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96話
◇ ◇ ◇ ラフェ
地下の中は静かだった。
アーバンかお義父様がここに来てくれるまでは外に出ないと約束していた。
だけど……外では何があっているのか……怪我をしていないのか、不安で仕方がなかった。
そばにアルバードが居てくれるからパニックにならないで済んだ。
何度扉を開けて上に行こうかと思ったかわからない。何故こんなことになっているのだろう?
またグレン様を狙っている人の所為なのだろうか?
悔しいけど守られるだけの弱いわたしはみんなの言うことを聞くことしか出来ない。
アルバードがいるのに下手に動けばみんなに迷惑をかける。
不安な時間が過ぎていく。まるで永遠に続くのではないかと思ってしまう。
◇ ◆ ◇ アーバン
グレン様と俺と父上とラフェ達のことを話し合った。
グレン様への嫌がらせのためだけにラフェやアルが狙われている。それも心優しいと言われ国民から慕われる評判がとても良い王妃様が⁈
父上が諜報員をしているのは知っていた。だけど知り得た情報は絶対に誰にも言うことはない。
国王陛下や宰相、騎士団長など一部の人に報告する以外口に出してはいけないことになっている。
その情報を息子の俺に伝えたのは陛下からの命令だった。
近しい人ならグレン様を見て分かる人もいるだろう。
国王陛下を何度も間近で見たことがある人でグレン様と見比べればわかるのだが、普通なら二人のことは結びつかない。
俺も言われてなんとなくあった違和感に納得した。
グレン様は貴族らしくない。
普段髪型や服装も少しだらしなくしているし髪の色も陛下とは違うが、きちんと正装すれば陛下に似ていることに気がつく。いや、実はとてもよく似ている。だから敢えてわからないように髪の色を変えて見た目からはわからないようにしていたのだ。
王妃殿下はグレン様に対して思うところがあったのだろうか?
俺が生まれる前の話だ。
陛下には愛する人がいて正妃を迎えてもなお、忘れることができず愛妾として迎えた。
そして正妃を顧みることなく愛妾だけを愛した陛下。そして彼女は陛下の子供を身籠り出産と同時に命を落とした。
陛下はその時どう思ったのだろう?
大切な最愛を失った悲しみ?
最愛を失うことになった原因の息子を恨んだのだろうか?
息子であるグレン様は生まれてから親の愛を得ることなく辺境地にある子爵家に養子として出されたらしい。
グレン様はどんな風に育ってきたのだろう?
俺はグレン様がラフェ達のために自分の話したくないことを話して聞かせてくれたことに、本気で二人を守りたいのだと言う強い意志を感じた。
本当なら家族として幼馴染として守ってやらなければいけなかったのに俺たちは何もしてあげることが出来なかった。
俺たちはラフェが家を出た時点でその資格すらなくなっていた。そのことに気が付かずにいつかはなんとかしてやりたいなんて甘いことしか考えていなかった。
王妃様のグレン様への執着は年々酷くなっていたらしい。
グレン様の母が亡くなり陛下は王妃様と向き合うようになり、現在の王太子様が生まれて二人はそれなりに上手くいっているように国民からは見えていた。
陛下の隣で微笑む王妃様は慈愛に満ちて何処から見ても幸せそうにしか見えなかった。
国民は二人の姿を仲睦まじい夫婦だと思っていたし、王妃様は素晴らしい人だと思っている。
俺もグレン様と父上に聞かなければ信じることはできなかった。
父上達諜報員は王妃様の愚行を知っていた。ただそれを口に出すことはなかった。
陛下も事実は把握していても王妃を改めさせるようにすることもなく、放置していたようだ。
グレン様は自分の出生の秘密を知ってからは王宮に近寄らないようにしてはいたらしいが仕事上顔を出さなければいけないこともあった。
その度に王妃は待ち構えていたかのように近づいては嘲笑い嫌味を言ってきていたらしい。
グレン様が結婚して二人を失った時も
『貴方は女性を不幸にする人なのね』
と嗤ったらしい。
『貴方にはあの卑しい女の血が流れているのよ、その血は残すべきではないの』
グレン様が何かをしたわけではない。
陛下の愛が王妃に向かずグレン様の母親に向いたのもグレン様が生まれたのも彼が望んだわけではない。
王妃はグレン様を憎んでいたはずなのにいつの頃からか執着してそこには歪んだ異常な愛情が生まれてしまった。
陛下に愛されなかった、求めても得ることが出来なかった愛を同じように陛下から得ることが出来なかったグレン様に対して今度は愛を求め始めた。
