22 / 41
さよならのかわりに ブロアとセフィルの恋ーーあなたを愛していますーー
お父様との再会
再会は突然。
先生の新薬がとても効いているのか、今日はベッドから起き上がることができた。
サイロが抱きかかえてわたくしをバルコニーに連れて行ってくれた。
潮風が気持ちがいい。
波の音が心地良くて椅子に座ったままただ海を眺めていた。
静かな時間が突然……
「ブロア!お前は!!」
大きな怒鳴り声がわたくしの名前を呼んだ。
振り返らなくてもわかる。わたくしを呼ぶ時はいつも不機嫌で……優しく呼ばれたことはあったかしら?
………はぁぁ。
心の中で大きな溜息。
この国に来ていることは聞いていたのでそろそろ顔を出す頃だと思っていた。
よかった、今日は体調が良くて。お父様の前できつそうな顔をしたら、さらに何を言われるのか……考えただけでうんざりだわ。
仕方なく振り返りすぐに頭を下げた。
「お父様……申し訳ございません……「ブロア!」
わたくしが話しているのにお父様はまたわたくしの名を呼んだ。
珍しい。普段のお父様にはあり得ないことだわ。
顔を上げてお父様の方へ視線を向けると……
「えっ?」
お父様が突然抱きしめてきた。
「えっ?な、な、なに?」
抱きしめられてどうしていいのかわからないわたくしは隣に立っていたサイロを見上げた。
サイロは驚いた顔をしつつも、クククッと笑い始めた。
「お嬢、すっごい顔してます」
ーーそれはそうだろう。
この状況は何?お父様の怒鳴り声は……あれはなんだったの?
「お父様……あ、あの……」
「すまなかった……ブロア……」
わたくしから体を離すと項垂れてしまったお父様は、ポツポツと話始めた。
「妻が亡くなり、お前とどう向き合えばいいのかわからなくなったんだ……」
ーーどういうこと?
「わたし自身も妻が亡くなった現実に向き合えない中、お前は右手を握りしめて泣くのに耐えて必死で立っていたんだ……そんなお前にわたしは声をかけることもできなかった。
それからも気丈に振る舞うブロアに勝手にこの子は強い子なんだと思って声すらかけなくなった。
わたし自身も妻の死を忘れたい一心で仕事にのめり込んでいたんだ……気がついた時にはお前は王太子殿下の婚約者としてさらにしっかりと自分の足で立っていて、わたしは父親失格だし必要がないのだろうと勝手に思い込んでいたんだ」
ーーそうなのね、わたくしはお父様からもしっかりした娘だと思われていたのね。
「だからわたくしを追い出したのですか?」
「違う追い出してなどいない!
殿下達はお前を側妃にと動き始めた。簡単には諦めそうもなかった。殿下がもし陛下になれば国は混乱するだろう、あの夫婦は無能すぎる。本人達も自身のことはわかっている、だからブロアをどうしても欲しがっているんだ。
自分たちが楽をするために軟禁してお前を死ぬまで働かせるつもりなんだ。しかしお前が殿下に失礼なことを言ったことを不敬だったとお前を無理やり王宮に連れてこようとしていた。
だからお前を妻の実家のモリス国へ行かせようとしたんだ。
………ただ、周りに不穏な空気が流れていたから敢えてお前に冷たく言い放ち、突き放した言い方をしたんだ。まさか屋敷の者達がお前を勝手に追放していたなんて……全て手紙もわたしに届かないようにされていたんだ」
「お父様のお姿は……誰が見てもわたくしを毛嫌いしているようにしか見えませんでした……」
「すまない……毛嫌いしていたわけではない……どう話しかけたらいいのかわからなかった……お前はサイロとウエラにだけ甘えていただろう?後笑顔を見せるのは主治医だけだった……お前に会うたびに……どんな顔をすればいいのか、何を話しかけたらいいのか、考えすぎて……顔が怖かったかもしれないな……」
