24 / 31
24話
お茶会の当日。
俺はシェリーナをエスコートした。
ふと思い出したのはカリクシードの最後だった。あいつはどんなふうに死んだんだろう?
衰弱死?それとも自死?
俺はあいつを、あいつの最愛の妹のマリーナと愛妾のクリシアの遺体と共に地下牢へ入れた。二度と外に出られないようにして。その後のことは知らない。
あいつは最後は後悔して確かに王として心を入れ替えてまた頑張ろうとしていた。
だが俺はあいつが幸せになる未来を潰した。
ジュリエットを不幸にした男を、幸せな王様になんてさせたくはなかった。
苦しんで苦しんで最後は絶望の中で死んでいくのがお似合いだ。
この世で一番大切な二人と共に死ねばいい。俺はジュリエットとあの世で暮らすから。
あの時俺は傲慢にそう思ったし、それを実行した。
だがなぜなんだ。
俺とジュリエットが生まれ変わったのは良しとする。
だがそこにカリクシードまで。くそっ、あの男は俺のことを恨んでいる。前世の記憶もしっかりある。
それに今回は俺の方が立場が弱い。
王命と言われれば公爵家の息子でしかない俺には逆らえない。
だから何がなんでもシェリーナを嫁にすることにした。
シェリーナはうんと首を縦には振らなかったが、もうすでに入籍は済ませた。
どうしてもシェリーナが俺との結婚は嫌だと言われれば白い結婚を理由に白紙に戻すつもりだ。
それまでシェリーナに手を出すつもりはない。
そうしなければカリクシードが、いやエドウィン殿下が俺からシェリーナを奪い去るのが目に見えている。
記憶がある俺と殿下。シェリーナには全く記憶はないみたいだ。だけど、エドウィン殿下を本能で恐れている。
そばにいればわかる。エドウィン殿下の名を出すだけでビクッとするシェリーナ。
そんな状態のシェリーナをあんな奴にだけは渡さない。
両親を納得させるのにエドウィン殿下とマリアンナ殿下のことを何度も話した。
あの二人が俺とシェリーナと、それぞれ婚約しようと画策している証言も王城内の使用人達からこっそりと聞くことができた。
それは父と母が力を持っていていろんなところに人脈があるおかげだった。
思っていたとおりお茶会には俺とシェリーナしか呼ばれていなかった。
そして父である国王にシェリーナを会わせるように計画していることもわかった。
さらにマリアンナ殿下は媚薬を手に入れていた。
そんなに強いものではないらしいが、やはり俺が飲めばどうなっていただろう。
俺に飲ませて無理やり体の関係を先に作ってしまうつもりらしい。
王女のくせに、乱れてきっている。俺は女は嫌いだ。派手な化粧や香水の匂いも嫌いだし、胸を強調したドレスや宝石をこれでもかとつけている姿もうんざりする。
その象徴がマリアンナ殿下だ。さらに男に甘えて媚を売る。
自分はこの国で一番高貴で一番美しいと思い込んでいる女。
うんざりする。
誰が好きでもない女なんて抱くもんか。
俺がキスをするのも抱くのもシェリーナだけだ。前世からの拗らせたシェリーナへの想いは簡単には終われない、いや終わる気なんてない。
シェリーナにどんなに振られようと今回は諦めない。諦めてジュリエットの幸せを願ったのにカリクシードはジュリエットを不幸に陥れた。
だから今回は俺がシェリーナを幸せにする。
父上には一番お前が辛い思いをさせただろう、と突っ込まれたが、だからこそもうそんな想いは二度とさせない。
エスコートするシェリーナはとても可愛らしかった。
華美な飾りのないシンプルなドレス、素顔も美しいので化粧は薄らとしていた。
髪から匂う甘い香りは香水臭さなんてなくて、髪につけている香油からの匂いでシェリーナらしい優しい匂いだった。
着飾らないシェリーナなのにみんなが振り返るほど美しい。
俺は隣にいて誇らしくもあり、心の中では『俺のシェリーナを勝手に見るな!』と毒吐いていた。
「ケイン様?どうかなさいました?」
俺の眉根が寄って不機嫌な顔をしているのに気付かれてシェリーナが俺の顔を窺っていた。
「うん?今日は少し周りからの視線がうるさいなと思ったんだ」
「それは仕方ありませんわ」
シェリーナが楽しそうに笑う。
ーー仕方ないとは?