一種の狂気。
グレン様が家族を失い苦しんでいる姿に王妃は仄暗い感情が満たされていた。彼を求めなくても誰のものでもないことで幸せだった。
なのに息子がいるラフェに惹かれていることを知った王妃は嫉妬とグレン様への歪んだ愛情から、ラフェとアルを排除しようと狙った。
簡単に殺すのではなく、二人を苦しめ、さらにグレン様も苦しむ。その様を楽しむように。
そしてそこにラフェの元夫で亡くなっていると思われている兄貴が絡んできた。
コスナー伯爵が裏で手を回して低位貴族の子息達に麻薬を売らせてかなりの儲けがあった。
さらに他にも違法売買などでお金を荒稼ぎしていたコスナー伯爵を王妃は知っていて、いいように使っていたようだ。
王妃とコスナー伯爵は昔からの知り合いでコスナー伯爵は王妃に弱みを握られていたようだ。
王妃もコスナー伯爵に頼まれてエドワードを婿にするために多少の口利きをしてあげたりと、お互いがいいように利用する関係が築かれていたらしい。
兄貴は全てを知っていても、今の生活を選んでいると聞いた。記憶の戻らない兄にはラフェ達家族は他人でしかないのだろうか。
俺と父上はグレン様と話し合い、しばらく仕事を休みラフェとアルを警護するために家で過ごすことになった。
グレン様は王妃が何かしら動くように会って来たらしい。
「ラフェ達に危害を加えられないように守ってくれ。家の周囲には護衛騎士も配備しておく。しかしあの女は何をしでかすかわからないからよろしく頼む」
そう言われた矢先俺の家の周囲にはたくさんの破落戸が現れた。
いや、破落戸に見せかけた雇われた傭兵だろう。
王妃かコスナー伯爵か。
グレン様を狙うよりこんな小さな家にいるラフェ達を狙う方が簡単だから。グレン様がラフェ達を諦めたと思わせていても、グレン様にとって一番弱いところではある。二人に何かあればグレン様に一番のショックを与えられる。
やはりこっちを狙って来た。
グレン様は王妃がコスナー伯爵の命を狙うように仕向けたのに。
いやもしかしたら両方を狙っているかもしれない。
コスナー伯爵の命とラフェ達の命。話を聞いた王妃の性格なら二つのことを一度に狙って来そうだ。
ラフェは俺たちとの約束を守って避難しているはずだ。
俺たちはたくさんの破落戸(傭兵)を相手にひたすら闘うしかなかった。
護衛騎士達も加勢してくれてなんとか応戦できているが人数が足りない。
どれだけ王妃は人を雇ったんだ!
地下の中は静かだった。
アーバンかお義父様がここに来てくれるまでは外に出ないと約束していた。
だけど……外では何があっているのか……怪我をしていないのか、不安で仕方がなかった。
そばにアルバードが居てくれるからパニックにならないで済んだ。
何度扉を開けて上に行こうかと思ったかわからない。何故こんなことになっているのだろう?
またグレン様を狙っている人の所為なのだろうか?
悔しいけど守られるだけの弱いわたしはみんなの言うことを聞くことしか出来ない。
アルバードがいるのに下手に動けばみんなに迷惑をかける。
不安な時間が過ぎていく。まるで永遠に続くのではないかと思ってしまう。
◇ ◆ ◇ アーバン
グレン様と俺と父上とラフェ達のことを話し合った。
グレン様への嫌がらせのためだけにラフェやアルが狙われている。それも心優しいと言われ国民から慕われる評判がとても良い王妃様が⁈
父上が諜報員をしているのは知っていた。だけど知り得た情報は絶対に誰にも言うことはない。
国王陛下や宰相、騎士団長など一部の人に報告する以外口に出してはいけないことになっている。
その情報を息子の俺に伝えたのは陛下からの命令だった。
近しい人ならグレン様を見て分かる人もいるだろう。
国王陛下を何度も間近で見たことがある人でグレン様と見比べればわかるのだが、普通なら二人のことは結びつかない。
俺も言われてなんとなくあった違和感に納得した。
グレン様は貴族らしくない。
普段髪型や服装も少しだらしなくしているし髪の色も陛下とは違うが、きちんと正装すれば陛下に似ていることに気がつく。いや、実はとてもよく似ている。だから敢えてわからないように髪の色を変えて見た目からはわからないようにしていたのだ。
王妃殿下はグレン様に対して思うところがあったのだろうか?
俺が生まれる前の話だ。
陛下には愛する人がいて正妃を迎えてもなお、忘れることができず愛妾として迎えた。
そして正妃を顧みることなく愛妾だけを愛した陛下。そして彼女は陛下の子供を身籠り出産と同時に命を落とした。
陛下はその時どう思ったのだろう?
大切な最愛を失った悲しみ?
