【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

文字の大きさ
69 / 146

69話  グレン

 ◆ ◇ ◆  グレン


「あの店主知らないうちに、自分の姉の子を苦しめて殺そうとしていたのか?それに、リオの奴も自分の子供が苦しんでいるのは誰のせいだと思ってるんだ!」

「うん?リオってだれだ?自分の子供って、ラフェの息子は亡くなったエドワードの子供だ。ラフェが浮気なんてするわけがないだろう?」
 シエロが俺の言葉を聞いて驚いた顔をしていた。

 ーーーあっ!シエロは知らなかったんだ。

 思わず口を閉じたが
「グレン、どう言うことだ?」
 と聞き出そうとした。

 どうせいつかはわかることだ。


「………ラフェの旦那だったエドワードは記憶を失くして生きている。
 名前はリオ・コスナー。
 コスナー伯爵の娘婿としてコスナー領主代理を務めているんだ。
 それも、アルに使われた毒薬である麻薬を売っていたサリナル商会を領地に出店許可を出したのはリオだ。そのサリナル商会が、アルを助ける薬を持っているかもしれないなんて……なんの因果だよ」

「サリナル商会は……母上の弟の叔父上が何カ国かに出店しているんだ。祖父のメルリス商会は母上の兄の伯父上が継いでいて、分店として新しく仕事を始めたと聞いている」

「シエロは税理士事務所をしているから商売のことは詳しいのか?」

「いや、母上が亡くなった時一応祖父に知らせたら『出て行った娘は他人だ』と言われたんだ。その時伯父上だけは母の死を悲しんでくれた。それからはまぁ一年に一回くらい挨拶程度の手紙をお互いしてるんだ」

「へえ、あんな大商会の孫娘なら、祖父はダメでも伯父が少しは手助けしてくれなかったのか?そうすればラフェの暮らしももっと楽だったはずだろう?」

「………すまない。それに関しては全て俺が悪い。妻はラフェに対して冷たく当たっていたらしい。俺は仕事を立ち上げて必死で働いていて家庭を顧みていなかった。
 妻は妊娠していて不安定でその後は子育てと突然義妹の世話とでかなりのストレスで、ラフェに優しくすることはなかったらしい。
 …………それも知ったのは最近なんだ」

「最近?」

「ラフェのことをアレックス家が知らせにきたことを紙に書いてテーブルに置かれていたんだ。
 そのまま放置されていた……
 普通なら俺に知らせるくらいするはずだ。問い詰めたら……ラフェに関しては……興味もなく苦しもうと関係ないと言われた。
『お貴族様に戻って幸せに暮らしてたんでしょう?また平民になったからって何が苦しくて大変なのよ?』
 と言ってラフェに対して酷いことしか言わなかった。妻は……平民で……貴族の娘だったラフェをよく思っていなかったんだ、両親が亡くなった時まだ6歳だったのに……ラフェはずっと使用人達のいる生活に慣れていたから、平民として暮らすのは大変だったと思う。だけど妻がいるから大丈夫だと勝手に安心して任せていたんだ……」

「ラフェの過去は知らない……だけど俺が出会った時は……男達に乱暴されそうになっていた。それに、自分の食べるものもアルに食べさせて痩せこけていた」

「俺は唯一の家族だったのに……俺がラフェの薬を頼みに行く方がいいのは分かってる、だけど今サリナル商会へ急いで行けるのはお前しかいない。頼む、アルバードを助けてください」

 シエロは泣きそうな顔をしていた。確かに俺しかいない。早馬で急げば間に合うのか?

 とりあえず連絡用の鳥を飛ばした。

 薬のことは向こうでなんとか探してもらえるかもしれない。

 俺は返事が来るのを待つよりとにかく急いでコスナー領へ馬を飛ばすことにした。

「ラフェとアルを頼む。俺はとにかく急いで行ってくる。薬があるかはまた後で返事はするから、待っててくれ」

 俺はもう一度コスナー領へ向かった。

 愛馬に「また頼む、アルを助けたいんだ」と言うと、俺の顔に頬ずりして来た。

「よし、急ごう、アルの薬があることを祈るしかない」


 ◇ ◇ ◇  ラフェ

「ア、アルはま…だ……生き…てる?」
 震える体を自分で抱きしめた。

「はい、ただ、予断を許さない状態です。今グレン様がコスナー領へ向かってくれています。あの薬を解毒できる薬があるかもしれないと、あなたのお兄様が仰って、それを取りに行っています」

「兄さんが?薬があるかもしれないと?何故兄さんがそんなことわかるの?」
 お医者様に尋ねると、答えを知らないようで口篭った。

「そ、そ、れは……」

 困った顔をしているお医者様。

「あなたのお兄様に聞いてみてください」

「ごめんなさい、ムキになってしまって。アルバードのことになると敏感になっていて……」

「それは仕方がないことです。今の状況を医者のわたしでもどうすることもできません。とりあえず出来る処置をするしかないのですから。とにかく完全に解毒できる薬があればいいのですが……それまでもってくれることを祈るしかありません」

 何度も強くならないと、と思っているのに……すぐ弱くなる心。だけど、最後まで信じたい。アルバードが助かると。

 グレン様にはとても負担だし大変だけど今は頼るしかない。いつもごめんなさい。







感想 473

あなたにおすすめの小説

白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。 けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。 それでも旦那様は優しかった。 冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。 だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。 そんなある日、彼女は知ってしまう。 旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。 彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。 都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る 静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。 すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。 感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

【完結】私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末

コツメカワウソ
恋愛
ローウェン王国西方騎士団で治癒師として働くソフィアには、魔導騎士の恋人アルフォンスがいる。 平民のソフィアと子爵家三男のアルフォンスは身分差があり、周囲には交際を気に入らない人間もいるが、それでも二人は幸せな生活をしていた。 そんな中、先見の家門魔法により今年が23年ぶりの厄災の年であると告げられる。 厄災に備えて準備を進めるが、そんな中アルフォンスは魔獣の呪いを受けてソフィアの事を忘れ、魔力を奪われてしまう。 アルフォンスの魔力を取り戻すために禁術である魔力回路の治癒を行うが、その代償としてソフィア自身も恋人であるアルフォンスの記憶を奪われてしまった。 お互いを忘れながらも対外的には恋人同士として過ごす事になるが…。 番外編始めました。 世界観は緩めです。 ご都合主義な所があります。 誤字脱字は随時修正していきます。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」 新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。 それもそのはず。 2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。 でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。 美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。 だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。 どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。 すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?  焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。

【本編完結】初恋のその先で、私は母になる

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
第19回恋愛小説大賞にて、奨励賞を受賞いたしました。読者の皆様のおかげです!本当ありがとうございます。 王宮で12年働き、気づけば28歳。 恋も結婚も遠いものだと思っていたオリビアの人生は、憧れの年下公爵と一夜を共にしたことで大きく動き出す。 優しく守ろうとする彼。 けれどオリビアは、誰かに選ばれるだけの人生を終わらせたいと思っていた。 揺れる想いの中で、彼女が選んだのは―― 自分の足で立ち、自分の未来を選ぶこと。 これは、一人の女性が恋を通して自分を取り戻し、母として、そして一人の人間として強くなっていく物語。 ※表紙画像はAI生成イラストをつかっています。