【完結】氷の騎士は忘れられた愛を取り戻したい〜愛しています〜令嬢はそれぞれの愛に気づかない

たろ

文字の大きさ
11 / 26

11話

しおりを挟む
王太子妃から言われた言葉……

『ジェシカ、わたしはみんなとは違うわ。貴女の記憶は全く戻っていないの?』

妃殿下の問いにわたしは何も答えることができなかった。

『しばらく考えてみてね』

妃殿下にそう言われてから、ずっと考えているけどわからない。

お兄様に聞いてみようと思ったけど、お忙しそうで捕まらない。

ティムは知っているのかしら?

マリーナとティムに聞いてみようか悩んでいた時、久しぶりにお父様が他の領地の視察から帰ってきたので
話す機会がなくなってしまった。

「お父様、お帰りなさいませ」

お父様は相変わらず怖い顔をしていたが、お母様の顔を見ると少し柔らかく微笑んだ気がする。

「貴方お帰りなさい」
お母様はもちろんお父様が帰ってきてくれて嬉しそう。

わたしはどう接したらいいのかわからずお父様から逃げようと部屋へ行こうとしたら

「あら?久しぶりにみんなで夕食をいただきましょう」

お兄様も忙しい中急いで屋敷に戻ってきた。ティムやマリーナ、そしてセルジオ兄様も揃いみんなで食卓を囲んだ。

お母様が常に柔かに微笑んで話してくださるので和やかな雰囲気で食事の時間が進んだ。

「ジェシカは妃殿下にお茶に誘われたらしいな」

お兄様が話を振ってきた。
わたしはドキッとしながらも

「はい、久しぶりにお話ができて楽しい時間を過ごすことができました」

「妃殿下はとてもジェシカを可愛がっていたからな」

「優しくしていただきました………
……あ、あの、わたし……何か忘れてしまったことがあるのでしょうか?」

ーー妃殿下に言われた言葉、考えようとすると頭が痛くなって思考が停止してしまう。

わからない……何か大切なことを忘れているのかもしれない。

「どうしてそんなことを聞くんだい?」

お兄様が優しく聞き返す。

「妃殿下に言われました。少しは記憶を取り戻したのかと」

「くだらん、そんな話はやめろ」

突然大きな声でお父様が言った。
とても不機嫌な顔をしてわたしを冷たく見つめていた。

「申し訳ありません」

「何故謝る?お前に非があるのか?何故そんなにオドオドしているのだ」

お父様はわたしに畳み掛ける様に怖い声で言ってくる。

「わたし……」
こんな時どう答えればいいのかわからなくなる。謝罪もできない、かと言って他になんと言えばいいのだろう?

「貴方そんなキツイ言い方をしなくても…」
お母様がやんわりとお父様に言った。

「ジェシカ、もう食事も済んだことだしマリーナ嬢と部屋に戻りなさい」
お兄様がわたしに部屋に戻るように促してくれたのでわたしはホッとして
「失礼します」
と言って席を離れた。

ーーふう、わたしの言った言葉があんなに空気を悪くするなんて…

「マリーナ嫌な思いをさせてごめんなさい」

「大丈夫だよ、ジェシカは何か忘れていることに気がついたの?」

「ううん、何も……でもそのことを考えようとすると頭が痛くなって辛いの」

「そうなのね、じゃあ考えなければそんな辛い思いをしなくていいの?」

「うん、でも本当に何か忘れているのなら知りたい、そう思っているの」

「……そうだよね、知りたいよね」

「マリーナ……?」

「わたしは……たぶん少しだけど知っているの」

「え?マリーナと会ったのはわたしが領地に移り住んでからが初めてなのに?」

「ジェシカ、貴女は12歳の時にも同じように領地で暮らしていたの。わたしはその時やっぱり今みたいにティムとわたしと三人で仲良く遊んでいたわ。もちろんゼルジオ様も一緒に」