最愛を失うことになった原因の息子を恨んだのだろうか?
息子であるグレン様は生まれてから親の愛を得ることなく辺境地にある子爵家に養子として出されたらしい。
グレン様はどんな風に育ってきたのだろう?
俺はグレン様がラフェ達のために自分の話したくないことを話して聞かせてくれたことに、本気で二人を守りたいのだと言う強い意志を感じた。
本当なら家族として幼馴染として守ってやらなければいけなかったのに俺たちは何もしてあげることが出来なかった。
俺たちはラフェが家を出た時点でその資格すらなくなっていた。そのことに気が付かずにいつかはなんとかしてやりたいなんて甘いことしか考えていなかった。
王妃様のグレン様への執着は年々酷くなっていたらしい。
グレン様の母が亡くなり陛下は王妃様と向き合うようになり、現在の王太子様が生まれて二人はそれなりに上手くいっているように国民からは見えていた。
陛下の隣で微笑む王妃様は慈愛に満ちて何処から見ても幸せそうにしか見えなかった。
国民は二人の姿を仲睦まじい夫婦だと思っていたし、王妃様は素晴らしい人だと思っている。
俺もグレン様と父上に聞かなければ信じることはできなかった。
父上達諜報員は王妃様の愚行を知っていた。ただそれを口に出すことはなかった。
陛下も事実は把握していても王妃を改めさせるようにすることもなく、放置していたようだ。
グレン様は自分の出生の秘密を知ってからは王宮に近寄らないようにしてはいたらしいが仕事上顔を出さなければいけないこともあった。
その度に王妃は待ち構えていたかのように近づいては嘲笑い嫌味を言ってきていたらしい。
グレン様が結婚して二人を失った時も
『貴方は女性を不幸にする人なのね』
と嗤ったらしい。
『貴方にはあの卑しい女の血が流れているのよ、その血は残すべきではないの』
グレン様が何かをしたわけではない。
陛下の愛が王妃に向かずグレン様の母親に向いたのもグレン様が生まれたのも彼が望んだわけではない。
王妃はグレン様を憎んでいたはずなのにいつの頃からか執着してそこには歪んだ異常な愛情が生まれてしまった。
陛下に愛されなかった、求めても得ることが出来なかった愛を同じように陛下から得ることが出来なかったグレン様に対して今度は愛を求め始めた。
一種の狂気。
グレン様が家族を失い苦しんでいる姿に王妃は仄暗い感情が満たされていた。彼を求めなくても誰のものでもないことで幸せだった。
なのに息子がいるラフェに惹かれていることを知った王妃は嫉妬とグレン様への歪んだ愛情から、ラフェとアルを排除しようと狙った。
簡単に殺すのではなく、二人を苦しめ、さらにグレン様も苦しむ。その様を楽しむように。
そしてそこにラフェの元夫で亡くなっていると思われている兄貴が絡んできた。
コスナー伯爵が裏で手を回して低位貴族の子息達に麻薬を売らせてかなりの儲けがあった。
さらに他にも違法売買などでお金を荒稼ぎしていたコスナー伯爵を王妃は知っていて、いいように使っていたようだ。
王妃とコスナー伯爵は昔からの知り合いでコスナー伯爵は王妃に弱みを握られていたようだ。
王妃もコスナー伯爵に頼まれてエドワードを婿にするために多少の口利きをしてあげたりと、お互いがいいように利用する関係が築かれていたらしい。
兄貴は全てを知っていても、今の生活を選んでいると聞いた。記憶の戻らない兄にはラフェ達家族は他人でしかないのだろうか。
俺と父上はグレン様と話し合い、しばらく仕事を休みラフェとアルを警護するために家で過ごすことになった。
グレン様は王妃が何かしら動くように会って来たらしい。
「ラフェ達に危害を加えられないように守ってくれ。家の周囲には護衛騎士も配備しておく。しかしあの女は何をしでかすかわからないからよろしく頼む」
そう言われた矢先俺の家の周囲にはたくさんの破落戸が現れた。
いや、破落戸に見せかけた雇われた傭兵だろう。
王妃かコスナー伯爵か。
グレン様を狙うよりこんな小さな家にいるラフェ達を狙う方が簡単だから。グレン様がラフェ達を諦めたと思わせていても、グレン様にとって一番弱いところではある。二人に何かあればグレン様に一番のショックを与えられる。
やはりこっちを狙って来た。
グレン様は王妃がコスナー伯爵の命を狙うように仕向けたのに。
いやもしかしたら両方を狙っているかもしれない。
コスナー伯爵の命とラフェ達の命。話を聞いた王妃の性格なら二つのことを一度に狙って来そうだ。
ラフェは俺たちとの約束を守って避難しているはずだ。
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