短編。

たろ

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さよならのかわりに ブロアとセフィルの恋ーーあなたを愛していますーー

お父様との再会

 再会は突然。

 先生の新薬がとても効いているのか、今日はベッドから起き上がることができた。

 サイロが抱きかかえてわたくしをバルコニーに連れて行ってくれた。

 潮風が気持ちがいい。

 波の音が心地良くて椅子に座ったままただ海を眺めていた。



 静かな時間が突然……

「ブロア!お前は!!」

 大きな怒鳴り声がわたくしの名前を呼んだ。


 振り返らなくてもわかる。わたくしを呼ぶ時はいつも不機嫌で……優しく呼ばれたことはあったかしら?

 ………はぁぁ。
 心の中で大きな溜息。

 この国に来ていることは聞いていたのでそろそろ顔を出す頃だと思っていた。

 よかった、今日は体調が良くて。お父様の前できつそうな顔をしたら、さらに何を言われるのか……考えただけでうんざりだわ。

 仕方なく振り返りすぐに頭を下げた。
「お父様……申し訳ございません……「ブロア!」        
 
 わたくしが話しているのにお父様はまたわたくしの名を呼んだ。
 

 珍しい。普段のお父様にはあり得ないことだわ。

 顔を上げてお父様の方へ視線を向けると……

「えっ?」

 お父様が突然抱きしめてきた。


「えっ?な、な、なに?」

 抱きしめられてどうしていいのかわからないわたくしは隣に立っていたサイロを見上げた。

 サイロは驚いた顔をしつつも、クククッと笑い始めた。

「お嬢、すっごい顔してます」

 ーーそれはそうだろう。

 この状況は何?お父様の怒鳴り声は……あれはなんだったの?

「お父様……あ、あの……」

「すまなかった……ブロア……」

 わたくしから体を離すと項垂れてしまったお父様は、ポツポツと話始めた。

「妻が亡くなり、お前とどう向き合えばいいのかわからなくなったんだ……」

 ーーどういうこと?

「わたし自身も妻が亡くなった現実に向き合えない中、お前は右手を握りしめて泣くのに耐えて必死で立っていたんだ……そんなお前にわたしは声をかけることもできなかった。
 それからも気丈に振る舞うブロアに勝手にこの子は強い子なんだと思って声すらかけなくなった。
 わたし自身も妻の死を忘れたい一心で仕事にのめり込んでいたんだ……気がついた時にはお前は王太子殿下の婚約者としてさらにしっかりと自分の足で立っていて、わたしは父親失格だし必要がないのだろうと勝手に思い込んでいたんだ」

 ーーそうなのね、わたくしはお父様からもしっかりした娘だと思われていたのね。

「だからわたくしを追い出したのですか?」

「違う追い出してなどいない!
 殿下達はお前を側妃にと動き始めた。簡単には諦めそうもなかった。殿下がもし陛下になれば国は混乱するだろう、あの夫婦は無能すぎる。本人達も自身のことはわかっている、だからブロアをどうしても欲しがっているんだ。
 自分たちが楽をするために軟禁してお前を死ぬまで働かせるつもりなんだ。しかしお前が殿下に失礼なことを言ったことを不敬だったとお前を無理やり王宮に連れてこようとしていた。
 だからお前を妻の実家のモリス国へ行かせようとしたんだ。
 ………ただ、周りに不穏な空気が流れていたから敢えてお前に冷たく言い放ち、突き放した言い方をしたんだ。まさか屋敷の者達がお前を勝手に追放していたなんて……全て手紙もわたしに届かないようにされていたんだ」

「お父様のお姿は……誰が見てもわたくしを毛嫌いしているようにしか見えませんでした……」

「すまない……毛嫌いしていたわけではない……どう話しかけたらいいのかわからなかった……お前はサイロとウエラにだけ甘えていただろう?後笑顔を見せるのは主治医だけだった……お前に会うたびに……どんな顔をすればいいのか、何を話しかけたらいいのか、考えすぎて……顔が怖かったかもしれないな……」

「怖すぎですわ……おかげで屋敷の者達からもわたくしは蔑まれておりました」

「本当にすまない……ブロア……体調は?」
 お父様の声が震えていた。

「ご存知なのでしょう?わたくしの命があと少しだということを……ふふっ、今更ですわ……」

 思い出すのは辛い日々、セフィルもお父様も今更なの……

 わたくしの言葉にお父様は項垂れて何も言わなくなった。

「わたくし疲れました……ベッドに横になりたいの、サイロ、お願いできるかしら?お父様もどうぞ国に帰られて殿下達のためにお仕事頑張られてくださいな」

「仕事は……辞表を出してきた……ここでの視察が最後の仕事だ」

「……わたくしには関係ないことですわ」

 冷たく突き放した。

 お願い、もうわたくしを放っておいて。静かに死なせて欲しいの。

 わたくしの心の中は動揺していて、本当はどうしていいのか分からなくなっていた。

 お父様がお帰りになった後、ウエラはただわたくしの手を黙って握ってくれていた。毛布を頭まで被り、声を出さずに泣いた。










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