54 / 146
54話
◆ ◆ ◆ エドワード
「やはり商会が怪しい薬を売っているのか?」
全く気が付かなかった。
この商会はシャーリーのお気に入りの店で、隣国から我が領地に出店してきた。
シャーリーはここで薬はもちろん化粧品なども買っている。
特に問題はないと思っていたし、シャーリーの機嫌が良くなるのならそれでいいと思っていた。
きちんと税金も納めるし、悪い評判も聞かない。
だがそれは考えてみたら書面上のことで俺自身が見た訳でも調べた訳でもなかった。
今頃になって、決まった客にだけ少しずつ怪しい薬を売っていたと気がつくなんて。
薬は麻薬だった。ただ強いものではなく軽い症状でたくさん使わなければ体が軽くなり薬品として使っても問題ない成分らしい。
その成分の薬を普通より増やした薬は、少しずつ手放せなくなる。
そんな薬が領地で中毒者が少しずつ増えてきた。
俺が整備を進めた新しい公園で、疲れた様に蹲る男。その姿は異常に見える。
服装は仕立てのいい生地でそれなりにお金を持っていそうな人なのに、疲れ切って服はヨレヨレになって涎を垂らして蹲っている姿に、道ゆく人たちは避けて遠目で見ていた。
俺はその男に声をかけて、街の警備隊に頼み診療所へ連れて行くようにしてもらった。
「大丈夫ですか」
「………あっ………あっ………へへへっ」
目は虚で涎を垂らしながらヘラヘラと笑っていた。
警備隊に両腕を支えられフラフラしながら馬車に乗せられた。
街の中を歩くとそんなことが度々あった。
俺自身も商会に直接顔を出したが、怪しいところはなかった。
「コスナー様ようこそいらっしゃいました。何か必要なものがありますか?お疲れでしたらこちらの薬はどうですか?よく効きますよ」
そう言って勧められたのは瓶に入った緑色の液だった。
「これは?」
「よもぎやとうもろこしのひげなどを煎じたものです。疲れなどに効きます。あと何が入っているかは企業秘密ですがこの国では使われていない薬草からできています」
俺は眉を寄せてじっとその液体を見つめた。
「ご心配ならわたしが少し飲んで見せましょう」
そう言うと店主が瓶を持ちコップに少量の液を注ぎ目の前でぐいっと飲み干した。
「ふー、味はあまり美味しいとは言えないのですが効果はとても効くと評判なんです」
「わかった、ではそれを買おう」
「ありがとうございます」ニヤッと笑い店主がお金を受け取った。
金額的には少し高額だが、金がある者ならこれくらいの値段なら買うかもしれない。
持って帰ったその液体を、薬師に調べてもらった。その結果、この国にはない薬草だが、本には他国の薬草として載っていると言っていた。
薬師もなかなか手に入らないが欲しいと思っていた薬草だと少し興奮していた。
「そんなに珍しいのか?」
「薬師なら喉から手が出るほど欲しがると思います。これがそんな安い値段で買えるなんて!わたしも買いに行きます!」
街中で酷い姿で蹲る男を何人も見ている。しかしそれがこの商会と繋がらない。
俺は何か見落としているのか。
みんなどうやって買って手に入れているのだろう。
細かい入手の仕方がわからないでいた。
そんなイライラした状態が続く中、ジミーの報告書が上がってきた。
俺はその報告書を震える手で静かに読んだ。
「やはり商会が怪しい薬を売っているのか?」
全く気が付かなかった。
この商会はシャーリーのお気に入りの店で、隣国から我が領地に出店してきた。
シャーリーはここで薬はもちろん化粧品なども買っている。
特に問題はないと思っていたし、シャーリーの機嫌が良くなるのならそれでいいと思っていた。
きちんと税金も納めるし、悪い評判も聞かない。
だがそれは考えてみたら書面上のことで俺自身が見た訳でも調べた訳でもなかった。
今頃になって、決まった客にだけ少しずつ怪しい薬を売っていたと気がつくなんて。
薬は麻薬だった。ただ強いものではなく軽い症状でたくさん使わなければ体が軽くなり薬品として使っても問題ない成分らしい。
その成分の薬を普通より増やした薬は、少しずつ手放せなくなる。
そんな薬が領地で中毒者が少しずつ増えてきた。
俺が整備を進めた新しい公園で、疲れた様に蹲る男。その姿は異常に見える。
服装は仕立てのいい生地でそれなりにお金を持っていそうな人なのに、疲れ切って服はヨレヨレになって涎を垂らして蹲っている姿に、道ゆく人たちは避けて遠目で見ていた。
俺はその男に声をかけて、街の警備隊に頼み診療所へ連れて行くようにしてもらった。
「大丈夫ですか」
「………あっ………あっ………へへへっ」
目は虚で涎を垂らしながらヘラヘラと笑っていた。
警備隊に両腕を支えられフラフラしながら馬車に乗せられた。
街の中を歩くとそんなことが度々あった。
俺自身も商会に直接顔を出したが、怪しいところはなかった。
「コスナー様ようこそいらっしゃいました。何か必要なものがありますか?お疲れでしたらこちらの薬はどうですか?よく効きますよ」
そう言って勧められたのは瓶に入った緑色の液だった。
「これは?」
「よもぎやとうもろこしのひげなどを煎じたものです。疲れなどに効きます。あと何が入っているかは企業秘密ですがこの国では使われていない薬草からできています」
俺は眉を寄せてじっとその液体を見つめた。
「ご心配ならわたしが少し飲んで見せましょう」
そう言うと店主が瓶を持ちコップに少量の液を注ぎ目の前でぐいっと飲み干した。
「ふー、味はあまり美味しいとは言えないのですが効果はとても効くと評判なんです」
「わかった、ではそれを買おう」
「ありがとうございます」ニヤッと笑い店主がお金を受け取った。
金額的には少し高額だが、金がある者ならこれくらいの値段なら買うかもしれない。
持って帰ったその液体を、薬師に調べてもらった。その結果、この国にはない薬草だが、本には他国の薬草として載っていると言っていた。
薬師もなかなか手に入らないが欲しいと思っていた薬草だと少し興奮していた。
「そんなに珍しいのか?」
「薬師なら喉から手が出るほど欲しがると思います。これがそんな安い値段で買えるなんて!わたしも買いに行きます!」
街中で酷い姿で蹲る男を何人も見ている。しかしそれがこの商会と繋がらない。
俺は何か見落としているのか。
みんなどうやって買って手に入れているのだろう。
細かい入手の仕方がわからないでいた。
そんなイライラした状態が続く中、ジミーの報告書が上がってきた。
俺はその報告書を震える手で静かに読んだ。
あなたにおすすめの小説
白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。
けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。
それでも旦那様は優しかった。
冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。
だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。
そんなある日、彼女は知ってしまう。
旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。
彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。
都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る
静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。
すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。
感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく
婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない
柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。
目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。
「あなたは、どなたですか?」
その一言に、彼の瞳は壊れた。
けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。
セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。
優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。
――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。
一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。
記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。
これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。
【完結】私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末
コツメカワウソ
恋愛
ローウェン王国西方騎士団で治癒師として働くソフィアには、魔導騎士の恋人アルフォンスがいる。
平民のソフィアと子爵家三男のアルフォンスは身分差があり、周囲には交際を気に入らない人間もいるが、それでも二人は幸せな生活をしていた。
そんな中、先見の家門魔法により今年が23年ぶりの厄災の年であると告げられる。
厄災に備えて準備を進めるが、そんな中アルフォンスは魔獣の呪いを受けてソフィアの事を忘れ、魔力を奪われてしまう。
アルフォンスの魔力を取り戻すために禁術である魔力回路の治癒を行うが、その代償としてソフィア自身も恋人であるアルフォンスの記憶を奪われてしまった。
お互いを忘れながらも対外的には恋人同士として過ごす事になるが…。
番外編始めました。
世界観は緩めです。
ご都合主義な所があります。
誤字脱字は随時修正していきます。
白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする
夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、
……つもりだった。
夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。
「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」
そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。
「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」
女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。
※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。
ヘンリック(王太子)が主役となります。
また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。
死ぬまでに叶えたい十の願い
木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」
三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。
離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する——
二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。
「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚
きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」
新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。
それもそのはず。
2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。
でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。
美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。
だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。
どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。
すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?
焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。
どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~
クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。
同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。
ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した…
誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。