俺はそう聞きたいのに、シェリーナのさっきまで緊張していた顔から強張っていた力が抜けて、少しだけいつもの笑顔に戻ったので思わず見惚れていた。
笑うだけでも可愛らしいシェリーナ。
「ケイン様があまりにもカッコよくてみんな振り返ってるんですよ」
楽しそうに周りを見てクスクス笑うシェリーナ。
ーー違う!みんなシェリーナの美しい姿に見惚れているんだ。どこの令嬢なのだろうと気になっているんだ。
俺の顔は貴族の中では知られている。だけどシェリーナは田舎に引き篭もっていたのでまだ顔も名前も知られていない。
みんなシェリーナに興味津々なのが手に取るようにわかる。
笑う顔すら可愛らしい。
それを俺はシェリーナに気づかれないように周囲へ威嚇していた。
俺はどれだけシェリーナに拗らせているんだろう。自分でも自覚するくらいシェリーナの前では優しい公爵令息を演じている。たぶん。
本当は今すぐでも抱きかかえてこんな場所から連れ出したい。
エドウィン殿下にこの美しい姿をほんの少しでも目に映させたくない。
だけどそれをグッと堪えた。
「シェリーナ、今から殿下お二人に会うんだけど、いいかい。あの二人の話は本気にしたらダメだ。全て俺の言葉が、それだけが真実だから。俺はシェリーナだけを愛してる。それだけは忘れないで」
俺はシェリーナの耳元で「愛してる」と告げた。
俺はシェリーナをエスコートした。
ふと思い出したのはカリクシードの最後だった。あいつはどんなふうに死んだんだろう?
衰弱死?それとも自死?
俺はあいつを、あいつの最愛の妹のマリーナと愛妾のクリシアの遺体と共に地下牢へ入れた。二度と外に出られないようにして。その後のことは知らない。
あいつは最後は後悔して確かに王として心を入れ替えてまた頑張ろうとしていた。
だが俺はあいつが幸せになる未来を潰した。
ジュリエットを不幸にした男を、幸せな王様になんてさせたくはなかった。
苦しんで苦しんで最後は絶望の中で死んでいくのがお似合いだ。
この世で一番大切な二人と共に死ねばいい。俺はジュリエットとあの世で暮らすから。
あの時俺は傲慢にそう思ったし、それを実行した。
だがなぜなんだ。
俺とジュリエットが生まれ変わったのは良しとする。
だがそこにカリクシードまで。くそっ、あの男は俺のことを恨んでいる。前世の記憶もしっかりある。
それに今回は俺の方が立場が弱い。
王命と言われれば公爵家の息子でしかない俺には逆らえない。
だから何がなんでもシェリーナを嫁にすることにした。
シェリーナはうんと首を縦には振らなかったが、もうすでに入籍は済ませた。
どうしてもシェリーナが俺との結婚は嫌だと言われれば白い結婚を理由に白紙に戻すつもりだ。
それまでシェリーナに手を出すつもりはない。
そうしなければカリクシードが、いやエドウィン殿下が俺からシェリーナを奪い去るのが目に見えている。
記憶がある俺と殿下。シェリーナには全く記憶はないみたいだ。だけど、エドウィン殿下を本能で恐れている。
そばにいればわかる。エドウィン殿下の名を出すだけでビクッとするシェリーナ。
そんな状態のシェリーナをあんな奴にだけは渡さない。
両親を納得させるのにエドウィン殿下とマリアンナ殿下のことを何度も話した。
あの二人が俺とシェリーナと、それぞれ婚約しようと画策している証言も王城内の使用人達からこっそりと聞くことができた。
それは父と母が力を持っていていろんなところに人脈があるおかげだった。
思っていたとおりお茶会には俺とシェリーナしか呼ばれていなかった。
そして父である国王にシェリーナを会わせるように計画していることもわかった。
さらにマリアンナ殿下は媚薬を手に入れていた。
そんなに強いものではないらしいが、やはり俺が飲めばどうなっていただろう。
俺に飲ませて無理やり体の関係を先に作ってしまうつもりらしい。
王女のくせに、乱れてきっている。俺は女は嫌いだ。派手な化粧や香水の匂いも嫌いだし、胸を強調したドレスや宝石をこれでもかとつけている姿もうんざりする。
その象徴がマリアンナ殿下だ。さらに男に甘えて媚を売る。
自分はこの国で一番高貴で一番美しいと思い込んでいる女。
うんざりする。
誰が好きでもない女なんて抱くもんか。
俺がキスをするのも抱くのもシェリーナだけだ。前世からの拗らせたシェリーナへの想いは簡単には終われない、いや終わる気なんてない。
シェリーナにどんなに振られようと今回は諦めない。諦めてジュリエットの幸せを願ったのにカリクシードはジュリエットを不幸に陥れた。
だから今回は俺がシェリーナを幸せにする。
父上には一番お前が辛い思いをさせただろう、と突っ込まれたが、だからこそもうそんな想いは二度とさせない。
エスコートするシェリーナはとても可愛らしかった。
華美な飾りのないシンプルなドレス、素顔も美しいので化粧は薄らとしていた。
髪から匂う甘い香りは香水臭さなんてなくて、髪につけている香油からの匂いでシェリーナらしい優しい匂いだった。
着飾らないシェリーナなのにみんなが振り返るほど美しい。
俺は隣にいて誇らしくもあり、心の中では『俺のシェリーナを勝手に見るな!』と毒吐いていた。
「ケイン様?どうかなさいました?」
俺の眉根が寄って不機嫌な顔をしているのに気付かれてシェリーナが俺の顔を窺っていた。
「うん?今日は少し周りからの視線がうるさいなと思ったんだ」
「それは仕方ありませんわ」
シェリーナが楽しそうに笑う。
ーー仕方ないとは?
