【完結】2度目の人生は愛されて幸せになります。

たろ

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5話

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「アルト!」

「ケイン様?いかがなさいましたか?」
 ケインは机で朝から仕事をしていた。

 ペンを置くと俺の方へと視線を向けた。

「お前は!シェリーナにまともに食事も与えていないのか?」

「はっ?どう言うことでしょう?」

 子供だからと俺にバレていないと思っているのか?

 俺はアルトの顔を食い入るようにまじまじと見つめた。

 本当に驚いているように見える。

「シェリーナは昨日一日何も食べていない、お腹が空いたと猫のノアに話しかけていたんだ」

「ノア?猫?」

「お前は何も知らないのか?」

「申し訳ございません。シェリーナ様のことは普段はシェリーナ様付きのアリナとミーネに任せております。毎日報告書で確認しておりますが食事を出していないなどあり得ないのですが」

「報告書?」

 なんでそんなものを?

「はい、旦那様達が領地へ行っておりますので何かあってはいけないと思い、報告書を書いてもらっております」

「俺は本人が話しているのを聞いたんだ」

「シェリーナ様がケイン様に訴えたのですか?」

「シェリーナが庭にいたから話しかけようとしたら……猫のノアにお腹が空いたと話していたんだ。だから俺は……本当か知りたくてお前に聞きにきたんだ」

「それは……」

 アルトは俺の話を聞いてどう判断すればいいのか悩んでいるようだった。

「ついて来てくれ。シェリーナの部屋へ行こう」

 俺とアルトは執務室を出てシェリーナの部屋へと向かった。

 鍵はかけられていないようで部屋の中に入るとなんだか埃の匂いがした。

「掃除されていないのか?」

 俺の言葉にアルトも眉を顰めた。

 ベッドのシーツはいつ変えたのか分からないくらい汚れていた。

 床も埃が目で見てとれるくらいだ。

「なんだこの部屋は?」
 俺は部屋の中を見て回った。

 アルトも言葉を発することはなかった。

 そんな時廊下から声が聞こえてきた。

 扉に近づき耳を澄ましてみれば。

「シェリーナ様付きの仕事ってサボれるから楽だわ」

「でもあの報告書、毎日書かされるからめんどくさいのよね」

「ほんと。でも適当に書いてもバレないから」

「シェリーナ様って暗いし大人しいし何も言わないからなんだか気味が悪いのよね。ケイン様だって毛嫌いして一緒に食事もしようとしないのよね」

「昨日、一回も食事を運ばなかったんだけど、今頃シェリーナ様、ベッドでぐったりしてるかも」
 楽しそうに笑いながら言った。

 ーーシェリーナを空腹にさせて何が楽しいんだ?

「どうせ痩せてるから少しくらい食べなくてもバレないわよ」

「前の屋敷でも酷い目にあってたらしいわよ」

 ーーえ?嘘だろう?
 俺はそんな話知らない。ただ、両親が亡くなったからうちに引き取られたんじゃないのか?

「ああ、聞いたわ。自分の両親が亡くなって、叔父に引き取られてそこで虐待されていたんでしょう?」

「だからあんなに暗いのね。可哀想だけどケイン様に嫌われてるんだもの。ここでも同じ運命よね?」

「ほんと。わたし達だけあの子の世話をさせられて運が悪いんだもの。少しくらい仕事をサボってもバチが当たらないわ」

 ふざけんな!こいつら何言ってるんだ!

 俺は扉に握り拳を作り殴ろうとした。

 アルトが俺の手を握って止めた。

 アルトは静かに首を振ると俺の手を引っ張ってクローゼットの中へ連れて行かれた。

 俺とアルトはクローゼットの中でじっとしていることにした。

 アルトは二人のメイドの話をまだ聞きたかったようだ。

 俺は怒鳴って殴りつけたかった。

 だけど……だけど……あのメイド達の話の中に俺の名前が出てきた。

 俺がシェリーナを嫌ったから……俺の態度が酷いから……他の使用人達もシェリーナに対して疎かにしていいと思ったのか?

 俺は悔しくて涙が出たけど、黙ってクローゼットの中で様子を窺った。

 クローゼットの中は薄汚れた服が数枚入っているだけだった。

 母様が買い与えたたくさんのドレスはどこへ消えたんだろう?

 母様が帰ってくるのは半年後。その間シェリーナはここでメイド達から食事もまともにもらえず辛い日々を送ることになっていたのか?

 俺はそんなことも知らずに、シェリーナは暗いし、話しかけても俯いてばかりだとさらに不満を言って、シェリーナを追い詰め続けることになっていたのか?


「あら?シェリーナ様どこへ行っていたのですか?」

 意地悪く聞くメイドの声。

 シェリーナが庭から部屋に帰ってきたようだ。

「………お散歩です」

 シェリーナは小さなか細い声で返事をした。

「勝手に外に出て何をしているんですか?」
「またあの汚い猫に会いに行ったんですね?」
「ったく、野犬に襲わせてこの屋敷から追い出そうとしたのに!いつの間にか怪我も治ってあの猫、ほんと、邪魔なんだから!」

 俺はその言葉を聞いてカッとなった。

 なのにアルトは俺の体を捕まえてクローゼットからまだ出るなと無言で首を横に振った。

 なんで!こんなこと言われて酷いことをされて、なんで出て行ったらダメなんだ!

 シェリーナが!くそっ!






◆ ◆ ◆

次の話はシェリーナ目線になります。

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