね、よしよし」
わたしの声がなんとかルドルフに届いたようだ。
ホッとして「行きましょう」とルドルフの手綱を持ってあるきだそうとした。
「あら?どうしてお姫様である貴女がこんなところで馬のお世話をしているのかしら?」
オリビア様が面白いものでも見つけたように嗤い、わたしの体を上から下へとジロジロと視線を向けてから、頬に手を置いた。
「はああ」とため息をつき困った顔をしていた。
「この国の姫がそんな格好で城の中をウロウロするなんて醜聞になりかねないわ、ねぇ?」
ねぇ?とわたしに言われてもわたし自身記憶がないし『姫様』としての自覚もない。
誰も何も言わないもの。
「ルドルフはわたしの馬です。大切な友人なんです。友人のお世話をして何が悪いのですか?」
わたしが馬鹿にされるのは別に平気。でもルドルフを汚いもののように見つめる目がとても嫌だ。
「友人?」
クスクス馬鹿にして笑うオリビア様。
「はいそうです。とても大切なんです。貴女もその隣にいる方が大切だと思われるならご自分の性格の悪さはお隠しになったほうがよろしいかと思います」
「な、なんて言ったの?」
オリビア様は隣にいる人のことを忘れたかのように声を荒げてわたしを睨みつけた。
「え?頭も悪いのに耳も悪くなったんですか?もう一度言ったほうがいいですか?」
スーッと息を吸い込んで、息を吐きながら満面の笑みを作り出した。
「オリビア様は頭も悪いけど性格も悪いと本当のことを言っただけです」
横にいる青年は眉をビクッと一瞬動かしたが声を出そうとしない。
ただ、わたしとオリビア様の会話を黙って聞いていた。
わたしも自分の口からこんなキツイ発言が出るとは思ってもみなかった。
多分『姫様』はこんな強気なこと言う人ではなかったのだろう。
この国の『聖女様』を敵に回して、これから平穏無事に生きていけるかしら?
自業自得だけど。
髪の毛をルドルフが本気で食べようとする。
「わははは、ソフィ、早く逃げないと髪が短くなるぞ」
「ソフィちゃんが大好きなんだろうな」
みんな大笑いして助けてくれない。
ルドルフは日に日にわたしに懐き、甘えてくるし、最近はイタズラも増えた。
「ルドルフ!もう!嫌いになるからね」
流石に本気で怒っているのに気がついたのかルドルフも髪を食べるのをやめた。
でもわたしの髪の毛はルドルフの涎でぐっしょりと濡れて気持ちが悪い。
「お水で髪を洗ってきます」
「ルドルフはそこに居て!ついてきてはダメよ!」
ルドルフがついてこようとするので振り向き少し怒った口調で言うと諦めてルドルフはこちらをじっと見つめた。
あの黒い可愛らしい瞳で見られるとつい甘やかしてしまう。
「おいで」
わたしの言葉に反応して静かにわたしの横に来ると、わたしの歩調に合わせてルドルフも歩き出した。
外にある手押しポンプの井戸から水を汲み髪を洗い流した。
横でルドルフも静かに桶に入った水を飲んでいた。
持ってきたタオルで髪を拭いているとオリビア様の話し声が聞こえてきた。
近くにいるのかしら?
辺りを見回すと少し離れたところでわたしよりも少し年上の青年と話していた。
多分17~19歳くらいだろうか。
金髪に青い瞳、とても顔立ちが整っている。
これぞ美青年!少年にも見えるが纏う雰囲気は少しだけ大人に近く感じた。
今まで何度か見た彼女の姿とは打って変わって、少し頬を赤らめ穏やかな笑顔を絶やさないで彼の横顔をチラチラと窺っているのがわかった。
うん、聖女様は王子様みたいな人が好きなのね。
恋人かしら?婚約者?
でもそんな噂は聞いていない。
わたしはこんなところで会って何を言われるかわからないと思い目を逸らし隠れようとした。
でもわたしの横には……隠れようのないでっかいルドルフがフンフンと興奮しながらわたしの横にいた。
そう、さっきまで静かに水を飲んでいたはずのルドルフがなぜか気が立って興奮していたのだ。
「どうしたの?ドルルフ?落ち着いてちょうだい」
ルドルフの体を優しく撫でながら耳元でゆっくり話しかけた。
「ルドルフ、いい子ね、よしよし」
わたしの声がなんとかルドルフに届いたようだ。
ホッとして「行きましょう」とルドルフの手綱を持ってあるきだそうとした。
「あら?どうしてお姫様である貴女がこんなところで馬のお世話をしているのかしら?」
オリビア様が面白いものでも見つけたように嗤い、わたしの体を上から下へとジロジロと視線を向けてから、頬に手を置いた。
「はああ」とため息をつき困った顔をしていた。
「この国の姫がそんな格好で城の中をウロウロするなんて醜聞になりかねないわ、ねぇ?」
ねぇ?とわたしに言われてもわたし自身記憶がないし『姫様』としての自覚もない。
誰も何も言わないもの。
「ルドルフはわたしの馬です。大切な友人なんです。友人のお世話をして何が悪いのですか?」
わたしが馬鹿にされるのは別に平気。でもルドルフを汚いもののように見つめる目がとても嫌だ。
「友人?」
クスクス馬鹿にして笑うオリビア様。
「はいそうです。とても大切なんです。貴女もその隣にいる方が大切だと思われるならご自分の性格の悪さはお隠しになったほうがよろしいかと思います」
「な、なんて言ったの?」
オリビア様は隣にいる人のことを忘れたかのように声を荒げてわたしを睨みつけた。
「え?頭も悪いのに耳も悪くなったんですか?もう一度言ったほうがいいですか?」
スーッと息を吸い込んで、息を吐きながら満面の笑みを作り出した。
「オリビア様は頭も悪いけど性格も悪いと本当のことを言っただけです」
横にいる青年は眉をビクッと一瞬動かしたが声を出そうとしない。
ただ、わたしとオリビア様の会話を黙って聞いていた。
わたしも自分の口からこんなキツイ発言が出るとは思ってもみなかった。
多分『姫様』はこんな強気なこと言う人ではなかったのだろう。
この国の『聖女様』を敵に回して、これから平穏無事に生きていけるかしら?
自業自得だけど。
685
あなたにおすすめの小説
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?
きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。
しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
恋人が聖女のものになりました
キムラましゅろう
恋愛
「どうして?あんなにお願いしたのに……」
聖騎士の叙任式で聖女の前に跪く恋人ライルの姿に愕然とする主人公ユラル。
それは彼が『聖女の騎士(もの)』になったという証でもあった。
聖女が持つその神聖力によって、徐々に聖女の虜となってゆくように定められた聖騎士たち。
多くの聖騎士達の妻が、恋人が、婚約者が自分を省みなくなった相手を想い、ハンカチを涙で濡らしてきたのだ。
ライルが聖女の騎士になってしまった以上、ユラルもその女性たちの仲間入りをする事となってしまうのか……?
慢性誤字脱字病患者が執筆するお話です。
従って誤字脱字が多く見られ、ご自身で脳内変換して頂く必要がございます。予めご了承下さいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティ、ノークオリティのお話となります。
菩薩の如き広いお心でお読みくださいませ。
小説家になろうさんでも投稿します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる