【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

文字の大きさ
74 / 146

74話  シャーリー

◆ ◆ ◇ ◇  シャーリー 


婚約解消をしてからわたしは人間不信になって屋敷に引き篭もっていたの。

 だけど、コスナー領で何度か誘われて仕方なく参加したパーティーで知り合った低位貴族の男爵家や子爵家の子達と仲良くなった。

 みんな多少奔放なところがあってそれなりに遊んで、だけどそれなりに真面目なところもあって、王都で仲良くしていた高位貴族の令嬢や令息とは全く考え方も遊びも違っていた。

 王都では前もって相手と約束をしてからその約束の時間に訪れるのが常識なのに、こっちでは前触れなんて必要がなかった。

『明日もいつものところで来たい人は来てね。待ってるわ』
 なんて気楽なんだろう。

 もちろん正式なパーティーやお茶会、親も含めて屋敷に訪れる時はきちんと招待状もいるし前触れなく訪れることはしない。

 これは令嬢や令息の中だけのイマドキの付き合い方。
 堅苦しいのは親達の前だけ。自分たちの時は自由気ままにやろう。
 そんな考え方がとても変わっていて、わたし自身もそんな考えに惹かれてそれが当たり前のように振る舞うようになった。

 別に悪いことをしたわけではない。
 ただみんなで集まって街でお茶をしたりピクニックに行ったり、劇を見に行く。

 時には誰かの家でみんなでパーティーをしたりしたわ。
 初めて心から許せる友人達が出来たの。

 そしてそんなわたしが王都の両親に呼び出されることになった。どうしても外せない一年に一回の王宮での夜会がある。

 さらにあまりにも遊んでばかりで心配をした両親が新しい婚約者を探そうとしている。

 ま、確かに親ならこんなわたしのこと心配するわよね。

 しっかり報告はいってたもの。でも悪いことをした訳ではないから叱られたことはない。

 そしてその王都への護衛にリオがいた。

 ーーーなんて美しい顔なのかしら?

 第一印象は美丈夫で、でも何か影のあるところが興味を持ってしまった。

 暇な時間に彼に話しかけると、ぎこちない笑顔で少しずつ自分のことを話した。

 記憶がないこと。
 村の人に助けてもらったが、無理やり村に縛りつけるために結婚されそうになり慌てて逃げ出したこと。
 持っていた紋章とブローチから、自分は王立騎士団らしいとわかり、王都へ向かっていること。

 ーーこれは我が家がリオを雇う時に身元確認をして行方不明になったバイザー家の息子だと確認は取れていたらしい。

 そして長旅の間、彼の人となりを知りますます興味と好感が増えて、いつの間にか彼に惹かれていた。

 ううん、欲しいと思ったの。
 あと少しで王都へ着くと思っていたら、リオが高熱を出して寝込んでしまった。

 逃げ出してから長旅の疲れで高熱を出してたみたい。

 すぐに宿を取りお医者様を呼んで診察してもらった。

「二、三日この町でゆっくりと過ごしましょう。その間リオをお医者様に診てもらってちょうだい」

 ぐったりしているのに何度も謝り起きて仕事をしようとしたリオに……

「気にしないでね」と優しく微笑んだ。

 そして熱が下がった三日目、まだリオはうつらうつらとして眠っていたので、わたしは気になってベッドの横に椅子を置いて彼の寝顔を見つつ椅子に座って本を読んでいた。

 ふふ、彼の寝顔はとても綺麗で見惚れちゃったわ。あ、でも一応額に濡れたタオルを当てたりと看病もしたのよ。
 だって本当に死んじゃうかもしれないと心配でたまらなかった。

「あら?目が覚めたの?よかった」

 彼の顔を見ると何故かホッとして泣きそうになった。そしてついリオの額に手を置き「熱が下がったわ」と確認してしまった。

「すみませんでした、ご迷惑をおかけしました」

「いいのよ、別に急いでいたわけではないし。みんなもこの町でゆっくり休めたから喜んでいたわ」

 彼は申し訳なさそうに何度も謝った。

「そんなに謝るんだったら王都に着いたらデートして欲しいわ」

「デートですか?」

「そう、だってリオってカッコいいもの。わたしの理想の人なの。駄目かしら?」
 こてんと首を横にするとリオはふっと笑顔になった。

「わかりました、記憶がないので王都を案内することは出来ませんがおそばでお守りすることは出来ます」

「守るんじゃなくてデート!一緒に買い物をしたり美術館に行ったり植物園に行ったり、劇を見たり。本屋さんにも行きたいわ」

「一日で全て行くのは無理だと思います」

「一日で行くなんて言っていないわ。何日間かかけて行くのよ!その間はまだわたしの護衛として伯爵家で働いてね?」

 

