【完結】記憶を失くした貴方には、わたし達家族は要らないようです

たろ

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95話  ラフェ

 ◇ ◇ ◇  ラフェ


「おかあしゃん、おじちゃんとあそんできてもいい?」

 部屋にじっといたアルバードは退屈になってアーバンのいるリビングに走っていった。

「走らないで!」

「わかったぁ!」返事だけはとってもいいのだけどもう走ってる。

 ここに住み始めて1週間が経った。

 お義父様もアーバンも今仕事を休んでこの家に居てくれる。



 アーバンが家に着いた日にすぐにここで暮らし始めなければいけない理由を説明をしてくれた。

「ラフェとアルはまだ狙われているんだ。だからアレックス様の屋敷からこちらに来てもらった。実は今グレン様が狙われているんだよ。そのため君達がグレン様のそばにいると、弱い君達が一番に狙われてしまうんだ」

 頭では理解出来るけどわたしの中ではよくわからない説明に眉を顰めた。

「グレン様が狙われている?彼はとても強い人よ?そんな彼を狙う人がいるの?それに彼を狙うのにどうしてわたし達が関係あるのかしら?
 もちろんそんな状態の時にグレン様の近くにいるのは迷惑になることはわかるわ、それにグレン様がアルをとても可愛がってくださっていることは周囲も知っていることだし確かに困らせることはできるもかもしれないわ。
 まさか……今回のアルの事件は……」

 今回のアルバードの事件の理由がわたしにはまだよくわかっていなかった。

 辺境に近い地でアルバードが飲まされた麻薬が売買されて犯人が捕まったとは聞いていた。
 だけどどうしてアルバードが狙われたのか誰に聞いても『わからない』と言われた。
 ただまだ狙われるかもしれないからと安全のためとアルバードの療養のために屋敷で過ごさせてもらっていた。

 だけど、何事もなく落ち着いてきたし、これ以上迷惑はかけられないと思っていたところだった。

 だけどまさかまたアーバンやお義父様と暮らすことになるとは思わなかった。

 二人とも働かないで大丈夫なのかと心配したら
「実はラフェ達を守るのが今は仕事なんだ。だから安心して守られて欲しい。それならラフェも気を遣わないだろう?」
 とアーバンが申し訳なさそうに言ってくれた。

 アーバンがこんな言い方をしたのは、わたしが気を遣わないようにしてくれているからなのはわかる。

「それにラフェの手料理が食べられるし可愛いアルといられるし俺的には助かってる、な?父上?」

「わたしはアルと会うのは久しぶりだからな、こんな時間を持てるなんてとても有難いと思ってるよ」

 お義父様はアルバードと絵本を読んだり絵合わせのカードゲームをして遊んでくれる。

 でも二人はニコニコしているのにふと鋭い視線を外に向けている。
 夜中も交代で起きてわたし達のことを守ってくれていた。だけど気づかれないようにしてくれているのがわかるので、わたしは敢えて気づかないフリをしていた。

 タウンハウスの屋敷でも同じような空気の中で過ごしたので気がついたのだ。

 彼らにとってわたし達を守るのは、元家族としての情でもあるけど、仕事でもあるのだと思う。だからわたしは気づかないフリをして出来るだけ外出をせずこの家の中で過ごすようにしている。

 アルバードは外に出られないストレスを発散するためにアーバンやお義父様と庭に出ることはあっても家の敷地から外には出ていない。

 表面的にはおだやかな時間を過ごしている。


 だけど縫い物をしながらやはり考えるのはグレン様のこと。

 何故彼が狙われているのか?

 大丈夫なのかな?怪我などしていなければいいけど。

 口が悪くて豪快で、なんにも気にしない性格で、だけど本当は誰よりも優しくて情のある人。

 すぐ揶揄ったり意地悪を言うけど、それは本当の自分を見せないようにするため。

 アルバードも何か察知しているのか絶対に『グレン様』のことを聞いてきたりしない。

 だけど夜寝ている時に寝言で

「ギュレン……あいたい」
 と言ったのを聞いて、アルバードなりに我慢しているのだと思った。

 わたしも……元気なグレン様に会いたい。

 今なら理由があってだとわかるけど、屋敷で避けられていた時は、本当はとても寂しかった。

 迷惑ばかりかけたので嫌われているのかもしれないと思っていた。

 わたしと距離を置くためだったと今ならわかるけどーーわたしはグレン様に惹かれている。

 アルバードがいるのに、恋愛なんてしてる場合じゃないのに、まともに子育てもできないわたしが恋愛にかまけてる場合じゃないのに。

 アルバードがスヤスヤ眠る姿を見ながら眠れぬ夜をわたしが唯一出来る縫い物をしながら過ごしていた。


 すぐそこに怖い人達がわたし達親子を襲いにきていることも知らずに。

 アーバンとお義父様、そして周囲で見守っていてくれる騎士達が必死で闘っていた。


 外の騒がしい音に気がついたわたしは、アーバンとの約束通りクローゼットにある床の隠し扉からアルバードを連れて地下へと隠れた。

『もし誰かが襲ってきたらここに逃げて』

 アーバン達に迷惑はかけられない。

 わたしは窓を開けてそこから逃げたように見せかけて急いで地下の隠し部屋に隠れた。

 そこには常に水と食料、着替えなどを用意してあった。

 わたしには力がない。出来ることは周りにこれ以上迷惑をかけないこと。みんなの邪魔にならないように何も知らずにスヤスヤ眠るアルバードを抱っこしたまま時が過ぎるのをじっと待つしかなかった。




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