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101話 ラフェ
◇ ◇ ◇ ラフェ
「アル、そろそろお昼ご飯だよ!」
「はあい!」
アルバードとわたしは自分たちの家に帰ってきた。
二人っきりの生活は少し寂しいけど、近所のおばちゃんやおじちゃん達は泣いて喜んでくれた。
アルバードがテーブルに座り、美味しそうにチキンのスープを食べている姿をわたしはそっと見ていた。
「おかあしゃん、どうしたの?」
「うん?アルはいつもなんでも美味しそうに食べてくれるからお母さんとっても嬉しいの」
「うん!おいしい!おかわり、していい?」
「ふふっ、もちろんよ。たくさん食べてね」
こんな二人の生活がずっと続いていく。
そう思っていたのに……エドワードが生きていると言われて……どうしていいのかわからず戸惑ってしまった。
それもわたしのことは忘れているらしい。
…………記憶喪失。
アレックス様から聞いてわたしは荷物をまとめて逃げるようにこの家に帰ってきた。
「詳しい話はまた後日聞きますので……お世話になりました」とだけ伝言を残して。
考える時間が欲しかった。
話を聞く覚悟が欲しかった。
わたしは確かにエドワードを愛していた。生きていることを素直に喜べばいい。
だけど、記憶を失くした彼にとってわたしはいない存在。
今更会うべきではないのでは?
そう思うのはもう愛していないから?
会うのが怖いと思うわたしは酷い人間なのだろうか?
わたしはどうすればいいのかわからなかった。
アルバードにとっては父親。だけど記憶のない彼にとってわたしもアルバードも『要らない』のではないだろうか。
考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになる。
彼はわたし達親子のことを知っているのだろうか。何故今更アレックス様はわたしにそんなことを伝えたのだろう。どこかでエドワードのことを知ったのか?
エドワードはやはり記憶を失くしても騎士として働いているのだろうか?
アルバードはエドワードに似ている。だから、アレックス様は気がついたのかしら?
それなら……グレン様も知ってる?
「ーーーあしゃん!ーーぇ、聞いてる?」
「あっ、ごめんなさい。お母さんボッーとしてたみたい」
アルバードはもう食べ終わってテーブルの上に置いてある空のお皿を見せて「おかあしゃん、ごちそうさま、したよ」と嬉しそうに言った。
「ほんとだ。アルはお利口さんね」
「うん!………あのねっ、ギュレン、いつくるの?」
「グレン様は……お忙しいからなかなか来れないと思うの」
タウンハウスを飛び出してからグレン様には会っていない。
ううん、しばらく来ないで欲しいとお願いをしている。
「ギュレンはぼくのおともだち、なの。こんどいっしょにもりにぼうけん、いくって!やくそくしたの」
「そう……約束してたのね?」
「うん!だからギュレン、まってるの」
二人で話してをしていたら扉を叩く音が聞こえた。
「あっ!ギュレン!」
アルバードは急いで扉へと走って行った。
まだ鍵を開けれないアルバードの後ろを追って扉の前に行くと
「どちら様でしょうか?」と尋ねた。
「アーバンだ」と返事が来た。
「待ってて鍵を開けるから」
「おじちゃん、かぁ……」
アルバードはアーバンを見て露骨にガッカリしている。
「俺がくるのは駄目なのか?」
アルバードを覗き込んで声をかけるアーバン。
「ちがう!けど、ギュレンだと……おもったの」
「グレン様もアルに会いたがってた。だけど今仕事が忙しくて会いに来れないらしい。だから代わりに俺が来たんだ。
アルがそんな暗い顔をしたらグレン様が心配するぞ」
「だって、だって、ギュレン、あいにこないもん。まえもとおくにいって、あえなかったんだもん」
アルバードは、小さくてもみんなが辺境地へ帰って会えなかったことを覚えているようだ。