俺はそう聞きたいのに、シェリーナのさっきまで緊張していた顔から強張っていた力が抜けて、少しだけいつもの笑顔に戻ったので思わず見惚れていた。
笑うだけでも可愛らしいシェリーナ。
「ケイン様があまりにもカッコよくてみんな振り返ってるんですよ」
楽しそうに周りを見てクスクス笑うシェリーナ。
ーー違う!みんなシェリーナの美しい姿に見惚れているんだ。どこの令嬢なのだろうと気になっているんだ。
俺の顔は貴族の中では知られている。だけどシェリーナは田舎に引き篭もっていたのでまだ顔も名前も知られていない。
みんなシェリーナに興味津々なのが手に取るようにわかる。
笑う顔すら可愛らしい。
それを俺はシェリーナに気づかれないように周囲へ威嚇していた。
俺はどれだけシェリーナに拗らせているんだろう。自分でも自覚するくらいシェリーナの前では優しい公爵令息を演じている。たぶん。
本当は今すぐでも抱きかかえてこんな場所から連れ出したい。
エドウィン殿下にこの美しい姿をほんの少しでも目に映させたくない。
だけどそれをグッと堪えた。
「シェリーナ、今から殿下お二人に会うんだけど、いいかい。あの二人の話は本気にしたらダメだ。全て俺の言葉が、それだけが真実だから。俺はシェリーナだけを愛してる。それだけは忘れないで」
俺はシェリーナの耳元で「愛してる」と告げた。
あなたにおすすめの小説
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
〈完結〉デイジー・ディズリーは信じてる。
ごろごろみかん。
恋愛
デイジー・ディズリーは信じてる。
婚約者の愛が自分にあることを。
だけど、彼女は知っている。
婚約者が本当は自分を愛していないことを。
これは愛に生きるデイジーが愛のために悪女になり、その愛を守るお話。
☆8000文字以内の完結を目指したい→無理そう。ほんと短編って難しい…→次こそ8000文字を目標にしますT_T
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
あなたへの恋心を消し去りました
鍋
恋愛
私には両親に決められた素敵な婚約者がいる。
私は彼のことが大好き。少し顔を見るだけで幸せな気持ちになる。
だけど、彼には私の気持ちが重いみたい。
今、彼には憧れの人がいる。その人は大人びた雰囲気をもつ二つ上の先輩。
彼は心は自由でいたい言っていた。
その女性と話す時、私には見せない楽しそうな笑顔を向ける貴方を見て、胸が張り裂けそうになる。
友人たちは言う。お互いに干渉しない割り切った夫婦のほうが気が楽だって……。
だから私は彼が自由になれるように、魔女にこの激しい気持ちを封印してもらったの。
※このお話はハッピーエンドではありません。
※短いお話でサクサクと進めたいと思います。
魔法のせいだから許して?
ましろ
恋愛
リーゼロッテの婚約者であるジークハルト王子の突然の心変わり。嫌悪を顕にした眼差し、口を開けば暴言、身に覚えの無い出来事までリーゼのせいにされる。リーゼは学園で孤立し、ジークハルトは美しい女性の手を取り愛おしそうに見つめながら愛を囁く。
どうしてこんなことに?それでもきっと今だけ……そう、自分に言い聞かせて耐えた。でも、そろそろ一年。もう終わらせたい、そう思っていたある日、リーゼは殿下に罵倒され頬を張られ怪我をした。
──もう無理。王妃様に頼み、なんとか婚約解消することができた。
しかしその後、彼の心変わりは魅了魔法のせいだと分かり……
魔法のせいなら許せる?
基本ご都合主義。ゆるゆる設定です。
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。