「………?わたしが領地に?12歳?わたしはその頃たぶんギルス殿下の婚約者になっていたのではないかしら?」

「殿下の婚約者になる前……半年くらい住んでたの」

「わたしが?そんな……覚えていないわ、だってわたしはあの頃……王子妃教育が忙しくて……え?その前?何をしていたんだろう?」

ーーわからない、考えようとしたらやっぱり頭が痛い、締め付けられるように頭が痛くて……

「ジェシカ?大丈夫?」

蹲って頭を抱えるわたしにマリーナが必死で呼んでいるのにわたしは何も答えられない。


ーーーーー

目が覚めたら自分の部屋のベッドの上にいた。

「ジェシカ目が覚めた?よかった」

マリーナの目が赤い。

「ごめんなさい、心配かけて」

「わたしがいけなかったの」

「違う、わたしは本当に知りたいと思っているの。なのに頭が痛くなって……心配かけてごめんね」

わたしは2時間ほど眠ってしまっていたようだ。

外はもう暗くなっていた。

マリーナは落ち込んでしまって笑顔がぎこちなかった。
わたしも話しかけづらくてその日はお互い黙ったまま眠りについた。

ーー明日は普通でいよう。




ーーーーー

夢を見た。



大好きなお母様と暮らしている夢を。

少し幼いティムやマリーナと森にピクニックに行ったり馬に乗って遠出をしたり、庭でお茶をして話したり、とても楽しい毎日。

そこには少し若い兄様がいた。

「ジェシカ、危ないから走り回ったらダメだよ」
そう言ってわたしを捕まえて抱きしめる。
わたしは
「セルジオ!」と言いながら彼の腕から逃げて

「ねえ、一緒にあそこまで走りたいわ」と、彼の手を引いて湖の方へと二人で走り出した。

「ねえ、ボートに乗りましょうよ」

「わかった」
兄様はわたしの顔についていた髪を優しく触りながら

「乗ろうか?」と言って二人でボートに乗った。

綺麗な景色に感動しながらも、二人っきりでいられることにドキドキして自分が誘ったくせにどうしていいかわからない。

「怖いの?」
兄様がわたしの顔を覗き込む。

「怖くはないわ、ただ……」

「ただ?」

「セルジオと二人でいると、何を話していいのかわからなくて黙っていたの」

「ふうん、俺はジェシカといるだけで幸せだよ」

「ほんと?」

「うん、ジェシカの怒った顔も拗ねた顔も可愛いしね」

「わたしってそんな顔しかしてないの?」

「ククッ、自覚ない?」

「セルジオが、いつも他の女の子といるからじゃない!」

「別にいるわけじゃない、勝手に話しかけてくるんだ。俺が好きなのはジェシカだけ」

「ほんとうに?怒ってばかりのわたしのこと嫌いにならない?」

「うーん、怒ってる顔も可愛いけど俺は笑ってるジェシカが好きだな」

「わたしも、わたしにだけ優しいセルジオが好き。そしてこのグリス領が好きだわ、ずっとこの領地で暮らしたい」

「ジェシカは来年からは王都に戻って学園に通わないといけない、俺もあと二年したら士官学校を卒業して騎士になる。だからそれまで待ってて。迎えに行くから」

「うん、約束だよ?忘れないで」


ーー約束……わたしは初めてセルジオとキスをした。
軽く口を触れるだけの口づけ。

約束したの、忘れないでねって。


なのにわたしは忘れてしまった。

この夢も目が覚めればまた忘れてしまう。

夢の中で何度も忘れてはダメだと自分に言っているのに、目が覚めるとわたしの世界にいるのは愛してるセルジオではなくセルジオ兄様だった。













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。 誤字訂正ありがとうございました。4話の助詞を修正しました。

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

【溺愛のはずが誘拐?】王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!

五月ふう
恋愛
ザルトル国に来てから一ヶ月後のある日。最愛の婚約者サイラス様のお母様が突然家にやってきた。 「シエリさん。あなたとサイラスの婚約は認められないわ・・・!すぐに荷物をまとめてここから出ていって頂戴!」 「え・・・と・・・。」 私の名前はシエリ・ウォルターン。17歳。デンバー国伯爵家の一人娘だ。一ヶ月前からサイラス様と共に暮らし始め幸せに暮していたのだが・・・。 「わかったかしら?!ほら、早く荷物をまとめて出ていって頂戴!」 義母様に詰め寄られて、思わずうなずきそうになってしまう。 「な・・・なぜですか・・・?」 両手をぎゅっと握り締めて、義母様に尋ねた。 「リングイット家は側近として代々ザルトル王家を支えてきたのよ。貴方のようなスキャンダラスな子をお嫁さんにするわけにはいかないの!!婚約破棄は決定事項です!」 彼女はそう言って、私を家から追い出してしまった。ちょうどサイラス様は行方不明の王子を探して、家を留守にしている。 どうしよう・・・ 家を失った私は、サイラス様を追いかけて隣町に向かったのだがーーー。 この作品は【王子様に婚約破棄された令嬢は引きこもりましたが・・・お城の使用人達に可愛がられて楽しく暮らしています!】のスピンオフ作品です。 この作品だけでもお楽しみいただけますが、気になる方は是非上記の作品を手にとってみてください。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

他人の婚約者を誘惑せずにはいられない令嬢に目をつけられましたが、私の婚約者を馬鹿にし過ぎだと思います

珠宮さくら
恋愛
ニヴェス・カスティリオーネは婚約者ができたのだが、あまり嬉しくない状況で婚約することになった。 最初は、ニヴェスの妹との婚約者にどうかと言う話だったのだ。その子息が、ニヴェスより年下で妹との方が歳が近いからだった。 それなのに妹はある理由で婚約したくないと言っていて、それをフォローしたニヴェスが、その子息に気に入られて婚約することになったのだが……。

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

あの、初夜の延期はできますか?

木嶋うめ香
恋愛
「申し訳ないが、延期をお願いできないだろうか。その、いつまでとは今はいえないのだが」 私シュテフイーナ・バウワーは今日ギュスターヴ・エリンケスと結婚し、シュテフイーナ・エリンケスになった。 結婚祝の宴を終え、侍女とメイド達に準備された私は、ベッドの端に座り緊張しつつ夫のギュスターヴが来るのを待っていた。 けれど、夜も更け体が冷え切っても夫は寝室には姿を見せず、明け方朝告げ鶏が鳴く頃に漸く現れたと思ったら、私の前に跪き、彼は泣きそうな顔でそう言ったのだ。 「私と夫婦になるつもりが無いから永久に延期するということですか? それとも何か理由があり延期するだけでしょうか?」  なぜこの人私に求婚したのだろう。  困惑と悲しみを隠し尋ねる。  婚約期間は三ヶ月と短かったが、それでも頻繁に会っていたし、会えない時は手紙や花束が送られてきた。  関係は良好だと感じていたのは、私だけだったのだろうか。 ボツネタ供養の短編です。 十話程度で終わります。

処理中です...