「大丈夫だよ、グレン様が遠くに行く時はちゃんと会いに来てからしか行かないと言ってた。アルはカッコいい騎士になりたいんだろう?だったら、これからはお母さんを守ってやってくれ、それが今のお前の仕事だ」
「まもるの?する!する!おかあしゃん、アルがまもる!ねっ?」
「嬉しいわ、アルがそばに居てくれるだけで怖くないわ」
アルバードがいるから強くなれる。この子がそばにいてくれるからエドワードのこともなんとか乗り越えることができた。
アーバンが顔を出してくれるおかげで、仕上がった縫い物を運んでくれたり、必要なものを持ってきてくれたりする。
「アーバン、いつも甘えてばかりでごめんなさい」
だけど聞きたかったことがある。
お腹がいっぱいになってベッドでお昼寝を始めたアルバードを確認してから、わたしはアーバンに聞いた。
「貴方はエドワードが生きていることを知っていたの?」
わたしの質問に戸惑いを見せたが、アーバンは考えを纏めながら少しずつ話してくれた。
「………母上が兄貴の遺族給付金を受け取っていた時……母上は兄貴が生きていることを知っていたらしい。……兄貴が訪ねてきても追い返せばコスナー伯爵が借金を肩代わりしてくれると言われて、母上は記憶のない兄貴を追い返したと言っていた。
母上は金のために兄貴を切り捨てたんだ。俺がそのことを聞いたのは母上が借金でもうどうすることも出来なくなって切羽詰まってる時に口を滑らせて知ったんだ」
「コスナー伯爵?それは……あの麻薬を売っていた領地の領主様だよね?」
エドワードの話でコスナー領の伯爵の名前が出てきて驚いた。アレックス様からは話を聞かないと言って断っていたのでわたしには詳しい話はわからない。
だけどアルバードのためにグレン様が馬を走らせて薬を取りに行ってくれた場所なので覚えていた。
コスナー伯爵がエドワードのことに関わりがある?
「まさか……エドワードはコスナー領に住んでるなんて訳ないよね?」
「ラフェ、俺からは詳しく話せない。だけど兄貴は……コスナー領に住んでいたよ、つい最近までは」
「え?では今は?」
「…………今は……王都にいる……」
「アル、そろそろお昼ご飯だよ!」
「はあい!」
アルバードとわたしは自分たちの家に帰ってきた。
二人っきりの生活は少し寂しいけど、近所のおばちゃんやおじちゃん達は泣いて喜んでくれた。
アルバードがテーブルに座り、美味しそうにチキンのスープを食べている姿をわたしはそっと見ていた。
「おかあしゃん、どうしたの?」
「うん?アルはいつもなんでも美味しそうに食べてくれるからお母さんとっても嬉しいの」
「うん!おいしい!おかわり、していい?」
「ふふっ、もちろんよ。たくさん食べてね」
こんな二人の生活がずっと続いていく。
そう思っていたのに……エドワードが生きていると言われて……どうしていいのかわからず戸惑ってしまった。
それもわたしのことは忘れているらしい。
…………記憶喪失。
アレックス様から聞いてわたしは荷物をまとめて逃げるようにこの家に帰ってきた。
「詳しい話はまた後日聞きますので……お世話になりました」とだけ伝言を残して。
考える時間が欲しかった。
話を聞く覚悟が欲しかった。
わたしは確かにエドワードを愛していた。生きていることを素直に喜べばいい。
だけど、記憶を失くした彼にとってわたしはいない存在。
今更会うべきではないのでは?
そう思うのはもう愛していないから?
会うのが怖いと思うわたしは酷い人間なのだろうか?
わたしはどうすればいいのかわからなかった。
アルバードにとっては父親。だけど記憶のない彼にとってわたしもアルバードも『要らない』のではないだろうか。
考えれば考えるほど頭の中がぐちゃぐちゃになる。
彼はわたし達親子のことを知っているのだろうか。何故今更アレックス様はわたしにそんなことを伝えたのだろう。どこかでエドワードのことを知ったのか?
エドワードはやはり記憶を失くしても騎士として働いているのだろうか?
アルバードはエドワードに似ている。だから、アレックス様は気がついたのかしら?
それなら……グレン様も知ってる?
