【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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21話  エドワード

 ◆ ◆ ◆  エドワード

 夜の伯爵領での屋敷の警護はとても静かだ。

 数人の騎士が各場所に立ち交代で見守ることになる。俺はシャーリー様のお気に入りのため、屋敷内の警護を言い渡されることが多い。

「リオ、貴方がわたしのいる階の警護をしてね」
 その一言で俺の警護場所が決まってしまった。俺はもう一人の騎士と交代で警護を任されている。



 ある日、俺の警護の時間。

「リオ?」
 シャーリー様が部屋から顔を出して声をかけてきた。

「何か御用ですか?」

 何事があったのだろうと一瞬眉を顰めシャーリー様のそばへと走っていくと

「眠れないの」と悲しそうに言った。

「わかりました、ベルを鳴らしますので眠れるように何か飲み物でも用意してもらえましょう」

「リオは優しいのね」

「いえ仕事ですから」

「ねえ、飲み物を持ってきてくれるまでお話ししましょう」

「申し訳ありません、中には何もなければ入ることは出来ません」

「わかっているわ、だから、扉の外、ここで、ね?いいでしょう?」

「……それは……」

 俺を見る目がうるうるしてとても可愛らしい。しかし寝間着姿のシャーリー様と話すなんてもし誰かに見られたら誤解されてしまう。

「もう!リオったら真面目なんだから。ただここで少し話すだけ!」

 仕方なくシャーリー様と他愛もない話をする。

「今度買い物に行きたいからついてきてね」
「はい、護衛させていただきます」

「友人が婚約するの、だからお祝いを買いに行かなきゃ」
「そうですか」


「リオは何か好きな食べ物はあるの?」
「何でも食べます」

「お休みの日は何をしているの?」
「……寝てますかね」

「もう!つまんない。リオってほんと真面目過ぎ!答えまでつまらないわ」

「ふふ、でも、そんなリオだから安心してこんな時間でも会えるのかも」

「……そろそろ飲み物が届くと思います。お部屋に入られてください」

「……わかったわよ!」

 そして少し経った頃メイドが温かいホットミルクを作って持ってきた。

 メイドとお互い目が合い頭を下げ、メイドはシャーリー様の部屋へと入っていった。






 記憶が戻らないまま、働き出して半年が過ぎた。

 少しずつシャーリー様との時間が増えていく。
 この頃は気がつけば護衛としてだけではなく共に外国語の勉強をしたりダンスのレッスンに付き合ったり、夜の警護の時間もぎこちなかったのに二人で話をして過ごしたりと親密になっていった。

 お試しでした書類の仕事もシャーリー様を含め執事にも頼まれて手伝うことも増えた。

 俺は4カ国語が話せたらしい。記憶がなくても自然と話せるものだった。

 それをシャーリー様に教えるのも仕事になっていた。そしてお客様との通訳や接待もするようになった。

「リオ、今日はモリス国の言葉を教えて」

「明日から外国から来るお客様の接待を手伝ってね」

 当たり前のように隣で当たり前のように共に過ごす。


 それは恋人のような甘い時間。


 そしてお互いが惹かれ合い、いつしか本当の恋人になっていった。

 そんな二人の関係を周りも認めてくれるようになっていく。

 俺たちが二人でいるのが自然なのだと。 

 そして娘に甘い伯爵も俺たちのことを知ると

「リオは優秀だから申し分ない。わたしの親戚の養子になってもらおう。それから二人に婚約してもらい籍を入れるようにしよう」
 といつの間にかすんなりと受け入れられていた。

 領地に来る外国の人達と会話が出来ることや書類仕事も得意なことから気に入られてしまったようだ。

「リオ、もうすぐ結婚できるのね」
「シャーリー愛してる」

 俺は『リオ・コスナー』としてシャーリーの伯爵家に婿養子として入ることになった。

 シャーリーの弟がいずれは当主として跡を継ぐ。俺たち夫婦は補佐として領地の管理を任されることになった。

 婚約してから半年後、俺たちは伯爵領にある大きな教会で結婚式を挙げた。

 シャーリーは肩を出して胸元の開いたウエディングドレスがとても美しく彼女に似合っていた。
 周りは彼女の美しさに溜息を漏らした。


 その日の夜、初めてシャーリーを抱いた。
 シャーリーは処女ではなかった。

 最近は処女でなければいけないとか貞淑さはあまり求められていないそうだ。
 自由な恋愛が増えてきている、だから俺たちの結婚も認められたのだろう。

 シャーリーの体は俺の想像以上に艶かしく夢中にさせた。

 毎晩のように激しく抱き合う日々。

 休みの日は部屋から出ることはなくずっとシャーリーの体を貪った。

 こんなに人を愛せるものなのだろうか。

 もう俺は記憶を失う前の日々のことは忘れることにした。
 いくら時間が経っても記憶は戻らない。義父に頼んだが俺が誰なのか全くわからないと言われた。それに俺は婿養子になり新しい名前と人生を手に入れたのだ。


 今お腹の中には俺たち二人の子供がいる。

 シャーリーは結婚しても自由奔放で時間があれば友人達と買い物に行ったりお茶会をしたりして過ごす。

 身重でもパーティーに参加するのをやめないし、ダンスも喜んで踊る。

「そろそろ自重して大人しくしていたほうがいいと思うんだが」

「あら?リオったら妬きもちなの?愛しているのは貴方だけよ」

「シャーリー俺も愛している。だからこそお腹の赤ちゃんのこともあるから心配なんだ」

「赤ちゃんが生まれたらしばらくは大人しくしていないといけないのよ?遊べる時に遊ばなくっちゃ」

 シャーリーはよく遊ぶ。

 しかし自覚が出てきたのか最近の買い物は赤ちゃんのものばかり。

 ベビー服にベビーベッド、タンスや布団、おもちゃにぬいぐるみ、絵本など目につくものは何でも買う。

 まだどちらが生まれるかなんてわからないのに
「可愛いと思うものは男の子のものでも女の子のものでもいいから買っておきましょうよ」

 と言って買ってくる。

 子供部屋にはたくさんのものが溢れ返っている。

 笑顔いっぱいの幸せそうなシャーリー。

 俺はそんなシャーリーが愛おしくて仕方がない。

 シャーリーを後ろから抱きしめた。

「君を永遠に愛しているよ」

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