「怖すぎですわ……おかげで屋敷の者達からもわたくしは蔑まれておりました」
「本当にすまない……ブロア……体調は?」
お父様の声が震えていた。
「ご存知なのでしょう?わたくしの命があと少しだということを……ふふっ、今更ですわ……」
思い出すのは辛い日々、セフィルもお父様も今更なの……
わたくしの言葉にお父様は項垂れて何も言わなくなった。
「わたくし疲れました……ベッドに横になりたいの、サイロ、お願いできるかしら?お父様もどうぞ国に帰られて殿下達のためにお仕事頑張られてくださいな」
「仕事は……辞表を出してきた……ここでの視察が最後の仕事だ」
「……わたくしには関係ないことですわ」
冷たく突き放した。
お願い、もうわたくしを放っておいて。静かに死なせて欲しいの。
わたくしの心の中は動揺していて、本当はどうしていいのか分からなくなっていた。
お父様がお帰りになった後、ウエラはただわたくしの手を黙って握ってくれていた。毛布を頭まで被り、声を出さずに泣いた。
先生の新薬がとても効いているのか、今日はベッドから起き上がることができた。
サイロが抱きかかえてわたくしをバルコニーに連れて行ってくれた。
潮風が気持ちがいい。
波の音が心地良くて椅子に座ったままただ海を眺めていた。
静かな時間が突然……
「ブロア!お前は!!」
大きな怒鳴り声がわたくしの名前を呼んだ。
振り返らなくてもわかる。わたくしを呼ぶ時はいつも不機嫌で……優しく呼ばれたことはあったかしら?
………はぁぁ。
心の中で大きな溜息。
この国に来ていることは聞いていたのでそろそろ顔を出す頃だと思っていた。
よかった、今日は体調が良くて。お父様の前できつそうな顔をしたら、さらに何を言われるのか……考えただけでうんざりだわ。
仕方なく振り返りすぐに頭を下げた。
「お父様……申し訳ございません……「ブロア!」
わたくしが話しているのにお父様はまたわたくしの名を呼んだ。
珍しい。普段のお父様にはあり得ないことだわ。
顔を上げてお父様の方へ視線を向けると……
「えっ?」
お父様が突然抱きしめてきた。
「えっ?な、な、なに?」
抱きしめられてどうしていいのかわからないわたくしは隣に立っていたサイロを見上げた。
サイロは驚いた顔をしつつも、クククッと笑い始めた。
「お嬢、すっごい顔してます」
ーーそれはそうだろう。
この状況は何?お父様の怒鳴り声は……あれはなんだったの?
「お父様……あ、あの……」
「すまなかった……ブロア……」
わたくしから体を離すと項垂れてしまったお父様は、ポツポツと話始めた。
「妻が亡くなり、お前とどう向き合えばいいのかわからなくなったんだ……」
ーーどういうこと?
「わたし自身も妻が亡くなった現実に向き合えない中、お前は右手を握りしめて泣くのに耐えて必死で立っていたんだ……そんなお前にわたしは声をかけることもできなかった。
それからも気丈に振る舞うブロアに勝手にこの子は強い子なんだと思って声すらかけなくなった。
わたし自身も妻の死を忘れたい一心で仕事にのめり込んでいたんだ……気がついた時にはお前は王太子殿下の婚約者としてさらにしっかりと自分の足で立っていて、わたしは父親失格だし必要がないのだろうと勝手に思い込んでいたんだ」
ーーそうなのね、わたくしはお父様からもしっかりした娘だと思われていたのね。
「だからわたくしを追い出したのですか?」
「違う追い出してなどいない!
