【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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18話

 ◇ ◇ ◇  ラフェ


 身体中が熱い。

 誰か助けて。お腹が痛い。

 アルにご飯を食べさせないといけないのに。
 働かないといけないのに。

 やっと仕事が順調に進み始めたのに。

 だるいしきつい。なのに頭の中はこれからのことでいっぱいいっぱい……

 さっきまで静かだったのに、
 耳に入ってきて聞こえる声……

「やっだ!おかあしゃんとこいるの」

「このガキほんと言うこと聞かないな」

「キャハハっ、やっ、さわらないで」

「ほら向こうの部屋に行くぞ。お前の母ちゃんまだ寝てるんだから」

「おかあしゃんしんだ?」

「お前自分の親殺すな!生きてるよ」

「いきてるぅ?じゃ、おかあしゃんとねんねする」

「じゃ、っじゃないだろう。ほら行くぞ」

「くしゅぐったい、ギュレン、やめてっ」

「ほらガキ、言うこと聞かなかったらもっとくすぐるぞ!」

「もっとぉ?」

「もっとだ」

「おかあしゃんくしゅぐったらげんきなる?」

「はあ?なる訳ないだろう!ほんと2歳のガキは……はあ」

「おかあしゃん、アルいいこしてたら、しなない?」

「ああ、死なないから行くぞ」

「おかあしゃん、アルいいこなる、ね?」

 アルの声で少しずつ意識がしっかりとしてきた。

「………ア、ル?」

「おかあしゃん!」

 ベッドに駆け寄ってきたアルを見て重たい体を少し動かして手を伸ばした。

「ご…め…んね」
 アルバードの頭をいい子いい子してそっと撫でた。

「あーあ、起こしてしまったな。ラフェ喉乾いていないか?」

 そう声をかけたのは助けてくれたグレン様だった。

 状況がよくわからない。
 まだ頭が回っていないし、何故ここにグレン様がいるの?

 アルフレッドはグレン様のところに行くと手を握りわたしのところに連れてきた。

 嬉しそうにニコニコ笑いながら
「ギュレン、おともだち、なの」と言った。

「ラフェ、あんた、高熱で四日間も寝込んでいたんだ。その間隣のおばちゃんが面倒見てくれてたんだ」

「四日間も?だから…体がだるいの?」

「アルと俺は毎日昼間一緒に過ごしてたから友達になったんだ、な?アル?」

「うん、ギュレン、ともだちなの」

 ニコニコしてグレン様に懐いているアルバード。元々人見知りはしない子だけど、若い男の人はどちらかと言うと苦手なのにこんなに懐いてしまうなんて驚いてしまった。

 わたしはベッドからなんとか起き上がり
「グレン様度重なるご迷惑をおかけしてすみませんでした」と詫びた。

「まぁ人に頼るのが苦手で意地っ張りだけど友達になったアルの母ちゃんだからなあんたは。一応心配してやったんだぜ」

 口は悪いけど優しい人なんだと感じた。

「アル、いい子にしていた?」

「アル、いい子してた!いい子してたらおかあしゃんげんきになるって!」

「うん、おかげで元気になったみたい。ありがとうアルのおかげよ」

「ギュレン、じゃま、いこう」

「おいおいさっきまで母親のそばにいると言ってたくせに!ガキはほんと自分勝手だな」

「おかあしゃん、ねんねするの!」

「アル、ありがとう。じゃあもう少し横になってから起きるわ」

「うんっ!」
 アルバードはグレン様の手を引っ張って部屋を出て行った。

 しばらくして隣のおばちゃんが「目が覚めたみたいね、お水を飲みなさい」と言ってコップを渡してくれた。

「迷惑ばかりかけてごめんなさい」

「何を言ってるの。お互い様だよ。アルはずっといい子だったよ、泣かないでずっと笑ってたんだから。元気になったらアルをいっぱい褒めてあげてやって」

「はい……」

「仕事は来週からでいいって。無理ならまた言って欲しいとエリサさんが言ってたよ」

「あ……よかった」

「仕事が来なくなるのが1番不安だもんね、今から何か食べるもの持ってくるからね、早く元気になってアルを安心させてやりな」

「はい」おばちゃんの優しさに、小さなアルの頑張りに涙が溢れた。




 ◇ ◆ ◇  アーバン

 ラフェが我が家を出て2年。

 ラフェが出て行ってからすぐに俺はベルと別れた。

 ラフェに対する態度、アルバードに対して怪我をさせたこと、どうしても許すことができなかった。

 警備隊に突き出さない代わりにもしラフェ親子に出会うことがあっても関わらないと誓約書を書かせた。
 もし関わることがあれば次はない。速攻で警備隊に突き出すと脅した。

「わかったわよ!あんたはわたしをラフェさんの身代わりで抱いていただけ、わたしはあんたを好きだったのに、ズルいのはあんたの方よ!」

 その言葉に俺は何も言い返せなかった。

 ラフェが兄貴と結婚して気持ちを紛らせるようにベルと付き合い、抱いていた。

 ラフェを守りたい、そう思っていたのに結局ラフェが出て行ったことすら知らなかった馬鹿な男だった。

 父上は騎士爵を承ってはいても死ねば俺達は平民になる。母上は兄貴が騎士爵を貰えるだろうと期待していた。だが兄貴は亡くなった。

 だから今は俺に対して期待している。
 もちろん俺も実力で騎士爵を狙っている。
 まだまだ駆け出しだが同期の中では優秀な方だと思う。

 俺は両親を捨てることはできない。だがラフェ親子を犠牲にして自分の欲を満たすために今も無理をしてでも社交をする母上に対して、思うところはある。

 早く独り立ちしてラフェ達を迎えに行きたい。出来るなら二人のこれからを俺が幸せにしたい。

 そう思いながら必死で仕事に邁進する日々だった。

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