 そしてリオは熱が下がり次の日には護衛として王都へ向かい、しばらく約束通り伯爵家で仕事をすることになったの。

 その間リオと気が合いさらに仲良く話すようになった。

 一緒にいて楽しい。
 そして……もっと彼の笑顔を見たい。
 さらに………ずっと一緒にいたい。

 そう思うようになった。

 だから…………

 お父様にリオが欲しいとお願いしたの。

 だって彼を愛してしまったの。だからずっとそばにいて欲しかった。

 わたしを………わたしだけを愛して欲しかったの。
 









感想 473

あなたにおすすめの小説

白い結婚のまま、旦那様は薔薇のような美人に夢中になりました

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢リディアは、美貌で有名な侯爵レオンハルトに嫁いだ。 けれど結婚して二年、夫婦は一度も結ばれないまま――白い結婚だった。 それでも旦那様は優しかった。 冷たいわけではない。気づかいの言葉も、穏やかな笑顔もくれる。 だからリディアは、愛されてはいなくても、いつか少しは夫婦になれるのではないかと信じていた。 そんなある日、彼女は知ってしまう。 旦那様が薔薇の君と呼ばれる絶世の美女に心を奪われていることを。 彼が触れなかったのは私にだけだったのだと。 都合のいい奥方として、役に立っていたと悟る 静かに離縁を決意したリディアは、実家へ戻ったあと、女子学院で働き始める。 すると侯爵夫人時代には当たり前だった実務のすべてが、外では驚くほど必要とされていた。 感謝され、認められ、自分の足で立ち始めた彼女は、少しずつ見違えるほど美しくなっていく

婚約破棄のあと、あなたのことだけ思い出せない

柴田はつみ
恋愛
伯爵令嬢セシリアは、王宮の舞踏会で王太子レイヴンから公開の場で婚約破棄を言い渡され、その場で倒れた。 目覚めた彼女は、礼儀も常識も覚えているのに――ただ一つ、レイヴンだけを思い出せない。 「あなたは、どなたですか?」 その一言に、彼の瞳は壊れた。 けれどレイヴンは何も語らず、セシリアを遠ざける。彼女を守るために、あの日婚約を捨てたのだと告げられないまま。 セシリアは過去を断ち切り、王宮の侍女として新しい生活を始める。 優しく手を差し伸べる護衛騎士アデルと心を通わせていくほど、レイヴンの胸は嫉妬と後悔で焼けていった。 ――守るために捨てたはずなのに。忘れられたまま、他の男に笑う彼女を見ていられない。 一方、王宮では“偽聖女”の陰謀と、セシリアの血に眠る秘密が動き出す。 記憶を取り戻せば、彼女は狙われる。取り戻さなければ、二人は永遠に届かない。 これは、忘れてしまった令嬢と、忘れられてなお愛を捨てられない王太子が、もう一度“選び直す”恋の物語。

【完結】私を忘れた貴方と、貴方を忘れた私の顛末

コツメカワウソ
恋愛
ローウェン王国西方騎士団で治癒師として働くソフィアには、魔導騎士の恋人アルフォンスがいる。 平民のソフィアと子爵家三男のアルフォンスは身分差があり、周囲には交際を気に入らない人間もいるが、それでも二人は幸せな生活をしていた。 そんな中、先見の家門魔法により今年が23年ぶりの厄災の年であると告げられる。 厄災に備えて準備を進めるが、そんな中アルフォンスは魔獣の呪いを受けてソフィアの事を忘れ、魔力を奪われてしまう。 アルフォンスの魔力を取り戻すために禁術である魔力回路の治癒を行うが、その代償としてソフィア自身も恋人であるアルフォンスの記憶を奪われてしまった。 お互いを忘れながらも対外的には恋人同士として過ごす事になるが…。 番外編始めました。 世界観は緩めです。 ご都合主義な所があります。 誤字脱字は随時修正していきます。

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

死ぬまでに叶えたい十の願い

木風
恋愛
「あなたを妻として、愛することはない。おそらく、生涯抱くこともないだろう」 三年間の白い結婚——捨て置かれた王太子妃エリアーナに、側妃が『死の呪い』をかけ余命一年を宣告する。 離縁を願うも拒否され、代わりに「死ぬまでに十の願いを叶えて」と契約する—— 二人きりの外出、星空、海…ささやかな願いが王太子の心をほどいていく。

「私に愛まで望むとは、強欲な女め」と罵られたレオノール妃の白い結婚

きぬがやあきら
恋愛
「私に愛まで望むな。褒賞に王子を求めておいて、強欲が過ぎると言っている」 新婚初夜に訪れた寝室で、レオノールはクラウディオ王子に白い結婚を宣言される。 それもそのはず。 2人の間に愛はないーーどころか、この結婚はレオノールが魔王討伐の褒美にと国王に要求したものだった。 でも、王子を望んだレオノールにもそれなりの理由がある。 美しく気高いクラウディオ王子を欲しいと願った気持ちは本物だ。 だからいくら冷遇されようが、嫌がらせを受けようが心は揺るがない。 どこまでも逞しく、軽薄そうでいて賢い。どこか憎めない魅力を持ったレオノールに、やがてクラウディオの心は……。 すれ違い、拗れる2人に愛は生まれるのか?  焦ったい恋と陰謀+バトルのラブファンタジー。

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。

どうしてあなたが後悔するのですか?~私はあなたを覚えていませんから~

クロユキ
恋愛
公爵家の家系に生まれたジェシカは一人娘でもあり我が儘に育ちなんでも思い通りに成らないと気がすまない性格だがそんな彼女をイヤだと言う者は居なかった。彼氏を作るにも慎重に選び一人の男性に目を向けた。 同じ公爵家の男性グレスには婚約を約束をした伯爵家の娘シャーロットがいた。 ジェシカはグレスに強制にシャーロットと婚約破棄を言うがしっこいと追い返されてしまう毎日、それでも諦めないジェシカは貴族で集まった披露宴でもグレスに迫りベランダに出ていたグレスとシャーロットを見つけ寄り添う二人を引き離そうとグレスの手を握った時グレスは手を払い退けジェシカは体ごと手摺をすり抜け落下した… 誤字脱字がありますが気にしないと言っていただけたら幸いです…更新は不定期ですがよろしくお願いします。