殿下達はお前を側妃にと動き始めた。簡単には諦めそうもなかった。殿下がもし陛下になれば国は混乱するだろう、あの夫婦は無能すぎる。本人達も自身のことはわかっている、だからブロアをどうしても欲しがっているんだ。
自分たちが楽をするために軟禁してお前を死ぬまで働かせるつもりなんだ。しかしお前が殿下に失礼なことを言ったことを不敬だったとお前を無理やり王宮に連れてこようとしていた。
だからお前を妻の実家のモリス国へ行かせようとしたんだ。
………ただ、周りに不穏な空気が流れていたから敢えてお前に冷たく言い放ち、突き放した言い方をしたんだ。まさか屋敷の者達がお前を勝手に追放していたなんて……全て手紙もわたしに届かないようにされていたんだ」
「お父様のお姿は……誰が見てもわたくしを毛嫌いしているようにしか見えませんでした……」
「すまない……毛嫌いしていたわけではない……どう話しかけたらいいのかわからなかった……お前はサイロとウエラにだけ甘えていただろう?後笑顔を見せるのは主治医だけだった……お前に会うたびに……どんな顔をすればいいのか、何を話しかけたらいいのか、考えすぎて……顔が怖かったかもしれないな……」
「怖すぎですわ……おかげで屋敷の者達からもわたくしは蔑まれておりました」
「本当にすまない……ブロア……体調は?」
お父様の声が震えていた。
「ご存知なのでしょう?わたくしの命があと少しだということを……ふふっ、今更ですわ……」
思い出すのは辛い日々、セフィルもお父様も今更なの……
わたくしの言葉にお父様は項垂れて何も言わなくなった。
「わたくし疲れました……ベッドに横になりたいの、サイロ、お願いできるかしら?お父様もどうぞ国に帰られて殿下達のためにお仕事頑張られてくださいな」
「仕事は……辞表を出してきた……ここでの視察が最後の仕事だ」
「……わたくしには関係ないことですわ」
冷たく突き放した。
お願い、もうわたくしを放っておいて。静かに死なせて欲しいの。
わたくしの心の中は動揺していて、本当はどうしていいのか分からなくなっていた。
お父様がお帰りになった後、ウエラはただわたくしの手を黙って握ってくれていた。毛布を頭まで被り、声を出さずに泣いた。
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
4人の女
猫枕
恋愛
カトリーヌ・スタール侯爵令嬢、セリーヌ・ラルミナ伯爵令嬢、イネス・フーリエ伯爵令嬢、ミレーユ・リオンヌ子爵令息夫人。
うららかな春の日の午後、4人の見目麗しき女性達の優雅なティータイム。
このご婦人方には共通点がある。
かつて4人共が、ある一人の男性の妻であった。
『氷の貴公子』の異名を持つ男。
ジルベール・タレーラン公爵令息。
絶対的権力と富を有するタレーラン公爵家の唯一の後継者で絶世の美貌を持つ男。
しかしてその本性は冷酷無慈悲の女嫌い。
この国きっての選りすぐりの4人のご令嬢達は揃いも揃ってタレーラン家を叩き出された仲間なのだ。
こうやって集まるのはこれで2回目なのだが、やはり、話は自然と共通の話題、あの男のことになるわけで・・・。
ふたりの愛は「真実」らしいので、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしました
もるだ
恋愛
伯爵夫人になるために魔術の道を諦め厳しい教育を受けていたエリーゼに告げられたのは婚約破棄でした。「アシュリーと僕は真実の愛で結ばれてるんだ」というので、元婚約者たちには、心の声が聞こえる魔道具をプレゼントしてあげます。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました
由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。
——皇子を産めるかどうか。
けれど私は、産めない。
ならば——
「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」
そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。
毒を盛られても、捨てられず。
皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。
「お前は、ここにいろ」
これは、子を産めない女が
ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。
そして——
その寵愛は、やがて狂気に変わる。
家出したとある辺境夫人の話
あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』
これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。
※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。
※他サイトでも掲載します。
異世界に逃げたシングルマザー経理は、定時退勤だけは譲れない
木風
恋愛
DV夫から一歳の娘を抱えて逃げた鈴木優子は、光に飲まれて異世界の王宮へ転移してしまう。
生きるために差し出した武器は簿記と経理経験――崩壊寸前の王宮会計を『複式簿記』で立て直すことに。
ただし譲れない条件はひとつ、「午後五時の定時退勤」。娘の迎えが最優先だからだ。
その姿勢に、なぜか若き国王ヴィクトルが毎日経理室へ通い始めて――仕事と子育ての先に、家族の形が芽吹いていく。