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20話 シェリーナは。
夜会に出席して倒れた。
気がつけば屋敷の自分の部屋のベッドの上にいた。
それも……何故か、ベッドの横にはわたしの手を握り椅子に座って、何故か、寝ているケイン様がいる。
何故?
わたし一応成人したから大人なのに。
ケイン様がどうしてわたしの部屋にいるの?
思わず驚いて叫びそうになるのを必死で抑えた。
片手はがっつり掴まれていて動かせない。
でもとても喉が渇いていて、お水が飲みたい。
ついでに言えばお腹も空いた。
チラッと窓の目を向けると外は明るい。
うん、もう夜会は昨日のことになってるみたい。
「あ、あの……ケイン様?」
ケイン様を小さな声で呼んでみた。
「…………うん?…………あ……」
目を開けてわたしの顔を覗き込んだケイン様。
ーーうわっ、ち、近い。その綺麗すぎる顔を近づけないで!
思わずドギマギしてしまう。
「よかった、シェリーナの顔色が良くなってる」
「すみません。ご迷惑をおかけしました。屋敷まで連れて帰ってきてくださったんですね、ありがとうございます」
「俺のほうこそごめんね。パートナーなのにそばにいてあげれなくて」
シュンとなったケイン様は叱られた仔犬のよう。
「君が倒れて医務室に運んだ後、エドウィン殿下が現れて、マリアンナ殿下と踊るようにと頼まれた。すまなかった一人にさせて」
ーー思い出した。
エドウィン殿下が……そう……
『妹はケインに惚れててね、だけどケインは誰もエスコートをしないんだ。今回君が初めてなんだ。それを見た妹がショックで悲しんでいたから、まあちょっとうーん、命令したんだ』
殿下はわたしにそう言ってた。
だから……
「ケイン様、王太子殿下であるエドウィン殿下からのお言葉に否はありません。仕方がないことですので謝らないでください」
ケイン様は多分幼い頃のわたしへの態度のせいで、仕方なくわたしをエスコートしてくださったんだと思う。それじゃないと誰もエスコートしない主義のケイン様がわたしと夜会に出席するわけないもの。
そうか、マリアンナ殿下はケイン様がお好きなのね。
最初聞いた時は殿下の雰囲気が何故か怖くてあまり深く考えていなかったけど、ケイン様の将来のお相手になるお方なのかしら?
ぼんやりそんなことを考えていた。
「シェリーナ、俺はマリアンナ殿下に言い寄られているけど別に何もないから」
「え、ええ、そうなんです、か?」
ケイン様が必死でそう言ってるのを聞いて「ではまだケイン様とマリアンナ殿下の婚約は成立していないのですね」と返事をした。
ーーうん、お二人の婚約はまだ整っていないのね。
でも婚約は間違いないだろう。王家からの打診は断ることはできないもの。
でもそうなるとわたしがこの屋敷にいるとご迷惑だわ。
早めに社交を切り上げて領地の屋敷に帰ろう。
本当はしばらく王都の学校に通うことになっていたけど、断ろう。
領地から社交のため王都に来ている学生は、その間王都の学校へ通うことが多い。
わたしも今年からはそうしようと思っていたけど、社交界デビューは終わったのであとはどうしても出席しなければいけないお茶会やパーティーだけ出て、早めに領地へ帰ることを決めた。
「ケイン様、あの、そろそろ手を離していただけませんか?」
「手?」
ケイン様は自分の手を見て「うわっ、ごめん!」と言ったので手を離してくれると思った。
なのに……何故?
「シェリーナ、君が何事もなくて良かった。体調がすぐれない時はすぐに俺に声をかけて。屋敷には常に医師を常駐するようにするから、安心して」
そう言うとわたしの手にキスを落とした。
ーーえ?何?ケイン様が……甘い。
蕩けるような優しい笑顔をわたしに向けた。
幼い頃はわたしを嫌い、そのせいでわたしが辛い目にあったとわかってからはわたしを見ると暗い顔をして俯いていた。
たぶん自分のしでかしたことの大きさにショックを受けて反省してわたしの顔を見るのが辛かったのだと思う。
そして8年間会わずに過ごした間に、ケイン様はなんだか驚くくらい優しい人になっていた。
ケイン様がやっと部屋から出て行ってくれて、わたしは服を着替えて食堂へと向かった。
もう歩くのもフラフラしない。
体調は大丈夫。
だけど、思い出すのはエドウィン殿下の言葉。
『ねぇ、シェリーナ嬢、僕のこと覚えてる?』
『僕は今日君が僕の目の前に現れてすぐに気がついたんだ、ねえ?思い出さない?
この王城の中、ここの庭園、そして地下牢の在処を』
なんなのだろう。体がゾワっと身震いした。なんて冷たい目で見るのだろう。
よくわからない話をされる。
わたしにそんな話をしてどうするんだろう?
『また時間を作って会いたい』と言って医務室を出て行った殿下。
わたしはもう二度と会いたくない。
あの時もそう思ったけど、今も、やはり会いたいとは思えない。
初めて会ったはずなのに、向こうはわたしを知っているかのようだった。
それも、わたしを憎み嫌っているように感じた。だけど……わたしをまるで愛しているかのような目で見つめてきた。
気持ち悪い。
怖い。
早く王都から逃げなきゃ。
気がつけば屋敷の自分の部屋のベッドの上にいた。
それも……何故か、ベッドの横にはわたしの手を握り椅子に座って、何故か、寝ているケイン様がいる。
何故?