「ーーーあしゃん!ーーぇ、聞いてる?」
「あっ、ごめんなさい。お母さんボッーとしてたみたい」
アルバードはもう食べ終わってテーブルの上に置いてある空のお皿を見せて「おかあしゃん、ごちそうさま、したよ」と嬉しそうに言った。
「ほんとだ。アルはお利口さんね」
「うん!………あのねっ、ギュレン、いつくるの?」
「グレン様は……お忙しいからなかなか来れないと思うの」
タウンハウスを飛び出してからグレン様には会っていない。
ううん、しばらく来ないで欲しいとお願いをしている。
「ギュレンはぼくのおともだち、なの。こんどいっしょにもりにぼうけん、いくって!やくそくしたの」
「そう……約束してたのね?」
「うん!だからギュレン、まってるの」
二人で話してをしていたら扉を叩く音が聞こえた。
「あっ!ギュレン!」
アルバードは急いで扉へと走って行った。
まだ鍵を開けれないアルバードの後ろを追って扉の前に行くと
「どちら様でしょうか?」と尋ねた。
「アーバンだ」と返事が来た。
「待ってて鍵を開けるから」
「おじちゃん、かぁ……」
アルバードはアーバンを見て露骨にガッカリしている。
「俺がくるのは駄目なのか?」
アルバードを覗き込んで声をかけるアーバン。
「ちがう!けど、ギュレンだと……おもったの」
「グレン様もアルに会いたがってた。だけど今仕事が忙しくて会いに来れないらしい。だから代わりに俺が来たんだ。
アルがそんな暗い顔をしたらグレン様が心配するぞ」
「だって、だって、ギュレン、あいにこないもん。まえもとおくにいって、あえなかったんだもん」
アルバードは、小さくてもみんなが辺境地へ帰って会えなかったことを覚えているようだ。
「大丈夫だよ、グレン様が遠くに行く時はちゃんと会いに来てからしか行かないと言ってた。アルはカッコいい騎士になりたいんだろう?だったら、これからはお母さんを守ってやってくれ、それが今のお前の仕事だ」
「まもるの?する!する!おかあしゃん、アルがまもる!ねっ?」
「嬉しいわ、アルがそばに居てくれるだけで怖くないわ」
アルバードがいるから強くなれる。この子がそばにいてくれるからエドワードのこともなんとか乗り越えることができた。
アーバンが顔を出してくれるおかげで、仕上がった縫い物を運んでくれたり、必要なものを持ってきてくれたりする。
「アーバン、いつも甘えてばかりでごめんなさい」
だけど聞きたかったことがある。
お腹がいっぱいになってベッドでお昼寝を始めたアルバードを確認してから、わたしはアーバンに聞いた。
「貴方はエドワードが生きていることを知っていたの?」
わたしの質問に戸惑いを見せたが、アーバンは考えを纏めながら少しずつ話してくれた。
「………母上が兄貴の遺族給付金を受け取っていた時……母上は兄貴が生きていることを知っていたらしい。……兄貴が訪ねてきても追い返せばコスナー伯爵が借金を肩代わりしてくれると言われて、母上は記憶のない兄貴を追い返したと言っていた。
母上は金のために兄貴を切り捨てたんだ。俺がそのことを聞いたのは母上が借金でもうどうすることも出来なくなって切羽詰まってる時に口を滑らせて知ったんだ」
「コスナー伯爵?それは……あの麻薬を売っていた領地の領主様だよね?」
エドワードの話でコスナー領の伯爵の名前が出てきて驚いた。アレックス様からは話を聞かないと言って断っていたのでわたしには詳しい話はわからない。
だけどアルバードのためにグレン様が馬を走らせて薬を取りに行ってくれた場所なので覚えていた。
コスナー伯爵がエドワードのことに関わりがある?
「まさか……エドワードはコスナー領に住んでるなんて訳ないよね?」
「ラフェ、俺からは詳しく話せない。だけど兄貴は……コスナー領に住んでいたよ、つい最近までは」
「え?では今は?」
「…………今は……王都にいる……」
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