わたし一応成人したから大人なのに。
ケイン様がどうしてわたしの部屋にいるの?
思わず驚いて叫びそうになるのを必死で抑えた。
片手はがっつり掴まれていて動かせない。
でもとても喉が渇いていて、お水が飲みたい。
ついでに言えばお腹も空いた。
チラッと窓の目を向けると外は明るい。
うん、もう夜会は昨日のことになってるみたい。
「あ、あの……ケイン様?」
ケイン様を小さな声で呼んでみた。
「…………うん?…………あ……」
目を開けてわたしの顔を覗き込んだケイン様。
ーーうわっ、ち、近い。その綺麗すぎる顔を近づけないで!
思わずドギマギしてしまう。
「よかった、シェリーナの顔色が良くなってる」
「すみません。ご迷惑をおかけしました。屋敷まで連れて帰ってきてくださったんですね、ありがとうございます」
「俺のほうこそごめんね。パートナーなのにそばにいてあげれなくて」
シュンとなったケイン様は叱られた仔犬のよう。
「君が倒れて医務室に運んだ後、エドウィン殿下が現れて、マリアンナ殿下と踊るようにと頼まれた。すまなかった一人にさせて」
ーー思い出した。
エドウィン殿下が……そう……
『妹はケインに惚れててね、だけどケインは誰もエスコートをしないんだ。今回君が初めてなんだ。それを見た妹がショックで悲しんでいたから、まあちょっとうーん、命令したんだ』
殿下はわたしにそう言ってた。
だから……
「ケイン様、王太子殿下であるエドウィン殿下からのお言葉に否はありません。仕方がないことですので謝らないでください」
ケイン様は多分幼い頃のわたしへの態度のせいで、仕方なくわたしをエスコートしてくださったんだと思う。それじゃないと誰もエスコートしない主義のケイン様がわたしと夜会に出席するわけないもの。
そうか、マリアンナ殿下はケイン様がお好きなのね。
最初聞いた時は殿下の雰囲気が何故か怖くてあまり深く考えていなかったけど、ケイン様の将来のお相手になるお方なのかしら?
ぼんやりそんなことを考えていた。
「シェリーナ、俺はマリアンナ殿下に言い寄られているけど別に何もないから」
「え、ええ、そうなんです、か?」
ケイン様が必死でそう言ってるのを聞いて「ではまだケイン様とマリアンナ殿下の婚約は成立していないのですね」と返事をした。
ーーうん、お二人の婚約はまだ整っていないのね。
でも婚約は間違いないだろう。王家からの打診は断ることはできないもの。
でもそうなるとわたしがこの屋敷にいるとご迷惑だわ。
早めに社交を切り上げて領地の屋敷に帰ろう。
本当はしばらく王都の学校に通うことになっていたけど、断ろう。
領地から社交のため王都に来ている学生は、その間王都の学校へ通うことが多い。
わたしも今年からはそうしようと思っていたけど、社交界デビューは終わったのであとはどうしても出席しなければいけないお茶会やパーティーだけ出て、早めに領地へ帰ることを決めた。
「ケイン様、あの、そろそろ手を離していただけませんか?」
「手?」
ケイン様は自分の手を見て「うわっ、ごめん!」と言ったので手を離してくれると思った。
なのに……何故?
「シェリーナ、君が何事もなくて良かった。体調がすぐれない時はすぐに俺に声をかけて。屋敷には常に医師を常駐するようにするから、安心して」
そう言うとわたしの手にキスを落とした。
ーーえ?何?ケイン様が……甘い。
蕩けるような優しい笑顔をわたしに向けた。
幼い頃はわたしを嫌い、そのせいでわたしが辛い目にあったとわかってからはわたしを見ると暗い顔をして俯いていた。
たぶん自分のしでかしたことの大きさにショックを受けて反省してわたしの顔を見るのが辛かったのだと思う。
そして8年間会わずに過ごした間に、ケイン様はなんだか驚くくらい優しい人になっていた。
ケイン様がやっと部屋から出て行ってくれて、わたしは服を着替えて食堂へと向かった。
もう歩くのもフラフラしない。
体調は大丈夫。
だけど、思い出すのはエドウィン殿下の言葉。
『ねぇ、シェリーナ嬢、僕のこと覚えてる?』
『僕は今日君が僕の目の前に現れてすぐに気がついたんだ、ねえ?思い出さない?
この王城の中、ここの庭園、そして地下牢の在処を』
なんなのだろう。体がゾワっと身震いした。なんて冷たい目で見るのだろう。
よくわからない話をされる。
わたしにそんな話をしてどうするんだろう?
『また時間を作って会いたい』と言って医務室を出て行った殿下。
わたしはもう二度と会いたくない。
あの時もそう思ったけど、今も、やはり会いたいとは思えない。
初めて会ったはずなのに、向こうはわたしを知っているかのようだった。
それも、わたしを憎み嫌っているように感じた。だけど……わたしをまるで愛しているかのような目で見つめてきた。
気持ち悪い。
怖い。
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